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くらしの世田谷

世田谷での暮らしを、よりよいものにするための情報。区民の衣食住に関わる取り組みやサービス、町の景観、子育て、町づくり、多世代交流の話など。

2013.11.13

心も体もほっこり。野菜の美味しいカフェ「ふくしまオルガン堂」

世田谷区代沢、代沢小学校から歩いてすぐのところにコミュニティー&オーガニックカフェ「ふくしまオルガン堂 下北沢」があります。福島県のお米と野菜でつくられた「ふくしま定食」が人気で、リピーターが後を絶たないのだとか。カフェの店長阿部直実さんは、「福島と東京、人と人とを結びたい」と話します。
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店名の由来は「オーガニック」から

通りから見ると、店舗名のとおりオルガンが目印のカフェ「ふくしまオルガン堂 下北沢」。店を開けると、まず美味しそうな福島の野菜が目に飛び込んできます。

「オルガンって、看板のようにオルガンが置いてあるけど、もともとの店名の由来は、オーガニック(organic)なんです。オルガン(organ)って文字がちゃんと入っているでしょ」と阿部さん。福島県の農家が運営するこのカフェは、2013年3月にオープンしました。

毎週2回、水曜日と土曜日に福島県の農家さんから採りたての野菜を送ってもらい、日替わりの定食メニューを組み立てます。「福島の旬はここで味わえるんです」と阿部さん。夏にはきゅうりやトマト、冬には大根や白菜。夜に貸し切りの予約があるときは、福島の郷土料理も出しているのだそうです。

「ふくしまオルガン堂」で店番をしている阿部直実さん

「ふくしまオルガン堂」で店番をしている阿部直実さん

福島の農家との出会い

「3.11の震災後、何か自分にできることはないかと考えていました。その5月、福島の農家さんがトラックで東京に自分のつくった野菜を売りに来ていたんです。私が福島に行って何かしなければいけないのに、農家さんのほうが来ている。福島の野菜を販売する手伝いをしよう!とボランティア活動をはじめました」(阿部さん)

私たちが何気なく普段口にしているものは、農家さんが心を込めてつくっている。そのつくった野菜を、福島県産というだけで買わなかったりする消費者も多くいます。福島と東京、生産地と消費地。消費地である東京でも、もっと福島の現状をわかってもらいたいと阿部さんは言います。

「福島県農作物を首都圏で販売するボランティア活動を始めると、農家さんと話す機会が増えて、だんだんと福島の課題が、日本全体の課題として捉えていかなくてはいけないのではないかと思うようになってきたんです。そんな時、福島県の農家さんたちが下北沢に出店するということで、私が農家さんの代わりに店番をするようになりました。東京にいても福島に思いを寄せられるような場所にしていきたいと思っています」(阿部さん)

ここでは、福島県出身の人はもちろん、自分にも何かできることはないかと考えている人が度々訪れるのだとか。「何をしたらいいのか分からない」という人には、農作業のお手伝いや、福島でボランティア活動をしている人を紹介しているそう。お店の一角には、そうした活動情報がたくさん集められていて、このカフェから発信されている様子が分かります。

ランチで大人気の「ふくしま定食」。日替わりメニューで福島の野菜をふんだんにいただける

ランチで大人気の「ふくしま定食」。日替わりメニューで福島の野菜をふんだんにいただける

店内にあるラックには、ボランティア団体の会報誌やイベントチラシなどが並ぶ

店内にあるラックには、ボランティア団体の会報誌やイベントチラシなどが並ぶ

震災後の農家の現状を知ってほしい

福島県産の農作物は、放射性物質検査を得て運ばれます。ここでは、検査された結果を見えるようきちんと提示することにこだわっています。

「提示された結果を見て判断してほしいというのはもちろんですが、それ以上に知ってほしいのは、農家さんが農作業のほかに、検査をすることを強いられているということなんです。この検査はとても大変なもので、検査する機械にもよりますが1㎏もの野菜をみじん切りにして、かつ検査結果がでるまで40分程度かかります。野菜の種類ごとに検査しているんです」(阿部さん)

特にお米の場合は、まず県の基準として全袋検査が必要で、それ以外に独自で検査をしてから出荷している農家さんが多いのだそう。日本の土壌は肥沃なので、農作物に放射性セシウムが移行しにくく、また数値の高いものは出荷停止となり流通していないのだとか。

福島から直送される野菜。色もつややかでどれも美味しそう!

福島から直送される野菜。色もつややかでどれも美味しそう!

ちょうどこの日の「ふくしま定食」にも出された洋梨。美味!

ちょうどこの日の「ふくしま定食」にも出された洋梨。美味!

「私たちが扱っている野菜は、福島県有機農業ネットワークに加入する農家さんのもの。おいしくて安全な農作物を消費者に届けたいと農業にひたむきに取り組んでいる方ばかりです。だから福島県に限らず、そんな農家さんを心から尊敬しています。スーパーに行けば簡単になんでも手に入る都会に住んでいますが、震災後は口に入れる食べ物への考え方が大きく変わりました」(阿部さん)

「ふくしまオルガン堂」と福島のこれから

福島で農家さんがこれから先も農業を続けていけるように、消費する私たちが彼らと一緒になって、福島について、農業について考えていかなければいけないと阿部さんは言います。

「この『ふくしまオルガン堂』から情報発信をして、いろんな人に福島に足を運んでもらえたら嬉しいなと思っています。実際に行くと、ぜんぜん違うものが見えてくると思うんです。」(阿部さん)

福島の農家さんにも、月に1〜2回ほどこのお店に来てもらうのだとか。自分がつくった野菜をここで料理してくれるのだそう。そうしてこの場で農家さんとお客さんがつながっていくのが嬉しいと言います。

「東京にいながら、何となく福島を感じられる場所、福島への思いが積み重なる場所があってもいいですよね。今もなお、不安を抱えて生活をしている人たちがいることや福島に暮らす人たちの葛藤を、私自身ももっと知らないといけない、少しでも分かち合えたらいいなって思います」(阿部さん)

いろんな人の、いろんな福島の今があります。福島というコンセプトを抜きにしても、心も体もほっこりするような定食。みなさんもふらっと足を運んでみてはいかがですか?

店内は気軽にふらっと立ち寄れるあたたかい雰囲気にあふれている

店内は気軽にふらっと立ち寄れるあたたかい雰囲気にあふれている

メニュー表。価格もお手頃で毎日通いたくなるほど

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「ふくしまオルガン堂」のオルガン。由来はorganicだったとは…。

「ふくしまオルガン堂」のオルガン。由来はorganicだったとは驚き

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紹介者プロフィール

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増村 江利子

国立音楽大学卒。Web制作、広告制作、編集を経て現在はフリーランスディレクター。一児の母。主なテーマは、暮らし、子育て、食、地域、エネルギー。毎日を、ちょっぴり丁寧に暮らしたいと思っています。

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