2022.04.13
池尻 世田谷公園ミニSLがネーミングライツで生まれ変わりました!
せたがや公園キンカン三姉妹ミニSL、出発進行!
世田谷で行われたイベントやワークショップなどの体験レポート。くみん手帖編集部およびくみんライターが参加した感想や、当日聞いたお話、エピソードなどをご紹介。
3.11以降、節電ムードになったものの、私たちが使っているエネルギーは、電気だけではありません。熱や光、そしてもっと言えば、エネルギーは生き物や植物、風と水、台所や工場から出てくるゴミだって、エネルギーが循環しているのです。今回は、カトリック世田谷教会で行われたイベント「エネルギーは電気だけじゃない。探してみよう!身近なエネルギー」に参加。エネルギーをテーマに、世田谷区長の保坂展人さん、建築家の黒岩哲彦さんにお話を伺いました。(くみん手帖編集部/増村江利子)
エネルギーシフトの取り組みで知られる世田谷区長が、原発に頼らないエネルギー政策を進めているデンマークの新たな取り組みを視察。まずはその内容をお話してくださいました。
デンマークの南部にあるロラン島という離島では、使用する電力の5倍もの電力を風力発電でつくり、その余剰電力をつかって、水を電気分解して水素を取り出して家庭用の燃料電池に充填。バイオガス熱供給施設では、家畜の糞尿から発生するガスを取り出して熱供給と発電をしたり、藻から医薬品や化粧品、燃料をつくる研究研究をしたり、多面的なエネルギーへの取り組みがなされています。
長い間使われていなかった砂糖工場は「ビジュアル気候センター」として再出発。“科学の地球儀”と呼ばれる巨大な地球儀が置かれていて、アメリカの大気海洋局(NOAA)や航空宇宙局(NASA)の最新データが反映されているのだそう。3.11の原発事故の際、どのように放射能が広がっていったのかを“科学の地球儀”で見ることができるのですが、実際に映し出された映像からは、日本という尺度ではなく地球という尺度での汚染を目の当たりにしました。
他にも、子どもたちが自然のなかでのびのびと学ぶ「森の幼稚園」、出入り口近くにライブラリーがあり、市民みんなが利用する小学校、ゴミ収集車に頼ることなく、自分たちで運営するゴミのリサイクルセンターの紹介も。
いまや幸福度世界一とも言われるデンマークですが、このような持続可能な社会は、まちの人たちが、まちのことを人任せにせず、みんなで工夫をしながら自治をしているからこそつくれるとも言えるかもしれません。
次に、建築家の黒岩哲彦さんが、聞き慣れない「エクセルギー」という概念について、分かりやすくお話してくださいました。
エネルギーというと、つくる、使う…。つまり、使うためにつくらなければいけないのですが、エクセルギーは、そんなエネルギーの尺度を変えてしまう概念なのだそう。
エクセルギーとは、「広がり散らばりを引き起こす能力」をあらわす言葉で、物理学で定義されていますが、簡単に言うと“あらゆる生物や事象は、たえず何らかを生み出して、それを周囲に散らかしている”ということを指します。
例えば、生きるために食べ物を摂取すると、息や汗や排泄物として出している。つまり「散らかす」。排泄物が土に分解されたら、作物が育ち、また口にする。つまり、いったん散らかしたものを、「集める」。この「散らかす」「集める」を滞りなく、無駄なく行われるようにすると、地球環境にとっても私たちにとっても理想的な状態である、というのがエクセルギーの考えです。
エクセルギーの概念を上手に取り入れた家「エクセルギーハウス」は、東京都小金井市に「雨デモ風デモハウス」として建てられましたが、このエクセルギーハウスについても紹介を。冬は、屋根にのせた太陽熱温水器で雨水をあたため、そのお湯を床下に流し込んで放熱。その熱が天井や壁にふく射して、部屋全体が適度な温度を保ってくれます。夏は、窓を開け放ってこもった熱を排出。天井裏につけられた冷放射パネルが冷却効果を発揮。室温がさほど低くなくても、風があれば涼しいと感じるのです。
身近ないろいろなものに「散らかす」→「集める」→「散らかす」の循環はあるということで、会場の外でもレクチャー。まちという単位で、例えばクリーニング屋の隣にスパを建てたらエネルギーが循環するなどの提案も。エネルギーをわざわざつくらなくても、自然や生き物そのものが営みの力(=エクセルギー)を持っていることを知りました。
後半は、5人ほどでグループをつくり、身近なエクセルギーについて考えてみるワークショップが行われました。
例えば、太陽の熱をたくさん浴びた布団はあたたかくなっていて、その布団で暖をとるといったアイデアや、お湯を沸かしたら、やかんに布巾を掛けておくとすぐ乾くといったことまで、毎日の暮らしのなかで実践していることを振り返ってみると、それもエクセルギー!という発見が。
太陽は遠くにあるけど、日射というものは、私たちに直接あたるもの。電車で考えれば、線路はあっても、線路がつなぐ駅と駅は“隣り”。だから、太陽と私たちは“隣り”にある、と語ってくれた黒岩さんの言葉が印象的でした。
世田谷区では、区民のための始めやすい太陽光発電プランとして「世田谷ヤネルギー」があり、低価格な発電システムに加え低金利で利用できるローンが用意されていますが、こうした太陽光発電だけでなく、毎日の暮らしのなかで工夫できる「エクセルギー」という概念を合わせて、都会でもできる持続可能な暮らしはどのようなものか、工夫しながら、みんなで考えていく必要があるのだと思いました。
エクセルギーについてもっと詳しく知りたいなという方は、小金井の「雨デモ風デモハウス(現在は環境学習館に名称変更)」の見学会があるようです。ご興味のある方は、ぜひ足を運んでみてくださいね。
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世田谷エネルギーシフト みんなの未来の教室
「エネルギーは電気だけじゃない。探してみよう!身近なエネルギー」
デンマークとエクセルギーハウス
主催
トランジション世田谷 茶沢会
世田谷みんなのエネルギー
せたがや市民エネルギー合同会社
助成
公益信託世田谷トラストまちづくり
カリタス下北沢
この記事に関連するタグ:2014年2月の特集, せたがや市民エネルギー合同会社, イベント, エネルギー, カリタス下北沢, トランジション世田谷, 世田谷みんなのエネルギー, 公益信託世田谷トラストまちづくり
増村 江利子
国立音楽大学卒。Web制作、広告制作、編集を経て現在はフリーランスディレクター。一児の母。主なテーマは、暮らし、子育て、食、地域、エネルギー。毎日を、ちょっぴり丁寧に暮らしたいと思っています。
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