2023.03.30
世田谷発!まったく新しいタイプの絵カード「オノマトペカード」
まったく新しい絵カード「オノマトペカード」が、子どもの発語に悩みを抱えている家庭や、子どもの発達を支援している言語聴覚士などの専門職の方々、療育施設などから注目されています。この「オノマトペカード」は、長年子どもたちの言語・コミュニケーションの発達支援に従事している言語聴覚士の石上志保先生が考案したものです。
世田谷での暮らしを、よりよいものにするための情報。区民の衣食住に関わる取り組みやサービス、町の景観、子育て、町づくり、多世代交流の話など。
にぎやかな千歳烏山駅前通り(通称、えるも〜る烏山)を支える「烏山駅前通り商店街振興組合」。ここは150もの商店が登録する大きな振興組合です。しかし、自慢はその規模ではなく、買い物以外の役割をたくさん担っていること。そのガイド役ともいえるのが、「えるも〜るラックカード」です。ただのポイントカードではない、カードの役割から、商店街の意味がみえてきます。
[12月の特集] 人情も新しさも!商店街で元気になる買い物を
商店街にいち早く電子式ポイントカードを取り入れるなど、先進的な取組みが盛んな千歳烏山駅前通り商店街。しかし、「そのカードだって早かったというだけじゃないんだよ」と聞いてやってきたのは商店街の振興組合の事務所です。ここで専務理事を務める松永克己さんが、“コミュニティへの切符”とでもいうべき、「えるも〜るラックカード」についてお話ししてくださいました。
「ラックカードは100円で1ポイントのダイヤスタンプがつくポイントカードです。でもこの機能はカードのほんの一部。私たちはこのカードを、コミュニティを形成するためのツールだと考えています。例えばね、『NPO法人笑顔せたがや』が、よろず相談所というのをやっているんです。お年寄りがここに相談に来てくれたら“よくぞ相談してくれました”ということでポイントが加算されるんですよ」(松永)
相談にのってもらって、さらにポイントまでつくなんて、ポイントカードの概念をひっくり返されるようなシステムです。しかし、コミュニティに参加することが大事、商店街の役割はコミュニティ形成、と幾度となく熱く語る松永さんのお話を聞いていると、だんだんとその仕組みの意図が分かってきました。
商店街に加入している商店の中でも、スタンプ加盟店は約7割。買い物のときに金額に応じて付与されるポイントやノー包装ポイントなどは、それぞれの商店が経費として負担しています。スタンプ加盟店自体も「コミュニティ形成に自分たちが参加している」としっかり動機づけされなければできることではありません。今、新たな商店街の価値をつくっていくために、それぞれが協力し合う土壌が育まれつつあるのです。「企業市民としての役割が問われる時代になってきたと思います」と松永さんもいいます。
「買い物につくポイントであるダイヤスタンプができてから、もう50年になるんですよ。昭和40年に西友ができることになって、買い物客の流出を防ごう、安売り以外の付加価値をつけていこうと始めたんです」(松永さん)
その付加価値の形は変容しつつも、一途に商店街のあるべき姿を追っているのが、えるも〜る烏山なのでしょう。
前述した相談ポイント以外にも、買い物以外のポイントはたくさんあります。例えば商店街運営の駐輪場を利用したらマナーポイント、インクカートリッジ回収でリサイクルポイント、ペットボトルポイント(一定のポイント毎にダイヤスタンプに交換)など。ダイヤスタンプとは別に、コミュニティポイントができた7年前から、徐々にそのバリエーションは豊かになっています。しかも、貯めたポイントは千歳烏山の多くの銀行で、現金と同様貯蓄に使えるというシステムも地域への密着度の高さを感じさせます。
このようなコミュニティポイントの中で、一番ポイントが加算されるのがボランティアポイントです。駅前を中心として清掃活動を実施している任意団体「スクラムからすやま」が毎月第一日曜日に行っている駅前清掃に参加すると、なんとポイントは100ポイント。買い物時のポイントに換算すると10,000円分と高額なポイントですから、商店街が考えるコミュニティ参加の意味を、つくづく考えさせられます。
では、コミュニティをつくるのは何のため?と問えば、「安心して暮らすため」という答えが松永さんから返ってきました。その考えに対する強い意志は、2011年3月11日に起きた東日本大震災の時に行動となって表れました。多くの場所が節電で暗くなる中、商店街が灯す街路灯は消さないことを決定。心細く暗い夜道を照らし、烏山に帰ってくると安心したという声がたくさん寄せられたといいます。
もちろん、普段の備えも大切。その具体策もえるも〜る烏山商店街ならではの工夫が。
「地域のお祭りが、最大の防災訓練です。なにか災害があったとき、街にどんな人がいるか分からなければ、助けを求めることも、助けることもできません。住民同士が顔見知りになっておくというのが、すごく大事なことなんです」(松永さん)
お祭りを大事にしたいという想いから、祭り限定で使える縁日券も発行しています。「普段貯めたポイントは縁日券と交換できます。子どもに縁日券を持たせると、お祭りは楽しめるけれど、お金じゃないから遠出しないし、家族の方は安心みたいですよ」と松永さんはいいます。
「これからの商店街は、地域の人々の安心・安全を担う使命を負っていると思います。それに、環境整備、文化の創造と伝承をしていく、一大コミュニュケーションの場。地域とともにある、という目標はそのままに、さらにコミュニケーションを深めていきたいですね」(松永さん)
今や、えるも〜るラックカードの発行数は4万枚に迫ります。以前は家族で1枚だったのが、家族それぞれの生活シーンに合わせて一人一人が持つようになり、発行枚数は増えているそうです。これからもこのカードはさまざまな新しい展開をみせてくれるでしょう。「えるも〜る烏山」が目指す商店街の姿から、今後も目が離せません。
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えるも〜る烏山
[住 所]世田谷区南烏山6-3-1 ダイヤ会館 3F
[ホームページ]http://www.elmall.or.jp/
住所: | 世田谷区南烏山6-3-1 ダイヤ会館 3F |
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電話番号: | 03-3300-0181 |
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東京生まれ、宮城育ち。大学卒業後、(社)農山漁村文化協会へ入会。バイクで全国行脚をする営業生活を経て、編集局に配属になり、食について扱う雑誌編集に携わる。退会後、フリーランスの編集者となり、広く《食べごと》を豊かにしていくべく活動中。
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