
殺風景だった高架下に、明るく楽しい壁画が並ぶ
壁画プロジェクトのはじまり
小田急線世田谷代田駅近く、環状7号線の高架下を通る歩道は、かつてひどい落書きや不法投棄されたゴミ、放置自転車が目立ち、暗く荒れた印象が強い場所でした。この通路は、子どもたちの通学路にも近く、多くの保護者や地域住民らが、何とかしたいという思いを抱いていました。
こうした状況を受け、2004年に当時の代田小学校PTA、町会、商店街、地域の有志らが集まり“落書きを塗りつぶすだけではなく、明るく親しみのある絵を描いてみよう”というアイデアを掲げました。これが環七の壁画の第一歩であり、「世田谷代田を住みよく安心なまちにしよう!プロジェクト実行委員会」(以下、SAP)の原点となりました。当時から運営に携わる田代 朝子(たしろ ともこ)さんにお話を伺いました。

SAPの色々なプロジェクトに関わる田代さん

安心安全のために始まったプロジェクト
「落書きをただ消すのではなく、地域の人々が描く壁画にする事に決めたのは、この壁は地域みんなのもの、地域のみんなで守るもの。という意識を育てたかったからです。それは落書きやゴミ、不法投棄、自転車の放置などを抑止する自衛ともいえる狙いがありました。また「落書きは何か書いてある所にはしづらい」という意見も採用しました。」(田代さん)
みんなで作り上げる壁画の現在
環七の壁画は、高架下の歩道、南北の両壁150メートルずつ、あわせておよそ300メートルにわたる壁面をキャンバスにしたペンキ画です。最初の制作は2004年に行われました。

大人も子どもも修復作業
その後年月を経て劣化が進んだため、2017年からは全面塗り替えの「ミライ壁画プロジェクト」が始動。大部分のモチーフとして選ばれたのは、初回に引き継ぎアメリカの絵本作家 Ed Emberley(エド・エンバリー)さんのイラストです。エド・エンバリーさんのデザインは、〇や△や□の簡単な図形を組み合わせて描く事ができ、小さな子どもでも描く事ができるので、壁画修復に誰もが、より気軽に関わるきっかけにもなっています。

年齢問わず、作業は責任をもってやり遂げる
壁画は描いたら終わりではありません。現在も地域住民や子どもたちによって、定期的なメンテナンス活動と年に2回の塗り直しや修復が行われています。この壁画メンテナンスはプロジェクトが始まってかれこれ20年続いています。
取材に訪れた日も、たくさんの人が参加していました。薄くなった壁画にペンキを重ねたり、消えてしまった部分は下絵を見ながら描き直したり、子ども達も夢中で壁画を描いています。高い所は爪先立ったり、地面に近い所は膝を付いたりしながら、集中して筆を駆使し、丁寧にペンキで塗っていきます。汚れている所は雑巾で拭いてから塗ります。大人にも負けないくらい、あちらこちらで子ども達がメンテナンスに活躍している姿が印象的でした。

細かい部分まで集中して塗り重ねる

1つの絵に時間をかけて取り組んでもいる子もいます
環七壁画がつくる 安心と地域のつながり
みんなで描いた壁画は、ただの絵ではありません。多くの人が参加して、手や服をペンキで汚しながら、ひと筆ひと筆集中して時間を費やし、大切に描いた壁画です。その明るく楽しいデザイン画は、通りかかれば、ふと目が行きます。こうして通路の雰囲気が変わった事によって、以前のような落書き・ゴミ・放置自転車は驚くほど減り、通学路や生活圏としての安心感が取り戻されました。始まった頃に手伝っていた小学生は、お父さんお母さんになって、その子どもがまた壁画描きに参加しています。この壁画は、地域の人々が心を込めて築き上げた、街の共有財産です。

低い位置は膝をついて丁寧に描く

修繕だが、アート制作でもある
また、メンテナンスに参加した多くの人、運営スタッフ、そして通りがかりに足をとめ観賞する人と、世代も立場も違う人たちが「今回もよろしく!」「大きくなったね。次は高校生なの?」「いつもご苦労様です」などと顔を合わせ、話をすることで、地域のつながりも育まれています。
メンテナンス活動の参加者達にとって、日々の通勤や通学時に目にする壁は、単なる通り道ではなく、思い出深い、自慢の場所になります。

体勢がきつい階段上部の狭い部分も、丁寧に作業している様子

終了時、お疲れ様のジュースをもらい、達成感もひとしお
壁画メンテナンス参加募集

汚れたついでに服に模様を描いた子も
SAP では壁画のメンテナンスや更新作業の活動に参加してくれるボランティアを毎回募集しています。
次回のメンテナンス予定や参加方法については、公式サイトまたは Instagram などで随時案内されています。ダイナミックな壁画修復に携わってみたい方、地域の方たちと協力して町の事に関わってみたい方、ぜひ気軽に参加してみてください。いつもの町が違って見えるようになるかもしれません。

色とりどりのペンキで塗って、心も明るく
◇お問い合わせ先◇
◆世田谷代田SAP HP
https://setagayaartproject.wixsite.com/sap-site
◆世田谷代田ミライ壁画プロジェクト インスタグラム
https://www.instagram.com/setagayadaita_sap/?hl=ja