2022.07.25
本の新しい楽しみ方、世田谷区電子書籍サービス
世田谷区立図書館の電子書籍サービスをご紹介します。
世田谷での暮らしを、よりよいものにするための情報。区民の衣食住に関わる取り組みやサービス、町の景観、子育て、町づくり、多世代交流の話など。
世田谷二丁目あたりを中心とした上町エリアで、ゴミ拾い活動をしている方たちがいます。ご近所の有志で集まった桜木清掃部が週に一回、水曜日の朝、桜木トンネルやその都道、ふれあい公園、オオゼキ前の通りあたりを小一時間ほどゴミ拾いしています。活動をしていると、「ゴミから地域の方々の様子が見えたり、地域が抱える問題をちょっとずつ感じることがある」とのこと。筆者も一緒にゴミ拾いに参加しながらお話を伺いました。
朝、待ち合わせの上町児童館前で待っていると、ゴミ袋とトングを持った方たちがちらほらと集まってきました。
「SNSグループに『今週はここのゴミ拾いをしましょ〜!』という感じで声かけて、その時参加できる人が参加しています。雨がふったらお休み、そんなゆるい活動です」と言うのは、この活動の発起人の八木橋さん。活動をはじめたきっかけは何だったのでしょうか?
「普段街を歩いていてゴミがあると気づいても、ゴミを入れる袋がなかったり、どこかへ出かける前だったりすると、なかなか拾えませんよね?ですからゴミを拾うという時間を作ることにしたんです。あと、地域のことをもっと知りたいという気持ちがあったのも理由のひとつです」(八木橋さん)
「桜木通りは道が交差していて、結構危ないところがあるんですよ。子どもの通学路にもなっているので、子どもたちにとって安心できる街であってほしいなと。私たちが地域のことを知ることによって、地域で子どもたちを見守るということにもつながると思ってはじめました」(金澤さん)
まずは、桜木通りへ。この道は2021年に開通した都道で幅が広く、朝という時間帯でしたが、すでに路肩に何台かの休憩中の車両が並んでいました。この通りはタバコの吸い殻や食べ物の袋、飲み物の空き缶などが多いとのこと。みなさん、小さなゴミまで拾っていきます。
「ゴミの種類は場所によってぜんぜん違うんですよ。ですからゴミを見ていると、そこで何があったのか地域の様子がすごく見えます。大きな道路沿いはタバコの吸い殻、バス停のそばの植え込みには空き缶、公園はお菓子の袋などが多いです」(八木橋さん)
「過去には、液体が入った大量のペットボトルを植栽の下に見つけたこともありました。ビックリしましたが、たまたまその時に家の前を掃除していた近所の方と協力して、ペットボトルを一本ずつ開け、中の液体を溝に流し、ペットボトルは可燃ゴミとして廃棄しました。罪悪感からなのか、とにかくみんなゴミを植え込みに刺したりするようです」(稲村さん)
公園につくと、みなさんが言っていた通り、お菓子の袋がいくつも見つかりました。
「公園はゴミだけでなく、忘れ物や落とし物も多いですよ。以前、子ども服の忘れ物があったのですが、地域の人が拾って洗濯してくれて、袋に入れてお手紙つきでまた公園に戻していてくれたこともありました。後日無くなっていたから、きっと持ち主が取りに来たのでしょうね。そういうやり取りを見るのは心が温まります」(中村さん)
最後は、大きなコインパーキングです。
「コインパーキングはゴミが残置されたり、飛んできたゴミの吹き溜まりにもなりがちで、どこもゴミが多いんです。ここは地域の景観や近隣を考えられた、植栽があるコインパーキングです。植栽の中も、宝探しをするようにゴミ拾いをしています」
「ゴミを捨てやすいところって、物陰が多いんですよ。そういうところは犯罪の温床にもなりやすいと思うので、そういった死角のような場所を一個一個減らしたいという気持ちも、この活動をしていて芽生えました。それにゴミがあるところって“気”が澱みますよね?それをひとつずつ拾ってきれいにしていくことで、少しずつ“気”の澱みを解消もしていきたいと思っています」(八木橋さん)
夏休みは朝早く集合して、一緒に20人くらいで活動した日もあったそうです。
「一緒に活動をしてから、子どもが普段から『ゴミ拾いに行ってくる』と言うようになりました。仲良しのお友達と遊ぶからとおしゃれした後に、『はい!ゴミ拾い行こうー!』なんて言うので、その感覚と姿がかわいくて(笑)。それに子どもたちは視力もいいし目線も低いから、私たちが見えないところのゴミまで見つけてくれるんですよ」(稲村さん)
「この活動ですごくいいなと思うのは、すれ違う人すれ違う人に『おはようございます』とあいさつすることです。地域のコミュニケーションとしてとても大事ですし、あいさつすることでみんなが意識を向けてくれるから、ゴミを捨てる気持ちも変わってくるかもしれませんよね」(中村さん)
「やっぱりゴミ拾うって気持ちがいいんですよ。見つけるとうれしいし、だんだん宝探し感がでてくるんです(笑)。ゴミ拾いをしていると、『ここ(桜木通り)は都道なんだから東京都にいえばいいんだよ』と言う方もいるんだけど、行政にやってもらうのが当たり前と思うのではなく、私たちができることに少しずつ関わることで地域を動かせることもある。そのことに気づきました。活動をはじめた頃は、もっといろんな人たちを巻き込んで地域活動として広がればいいなと思っていましたが、このままやりたい時にやりたい人ができることするというやり方がいいのかな、と今は思っています。ゴミを拾って街がきれいになっていくことを楽しむこと。そして、それを仲間と共有できることを喜ぶこと。それが好きだからやっている活動ですから」(八木橋さん)
朝の澄んだ空気の中、みんなでゴミ拾いするのは意外なほど気持ちのよいものでした。自分が住んでいる地域がきれいになるのはもちろんのこと、すれ違う人にお礼を言われたりすると、心までホッと温まったり。ゴミ拾い活動は地域のためだけでなく、自分の楽しみのためにもなりそうです。
記事/中村杏子 (合同会社まちとこ)
写真/壬生マリコ(合同会社まちとこ)
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