
学生ガイドが自ら創意工夫した解説で、歴史的建造物の魅力を伝えてくれる
国士舘大講堂で100余年の歴史に思いをはせる

校舎に囲まれて佇む大講堂。日本の伝統的な意匠で建てられている
世田谷区役所のほど近くで、近代的な施設が立ち並ぶ国士舘大学世田谷キャンパス。コンクリート校舎に囲まれた中に、まるでそこだけ異世界の空間のように「国士舘大講堂」が1919年完成当時の姿を残したまま佇んでいます。この大講堂は、国士舘が創立100周年を迎えた2017年に「国登録有形文化財」として登録されました。大学の教育理念が込められた大講堂は、修繕や改修を重ねることで創立当時の姿をとどめる、文化的にも貴重な建築物。建設当時は勉学の中心の場となっていましたが、近年は年に1度の名誉教授授与式など、わずかな機会にしか使用されていませんでした。その存在と意義を広く知ってもらいたいという思いが大講堂を有形文化財に登録するきっかけとなりました。また、コロナ禍明けから今回のような「学生ガイドによる見学ツアー」も始まりました。興味がある方なら誰でも参加できる見学ツアーで、大講堂の中を見られる貴重な機会となっています。

今回の見学ツアーや学園祭の時など、年に数回大講堂が公開されている

扉の向こうは百八畳敷の大空間が広がる
日本の伝統的な寺院建築風の意匠
当日案内してくれた学生ガイドは、政経学部2年生の羽塲 武蔵(はば むさし)さんと文学部1年の増田 華々莉(ますだ かがり)さん。まずは羽塲さんが大講堂の変遷や大講堂の中の特徴について、一つひとつ身振りを交えながら丁寧に説明をしてくれました。伝統的な日本の木造建築の意匠が採られた大講堂は、1919年に国士舘大学が港区から世田谷の現在の場所に移転した時に建設されたもので、100年以上前の創立期から唯一現存する建物です。百八畳敷の広い空間に格子模様が美しい高い天井、100年以上建物を支えてきた杉の丸柱など、外観だけでなく内観も見どころがたくさんあります。羽塲さんの説明の中には、戦時中に空襲を受けた際に、当時寮に住んでいた学生や職員たちがバケツリレーで消火し、周囲のほとんどの建物が焼けた中、大講堂は焼失を免れたという逸話もありました。大講堂が当時大学生や大学関係者にとってどのような存在だったかが偲ばれます。

見所を自分の言葉でわかりやすく説明してくれた羽塲さん

大講堂を支える杉の丸柱。建設当初の姿を保っている

湾曲した支輪で一段上げ、角材を格子状に組み上げた「折上格天井(おりあげこうしてんじょう)」

参加者は卒業生や在学生の保護者、歴史好きや近所の方々などさまざま。

大講堂グッズが当たるガチャ。売り上げは大講堂の保全に役立てられる
国士舘大学の歴史を知ることができる展示室
大講堂をひと通り見た後は、ガイド役は増田さんに交代。キャンパス近くの柴田会舘に移動し、4階にある展示室の展示を見ながら国士舘大学の歴史について説明を受けました。創立期の写真や当時の資料などの展示を通じて大学の歩んできた歴史を知ることにより、先ほど見た大講堂がどのような時の流れを経てきたか感じることができます。また、身近な区内の大学の詳しい歴史を知ることは、大学をより身近に感じられ興味深いものでした。展示室は日頃から公開されており、無料で見ることができますが、学生ガイドの説明を聞きながら見ることで、より展示資料の理解が深められます。

1年生とは思えない堂々とした説明が印象的な増田さん。教員志望という。

先ほど見た大講堂の模型も見られる

創立者の柴田 德次郎が実業家の渋沢 栄一と写っている写真もある
学生ガイドのフレッシュな案内を楽しむ

「参加者からの言葉や質問が励みになる」と話す2人
見学ツアーの後、 羽塲さんと増田さんにガイドとなったきっかけを聞いてみました。「大講堂はどのような場所か知らなかったので、興味を持ちました。何も知らない状態から、知識をつけて原稿を作り、話す練習をしました。今年で2年目ですが、人前で話す自信がつき、自分の成長を感じました」 (羽塲さん)
「昔の建物を見るのが好きで、大講堂の特徴を詳しく知ることができてよかったです」 (増田さん)
学生にとっても、大講堂と関わる機会は決して多くなく、学生ガイドは大講堂に入り、大講堂の魅力を知る絶好の機会になっているようです。決まったシナリオはなく、まずは大講堂について知識を得ることから、ガイドツアーの準備が始まるとのこと。渡された資料を参考に自分たちで原稿を作り、大学職員の前でリハーサルを繰り返し、ガイドツアーに臨んでいるそうです。聞き取りやすく、丁寧な説明をしてくれていた2人ですが、その裏では何度も原稿を磨き上げ、ガイドの練習を積んでいたのです。そんな2人は、何よりも参加者との交流が励みになっているそうです。
「わかりやすかったという感想をいただくとうれしい」(羽塲さん)
「説明に対して質問していただいたり、 興味を持っていただけるのがやりがいになります」(増田さん)
ガイドツアーは例年、5月、6月、10月、11月に実施され、次回は6月21日(土)に開催されます。現役学生の案内で、100余年の時を刻む大講堂にタイムスリップしてみませんか?


通りに面した世田谷キャンパス梅ヶ丘校舎34号館B棟1階展示コーナーもあり、年4~5回企画展示が実施されている。
※次回の「大講堂見学ツアー」は6月21日(土)を予定実施
・世田谷 国士舘大学「国登録有形文化財 国士舘大講堂 見学ツアー」参加者募集(6/19 13:00〆切)
◆学校法人国士舘 国士舘史資料室
東京都世田谷区世田谷4-28-1 柴田会舘内
展示室 月曜日〜土曜日 10:00〜16:00
(日曜祝日、本学の定める休業日を除く)
TEL 03-3416-2691 https://www.kokushikan.ac.jp/archive/
(撮影/合同会社・壬生真理子)