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くらしの世田谷

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2025.04.10

下北沢 保護者が保護者を支える「不登校保護者ピアカウンセラー」

不登校の子どもの保護者が、同じ悩みを抱える保護者の相談にのる、不登校保護者ピアカウンセラーという取り組みがあります。子どもやその保護者を支える、新しい視点の試みをご紹介します。

経験したからこそ、聞くことができる

ピアカウンセラー(Peer Counselor)のピアとは同じ立場の人、仲間という意味で、専門的な資格を持つカウンセラーではなく、同じような状況や経験を活かして、他者の心の支えとなることを目的とする人の事を言います。一般社団法人アートエデュケーションスクエア代表の萬谷 美和子(まんたに みわこ)さんは、自身のお子さんが不登校だった時の経験から、日常生活で困っていること、不安な気持ちを共有できるピアカウンセラーの必要性を感じ、五十嵐 麻弥子(いがらし まやこ)さんと、不登校保護者ピアカウンセラー養成講座を作りました。

代表の萬谷さん(右)五十嵐さん(右から2番目)ピアカウンセラーのみなさん

 

不登校保護者ピアカウンセラー養成講座とは

不登校保護者ピアカウンセラー養成講座は、お子さんの不登校を経験した保護者の方の中で参加を希望する方を対象に、6か月かけて区民集会所などで6回行われます。不登校訪問支援カウンセラーの資格(注)を持ち、杉並区で不登校児童の親の会を主催している五十嵐さんが、これまで対応してきたお悩み相談の中で中心となるものにポイントをおいて養成講座を作りました。例えば、悩んでいる保護者の心に寄り添い、共感的な聞き方や反応を身につけられる学びや問題解決に向かう対話方法。保護者の感情への対応方法。子どもの体と心の成長。発達障害について知る機会などを学習します。2023年と2024年に実施し、これまでに20人の不登校保護者ピアカウンセラー(以後、ピアカウンセラー)が誕生しています。

 

不登校保護者ピアカウンセラー相談会

ピアカウンセラーに相談できる方法は2種類あります。まずは、毎月1回、世田谷区在住の担当カウンセラーの決めた場所で実施しているミニ相談会。少人数でマンツーマンに近い形で相談することができます。もう一つは、年に2度行われる相談会で、何人ものピアカウンセラーが一堂に介して開催されます。今回の会場は下北沢タウンホールの広い会議室で行われました。

不登校保護者ピアカウンセラー相談会チラシ

 

会場には、中央に20脚ほどの椅子が丸く設置され、机の上には不登校支援に関するリーフレットが並んでいます。参加者とピアカウンセラーが丸く座り、一人ずつ話していきます。

支援についての資料も机の上に並ぶ

 

グループセッション

まず、ピアカウンセラーも含め、全員で自己紹介。互いの不登校に関する経験を話し、聴き合います。それぞれの状況は違いますが、辛い中を頑張ってきたという思いは共感し安心して自身の話をしています。

丸くなって悩みを話していきます

 

個別セッション

希望があれば個別に1対1で相談することもできます。移動して対面に座り、自身の具体的な問題や悩みについて深く話す時間となります。子どもの発達に関する事や、家族間の問題など、プライベートに関わる悩みついて話します。ピアカウンセラーは、参加者に寄り添いながら、話を聴いてくれます。

丁寧に話を聴いて、対応するピアカウンセラー

 

経験者だからこその理解

それぞれの相談者の悩みは、例えば、ゲームを辞められない、外に出ない(出られない)、オムツが取れない、進学をどうしたら良いか分からない、朝起きない、授業が我慢できない、などさまざまです。相談会の終わりに近づいた時に、急遽駆け込んでくる相談者がいました。「3月で、やっぱり耐えられなくなってしまって」と入ってくると、ピアカウンセラーが「解る、解る!卒業式の看板とか苦しくて見れないよね!」とセッションの輪の中に導きます。

真剣に話を聴くピアカウンセラーの皆さん

 

相談会参加者の声

「他の方々の悩みも聞けて、私だけじゃないという安心感が得られました。」
「春が近づいて、すごく不安だったのですが、頭が整理できてスッキリしました。」「家族との関係に悩んでいたので、ピアカウンセラーの方からの視点を聞いて、気持ちが楽になりました。」
「色々な形で進学しているお子さんの話が聞けて本当に良かったです。」

悩みに応じて席を分けて話す場合もある

 

「実際に経験した人に相談することは、とても役に立ちます。ぜひ活用してみてください。」と不登校保護者ピアカウンセラー養成講座講師の五十嵐さんは話します。
また養成講座を受け、ピアカウンセラー活動をしているYさんは「自分が子供にしている行動や声がけが合っているのか分からず不安でした。養成講座で学べて自信がもてたことが本当に良かったと思っています。これからは経験を活かして、今不安の中にいる保護者のみなさんの力になりたいと思っています。」と話します。
「私は初めの頃、相談する度に泣いていました。子どもは鉛筆が持てなかった。ある日、子どもが進学したいと言ってきたけれど、鉛筆が持てませんし、進学は叶いませんでした。でもそれを相談会で言ったら、チャレンジ出来て良かったねとみんなが励ましてくれました。今ではこどもは就職して、一人で暮らしています。ここまで来るのに10年くらいかかっていますが、その間私は孤独じゃなくて、この場所がありました。」(オブザーバー参加のTさん)

ピアカウンセラーは、自身が助けられた経験を元に、今、苦しむ保護者を応援したいという取組みです。お子さんの不登校で悩み、話したいと思っている保護者の方は、相談会に参加してみてはいかがでしょう。いつかピアカウンセラーになって誰かを支える立場になるかもしれません。

 

(注)不登校訪問支援カウンセラー

一般財団法人日本能力開発推進協会が認定する民間資格「JADP認定不登校訪問支援カウンセラー®」で、小学生から高校生までのさまざまな児童・生徒に対応できる高度なカウンセリング能力を養成するための資格。不登校に関する専門的な知識、技術を備えているカウンセラーであることを証明するもの。

■お問合せ■

一般社団法人アートエデュケーションスクエア
e-mail peer.together.smile@gmail.com
Xアカウント @peertogether

 

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紹介者プロフィール

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ハイコラ

ママさんライター

子供からシニアまで支え合える地域づくりを目指し、「おむつ替えMAP」の制作、「親子ぼうさいプロジェクト」、「せたがやこども弁当」等の、親子と地域を繋ぐ子育て支援活動しています。

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