みんなの世田谷レポート

世田谷で行われたイベントやワークショップなどの体験レポート。くみん手帖編集部およびくみんライターが参加した感想や、当日聞いたお話、エピソードなどをご紹介。

2013.12.01

尾山台まちゼミで、老舗魚屋さん直伝の魚のさばき方をマスター!

刺身って自分でつくれる?魚って自分でさばける?という問いに、首を横に振るしかない私。お魚屋さんが「すてきなおさしみのもりつけ」という講座を開くと聞いて、やってきたのは尾山台の商店街です。魚屋さんの博識と技術に惚れ惚れしつつ、商店街の魅力はコミュニケーションだと再確認させられました。(くみん手帖ライター/小野民)
[12月の特集] 人情も新しさも!商店街で元気になる買い物を

尾山台まちゼミ、刺身の盛りつけ講座

尾山台まちゼミ、刺身の盛りつけ講座

世田谷初、尾山台まちゼミ

駅前に連なる尾山台の商店街。人通りも多く、バラエティに富んだお店で活気づいています。しかし、全国の商店街を見渡せば“シャッター街”と呼ばれるような通りがどんどん増えているのが現実です。

尾山台の商店街は、さらなる活性化のためにさまざまな取組みを始めています。そのひとつが、去る11月に初めて開催した「まちなかゼミナール」、通称まちゼミなるもの。商店街のお店の人が専門店ならではの専門知識や情報、コツを無料で教えてくれるのが特徴です。

11月の1ヶ月の間に、約30店がそれぞれ1回〜数回の講座を開きました。ラインナップを見ると、畳屋さんの減農薬ミニ畳づくり、化粧品店のヘッドマッサージ、餃子屋さんの包み方と焼き方、不動産や保険の無料相談などなど、幅広いバリエーションのようです。

尾山台駅前ビルにある魚辰に集合

尾山台駅前ビルにある魚辰に集合

まちゼミで、刺身盛りつけに挑戦!

今回私が選んだのは、魚屋魚辰の店主、大武浩さんが教える、刺身盛りつけ講座です。この講座も他の講座と同じく、参加費は一切なし。材料費として500円だけ支払います。後で分かることですが、これはかなりの大盤振る舞い。立派なお土産を入れての値段だったのには驚きました。

魚辰の場合は1日2回の講座で、前半後半それぞれ定員の3名が参加。前半の講座の様子を拝見させてもらいました。参加者の3人はそれぞれ折り込み広告を見て参加されたそう。「魚がおろせれば、料理のレパートリーが広がりそうだから」「家では全然やらないから教わろうと思って」と、皆さん普段から家で使っている包丁片手に、大武さんのお話をじっと聞き、技を見、実践していきます。大武さんがさばくといとも簡単に見えるのですが、実際にやってみると…しかし、つまずく度に適切な指示があるので、案外スムーズに進んでいきます。

スルメイカの解体、アジの三枚下ろし、最後はまぐろのさくもお刺身用に切り、おいしそうに見える盛りつけのコツを教えてもらって、1時間。ぎゅっと内容の濃い、これから家でずっと役立てる技術を伝授してもらいました。

魚をおろす技術もさることながら、大武さんが間に挟む魚の話がおもしろいのです。
「この時期のスルメイカは、わたも多くて一番おいしい。塩辛を作るなら今だね。青森で獲れるんだけど、このイカがおいしいからマグロがやってきて、有名な大間のマグロが獲れるんだ。スルメイカはヤリイカなんかと違って3枚皮があるからおろすのも大変だけれど、安いし漁獲量も多いし、なりよりおいしい」「アジは3枚に下ろしたら骨の部分は、一夜干しにするといいよ」「イカもアジも刺身にするときに細く切れ目を入れておくと醬油がなじみやすい」などなど、次々に挙がる質問に答えながら、魚についての知識を伝えてくれます。

最後にアンケートを記入し、自分で盛りつけた刺身を持って帰る参加者の方々はみんな満足そうでした。みなさん、食卓に魚が上がる回数が増えそうな気がします。

尾山台まちゼミ共通の、開講あいさつをする大武さん

尾山台まちゼミ共通の、開講あいさつをする大武さん

それぞれの受講者に魚の扱い方のポイントを伝授

それぞれの受講者に魚の扱い方のポイントを伝授

先生のデモンストレーション後、3枚おろしにもチャレンジ

先生のデモンストレーション後、3枚おろしにもチャレンジ

魚の盛りつけ、完成!

魚の盛りつけ、完成!

まちゼミが、商店街に新しい風を吹き込む

「今日参加したお客さんは、魚辰さんでお魚買うようになるんじゃないかな。直にやりとりして、“魚屋さん”の良さを実感したと思うんです。他の店についても同じで、まちゼミを通してしたいことは、お店と商店街のファンづくり。小売店は敷居が高い、入りづらいというイメージを払拭して、まずは来てみてよと誘うのが目的なんです」と話すのは、商店街でまちゼミを担当している高野さん。もちろんご自身も商店街の洋品店を家族で営んでいます。

タカノ洋品店での高野さん

タカノ用洋店での高野さん

まちゼミの発端をうかがってみると、始まりは大型スーパーが出店した時期に、尾山台駅周辺の4商店街が一緒になにかをやろうという機運が高まったことだそう。すでに愛知県岡崎市、長野県松本市など全国の商店街で実践されつつあるまちゼミをやってみようということになり、高野さんもさまざまなお店に協力を願い出たといいます。

「個別にゼミを開いている店はあっても、ある一定の時期に複数のお店が同時にゼミを開くということは今までなかったんです。なので、こういうことをやりたかったんだよと張り切ってくださる店も結構ありました。こちらから特に口を出さなくても、皆さん独自の講座を考えてくださいます。普段からのお得意さんはもちろん、まちゼミをきっかけに新しいコミュニケーションがそこここで生まれていますよ」(高野さん)

まちゼミをきっかけに、ここ数年で商店街に加入した店が“商店街の環”に加わったことも、功績だと高野さんはいいます。お客さんを呼び込むだけでなく、商店街のメンバーに新しい風を吹き込むことにもなったまちゼミ。大盛況のうちに初回を終え、すでに次回開催が待ち望まれています。

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施設概要

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紹介者プロフィール

小野 民(おの・たみ)

東京生まれ、宮城育ち。大学卒業後、(社)農山漁村文化協会へ入会。バイクで全国行脚をする営業生活を経て、編集局に配属になり、食について扱う雑誌編集に携わる。退会後、フリーランスの編集者となり、広く《食べごと》を豊かにしていくべく活動中。

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