2021.06.30
下北線路街 個性店が集まる街「reload(リロード)」
6月、下北線路街に、「reload」がオープンしました。地元で人気のお店や下北沢初出店の個性的なお店がたくさん入った、新たなこのスポットをご紹介します。
世田谷にはたくさんの「訪れたい場所」がある。古くから愛されてきたお店や、知る人ぞ知る穴場など、地元の情報をご紹介。思い出に残る昔の世田谷から今の世田谷まで。
閑静な住宅街でひときわ目をひく水色の洋館「旧尾崎テオドラ邸」。世田谷区で最古の洋館として知られている美しい洋館が、老朽化による取り壊しの危機を乗り越え、多彩な漫画家の作品展示が楽しめるギャラリー&喫茶として生まれ変わったのは、2024年3月のことでした。今では遠方からも多くの人々が訪れる“豪徳寺の新名所”を訪ねました。
周囲の緑と調和した水色の洋館(写真提供 旧尾崎テオドラ邸)
「旧尾崎テオドラ邸」は明治21年(1888)に誕生。「憲政の神様」と呼ばれていた元東京市長・尾崎行雄の妻であるテオドラ英子が英国から来日した頃に、テオドラの父である尾崎三良男爵が建てたとされています。建築様式は、明治初期に日本に伝わった「下見板コロニアル」。木製の板を水平に重ねて張る工法や明るい色の外壁が特徴です。札幌市時計台や長崎の旧グラバー住宅も、この様式で建てられています。
当初は港区・六本木にありましたが、昭和8年(1933)に現在の場所に移築。関東大震災や第二次世界大戦をも乗り越えてきました。戦後は英文学者などが住む洋館として、地域の人々に愛されていました。
しかし2020年夏、建物の取り壊しと分譲住宅の建設が決定してしまいます。これに声を上げたのが、周辺を散歩するたびにその美しさに見惚れていたという漫画家の山下和美さんでした。地域住民と協力して4000人以上の署名を集め、建設会社と話し合いを重ねた末に、漫画家の笹生那実さんとともにほぼ全財産を注ぎ込み土地家屋を取得したのです。
こうして解体は免れたものの、新たな壁が立ちふさがります。100年以上の歴史を持つ建物は劣化が激しく、さらにはコロナ禍や資源不足などによる物価高騰も重なり、改修費用は1億円数千万円以上と判明。クラウドファウンディングでの支援や複数の漫画家からの融資を受けてなんとか費用を集め、2024年3月にようやくギャラリー兼カフェとして生まれ変わったのです。
真っ白な壁やランプなど、ひとつひとつが絵になり歴史が感じられる
約2年に及んだ改修工事にあたって大切にしたのは、建てられた当時の状態をできる限り残すことでした。床板は一度剥がして基礎を直した後で元に戻し、ドアや窓枠も修復して再利用しています。
1階にあるフォトスポットは、記念撮影におすすめ
館内でとくに人気を集めているのが、テオドラが生きた19世紀の英国にちなんだコーヒーや紅茶、スイーツを提供する喫茶室です。室内を彩る家具は神戸の老舗洋家具店に特注したもので、明治時代の雰囲気を堪能できます。喫茶室の利用は90分制で、基本的に事前のチケット購入が必要です(※注)。
1階の喫茶室。大きな窓からやわらかな光が差し込む
紅茶好きなら必ず注文したいのが、“ダージリン・セカンド・フラッシュ(1,350円)”松陰神社前の紅茶専門店『Pure Tips』から取り寄せた最高級の茶葉を使った一杯は、芳醇な香りと深い味わいが特徴です。コーヒー派には長野県にある『トウミコーヒーロースタリー』によって洋館をイメージしてブレンドされた“旧尾崎テオドラ邸オリジナルブレンドコーヒー(1,000円)”がおすすめ。専属の若手パティシエが19世紀の英国に着想を得て作ったスイーツも美味しく、優雅な時間を堪能できます。
紅茶葉を練り込んだスポンジ生地で季節のジャムをサンドした“旧尾崎テオドラ邸オリジナルヴィクトリアケーキ(880円)”
3段トレーで提供される“アフタヌーンティー”。こちらはアフタヌーンティー付きギャラリー入場券(5,950円)の購入が必要
喫茶室を堪能した後は、2階のギャラリーへ向かいましょう。ここでは、著名な漫画家から若手漫画家まで、幅広い作品が展示される企画展が開催されています。直筆原稿や貴重な作品を間近で鑑賞できる、ファンにとってはたまらない空間。人数制限のある予約制なので混雑の心配がなく、作家の息吹を間近に感じることができます。
木製の階段は写真映えも抜群
ギャラリーでは2022年に閉館した荒川区ぬりえ美術館から譲り受けた什器を使用(写真提供 旧尾崎テオドラ邸)
1階のショップも見逃せません。テオドラと猫のシルエットをモチーフにしたマグカップやハンドタオル、「世田谷みやげ」に選出されているクッキー缶など、キュートでおしゃれなオリジナルグッズが充実しています。
ハンドタオルは今治製の生地を使用し、やわらかな肌触り
洋菓子ブランド「コロンバン」とコラボしたオリジナルクッキー缶
ショップ内に飾られた漫画家による寄せ書きは、ここでしか見られない貴重品
2025年1月18日から3月4日までは、「水は海に向かって流れる」「みちかとまり」などで知られる漫画家・田島列島の初の原画展「田島列島はイイもの展」を開催。今後もさまざまな漫画家にスポットを当てた展示が予定されています。
展示、建築、喫茶と3つの楽しみがそろった旧尾崎テオドラ邸。漫画ファンはもちろん、歴史や建築が好きな方や、洒落た洋館でアフタヌーンティーを楽しみたい方に、ぜひおすすめしたい施設です。
文 渡辺裕希子(合同会社まちとこ)
撮影 壬生真理子(合同会社まちとこ)
住所: | 世田谷区豪徳寺2-30-16 |
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営業時間: | 営業時間 10:00~18:00 |
定休日: | 定休日木曜日(その他、展示入替休館あり) |
URL: | https://ozakitheodora.com/ |
その他: | ※注 入館には、オンラインで購入できる事前予約チケットが必要。ギャラリー入場券(1,000円)、喫茶室席予約付きギャラリー入場券(1,000円)、アフタヌーンティー付きギャラリー入場券(5,950円)の3種類(◎未就学児はいずれも無料)のほか、混雑状況によっては窓口で当日販売チケット(1,500円)の販売もある。詳しくは公式HP「チケット購入」ページをご確認ください。 |
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