2021.09.09
下北沢 屋外のピアノコンサート、人の出会い・交流するシモキタまちピアノ
再開発でますます活気づき、新しい顔を見せる下北沢。その駅前近く、ビルのオープンスペースにある誰でも弾けるピアノは、行き交う人々に憩いのひとときを奏でてくれます。
世田谷区民に伝えたい「あたらしい動き」をくみん手帖編集部がご紹介。施設、イベント、取り組みなど遊びから暮らしに役立つものまで。
この夏、中学校跡地を活用した複合施設「HOME/WORK VILLAGE」(ホーム/ワークヴィレッジ)がオープンしたのをご存じですか? 区立池尻中学校があった場所で、「世田谷ものづくり学校(IID)」としてクリエーターや起業家を支援していた施設が、「暮らし(HOME)」と「仕事(WORK)」を見つめ直し、私たちの社会に残された「宿題(HOMEWORK)」を紐解いていく、というコンセプトのもと新たに複合施設として生まれ変わりました。人と人がつながり、「暮らし」と「働くこと」を充実させ、身近な課題に挑んでいきたいという思いでスタートした場所です。世田谷区民がどんな楽しみ方ができるのかを取材しました。

校庭跡地の気持ちよい空間がお出迎え

タイリッシュな入口の奥には昔ながらの校舎が残る
世田谷区内産業の活性化を目指す「旧池尻中学校跡地活用プロジェクト」より誕生した「HOME/WORK VILLAGE」。2025年7月にグランドオープンし、 方方社(本社 世田谷区)が運営しています。校舎や校庭の面影を残しながら、飲食店やショップ、オフィス、コワーキングスペースや習い事のレッスンや遊びなど、多種多様な事業が行われ、さらにけやきネットで区民が活用できる体育館をそなえた複合施設となっています。この新しい施設をどのように楽しめるか、世田谷区民の目線でお伝えします。

2階テラスから校庭跡の開放的な景色を楽しめる
世田谷公園にごく近い立地のHOME/WORK VILLAGEは、駐輪場も備わっているので、世田谷区民は自転車での来訪も便利です。一般の商業施設との違いは、なんといっても広々とした開放的な空間と、そこかしこに感じられる学校の面影です。実際に足を踏み入れてみると、学校であった名残を見つけてはどこかほっとし、自分の学校時代を思い出したり、池尻中学校の当時の学校生活を想像したり、ノスタルジックな気分になります。また、余白の感じられる空間は、いるだけで日常の喧騒から離れられますいろいろなお店をのぞきながら、自分だけのお気に入りの場所や過ごし方を見つけて楽しめそうです。

入り口には施設の総合受付、コーヒースタンドを兼ねたブックラウンジ。定期的にテーマを設けた新刊書が並ぶ。思わぬ本との出合いの機会に。

2階のテラスでは、飲み物を買ってのんびり過ごすのもおすすめ。

2階の書籍販売スペース。捨てられるはずだった本が販売されている。

広々空間で絵本も充実しているので、週末は親子連れにも人気。

オフィススペースにはスタイリッシュな廊下が続いている。

教室の姿がそのまま残っている場所はレンタルできる。
HOME/WORK VILLAGEは地域にとってどのような場所になっていくのか、広報担当の寒河江 麻恵(さがえ あさえ)さんに話を聞きました。
「施設のコンセプトは、暮らし(HOME)と仕事(WORK)をこの場所から見つめ直し、私たちに残された宿題(HOMEWORK)を 紐解いていくことです。“宿題”とは、地域の身近な課題から環境問題などの社会問題まで様々ありますが、人と人がつながってそれらの解決の糸口を見つけることに挑戦する場所でありたいと思っています」(寒河江さん)。
ちょっと難しそうに聞こえますが、入居している事業者やHOME/WORK VILLAGEに関わる人が、経済的な利益だけを追求するのでなく、人や地域とのつながりながら、それぞれの課題の解決へアクションを起こしていきます。その日常的な拠点となる施設を目指しているそうです。
入居している事業者が挑戦している課題も“環境”、“教育”、“障がい”など様々です。施設内をめぐるだけでも、それらの課題について触れる機会を持ち、視野が広がりそうです。また、HOME/WORK VILLAGE全体でも課題解決に向け動いており、今後は、プール跡で行っている太陽光発電を世田谷区民に優先的に販売したり、入居している事業者と協力し、施設内の生ごみをコンポストでたい肥に変え、施設で活用したりする計画も案として出ています。

レザークラフトショップ「UNROOF(アンルーフ)」では多様な背景を持つ職人が革製品を作っている。障がいの有無に関わらず自分らしく働けることを大切にしている

屋上には有料のコミュニティで野菜や花などが育てられ、養蜂も行われている。
施設内には、子どもを対象とした場所や事業もあります。屋内遊び場の「PLAY! SETAGAYA(プレイ!セタガヤ)」では、子どもの創造性を大切にしながら、のびのびと遊べる場所を提供しています。訪れたときは、トイレットペーペーで自由に遊ぶ「トイレットペーパーの巣」という人気企画が実施されていました。一人一つのトイレットペーパーを使って、体に巻いたり、投げたり、ちぎったり自由に遊べます。遊んだトイレットペーパーはそのまま、次の子どもたちの遊びにも使われていきます。思いっきり遊び、さらにその自分の遊んだ跡がほかの子どもの遊びにもつながっていくという、家庭ではできそうでできない遊びを楽しめます。


