このひとの世田谷

世田谷の街に根ざした活動・取組みを行う人や、世田谷で活躍する「このひと」のインタビュー。それぞれの想いがある世田谷のお話。

2012.07.01

栗原美希さん×宍戸園さん対談。世田谷農業のこれからの役割

世田谷にゆかりの深い著名人にエフエム世田谷のパーソナリティが、あれこれお話をお伺いする「このひとの世田谷」。第1回目のゲストは烏山エリアで300年続く600坪の農場「宍戸園」の12代目として、バラの栽培や養蜂を営む宍戸達也さん。まるでイギリス農園のような美しさを誇る東京随一の農場で、宍戸さんにこれからの農業のビジョンと、世田谷で農業をする醍醐味を語っていただきました。

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農業がビジネスチャンスの時代

栗原:成城学園駅から車で5分という立地に宍戸園はありますが、ブルーベリーやバラの植物、はちみつの養蜂とまるでイギリス農園のようですね。ところで宍戸さん、農家とは思えないダンディな容姿で驚きました。失礼ですが現在おいくつですか?
宍戸:今年53になります。
栗原:ええっ。見えない!すごくお若いですね。
宍戸:農園をすると若返るんですよ。大地からエネルギーをもらうというか。ストレスが大地に吸収されて、元気になりますよ。
農業は最高に面白いです。これ以上にいい職業ないですよ。若返るし、ストレスフリーだし、家族円満だし。
栗原:いいところずくめですね(笑)。
宍戸:これからは農業の時代です。今の日本は、まるでコンビニ感覚のように農作物を海外から輸入しています。ところが世界全体で見ると、大部分の国で人口が増え食料自給率が落ちているんです。世界的に食糧生産量が減っているので、そのうち他国への食糧輸出ができなくなるはずです。そうなってから日本で作ろうとしても、農地はない、担い手も育っていない。どうするんだっていう話ですよ。だからこそ今、農業を続けることはビジネスチャンスなんです。

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ミツバチは環境のバロメーター

栗原:最近は若者の間でも家庭菜園や農業は注目されていますよね。農業を始めるひとも増えてきて、パーマカルチャーという言葉も耳にします。世田谷区の貸し農園も申し込みが多くてキャンセル待ちだとか。
宍戸:ただ、始めても跡継ぎがいなくて一世代で終わってしまう場合が多いので、なかなかパーマネント(永続)にはならない。農業の肝はヒトです。だから、跡を継ぎたくなるように、稼げる農業のシステムをこれから作ってゆくことが大事なんです。
栗原:なるほど。継続には収益性が大事なんですね。この「宍戸園」は何年前から続いていらっしゃるんですか?
宍戸:300年続いています。僕で12代目ですね。
栗原:300年!養蜂も代々やられていたんですか?
宍戸:いえ、5〜6年前に僕が始めました。もともとブルーベリー専門農家で、受粉率を上げるために蜂を飼い始めたらどんどん増えて、箱の蓋を開けたら蜜がぎっしり詰まっていたんです。食べたらめちゃくちゃおいしくて!なんだこれはと(笑)
栗原:自然に?!すごいですね。
宍戸:増えすぎて食べきれなくなっちゃったから仕方なく売ろうと思い、売り出したのが最初です。
栗原:そんな始まりだったんですね。養蜂は我流で?
宍戸:自然飼育で、抗生物質などの薬は与えずに育てていますが、近年の自然環境の変化が蜂にも影響を与えていてなかなか上手く行く事ばかりではないですね。ハチってデリケートなんです。自然環境が変わると、蜂が弱ってしまいます。
栗原:ミツバチが住めるかどうかが、その土地の環境の良し悪しの指針になると聞いたことがあります。数年前にミツバチの減少が話題になりましたよね。
宍戸:そう。ミツバチが住めない環境っていうのは人間も生きられない。その結果、ウイルスが流行ったりするんだから笑えない…なんか僕、お笑いキャラで通っているはずなのに真面目な話になっちゃったな(笑)
栗原:宍戸さんの真面目な一面が(笑)
宍戸:農業自体はまじめに取り組んでますよ(笑)

