2013.07.20
世田谷の夏夜を彩る「たまがわ花火大会」の舞台裏
毎年35万人以上の人が集まるたまがわ花火大会が、35年もの歴史を重ね、今年も8月17日(土)に開催されます。花火大会のはじまりから現在の取組みなど、「世田谷ならでは」の花火大会ができるまでを、実行委員会事務局の浅利修司さん(世田谷区砧総合支所 地域振興課 地域振興・防災担当係長)に伺いました。[ 7月の特集 世田谷の夏のお祭り ]
世田谷にはたくさんの「訪れたい場所」がある。古くから愛されてきたお店や、知る人ぞ知る穴場など、地元の情報をご紹介。思い出に残る昔の世田谷から今の世田谷まで。
岡本静嘉堂緑地に囲まれて建つ「静嘉堂文庫美術館」。国宝を含む古美術品を所蔵する美術館と、異国情緒あふれる洋館の文庫が並んでいます。周辺の緑地を歩いていくと、大都会の住宅地であることを忘れてしまうほどの自然に出会えます。葉が色づき始める中、豊かな自然と古き文化に触れることができる散策スポットです。
二子玉川駅から閑静な住宅地を抜けると、ふと小さな門に出くわします。門から中を覗くと、小道が緩やかな坂に沿って上へと続いている様子。川を流れる水の音色をBGMに進んでいくと、都会とは思えないほど木々が生い茂る景色が広がります。ここは、「岡本静嘉堂緑地」。由緒ある地として、雄々しい自然が息づいています。
坂を登っていくと現れる、二つの建物。比較的新しい建物が「静嘉堂文庫美術館」、そして右手に隣接する洋館が「静嘉堂文庫」です。「静嘉堂」は、三菱二代目社長・岩崎彌之助(1851〜1908)と四代目社長・小彌太(1879〜1945)の父子二代によって設立されました。二人の愛したコレクションの数々が、ここに収蔵されています。
美術館の左方向には、樹木に見守られるようにして瀟洒(しょうしゃ)な霊廟が建っています。小彌太が父の三回忌に合わせて建設した霊廟で、日本の西洋建築の祖といわれるジョサイア・コンドルが設計しました。澄んだ空気の中、心静かになれる場所です。
「静嘉堂」には、国宝7点、重要文化財83点を含む、およそ20万冊の古典籍(漢籍12万冊・和書8万冊)と6500点の東洋古美術品が収蔵されています。さすが、三菱を世界的な企業へと導いた岩崎家、コレクションの規模が壮大です。貴重な文化財が存在する場所にふさわしく、周囲には高潔な空気が流れています。
父の彌之助は、絵画・彫刻・書跡・茶道具など幅広い分野を収集していたのに対し、子の小彌太は中国陶磁を系統的に集めていました。
彌之助のコレクションの目的には、明治維新後の急速な西洋化などにより軽視されてしまった、東洋固有の文化財を守りたいという強い使命感があったといわれています。その父の想いを小彌太が引き継ぎ、図書や美術品の永存のため、大正13年(1924)に文庫用の洋館を建設し、さらに昭和5年(1930)には美術庫と鑑賞室を構築しました。現代の私たちが百年以上も昔の美しい美術品や貴重な書物に出会えるのは、東洋の至宝を守ろうとした二人の強い想いがあったおかげなのです。
この日、美術館では「幕末の北方探検家 松浦武四郎」展が開催されていました。松浦武四郎(1818〜1888)は、日本全国を旅し、多くの著書を刊行した“旅の巨人”。16歳から一人で日本全国を旅して回ったという、根っからの旅人です。
そんな武四郎は、特に北方の地に大きな関心を寄せ、6回も蝦夷地(現・北海道)を探査しました。アイヌの人々との親交がうかがえる著書も、当展で公開されています。また、武四郎は考古遺物の大コレクターでもありました。古墳時代の美しい翡翠(ひすい)の勾玉や、古代ローマの青銅製鏡など、歴史の深みを感じられる考古遺物が並んでいます。
今回の展示物は、静嘉堂が所蔵する武四郎旧蔵コレクションの中から主要なものが選ばれていますが、なんと初公開とのこと。スポットライトを浴びる日を待ちわびていた考古遺物の数々。まさに、幻のコレクションと呼ぶにふさわしい企画展です。
「静嘉堂文庫美術館」を後にして、再び緑生い茂る自然の中を歩きます。この日は前日が雨だったためか、葉が瑞々しく香っている様子。自然と、深い呼吸になっている自分に気がつきます。こんなにも木々や草が生き生きと生存している場所があるなんて。都会にいることをすっかり忘れてしまいます。
静嘉堂文庫美術館を訪れたなら、足をのばして立ち寄りたい散策スポットがあります。静嘉堂のある丘を降りたところにある、江戸時代後期の住宅を遺した茅葺き屋根の「旧長崎家住宅主屋(岡本公園民家園)」、また「瀬田四丁目広場」内の、昭和12年に建てられた「旧小坂家住宅」。竹の庭園に癒されながら、太陽の日を浴びてひと休み……。なんとも至福のひとときです。
自然と古き文化が融合する、落ち着いた雰囲気の散策ルート。殺伐とした都会に疲れたとき、雑念を忘れたいとき、休日に散策してみてはいかがでしょう。訪れる際は、世田谷とはいえ、ヒールではなく動きやすい靴で行かれることをオススメいたします。
(撮影:小林友美)
※「幕末の北方探検家 松浦武四郎」展は12月8日(日)まで。
●文庫での閲覧をご希望の場合は事前予約が必要となります。予約方法は、HPでご確認ください。
住所: | 世田谷区岡本2-23-1 |
---|---|
電話番号: | 03-3700-0007 |
営業時間: | 10:00〜16:30(入場は16:00まで) |
定休日: | 毎週月曜日(祝日の場合は開館し翌火曜日休館) |
URL: | http://www.seikado.or.jp/ |
その他: | [入館料]一般800円、大高生500円、中学生以下無料 |
この記事に関連するタグ:二子玉川駅, 文化・歴史・芸術, 砧エリア, 美術館
編集・ライター(ASOBOT inc.)
高校卒業後、上京。デザイン系専門学校インテリア・雑貨スタイリスト科卒。その後、カルチャー誌の編集、音楽会社映像部門勤務を経て、ASOBOTへ入社。『metropolitana』『Starbucks Press』『Dean&Deluca』『Grass Roots』をはじめとするメディアを通して、ライススタイルや旅、カルチャーなどに関するコラムやフィクションを執筆。
2013.07.20
世田谷の夏夜を彩る「たまがわ花火大会」の舞台裏
毎年35万人以上の人が集まるたまがわ花火大会が、35年もの歴史を重ね、今年も8月17日(土)に開催されます。花火大会のはじまりから現在の取組みなど、「世田谷ならでは」の花火大会ができるまでを、実行委員会事務局の浅利修司さん(世田谷区砧総合支所 地域振興課 地域振興・防災担当係長)に伺いました。[ 7月の特集 世田谷の夏のお祭り ]
文字サイズ