スフィーダはイタリア語で「挑戦」の意味。スフィーダ(挑戦)を通じて、世田谷を楽しくすることを、使命として掲げている(写真提供:スフィーダ世田谷)
強いだけではダメ、区民に愛されるクラブへ
スフィーダ世田谷FCが誕生したのは2001年。“中学生になってもサッカーを続けたい”というサッカー女子たちの願いを叶えるために生まれたチームです。結成10年後の2011年にチャレンジリーグEASTへの昇格を果たすと、2020シーズンにはなでしこ2部リーグで優勝し、なでしこ1部リーグに昇格。チームは順調に強くなっていきましたが、広報を担当している川嶋さんを含めたクラブスタッフの全員が違和感を抱いていたと言います。
「2部リーグで優勝して昇格を決めたとき、街がすごく盛り上がると思っていたんです。でも実際は優勝したということがあまり知られていなくて反応が薄く、“あれ?そんなに盛り上がってない?”と戸惑いました。強くなればみなさんに知ってもらえると思い込んでいたんですが、そうではなかった。応援してもらうためには、地域に必要とされる存在にならなければならない。そう考えて、クラブとして大きく舵を切ったんです」(川嶋さん)
川嶋さんは、スフィーダ世田谷FCに中1で入団した1期生。現在はコーチ兼広報を務めている
スフィーダ世田谷FCが掲げたビジョンは、“スフィーダ(挑戦)を通じて、世田谷をもっと楽しくする”。選手たちが区内の小学校をまわってサッカーを教えたり、区内の体育館でウォーキングサッカー体験会を開いたりと、地道な活動で徐々に認知度を高めてきました。2023年夏には世田谷区立大蔵総合運動場陸上競技場でスフィーダ「大蔵まつり」を開催。サッカーと夏祭りの融合をテーマにした新しい地域のお祭りとなるイベントは延べ2,000人集める成功を収め、2024年8月25日には第2回が開催される予定です。
ウォーキング・フットボール体験会は、毎月2回開催。“走ることは禁止”など独自のルールがあり、子どもとシニアが一緒にプレーを楽しめる(写真提供:スフィーダ世田谷)
昨年のスフィーダ「大蔵まつり」。かき氷やフランクフルトなどの屋台が並び、選手も一緒に盛り上げた(写真提供:スフィーダ世田谷)
一方で、小学生対象のスクールから中学生のジュニアユース、高校生のユース、チップチーム、ママさんチームまで、女性が一生涯にわたってサッカーを楽しめる環境を整備。2021年には、視覚障害者と晴眼者がともにプレーするブラインド・フットボールチームを結成するなど、未来を見据えた取り組みも進めています。
ブラインド・フットボールチームは24名が所属。現在は男女混合だが、将来的には女子チームの結成をめざしている(写真提供:スフィーダ世田谷)
「私たちの願いは、世田谷区で女性が活躍できる社会、そして皆が混じり合う多様性社会を作ること。スポンサー企業の協力もあり、スフィーダ世田谷FCの選手たちは日中仕事をして社会人としてのスキルも身に付けながら、サッカーに取り組むことができています。また、ブラインド・フットボールの選手たちが幼稚園・保育園を訪れる、絵本の読み聞かせとブラインドサッカー体験会も定期的に開催しています。子どもたちが見えない、聴こえない、動けない世界を知る機会として大変好評です」(稲田さん)
代表の稲田さんは、チームの立ち上げから25年にわたって、チームを引っ張り続けている
世田谷区民と一緒に「困り事」を解決
ここ数年の課題は、スフィーダ世田谷FCが開催するホームゲームにおいて世田谷区内での地元開催が難しく、調布市や北区など遠方で開催せざるを得ないこと。1試合でも多く世田谷区内で開催するために尽力していますが、その一方で他の市町村区で開催される試合でも“世田谷のチームならでは”のイベントを企画・開催しています。
「いつもお世話になっている世田谷区民の方にお返しをしたいと思い、過去のシーズンは困り事を解決するイベントを開催しました。世田谷区で動物保護をされている団体さんと保護犬の譲渡会を開いたり、来場者の方に家庭で不要になった食品・日用品を持ち寄っていただき、支援が必要な方にお渡しするフードドライブを開催したり。区内にある昭和女子大学の学生さんたちによる野菜の販売も、好評です」(川嶋さん)
試合会場の外では、子どもを対象にしたイベントも実施。選手とスタッフがアイデアを出し合い、家族で楽しめる雰囲気を作り出している(写真提供:スフィーダ世田谷)
6月8日、6月22日に駒沢でホームゲームを開催
2022シーズンには、なでしこリーグ1部で初優勝を果たしたスフィーダFC。2024シーズンももちろん優勝を目指していますが、もうひとつ大きな目標があります。それは、6月に2日間開催される駒沢でのホームゲームで、入場者数5,000人を達成すること。プロリーグのWEリーグでも2022~2023シーズンの平均入場者数は1,401人という現状では、かなりハードルが高く感じられます。
「世田谷区で活動していて感じるのは、この地域が持つパワーの強さです。地元の商店街も企業の方も、みなさん感度が高くて新しいアクションに協力してくれる。だから、5,000人という数字も夢ではないと思っています。“世田谷区にあるチームだから観に行きたい、応援したい”と思っていただけるよう、これからも活動を続けて、その熱を女子サッカー界全体に還元したいと思っています」(川嶋さん)
「2023シーズンの最高入場者数は3,239人でしたが、いわゆる街クラブでこれだけ多くのお客さんに来ていただいているのは凄いことだと自負しています。中学生・高校宇生とトップチームに加え、小学生対象のスクールとママさんチーム、ブラインド・フットボールチームを合わせると、合計200人以上が所属していて、規模の大きさも国内有数です。これからも女子サッカー全体の認知度を上げ、引っ張っていく立場を自覚して、頑張っていきたいと思います」(稲田さん)
6月8日、6月22日に開催されるホームゲームは「世田谷区民デー」。なんと区民は入場無料です。「注目してもらいたいのはスフィーダ世田谷FCが表現するフットボールです。超攻撃的サッカーで相手を圧倒する選手達の姿に、ぜひ期待してください!」(川嶋さん)
週末の午後、女子サッカーの観戦に出掛けてみませんか?
2022シーズンには、なでしこリーグ1部で念願の初優勝を果たした。2024シーズンの目標は、優勝と観客5,000人(写真提供:スフィーダ世田谷)
2024シーズン、6月以降開催のホームゲーム
・ 6/8 (土)13:00 vs バニーズ(駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場)
・ 6/22(土)13:00 vs 伊賀FC(駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場)
・ 9/8 (日)16:00 vs ニッパツ(味の素フィールド西が丘)
・10/6 (日)14:00 vs 静岡(AGFフィールド)
・10/20(日)13:00 vs ヴィアマ(味の素フィールド西が丘)
◎世田谷区民デー 6/8、6/22
世田谷区民は無料招待します。→ 詳細はこちら
チーム公式HP
http://www.sfida.or.jp
文
渡辺裕希子(合同会社まちとこ)
撮影
壬生真理子 (川嶋さん、稲田さん)