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古いものと新しいものが入り混じる世田谷のくらし

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栗原:宍戸さんの世田谷でお気に入りの食べ物はなんですか?
宍戸:そうですね、世田谷は、洋菓子が日本一おいしいと思っています。ヨーロッパに負けていないですよ。
栗原:老舗の有名店が多いですよね。
宍戸:そう。なぜかというと、若い人が始めた新しい店は、ケーキのほうに目が行っているのですが、老舗は「人」に目が行っているんです。新進気鋭の若手パティシエは、これまでにない創作菓子を作ろうとしますが、地域に根づいた老舗は常連のお客様に「おいしい」と言ってもらえるかどうかを一番に考えて作っています。お客様の好みを知り尽くしている定番の味だから、おいしいんです。コーヒーとかカプチーノにも合いますよね。
栗原:なるほど…。地域密着だからこそおいしいんですね。
宍戸園のあるこの烏山エリアは、宍戸さんにとってどんな場所に映りますか?
宍戸:この辺りは自然も多く、世田谷らしい文化人もいて、商売人の街でもあります。3点がミックスされた、いいとこ取りの場所ですね。このエリアで商売をやっていれば、単なる商売人ではなく、複数の引き出しを持てると思います。
栗原:それはこの街だからこそですね。逆に宍戸さんが感じる世田谷の課題は?
宍戸:そうですね。もっと、地域の人同士でコミュニケーションが取れるようになるといいですね。例えば、祭りや、自治会など、ボランティアでやっていますが、外の人には伝わりづらい側面もあります。こういう行事に、新しく世田谷区に来た人も関われるようになるといいですよね。
栗原:なるほど。回覧板も、一人暮らしの家には回ってこないですもんね…。
宍戸:地元のイベントについても、地域の人に理解されないとコミュニケーションエラーが起きてしまうしね。もっとお互いの理解を得るよう努力していきたいですね。

宍戸園は自然のエネルギーを感じる場所

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栗原:それにしても、宍戸園のような農園が世田谷にあることは、とても珍しいですしかなり恵まれた環境ですよね。
宍戸:大地って、すごく清らかな場所。命を産む場所って崇高なんです。宍戸園に来た人がエネルギーを充電して、人に優しくしようって思ってくれれば、それだけで意味があります。ここに来ると、けっこう恋愛成就する女性が多いんですよ。
栗原:ホントですか?(一同、大盛り上がり)運気をもらって帰らないと!!
宍戸:そう、女性性が高まって優しくなる、特に男の人に優しくね(笑)
栗原:ハチミツだけに、甘い感じに(笑)
宍戸:そう。「ハチミツは恋愛上手のアイテム」なんですよ。昔から蜜は、子宝に恵まれる食べ物だと信じられていたんです。ゲルマン民族の風習では、女性は気になる男性にアプローチするとき、ハチミツのお酒をふるまったんです。彼女を「ハニー」とも呼びますよね。
栗原:その風習、再興させましょうよ(笑)。ということで、宍戸園のハチミツはどこで購入することができますか?
宍戸:今のところ直売のみなので、農園にきていただければ購入できます。農園自体は人がいれば見学も可能です。今後は農業に留まらず、海外で事業を展開することも考えています。素敵なこと、みんなが夢を持てることをやって行きたいですね。
栗原:宍戸さんはロマンチストなんですね。本日はありがとうございました。

宍戸達也

福岡県出身。宍戸園代表。300年前から続く農園12代目。養蜂とブルーベリー、ベルガモットなどを栽培。世田谷産宍戸園はちみつは老舗洋菓子店にも卸していたこともあり注目を集めている。

栗原美季

エフエム世田谷パーソナリティ。毎週月曜〜木曜10:00〜12:00「栗原美季 Cafe Les R」オンエア中。

施設概要

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世田谷くみん手帖編集員

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