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このひとの世田谷

世田谷の街に根ざした活動・取組みを行う人や、世田谷で活躍する「このひと」のインタビュー。それぞれの想いがある世田谷のお話。

2023.08.08

世田谷からフェアトレードやエシカル消費を広めたい「フェアトレードタウン世田谷推進委員会」の田中理帆さん

世田谷を世界で一番人と地球にやさしい街にしたい。――そんな思いでフェアトレードやエシカル消費を広める活動をしている「フェアトレードタウン世田谷推進委員会」。フェアトレードチョコのパッケージのデザインを通して地球を守るエシカル消費を広めよう、との思いで、2022年から「世田谷フェアトレードチョコパッケージデザインコンテスト」を開催しています。事務局の田中理帆さんにお話を伺いました。

世田谷フェアトレードチョコに使われているディバイン(イギリス)のチョコレートには、ガーナの小規模農家の協同組合「クアパ・ココ」のフェアトレードカカオ豆を使用

 

世田谷での買い物を通して、もっと世界のことを考えられるように

フェアトレードやエシカル消費のこと、ご存じですか?
“フェアトレード”とは、「公平・公正な貿易」のこと。発展途上国で働く人たちが食事や住居に困らない自立した生活をおくれるよう、賃金や取引価格を適切に行う貿易の仕組みです。
また、“エシカル消費”とは、「人・社会・地域・環境に配慮した消費行動」のこと。消費者が買い物をする際に、社会的課題の解決を考えたり、そうした課題に取り組む企業を応援することをいいます。
そんなフェアトレードやエシカル消費を、世田谷の街で広める活動をしているのが、「フェアトレードタウン世田谷推進委員会」です。

 

自分の大事なお金は誰のお給料につながるのか?

フェアトレードのカカオ豆の生産者であるガーナのカカオ農家の人たち。(©わかちあいプロジェクト提供)

現状日本は、残念ながら、先進国の中でもフェアトレード製品の購買量がとても少ないとのこと。例えばスイスは一人あたりフェアトレード製品の購買額が年間12000円にもなりますが、日本は120円くらいだそうです。

フェアトレードタウン世田谷推進委員会 田中 理帆さん(以下、敬称略):「日々のお金の使い方が社会の課題を解決する」という意識は、日本ではまだまだ結びつきにくいのかもしれません。お金を払って物を得たらおしまいではなく、お金が誰のお給料につながっていくのか?自分たちがお金を払った物の生産現場では何が起きているのか?その会社を自分のお金で応援できるのか?そういうところまで考えると、きっと買い物の仕方が変わってくると思うんです」

去年のコンテストで1次審査を通過した作品たち。思い思いの世田谷の風景の絵が158通も届いた。

「世田谷の街を魅力的にしているのは、個性豊かな個人経営店がたくさんあることだと思います。地域のお店は、お客様との顔の見える関係の中で信頼が得られるような品質やおいしさを追求しています。そんな世田谷の魅力的なお店が、児童労働のないフェアトレードの食材や、人や環境にやさしい作り方をしている商品を取り扱うようになったら、地域でのお買い物が世界や環境のことを考える入口になるのではないかと思うのです。また、エシカル消費の考え方で言うと、商店街の小さなお店は価格や品数では大型店と比べられないかもしれません。しかし、安心して過ごせる街の賑わいを商店街が作ってくれていると考えると、お買い物を通じて街づくりに関わっていくことも大切だと思うのです。」(田中さん)

そんな世田谷の街と世界を結ぶきっかけ作りの一つとして、小学生を対象にはじめたのが「世田谷フェアトレードチョコパッケージデザインコンテスト」です。「あなたが未来に残したい大切な世田谷の風景」をテーマに、世田谷区内の小学生からデザインを募集し、選ばれた5作品が実際のパッケージのデザインになるという取り組みです。

「目標は、子どもが描いた世田谷の風景をまとったフェアトレードチョコが、世田谷の冬の名物として(2月発売予定なので)街のあちらこちらで買えるようになることです」(田中さん)

 

フェアトレード商品の製作では福祉作業所とも連携

「福祉作業所で働く障害をもつ人たちは支援される側と思われがちですが、フェアトレードの物を作ることによって途上国の支援をする側にもなります。この活動を通して、誰もが支え合える存在だということが伝わったらいいなと思っています」(田中さん)

封入作業で連携している喜多見夢工房。焼き菓子をはじめとした20数種類スイーツが人気

 

出稼ぎなしに暮らしが成り立たないってどういうこと?

世田谷くみん手帖編集部:田中さんがフェアトレードに興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか?

田中さん:「25年ほど前、映画撮影のボランティアで訪れたフィリピンの山間部で出会った同世代のお母さんの存在がきっかけです。子どもが4人、一番下の子はまだ2、3歳なのに、急に「明日から中東に出稼ぎに行くの」と言われて。子どもたちの教育が終わるまでは帰れないと。その村ではお金を稼ぐ方法がなく、出稼ぎにいかなければ暮らしが成り立たないとのことでした。私は「これってどういうことなの?どうにかならないの?」とショックを受けました。帰国後、途上国支援について調べる中で、フェアトレードの取り組みがこのような地域に仕事を作っていることを知り、働くように。その後、日本で震災を経験したことで、国内外を問わず困難に直面した子どもたちがそれを乗り越えて幸せになるために何かできないか、ますます考えるようになりました。そんな時にフェアトレードの仕組みが、支え合える安心感や生きる知恵につながるのではないかと思い、以来ライフワークとして子どもたちにフェアトレードの仕組みを伝える活動に携わっています」

子どもたちと関わるにあたって、きちんとベースを作ろうと保育士の資格を取得し保育園でも働いた経験も

 

「今回のコンテストをきっかけに、今までフェアトレードを知らなかった方にも海の向こうの産地や作っている人たちのことを考えたり、エシカルな商品を取り扱うきっかけになったらいいなと思っています」と、田中さん。子どもや私たちの意識や考えが変われば、きっと社会も変わっていくはずです。

 

<世田谷フェアトレードチョコパッケージデザインコンテスト>

デザインテーマ:「あなたが未来に残したい大切な世田谷の風景」
締め切り:2023年9月30日(土)必着
対象:世田谷区内在住・在学の小学生
入賞者発表:1次審査10月中旬・最終結果11月中旬
チョコの販売:2024年2月初旬(詳細はお問い合わせください)

お問い合わせ:フェアトレードタウン世田谷推進委員会(https://fttsetagaya.com
令和5年度世田谷区提案型協働事業

 

撮影 壬生マリコ(去年の一時通過作品と田中さんの写真のみ)

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紹介者プロフィール

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合同会社まちとこ

「まちとこ」は様々な得意分野を持ったプロフェッショナルな女性6人の編集・デザインチームです。「楽しい」「心に届く」を大切に、デザイン、編集、撮影を請負い、自ら商品制作、情報発信しています。

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