2023.12.08
上用賀 待望の再開! 生まれ変わった馬事公苑を紹介します
2017年から7年にわたって休苑し、改装工事を行っていた馬事公苑がついに再開しました。2023年 11 月3〜5日に行われたリニューアル記念イベント期間の来場人数は、なんと合計6万5,000人。この日を待ち望んでいた区民の方も、多いのではないでしょうか。そこで早速、新生・馬事公苑をぐるりと一周。その魅力や、おすすめの穴場スポットをお伝えします。
世田谷での暮らしを、よりよいものにするための情報。区民の衣食住に関わる取り組みやサービス、町の景観、子育て、町づくり、多世代交流の話など。
「老人給食協力会ふきのとう」は名前のとおり、お年寄りにごはんを届ける活動をしています。支えるのは、多様なボランティアの人たちで、みなさんイキイキと自分の役割を果たしているのが印象的です。「食べものを届ける」という大事な役割を担える取組みに専門知識がなくても、手軽に多様な関わり方ができます。初めてのボランティアにもぴったりな、ふきのとうの取組みを取材しました。(世田谷くみん手帖ライター/小野民)
ふきのとうのお弁当をつくっている場所は3ヵ所。その中で1番大きい拠点、元学校給食センターを使った施設にうかがいました。厨房で10人ほどの人たちがテキパキとお弁当のおかずをつくっています。年齢はさまざま。女性ばかりと思いきや男性も混ざっていて、声を掛け合いながら作業は進んでいきます。
1981年、家にこもりがちなお年寄りを外に誘い出そうと、週に1回、食事会を開催したのがふきのとうの始まりです。のちに宅配サービスをはじめ、2002年には平日週5日に、2006年には夕食のサービスも開始しました。お弁当をつくる人はずっと変わらず、地元のボランティアの人たち。今、ボランティアの総数は調理、配達合わせて200名を越えています。
月に1、2度、時間があればかかわる人から、決まった曜日に必ず来ているという人まで、そのコミット具合はさまざまです。取材日の調理ボランティアの最高齢は、83歳の石綿さん。ボランティア歴は18年です。
「2、3年前までは週4で来ていたんだけれど、今は週2回。料理をするのがもともと好きだし、みんなに会えるのが嬉しいの。自分のためにやっているのよ。沖縄出身だから、まかないにサーターアンダギーをつくることもあるよ」(石綿さん)
とにこにこ。2年前から調理をしているという森澤さんは、「大手の料理教室に通っていて、その後この調理ボランティアに加わっています。いつか自分がひとりになったときにちゃんと料理をできるように」といいます。
みなさん、話を聞くと目的ややりがいを持って参加しているのが分かります。調理の合間の休憩では、今自分たちがつくったお弁当と手づくりのまかないをわいわいと食べて、とても楽しそう。もともとは食べ手を想って始まった配食サービスが、作り手の生き甲斐にもなっているのです。
できあがったお弁当は、配達ボランティアに託され、注文している各々の家で手渡されます。料金は1食800円。毎日頼む人、曜日を決めている人、たまに頼む人、それは自由。栄養士がつくったメニューを組み合わせて、毎日でも飽きないように工夫しています。また、会員には1か月のメニューが配られ、調理した人が誰なのかも分かるようになっています。
利用する人は高齢者が多いですが、ふきのとうでは年齢制限などの条件は設けていません。困っている人は誰でも使っていいというスタンスを大事にしていて、子どもを産んだばかりのお母さんなどにも利用されています。地元の人がつくり、地元の人に届ける、その近さがふきのとうの魅力でもあるのです。
しかしここ数年、大手の外食チェーンなどが、宅食サービスに一気に参入してきました。値段も安く、バリエーションも豊富。この現状を受け、ふきのとうのお弁当の注文数は減少しましたが、決して悪いことばかりではないと、老人給食老人会ふきのとうの本部事業部担当、佐野有未さんはいいます。
「いろいろな選択肢ができたのは、注文する人にとって、嬉しいですよね。ただ、私たちの活動の目的は、食を通して地域をつなぎ、町づくりをすること。地域がひとつの大きな家族になれるように活動しています」(佐野さん)
さまざまな世代の人が主役になれる、家族のような関係——そのために今必要とされているのが、20代~40代のボランティアです。
食事づくりといっても調理師免許はいらず、宅配も自転車、自動車どちらも可能。だれでも関われるのが、ふきのとうのボランティアの魅力です。調理ボランティアを通して和食と日本語を覚えた外国の方、夕方の配食をする女子高生など、かかわる人の背景はさまざまです。現在最年少ボランティアの女子高生は、学校が終わった後の週1回、自転車で近所を回ります。
「ベテランボランティアの今後を考えると同時に、若い人のボランティアが増えてほしいと願っています。縦のつながりが難しくなった地域コミュティですが、ふきのとうに来れば、自分のお母さん、おばあちゃん世代の人とも自然に触れ合えます。私の上司も子育てをしながら、この仕事をしていました。私もこの仕事についてから、なにか困ったらボランティアのお母さんたちに相談したらいいんだって思えるんです」(佐野さん)
佐野さんは、先輩に料理を教わったり、休憩時間には悩みをいい合ったり。世代をこえた縦のつながりが自然とできるのを見てきました。そして、ボランティアの人たちにかかわり、この場所で生きていく安心感を得られているといいます。
地域をつなぐ、町をつくる。そのために、ふきのとうの活動も広がっていて、デイサービスセンター、高齢者住宅、コミュニティカフェをつくるまでになっています。これらの施設でもふきのとうのお弁当を食べることができます。
つくる人、食べる人、地域の人のいろんな想いがお弁当で交差します。食が取り持つ地域のつながりを30年間見つめてきた「ふきのとう」。ご近所付き合いが希薄になったといわれる今こそ、その意義は大きくなっています。
ボランティアに参加している人たちも、共同作業が楽しくて通ってきているのが印象的でした。支援する側とされる人たちが生き甲斐を感じて取り組んでいるからこそ、30年も活動が続いてきました。今、ボランティアに参加している人も、「いつか私もお弁当を届けてもらう側になるから」と笑顔でいえる持ちつ持たれつの輪がここにはあります。
自分が得意なことで関わるのが、自分も楽しいボランティアの秘訣のようです。まずは自分が好きなこと、挑戦してみたいことはなんだろうと振り返ってみることが大切かもしれません。自分の生き甲斐としてのボランティア、始めてみませんか?
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老人給食協力会ふきのとう
[住 所]世田谷区上用賀6-19-21
[ホームページ]http://fukinotoh.mow.jp/
住所: | 世田谷区上用賀6-19-21 |
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電話番号: | 03-3706-2545 |
この記事に関連するタグ:2014年2月の特集, ボランティア, 福祉
東京生まれ、宮城育ち。大学卒業後、(社)農山漁村文化協会へ入会。バイクで全国行脚をする営業生活を経て、編集局に配属になり、食について扱う雑誌編集に携わる。退会後、フリーランスの編集者となり、広く《食べごと》を豊かにしていくべく活動中。
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