このひとの世田谷

世田谷の街に根ざした活動・取組みを行う人や、世田谷で活躍する「このひと」のインタビュー。それぞれの想いがある世田谷のお話。

2024.03.18

二子玉川からリーグ頂点へ「ブラックラムズ東京」の現在地 

多摩川に面した宇奈根に70年前からグラウンドを持ち、我が街・世田谷からラグビーの国内最高峰リーグ「NTTジャパンラグビー リーグワン」で戦うブラックラムズ東京。現在、全16試合のシーズン前半戦を終え、これからの後半戦は正念場を迎えます。世田谷を本拠地に定め3年目の今季、ゼネラルマネージャーの西辻 勤(にしつじ つとむ)さんは「世田谷に認められ、世田谷に必要とされるインフラになりたい」と将来を見つめます。

ブラックラムズ東京の西辻GM。就任4年目、現役時代は早稲田やリコーで俊足のWTBやFBとして活躍

 

泥臭いひたむきさがクラブのDNA

2019年の日本開催のラグビーワールドカップの成功を受け、新生ラグビーリーグが2022年に誕生して今年で3年目。2024年2月25日に駒沢オリンピック公園で開催された人気カード、神戸スティーラーズ(神戸製鋼)との一戦はあいにくの雨模様でしたが、熱狂的なファンが4,000人以上も詰めかけ声援を送りました。

スクラムから湯気が立つような激闘だった神戸S戦、接戦をものにできず17-27と惜敗(写真提供:リコーブラックラムズ東京)

 

「相手のコンテンツ力ももちろんありましたけど、最悪の天候で4,000人集められたことは、着実に自分たちのやってきたことや、僕たちの認知度が高まっていると実感しました。普通だったら、雨の中、絶対いかないですよね」(西辻GM)

ラグビーのリーグワンでは唯一、首都東京23区内に単独でホームを置くクラブながら、伝統的に泥臭い、ひたむきなプレーがチームのDNA。そのギャップに萌えるのか?ぶれない、熱いファンが多いのが特徴でその数もじわじわ増加中。試合日に駒沢オリンピック公園に続く道を黒いジャージーや、マスコットの子羊「ラムまる」グッズを身に付け歩くファンの姿は、街の新たなシーンとして定着しつつあります。

マスコットの羊の男の子「ラムまる」を脇に置き、チームの現在地を語る西辻GM

 

「ファンクラブのIDを持って購入してくれる人が すごく増えています。1年目はコロナ禍で参考にならないのですが、昨年に比べ3割くらい増えている。その35%程度が世田谷の方と数字が出ています」(西辻GM)

チケットの購入サイトは様々ありますが、他チームと比べ自クラブのサイトを通して直接購入する人が多く、一般的な「ラグビー愛好家」というより、ブラックラムズを応援する一定のファンが増加している実感があるといいます。

 

チームへの期待感でファン増加中

前身のリコーラグビー部から数え、創部70周年のメモリアルシーズンでもある今季は「BREAKTHROUGH(ブレイクスルー)」をスローガンに、大きな壁を突き破る結果を目指しますが、苦戦が続きます。前半戦は僅差での惜敗が多く、1勝7敗で折り返しました。昨秋のラグビーW杯フランス大会を終え、同じ東京のライバル、東京サンゴリアス(サントリー)やブレイブルーパス東京(東芝)には、W杯で世界一になった南アフリカや準優勝のニュージーランドの中心選手が多数加入。一方、ラムズは伝統的にスター選手の力に頼らない編成方針で強豪に挑んできました。そこから生まれるチームの一体感、団結力、スタッフの温かさは「ラムズファミリー」とも呼ばれており、クラブの将来的な期待感がファンを〝ラムズ沼〟に引き込んでいるのかもしれません。

 

他クラブと一線を画すチーム編成

2024年2月25日神戸S戦(駒沢オリンピック公園)

 

「うちは、サッカーのレアルマドリードの様に、外からスター選手を集めてくるチーム作りはできません。僕はもともと伝統的に選手を鍛えあげる早稲田大学出身で、高校は奈良県の御所工でした。しかし、自分は無名でも一生懸命、皆で力合わせれば勝てるところがラグビーの醍醐味だと感じています。2015年のW杯で日本代表が南アフリカに勝ったときもそうかもしれません。そういうチーム作りのコンセプトを持ったほうがチームの団結も生まれるし、ブランディングとしていいのではと、2013年~20年の監督の神鳥さん(現明治大学ラグビー部監督)と考えたのがチームのスタートです」(西辻GM)

