下北沢駅東口に、どこからかピアノの音が響いてきます。
今、ユーチューブでも人気がある、「ストリートピアノ」、「まちピアノ」。音楽や演劇の街である下北沢にも、誰でも弾けて、聞くことができる「シモキタまちピアノ」があります。下北沢駅の東口、改札正面にある赤茶色いビル「シモキタフロント」。この1階屋外スペースに「シモキタまちピアノ」があります。
ビルの色と似た赤茶色のアップライトピアノが、シモキタまちピアノです。
ワイシャツの男性とシモキタまちピアノ
ワイシャツ姿の男性が、演奏を始めると、ピアノの音色に、歩いている人が、ふいに立ち止まり、そして吸い寄せられてきます。数曲の力のこもった演奏が終わると、集まった皆さんから拍手がわいていました。男性も軽く一礼、ちょっとした青空コンサートです。
ワイシャツの男性とシモキタまちピアノ
親子で聞き入っていたお母さんは、男性の演奏を聴いて、とても素敵な時間をいただけたと、感動されていました。
開放的な空間で弾けるシモキタまちピアノ
ワイシャツの男性は、自宅の電子ピアノで弾いているより、ピアノで弾きたかったことと、街ゆく人に自分の演奏を聴いてもらいたくて、会社帰りにわざわざ電車を乗り継いで下北沢へ来たそうです。「ここは、開放感があって楽しいです!」とひとこと。下北沢駅前の大きな広場に面しとても開放的、下北沢の人々が行き交う「シモキタまちピアノ」のロケーションは、まさに下北沢の“ど真ん中”です。
ピアノの横を、下北沢の人々が行き交います
ピアノによって生まれる交流
演奏後、ワイシャツの男性は、ピアノを聞いていた女性たちと、感想や曲についての話で盛り上がり、演奏者と街ゆく人の出会いと交流が生まれていました。コロナ禍で、人が交流することも難しい昨今、演奏者とたまたま通りかかった人が生の演奏をとおして出会いが自然に生まれるのも、まちピアノの魅力のひとつなのかもしれません。
シモキタまちピアノが誕生するまで
管理運営しているシモキタフロント株式会社 代表取締役 柏雅弘さんにお話しを伺いました。実はシモキタまちピアノがここに置かれることになるまでは、関係者の皆さんの大変なご苦労があったそうです。
シモキタフロントの柏さん
はじめは、定期的に開催している世田谷区と区民が北沢地域の活性化のための話し合いの中で挙がったアイデアだったそうです。安全が確保出来るかどうか、駅に置けないか世田谷代田駅コンコースで試したり。設置場所をどうするか、はじめはシモキタフロントの2階に設置されたそうですが、「公園にあるすべり台やブランコみたいに、通りがかりの人に何気なく弾いてほしかったんです。誰でも、ふいに弾ける環境にしたかった。」という柏さんの想いもあり、現在のシモキタフロントの1階エントランスに設置することになったそうです。
屋外に設置されているシモキタまちピアノ
みんなでつくったピアノのレインカバー
設置場所は、1階エントランス、屋根はありますが、屋外。「あんな屋外に近い過酷な所にピアノを置くなんて」というご批判もあったそうです。
「あのピアノは地域の方が寄贈してくれた思い出いっぱいのピアノで、沢山の人に弾き繋いでほしいというご希望だったんです。だからちょっと過酷だけど、一番弾きやすい所に置きました。」と、柏さんは、地域の方や訪れる方にたくさん弾いてもらうことを最優先に考えたそうです。
それでも、雨風から守ることはとても大切、ピアノのレインカバーを考えたそうです。探し回りましたが、そもそもピアノのレインカバーは存在しません。柏さんと「シモキタまちピアノ」を推進する街のみなさんで、梱包の会社に特注して作ってもらったそうです。ピアノを寄贈してくれた方、柏さんや街の皆さんの見えない部分で大変なご尽力をくださったからこそ、シモキタまちピアノの今があるのではないでしょうか。
みなさんも、ぜひ下北沢に行かれた際は、駅前の「シモキタまちピアノ」に足をとめて演奏を聴いてみてください。そして、下北沢駅前シモキタフロントの開放的な空の下で、自ら弾いてみてください。きっと素敵な時間と出会いが待っています。
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