2023.12.08
上用賀 待望の再開! 生まれ変わった馬事公苑を紹介します
2017年から7年にわたって休苑し、改装工事を行っていた馬事公苑がついに再開しました。2023年 11 月3〜5日に行われたリニューアル記念イベント期間の来場人数は、なんと合計6万5,000人。この日を待ち望んでいた区民の方も、多いのではないでしょうか。そこで早速、新生・馬事公苑をぐるりと一周。その魅力や、おすすめの穴場スポットをお伝えします。
世田谷での暮らしを、よりよいものにするための情報。区民の衣食住に関わる取り組みやサービス、町の景観、子育て、町づくり、多世代交流の話など。
「家のドアが壊れたので直したい」「庭の草むしりを手伝ってもらえないか」「店の壁紙剥ぐ作業をお願いしたい」…などなど、用賀商店街の事務所にはさまざまな相談の電話がかかってきます。まるで、便利屋さん。そう、用賀商店街では、街にある専門店の知識や学生の若い力を活用した「ようが便利堂」というサービスを行っているのです。商店街で街の困りごとを解決しようという試み。いったいどんなサービスなのでしょう?
[12月の特集] 人情も新しさも!商店街で元気になる買い物を
用賀商店街には数多くのお店があり、組合への加盟数は280にものぼります。八百屋、金物屋、クリーニング屋、リフォーム店と、どれも暮らしに関わる専門店。商店街は、大型スーパーやデパートに負けない、専門家の集まりでもあるのです。
こうした商店街の知識や技術と、近隣の大学生の若い力を借りて、街の人の役に立つサービスをしようと始まったのが、用賀商店街組合の「ようが便利堂」。商店街をもっと活用してほしいという思いはもちろんのこと、街の困り事を街の中で解決できないかという、実験的な試みです。
具体的なサービスは、大きく分けると「お手伝い」と「御用聞き」の2つ。「お手伝い」は、庭の草むしりや簡単な力仕事を行うこと、「御用聞き」では、商店街のお店で解決できることを案内したり、代わりに問い合わせをしたりします。
立ち上げ時から学生を巻き込んで始まったこの取り組みは、ボランティアではなく、あくまで小さな事業です。料金は目安で1時間2,100円(税込・材料費等は別途請求)ほどかかりますが、
これは、一般的な便利屋さんのおよそ3分の1ほどの価格。商店街のまちのステーション「ハロー*ようが」を事務所とし、用賀エリアのみを対象としています。近所の若い人に手伝ってもらう感覚で、気軽にお願いできるのがポイントです。
5年前から用賀商店街振興組合の仕事に携わる杉本浩一さんは、このサービスに商店街の可能性を感じています。
「ようが便利堂は、まちの便利屋さんです。困ったことがあった時に、知らない人に仕事を頼むのは不安だけれど、商店街に相談すると解決してくれる、と思ってもらえたらよいなと。昔は人情で成り立っていた助け合いを、お金を介在させた新しい仕組みで解決できないかという、試みだと思っています」(杉本さん)
今多いのが、ひとり暮らしの高齢者からの庭仕事などの依頼だそうです。
庭仕事で訪れたついでに、「エアコンが壊れたんだけど見てもらえないか」と相談を受け、街の電気屋さんを紹介して電気屋さんが訪れたら「今度はBSが映らない…」と連鎖的に商店街と地域住人の関係を深めることに。また、「耐震補強をしたい」との問い合わせには商店街の材木店や金物屋を紹介したそうです。
便利堂の機能のひとつ「お手伝い」には、駒沢大学経済学科松本ゼミの学生たち11人が協力しています。女性3名、男性8名の学生が、ローテーションで毎週月曜と土曜の午後事務所を訪れ、商店街の一員として街の人々から持ち込まれる依頼に応えます。
参加して2年目になる3年生の永井貴大さん、田中響さん、今年から参加の2年生の春木将志さんがお話を聞かせてくれました。
「ゼミのなかでもこの活動に関心のあるメンバーでやっています。お金を稼ぐだけなら、他のバイトの方が効率がよいのですが、この仕事でしか経験できないことがあります」(春木さん)
便利堂に寄せられる困りごとはさまざまで、パソコンの操作を教えることや、目の見えない方の付き添いをするようなお仕事も。
「やるんだったらしっかり関わって、商店街の人たちに可愛がってもらえるようになりなさいと言われて、便利堂の仕事以外にも、街のお祭りに参加したりしています」(永井さん)
「庭の仕事などの依頼主は、年配の方が多いです。子どもが居ても遠くに住んでいたり、男手がない家に必要とされていることがわかりました。商店街がそんな地域のつながりを保つことは、とても大事なことだと思います」(田中さん)
「このままだと、近い将来、商店街はいらなくなってしまう」
商店街理事長の強い危機感から、用賀商店街ではこの5年間で様々な試みをしてきました。地方物産ショップ、街のキャラクター「よっきー」、フリーペーパー『YOGAS』を軌道にのせ、 昨年からこの「ようが便利堂」を始めました。
杉本さんは商店街にはよい時も悪い時もひとつの土地で長くやっていく知恵があり、若い人が生きて行く場としても可能性があると感じています。
「ここを手伝ってくれている学生さんも、就職の時期になると100社近くも企業を受けて、すごくいい子でも1社しか受からないという世界に入っていきます。社会経験は必要だし、それはそれでよいことだけれど、商店街のような居場所があることも知ってほしい。生き馬の目を抜く“勝ち”を目指す世界がある一方で、何十年もひとつの場所で長くやっていくために、周囲を大切にしながら助け合う“負けない”やり方もある。僕自身、街のおじさんやおばさんたちに人との付き合い方を
教えてもらったと思っています。これからは、その恩返しをしたい」
一日二日では築くことのできない信頼関係。その上に成り立つ、単なる売買ではない“モノを買う”という行為は、これからの時代、何より大切なコミュニケーションのひとつになるのかもしれません。
(撮影:渡邉和宏)
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ようが便利堂
[電 話]TEL:070-5580-6825(専用携帯電話)または 03-3700-6659(用賀商店街事務所)
担当:杉本
[ホームページ]http://yogabenrido.jimdo.com/
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長崎県生まれ、東京在住。編集・企画・執筆。 地域コミュニティ、まちづくり、モノづくりをテーマに執筆。各地の地域活動、地産品の取材を重ねる。『世田谷くみん手帖』編集部員。ここでは「地方と都心をつなぐこと」「世田谷の人と人、人とお店のつながり」づくりをテーマに書いていきます。ガイドブックに載っていない場所を歩く地味旅が好き。目下、世田谷の街を歩き周って面白いものを探しています。
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