新人を獲得するリクルート活動では、日本人、外国人選手問わず長くチームに在籍し、チームにコミットしてくれる選手がブラックラムズの採用の基本。2月の日本代表候補合宿には、昨年のW杯で大活躍しその後日本に帰化したファカタヴァ アマト選手に加え、副将の松橋周平選手ほか6人が招集され、チームの伸びしろを感じさせます。

2023年12月26日のホスト開幕戦の三菱重工相模原ダイナボアーズ戦は8,200人の観客が来場

 

小田急線のアナウンスに選手登場

企業色が強かった前身のトップリーグから移行し、独立性や地域密着を旗印とするリーグワンが誕生し3年。ユニークな地域活動も進行しており、昨年秋には小田急線成城学園前駅など6駅の構内アナウンスを選手が担当。区民に防犯を呼びかけました。2月にはユニクロとコラボし、二子玉川の店舗で主力の千葉 太一選手やメイン 平選手が接客体験をするなど、PR活動も活発です。昨秋の世田谷名物の花火大会ではチームグラウンドが開放され、天然芝のピッチの上に500人が集まり花火を楽しみました。

2023年12月の出陣式は二子玉川駅隣接の「二子玉川ライズ ガレリア」で開催。
左から2人目よりピーター・ヒューワットヘッドコーチ(監督)、FLファカタヴァ アマト、CTBハドレー・パークス、HO武井 日向主将

 

西辻GMは宇奈根のグラウンドを「地域のハブ化」にしたいと語り、最近では世田谷区と連携し、毎週水曜日に近隣の保育園児が練習場のすぐ脇のサブグラウンドに遊びにくるようになりました。練習試合やラグビー体験会など、ファンが気軽にグラウンドに来られるような、イベントも増やしていく予定です。

 

グラウンドを地域のハブに

一方でチームが独自に行った調査では、区民のチーム認知度は10%半ばと発展途上なのも事実です。本拠地を決める際に地域で実施したヒアリングを通し、世田谷に長く住でいる人は地元愛が強く、世田谷で何かを応援したり、世田谷と言えるコンテンツを探しているという声も実感しています。

 

「世田谷を意識して熱狂したり、興奮したり、感動したりする経験は大人になるとなかなかないような気がします。非日常を味わうという意味で、ぜひスタジアムに来て頂きたい。スポーツで結果を出すのは当然ですが、僕らは世田谷にいかに認められ、インフラになり、地域になくてはならないものになっていこうと活動しています。地域に受け入れられる存在になっていきたいと思います」(西辻GM)

リーグは5月5日の最終節トヨタヴェルブリッツ戦(秩父宮)に向け、1戦も落とせない戦いが続きます。地元世田谷のチームを後押し、80分の夢を見に、スタジアムまで家族や仲間と足を運んでみませんか?

2024年1月27日のクボタスピアーズ船橋・東京ベイ戦は、「世田谷パン祭り」とのコラボイベントが開催され、多くの人で賑わった(写真提供:リコーブラックラムズ東京)

 

リコーブラックラムズ東京

【概要】
母体企業のリコーラグビー部として1953年創部。リーグワン初年度の2022年は最上位のディビジョン1で12チーム中9位、昨年は7位。地域活動にも積極的で、近隣小学校の朝の登校の見守り運動や公式ボランティア「Ramgelist(ラムジェリスト)」も運営。2023年のワールドカップで日本代表として活躍したファカタヴァ アマトらが所属。

・ヘッドコーチ ピーター・ヒューワット
・主将 武井日向、副将 山本昌太、松橋周平
・練習グラウンド 世田谷区宇奈根1-5-1 リコー総合グラウンド

2024年シーズン ホストゲーム

4月  6日(土)13:00 横浜キヤノンイーグルス(駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場)
4月12日(金)19:00 埼玉パナソニックワイルドナイツ(秩父宮ラグビー場)
5月  5日(日)14:35 トヨタヴェルブリッツ(秩父宮ラグビー場)

チーム公式HP

https://blackrams-tokyo.com/index.html

チーム公式X

@RICOH_BlackRams

リーグワン公式HP

https://league-one.jp/

記 事

河野 聖(合同会社まちとこ)

写 真

壬生 マリコ(合同会社まちとこ)

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紹介者プロフィール

写真

合同会社まちとこ

「まちとこ」は様々な得意分野を持ったプロフェッショナルな女性6人の編集・デザインチームです。「楽しい」「心に届く」を大切に、デザイン、編集、撮影を請負い、自ら商品制作、情報発信しています。

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