「トイレットペーパーの巣」は夏休みからの人気企画。
また、幼児〜小学生向けの探求的な学びの場を運営している「レンズ」では、区内の小学生が自由に過ごせる「こどもラウンジ」を提供しています(※)。静かに本を読んだり、ボードゲームで遊んだり、登録した子どもだけの空間で過ごすことができます。その間に、親もHOME/WORK VILLAGEで自分時間をひととき過ごすのもいいかもしれません。
(※)事前の登録が必要です。

区内在住・在学の小学生が利用できる「こどもラウンジ」※。室内に大人はいないが、「レンズ」のスタッフが隣室から見守っている。
親子で楽しめる飲食店も充実しています。広々とした店内でモーニング、ランチやスイーツといろいろ利用できる「Marked(マークト)池尻」や、昼は洋食、夜はイタリア料理やスペイン料理をベースにした料理を楽しめる「洋食api(アピ)」(店内スペースは限られているけれど、テラス席あり)など、お散歩がてら行ってごはんを楽しんでみてはいかがでしょうか。

「洋食api」のナポリタン。麵をはさめるロールパンは給食をヒントにしている。
入居している事業者も、HOME/WORK VILLAGEという場で、ここでしかできないことに挑戦したいと思っている方が多いようです。9月末にオープンしたてのビアバー&クラフトビール醸造所「AFTER SCHOOL BREWERY(アフタースクールブリュワリー)」とスポーツクラブを運営している「neighbors sports club(ネイバーズスポーツクラブ)」でそれぞれの思いを伺いました。

世田谷生まれ、世田谷育ちの菊池 文武(きくち ふみたけ)さん。2026年初には三宿の地で醸造されたビールが誕生する予定。
職員室だった場所にAFTER SCHOOL BREWERYをオープンしたのは、葉山で人気の醸造所を運営している菊地 文武さん。今度は生まれ育った世田谷で地元とつながりたいという思いで、“大人の放課後”をコンセプトしたビアバー&クラフトビール醸造所を作るという新たな挑戦をしています。
クラフトビールを通じて人と人がつながれると実感した葉山での経験を経て、AFTER SCHOOL BREWERYでは人と人の出会いの場になるだけでなく、ビールを片手に様々なコミュニティが生まれ、人々が新しい挑戦を生み出す場を作ろうとしています。特に意識しているのは、人生の大きな節目を迎える定年前後のミドルシニア世代。仕事中心の人生からの転換期を迎える方たちが、趣味や興味を通じて人々とつながり、互いに刺激を受け、また新たな行動へ移す場所となることを目指しているそうです。

ブラジリアン柔術のレッスンを受け持つneighbors sports club(ネイバーズスポーツクラブ)の西岡 仁(にしおか ひとし)さん。
音楽室だった場所でブラジリアン柔術や縄跳びのダブル のレッスンなどを企画するスポーツクラブを運営しているのはneighbors sports club。複合的に事業者が協力し運営しているHOME/WORK VILLAGEらしく、けやきネットで貸し出しをしている体育館の管理も務めています。neighbors sports clubが目指しているのは老若男女が楽しめる場所。ブラジル発祥の格闘技であるブラジリアン柔術のレッスンには、4歳から60歳までの幅広い年齢層が参加しているそう。
「ふらっと来て『ちょっとやってみようかな』と体験して始める方も多くいらっしゃいます。家から一歩出るきっかけとなり、日常が少しでも楽しくなる場所づくりを目指しています」(西岡さん)。
スポーツをした後に、AFTER SCHOOL BREWERYで一杯楽しめるイベントを企画したりと、施設内の事業者が横断的にHOME/WORK VILLAGEを楽しむきっかけを提供しています。
この夏スタートし、多方面に進化を続けるHOME/WORK VILLAGE。オフィスやコワーキングスペースもある「働く」場でもあり、飲食店や習い事、屋上庭園などの体験を「楽しむ」場でもあると同時に、人と人がつながり、地域や社会の課題解決に挑む場でもあります。たくさんの顔を持つため、過ごし方も訪れる人の数だけありそうです。週末を中心に様々なイベントも開催されているので、まずは、お散歩気分でふらりと立ち寄ってみませんか? 新しい人や価値観との出会いが待っているかもしれません。
(撮影/合同会社・壬生真理子)
住 所 世田谷区池尻2-4-5
営業時間 8:30~23:30 ※各店舗・施設による
定 休 日 各店舗・施設による
TEL 03-6450-8131 ※受付時間 11:00~19:00
URL https://homeworkvillage.com/
この記事に関連するタグ:HOME/WORK VILLAGE」, お役立ち, お買い物, まちづくり, ものづくり, アート, イベント, カフェ, スポーツクラブ, パン, ビアバー&クラフトビール醸造所, ワークショップ, 三宿, 三軒茶屋駅, 世田谷エリア, 世田谷公園, 子どもの創造性を大切に遊べる場所, 幼児〜小学生向けの探求的な学びの場, 挑戦している課題 は“環境” “教育” “障がい”, 旧池尻中学校跡地活用プロジェクト, 池尻, 池尻駅, 親子で楽しめる飲食店
合同会社まちとこ
「まちとこ」は様々な得意分野を持ったプロフェッショナルな女性6人の編集・デザインチームです。「楽しい」「心に届く」を大切に、デザイン、編集、撮影を請負い、自ら商品制作、情報発信しています。
文字サイズ