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くらしの世田谷

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2014.01.15

ボロ市にも出店!世田谷に残る名工、日本刀鍔(つば)の「隆剣」

三宿の住宅街のなか、黒板張りの和風味たっぷりの階段を上がった一室に、「鍔(つば)工房 隆剣(りゅうけん)」があります。ここは、隆剣の工房兼ショールーム。鍔とは、お馴染みの時代劇のチャンバラシーンで相手の刃を受ける、日本刀の刃と握り間に付ける丸い形をしたパーツのことです。日本刀、鍔工歴50年の山崎隆剣さんを訪ねました。
[1月の特集]暮らしをもっと素敵に!世田谷のものづくり

薙刀の説明をする隆剣さん

薙刀の説明をする隆剣さん

動植物や鳥などの図柄で、外国人にも人気

隆剣さんの造る鍔(つば)は、直径8cmほどの「透鍔(すかしつば)」と呼ばれるもので、動植物や鳥、風景、文字などの図柄をくり抜いて造ります。工房に入ると、さまざまな図柄や大きさ、厚さの鍔が、床から天井まで隙間無く綺麗に飾られていて、思わず声を上げるほど!圧巻です。工房全体は、親しみやすい和風のインテリア。刀という響きから連想する冷ややかさが微塵もなく、むしろ温かさを感じるのは、笑顔で出迎えて下さる隆剣さんのお人柄もあるのでしょう。

日本刀の愛好家は、眺めて楽しむ人、居合いや抜刀で楽しむ人、骨董品として楽しむ人などさまざまです。共通しているのは刀の持つ美しさと精神性に魅了されていること。
世田谷には『世田谷刀剣会』という50年も続く名刀を楽しむ会があり、毎月第3日曜日13時~16時に上町天祖神社(世田谷1-23-5)で鑑賞会を開催しているとのこと。ご興味のある方はどうぞお出で下さい、と隆剣さん。とは言っても日本刀を愛好するのはなかなか大変そうです。

「隆剣」の和風の工房兼ショールーム

「隆剣」の和風の工房兼ショールーム

日本刀と鍔の説明をする隆剣さん

日本刀と鍔の説明をする隆剣さん

そんな中で、鍔は図柄で眼を楽しませてくれ、鉄の重厚な味わいによって刀の魅力にも気付かせてくれる鑑賞用美術品として、多くの方々に愛されています。隆剣さんの工房にも、外国から通訳を従えてお客さんがみえるそうです。

江戸時代のお洒落

透彫りの鍔

透彫りの鍔

刀の愛好家は、日本では居合道の方に、外国人は侍や武士道に魅力を感じる方に多いそう

刀の愛好家は、日本では居合道の方に、外国人は侍や武士道に魅力を感じる方に多いそう

鍔造りの工程見本

鍔造りの工程見本

本来は戦の武器だった刀ですが、江戸時代に入って平安の世を迎えると、刀はもっぱら装飾具として楽しまれるようになりました。
刀は多くの部品から構成されていて、実は簡単に分解できます。鍔も、そんな取り換えの利く部品の一部です。一振りの刀に、10枚、20枚という鍔を用意し、用途に合わせて取り替えて楽しむ、おしゃれの道具でもありました。

花町に遊びに行く時は派手なもの、お通夜や法事には地味なもの、また季節に合わせて風情を楽しんだり、若い時は大きくて厚いもの、歳を重ねたら小さくて薄いものという風に。ちょうど現代の私たちが、携帯やスマホのカバーを取り替えて楽しむのと似た感覚だったのかもしれません。

こちらの透彫りの鍔は、江戸時代に赤坂で作られていたので「赤坂鍔」とも言われています。庶民的な鍔で、一般の武士が使用したもの。
材料にする鍛えた鉄は新潟県三条より入手した、江戸時代と同じ組成を持つ地鉄です。図柄は江戸時代から伝わっているものを現代透彫りとしてよみがえらせ、「時代漬け」と称する独特の錆付けを施して、風格を出しています。この時代漬けは隆剣さんの師匠が考案したもので、うなぎ屋のタレと同様に秘伝だそうです。

隆剣さんのこだわりは、古来より伝わる材料・製法を忠実に再現している点にあります。多彩な図柄は、隆剣のホームページにも掲載されています。鍔の価格は1万2千円~3万5千円位、特別注文の場合は5万円程です。

師匠は黒沢映画『7人の侍』の鍔を造った方

隆剣さんは今の港区芝で生まれ、昭和20年、7歳の時に世田谷区若林に越してきました。父は大工で、この父親から物造りの楽しさを教えられ、自身も中学卒業と同時に大工の修行に入りました。当時の楽しみは、休日に三軒茶屋でチャンバラ映画を観ること。侍や刀に魅力を感じて、映画を観た後は古道具屋をまわっていたのだそうです。でも、刀は高価でそうそうは買い集められないため、鍔を集めるようになりました。
ちょうどこの頃、近所の鍔の収集家から鍔工を紹介され、もとより物作りが好きな隆剣さんは、夜に通って鍔造りを習い始めます。それから30年近くは、大工を続けつつ腕を磨いてきました。

なんと隆剣さんの師匠は、黒澤明監督から依頼をうけて映画『7人の侍』の鍔を造った方なのだとか。隆剣さんの工房では、映画で使われた同じデザインの鍔も作っています。昨年、俳優の加山雄三さんがあるテレビ番組で工房を訪れました。同監督の「椿三十郎」に出演したこともある加山さんは、主演の三船敏郎さんの役どころ、椿三十郎が使った鍔のレプリカに大変感激されて大いに盛り上がったそうです。

隆剣さんの鍔製品を、気楽に鑑賞してみたい方は、「世田谷ボロ市」を訪れるとよいでしょう。隆剣さんは毎年2回、12月15・16日、1月15・16日に開催される「世田谷ボロ市」に出店しています。「オリジン弁当」前に出店します。

上に飾ってあるのは弓、薙刀、槍

上に飾ってあるのは弓、薙刀、槍

鍔造りの作業中

鍔造りの作業中

家紋の透かし彫り

家紋の透かし彫り

※工房見学は、前日までにお電話をください。
世田谷刀剣会
上町天祖神社(世田谷1-23-5) 毎月第3日曜日13時~16時

施設概要

  • 世田谷区三宿2-23-1
    住所: 世田谷区三宿2-23-1
    電話番号: 03-5712-7331

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紹介者プロフィール

シニア倶楽部 田島秀子

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