みんなの世田谷レポート

世田谷で行われたイベントやワークショップなどの体験レポート。くみん手帖編集部およびくみんライターが参加した感想や、当日聞いたお話、エピソードなどをご紹介。

2014.02.07

若き団体「tamagoPLIN」がシアタートラムデビュー!稽古現場レポート

三軒茶屋で生まれ育った私にとって、キャロットタワーや世田谷パブリックシアターはとても身近な存在です。実際に劇場で観劇をしたのは今までに片手で数えるほどですが、今回、くみんライターとして、若手育成プログラム「シアタートラム ネクスト・ジェネレーション」に選ばれた団体「tamagoPLIN(たまごプリン)」の練習風景を取材してきました。演劇初心者が見た「演劇がつくられる様子」のご報告です。他にはない、世田谷区民ならではの貴重な体験となりました。(くみんライター/遠藤久一郎)

シアタートラム ネクスト・ジェネレーションvol.6 tamagoPLIN『さいあい~シェイクスピア・レシピ』

シアタートラム ネクスト・ジェネレーションvol.6 tamagoPLIN『さいあい~シェイクスピア・レシピ』

ネクスト・ジェネレーションとは?

まずは見学の前に、今回の公演について、世田谷パブリックシアターの吉兼恵利さんから説明がありました。

「今日見学していただく『さいあい~シェイクスピア・レシピ~』は、世田谷区の芸術アワード“飛翔”受賞記念の公演で、第6回ネクスト・ジェネレーションに選ばれた作品として2/21~23に上演されるものです」(吉兼さん)

「シアタートラム ネクスト・ジェネレーション」とは、2008年に始まった、舞台芸術分野の若い才能の発掘と育成を目的にしたプログラムで、世田谷近郊を拠点に活動する若い団体に本格的な劇場(シアタートラム)で上演する機会を提供する、という主旨のもの。

「場所を提供するだけではなくて、技術面や制作面で全面的にサポートする、上演だけではなく作品を創る劇場がある世田谷区だからできる取り組みなんです」(吉兼さん)

今回、私と一緒に稽古場を見学するのは、高校演劇部の女の子2人。シェイクスピアの名作がたくさん登場するとのことですが、あえて詳しいストーリーは聞かずにさっそく現場へ。

世田谷パブリックシアター広報担当の吉兼さん

世田谷パブリックシアター広報担当の吉兼さん

シアタートラムの地下へ

シアタートラムの地下へ

野菜がシェイクスピア劇?

稽古場に入ると、まずメンバーが唄を歌っているシーンに

稽古場に入ると、まずメンバーが唄を歌っているシーンに

「これっくらいの・おべんと箱に・おにぎりおにぎりちょいと詰めて」のメロディに合わせて、替え歌の練習

「これっくらいの・おべんと箱に・おにぎりおにぎりちょいと詰めて」のメロディに合わせて、替え歌の練習

世田谷線三軒茶屋駅すぐ横、シアタートラムの地下に稽古場があります。私も一度だけ、『三茶de大道芸』という三軒茶屋のフェスティバルでボランティアのみんなと入ったことがあり、知る人ぞ知る三茶の地下空間です。

11人ほどのメンバーは、私たち見学者が顔を見せると、すぐに練習を再開しました。
突然何やら童謡のようなものを歌い出します。なんとその歌は数十年前の子育て時に、私が子どもたちと一緒に唄った懐かしいフレーズ。「これっくらいの・おべんと箱に・おにぎりおにぎりちょっと詰めて♪」……なぜこれがシェイクスピア?

後で聞くとメンバーはそれぞれ皆「野菜」の役とのこと。それも子どもたちが大嫌いな野菜たち(衣装は着けてないけれど、ピーマンの役なら緑色、ナスなら紫といった具合にそれらしい色の服を着ていました)。この野菜がセーラー服の少女と共に、シェイクスピアの名作を演じるのです。

「おべんとうばこのうた」に合わせて、盛んに上から降りてくる金・銀・アルミのお弁当箱を取る動作をあてぶりしています。どうやってその箱を

取るのか。その時野菜たちはどんな風に演じるのか。一人ひとりの動きをまさにこの場で決めていくところです。演出のスズキ拓朗さんのひらめきが、即座にメンバーによって演じられる。スズキさんがまた「いやこうだな」とさらに振りを自分でやってみせるとメンバーはすぐにそれを自分流に表現する。へぇ、演劇ってこんな風に作っていくんだな。台本通りにメンバーが表現するのだと思っていたけれど、私には驚きでした。

「ネクスト・ジェネレーション」は
仲間たちとの一つのゴール

こうしたやり取りが一段落して動きが決まると、軽快な音楽にのせて野菜と少女の群舞になりました。とたんに本番さながらの臨場感が目の前に現われました。かぶりつきで見てしまう迫力です。この作品、実は初演は3年前なんだとか。再演を繰り返し演じ慣れているはずなのに、今回シアタートラムのためにこんなに頭を使って作り変えているのだそうです。

団体名は「tamagoPLIN」とおいしそうな名前ですが、もともとは「たまご」というパフォーマンス集団と「CHAiroiPLIN」というダンスカンパニーが出会ってできたチームなのだそうです。

「この作品をシアタートラムで完成させることが、ひとつの目標でもありました。ネクスト・ジェネレーションは願ってもないチャンス。これだけ激しくダンスができるのは今の若さがあってこそなので(笑)」(スズキさん)

さもありなん。
最後にメンバーと私たち見学者との意見交流がありました。
ここにいるメンバーは全員桐朋学園芸術短期大学の出身者とのこと。同じ場所で学び、気心の知れた20~30代のメンバーが遠慮なく意見を言い合い、エネルギーをぶつけ合う様子はまさにネクストジェネレーションの息吹を感じます。

私と一緒に見学した高校演劇部の2人は、メンバーのはつらつとして躍動感いっぱいの練習風景を見ながら自分たちの未来に思いを馳せているようでした。若さはいいな。

どんどん振付けが決まり、みんな活き活きと動き出す

どんどん振付けが決まり、みんな活き活きと動き出す

動きの指示を次々と出していく演出・振付のスズキ拓郎さん

動きの指示を次々と出していく演出・振付のスズキ拓郎さん

スズキさんの横で、稽古を夢中に見ている私、遠藤久一郎

スズキさんの横で、稽古を夢中に見ている私、遠藤久一郎

ちなみに野菜の衣装の絵コンテを見て、「『チロリン村とクルミの木』みたいですね」と言ったら、若い人たちが誰も知らなかったのは思えば当然のことかもしれません。今年還暦になる私が幼少期に見ていた野菜を主人公にしたNHKのテレビ人形劇なのですから……。

今日見学した場面が、本番でどんな展開になるのか、今から楽しみです。

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紹介者プロフィール

遠藤久一郎

三軒茶屋で生まれ育って60年。「むねちか」という刃物・金物・DIYの店を営業しています。「お客様の話を良く聞いて、最も適切な方法や品物を提案する」ことをモットーにしております。そして「三茶周辺に住んでいる方がハンズに行く前に寄る店」と言い張っています。

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