2023.12.08
上用賀 待望の再開! 生まれ変わった馬事公苑を紹介します
2017年から7年にわたって休苑し、改装工事を行っていた馬事公苑がついに再開しました。2023年 11 月3〜5日に行われたリニューアル記念イベント期間の来場人数は、なんと合計6万5,000人。この日を待ち望んでいた区民の方も、多いのではないでしょうか。そこで早速、新生・馬事公苑をぐるりと一周。その魅力や、おすすめの穴場スポットをお伝えします。
世田谷で行われたイベントやワークショップなどの体験レポート。くみん手帖編集部およびくみんライターが参加した感想や、当日聞いたお話、エピソードなどをご紹介。
下高井戸駅の南側は、日本大学をはじめとして高校や小学校なども多く文教の街として知られる一方で、北側は生鮮食品が豊富で食の豊かな街として栄えてきました。今回は北側に位置する下高井戸駅前市場へ。さらに、この商店街のお話を聞くべく訪れた「しもたかステーション」では、振興組合の石井健夫さんがお話を聞かせてくれました。(くみん手帖ライター/小野民)
[12月の特集]人情も新しさも!商店街で元気になる買い物を
下高井戸駅の北口を出ると、頭上に下高井戸駅前市場と書かれたレトロな看板が掲げられています。下高井戸商店街の一角、この看板の奥には今も昔ながらの市場が健在で、魚屋さん、豆腐屋さん、お茶屋さん、お惣菜屋さんなどが並び、なんとも“古きよき時代”の風情を醸し出しています。残念ながらシャッターを閉じてしまったお店もありますが、開店中のお店はどこも、元気にお客さんに声をかけていました。
新鮮そうなお刺身に、つくり立てのお豆腐、ひとつひとつのお店に魅力があり、目移りしながら市場内を歩きました。ぐるりと巡ると、鈴木食品店のおかあさんが、「いらっしゃい。どこから来たの」と声をかけてくれました。ここは魚介類を中心とした加工品と、手づくりの漬物やお惣菜が豊富に揃う食品店です。
日本全国から、おいしくて確かなものしか集めていない、と胸をはる鈴木食品店のおかあさん。個人商店の誇りを感じるこだわりのお店です。干物などの加工品は養殖でなく天然物の魚を使ったものですし、他の品々も長くやってきたからならではのルートで、集めていると言います。「12月はお歳暮の時期だから大忙しなの。でもね、必ずうちを知っているお客さんの注文しか受けないのよ。好みも分からないし、信頼が大事だからね」と、お客さんとの関係も丁寧に築いています。
鈴木食品店でファンが多いのはお惣菜。最近は、おとうさんがお惣菜担当で、素材にこだわり毎日手づくりしています。お店が開くと同時に、次々にお惣菜が並んでいきますが、お昼頃が一番豊富な品揃えとのこと。ほくほくのかぼちゃの煮もの、甘さとかたさが絶妙の煮豆、卯の花、きんぴら…豊富な品揃えで、お客さんの胃袋を支えているのです。
「遠くからわざわざ来るお客さんもいるし、たくさんの常連さんがいるからやっていられるの。安くておいしいものはなかなかない。それをなんとか無理のない範囲で実現しようとがんばっています。お惣菜も普通の家庭の料理だけど、気持ちが入っているからおいしいんだと思うよ」(鈴木食品店のお母さん)
店員さんの営業もいきいきと上手で、思わずたくさん買い物をしてしまったのは嬉しい誤算です。同じ市場の魚屋「三友シーフーズ」にも、新鮮なお刺身や鮮魚が豊富に並んでいました。
駅前市場を後にして向かったのは、同じく北口の駅前通り。こちらには人気のお肉屋さん「堀田」があります。コロッケとメンチカツを買って、サクサクとおいしいつまみ食いを楽しみます。さらに進むと下高井戸商店街振興組合の事務所でもある「しもたかステーション」がありました。
「商店街のことなら何でもこちらへ」とうたっているこの場所は、平成17年に組合員の出資でオープンしたというまちのステーション。気軽に利用できるのが嬉しい休憩所で、買いものや地域情報の掲示板、商店街で貯められるポイント(スタンプ)の交換、授乳スペースやおむつ交換台の設備まであるのです。
さらに、買い物途中で荷物を預けたり、買ったものを自宅に届けてもらったり、買いものに来られない人には、商店街の商品の宅配サービスまで請け負っています。大型店や便利なサービスに押されっぱなしかと思いきや、さまざまな世代のお客さんのニーズを満たしている商店街。きめ細やかに機能を拡充していくことで、新しい存在価値が生まれていることを知りました。
「下高井戸シネマがなくなりそうになったときは、商店街の振興組合の役員が、文化がなくなるといって立ち上がり、新会社を設立して運営を続けたこともありました。小中学校がすぐ近くにあるので、子どもたちが商店街をフィールドに体験学習をしたり、文化や教育を育んでいくことも商店街ができる役割のひとつです」(石井さん)
古くからの商店街が得意とするコミュニケーションと、新しいニーズに答えること。その両方を育んでいくことが、活気ある商店街を存続するカギのようです。
散策を終えてみると、この日の買いものは煮穴子、いかの和えもの、卯の花、納豆など、いろいろと買い込んでいました。どれを食べるにも商店街で聞いた軽快なトークが思い出されて、味わいが一層増すよう。小さな専門店の良さを体験し、便利なスーパーでは買えないものがあることを、しみじみと実感したのでした。
この記事に関連するタグ:2013年12月の特集, お買い物, 下高井戸, 下高井戸駅, 北沢エリア, 商店街, 外食・飲食店, 松原
東京生まれ、宮城育ち。大学卒業後、(社)農山漁村文化協会へ入会。バイクで全国行脚をする営業生活を経て、編集局に配属になり、食について扱う雑誌編集に携わる。退会後、フリーランスの編集者となり、広く《食べごと》を豊かにしていくべく活動中。
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