2013.01.29
歴史と伝統を誇る「世田谷ボロ市」
昨年12月と今年1月に開催された「世田谷ボロ市」。実際に訪れたことや、耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。今年も世田谷線の臨時ダイヤが出るほど多くの人で賑わったボロ市をレポートしました。
世田谷にはたくさんの「訪れたい場所」がある。古くから愛されてきたお店や、知る人ぞ知る穴場など、地元の情報をご紹介。思い出に残る昔の世田谷から今の世田谷まで。
テラダモケイとは、1/100サイズで街や風景を表現できるインテリアの模型ブランドです。人や動物、乗り物、建物など街のパーツに切り抜かれた紙のシートを切り取ってプラモデルのように組み立てると、小さなミニチュアの街が出来上がります。ミュージアムショップなどで人気に火がつきましたが、なんといってもその秘密は、ディテールにこだわったパーツと、シートごとに異なるテーマの数々。「結婚式・チャペル編」「屋台編」「男子体操編」などさまざまです。そのテラダモケイ初の直営店が、今年4月に下北沢にオープンしました。なぜ下北沢に?という疑問とともに、建築家でありテラダモケイの店長である寺田尚樹さんを訪ねて店にお邪魔してきました。
テラダモケイの「1/100建築模型用添景セット」は、模型といっても実にリアル。自動販売機に「たばこ」の文字がちゃんと入っていたり、ガードレールには東京都のイチョウのマークが!また、人物の配置やポーズなどをさまざまに表現できるのが魅力で、土下座やプロポーズ、酔っ払いのおじさん、自転車で出前を急ぐ人など、つくる人によって、さまざまな街の光景を演出できる面白さがあります。
シート1枚ごとにテーマがあり「水辺の公園編」「工事現場編」など街の風景を切り取ったものや「お花見編」「クリスマス編」などの季節もの、「東京編」「NY編」などの都市シリーズも。およそ月1本のペースで新作を発表してきて、現時点(2013年6月)でNo.34の最新作「バンコク編」まで揃っています。
バンコク編には、年老いた犬やトゥクトゥクなど、これまた現地に暮らす人の視点で切り取られた風景が広がります。
寺田「みんな知ってはいるけど、普段気にもとめないような風景を敢えて表現することで、“あるあるある”と共感してもらえたりするんですよね。」
もともとこの添景セットは、建築家である寺田さんが、建築模型につける添景を作り置きしようと考えたのが始まりでした。
寺田「模型を素敵に見せるには、建物そのものよりも周りに配置する“添景”といわれる人や家具、街路樹といったものが重要なんです。でも徹夜で模型をつくっていると、肝心の添景をつくる頃には疲れ果ててしまうことがよくあります。そこで、この添景をあらかじめ量産しておければいいなと思ったんです」
寺田設計事務所では、建物の建築設計や、プロダクトデザインなどの仕事を主に手がけています。寺田さんが感じてきたのは、家をつくるうえで、設計は最終目的ではなく手段に過ぎないということ。本来の目的は、その家で家族と楽しくご飯を食べたり、コミュニケーションしたりといった人の営みをデザインすることだと言います。
寺田「でも設計ばかりやっていると、その本来の目的を忘れちゃうことがあるんですよね。一方で、このテラダモケイは人の日常やコミュニケーションを直接表現するものなので、設計の仕事と同じくらい大事にしています。テラダモケイも建築設計も、表現方法は違いますが、実現したいことの最終目標は同じなんです」
直営店を開いた理由も、テラダモケイのシリーズが増え過ぎて全シリーズ見られる場所が欲しかったということに加えて、直接リアルなお客さんと接してみたいという思いが強かったのだそう。土日には寺田さんがエプロンをかけて店頭に立っていることもあるので、ふらりとお店に入ってみるとご本人に会えるかもしれません。
テラダモケイは、下北沢の劇場「ザ・スズナリ」の並びの脇道を奥へ進んだ左手にあります。もともと新宿に事務所をかまえていた寺田設計事務所が、オフィス兼直営店の場所として下北沢を選んだのには、明確な理由がありました。
寺田「下北沢って無目的に歩いている人が多い気がしたんですよ。例えば、青山や代官山のような街は、ブランド店の存在感が強くて、ブランド目的で街を訪れる人が多いですよね。でも下北沢では、若いカップルなど店にふらりと入ってもらえるイメージがあったんです。それに青山で一日過ごすのは結構疲れるじゃないですか。でも下北沢なら、余計な気をはらずに地に足をつけて過ごせる感じがしました」
最近土日をつかって、お客さんと一緒にテラダモケイを組み立てるワークショップも始めたのだそう。寺田さんにとっても意外だったのは、テラダモケイは大人向けにつくった商品なのに、子どもたちが夢中になることでした。
「先日開いたワークショップでは、意外とご近所さんの参加が多かったんですよね。私たち自身もこの下北沢の地域コミュニティの一員として、地元のファンの方々と仲良くやっていけたらいいなと思います」と、嬉しそうに話す寺田さん。
テラダモケイを通じて、お客さんとの交流が生まれたことも、人の暮らしをデザインする設計の仕事に、大きな意味がありそうです。
不思議な吸引力をもつ下北沢という街に、またひとつ面白い店が加わりました。
(撮影:上から3番目の「屋台編」の写真のみKenji MASUNAGA、それ以外の写真すべて庄司直人 )
住所: | 世田谷区北沢1-45-11 B1F |
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電話番号: | 03-6804-9174 |
営業時間: | 11:30〜19:00 |
その他: | 土曜日、日曜日のみ営業 |
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長崎県生まれ、東京在住。編集・企画・執筆。 地域コミュニティ、まちづくり、モノづくりをテーマに執筆。各地の地域活動、地産品の取材を重ねる。『世田谷くみん手帖』編集部員。ここでは「地方と都心をつなぐこと」「世田谷の人と人、人とお店のつながり」づくりをテーマに書いていきます。
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