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くらしの世田谷

世田谷での暮らしを、よりよいものにするための情報。区民の衣食住に関わる取り組みやサービス、町の景観、子育て、町づくり、多世代交流の話など。

2013.11.12

緑豊かな和の邸宅に誕生した、今までにないシェアオフィス

世田谷区上馬。閑静な住宅街として知られたこの場所で、今までにないシェアオフィスが生まれました。「THE FORUM 世田谷」と名付けられたその場所は、鳥の声や風の音が聞こえ、まるで別荘のような佇まい。広大な庭、和モダンなしつらえ……従来のオフィス環境とは異なる独特の空間は、どのようにして生まれたのでしょうか。運営しているシェアカンパニーの前川佳美さんと、入居者であるアースケイプの荒木宗一郎さんに話を伺いました。
[11月の特集] 人と街がつながる、世田谷のコミュニティ

荘厳な門構え。世田谷の住宅街にひっそりと建つ邸宅のなかに、今までにないシェアオフィスが広がる

荘厳な門構え。世田谷の住宅街にひっそりと建つ邸宅のなかに、今までにないシェアオフィスが広がる

建物としての魅力を最大限活かすリノベーション

延べ床面積400平米以上、築50年のこの大邸宅は、経済学者野田一夫さんのご自宅として使われていました。住居を他に移した後も、愛着のある我が家を手放すことなく、外国人家族に貸すなどしていたという野田さんは、人づてに、古い物件を活かしつつ、リノベーションし、新たに再生させる事業を展開する「シェアカンパニー」代表取締役の武藤弥さんのことを耳にし、この上馬の自宅について相談。
当初はシェアハウスとして活用することも考えましたが、“家”となると、やはり閉ざされた空間になってしまうもの。それよりは、この庭、この邸宅の魅力を最大限活かすにはどうしたらいいかと考えた時、“シェアオフィス”にしようという企画が浮上しました。

2011年に秋に企画が動きだし、リノベーション。2012年8月にオープンしたこの「THE FORUM 世田谷」は、オフィス部分は2Fに6室と、キャレルと呼ばれる共有タイプのスペースが12区画あり、1Fには広々としたラウンジやミーティングルームなどのサロンスペースが設けられています。

部屋から望める中庭は、お月見や流しそうめんなど、入居者同士の交流の場にも

部屋から望める中庭は、お月見や流しそうめんなど、入居者同士の交流の場にも

1階にあるミーティングスペースもゆったりとした雰囲気。入居者は1日2時間まで無料で使える

1階にあるミーティングスペースもゆったりとした雰囲気。入居者は1日2時間まで無料で使える

天井も高く、暖炉もあったり、もともとの良さや間取りも、残すべきところは残し、そのまま活かしながら、2階のオフィス部分はがらりと様変わり。荒れていた庭も手入れをして、生まれ変わったのだそう。

自然豊かな庭とともに

シェアカンパニーの前川佳美さんは、「The FORUM世田谷」の担当。一目見てこの場所を気に入ったという

シェアカンパニーの前川佳美さんは、「The FORUM世田谷」の担当。一目見てこの場所を気に入ったという

ヨガやワークショップなどが開催されるサロンスペース。大きな窓からは中庭が見え、開放感たっぷり

ヨガやワークショップなどが開催されるサロンスペース。大きな窓からは中庭が見え、開放感たっぷり

どこからも中庭をのぞめる贅沢な空間は、おおよそオフィスとは思えないほど。
「庭には池があって昔は鯉もいたそうです。天然の井戸もあって、1日1時間だけ滝が出るようにしました。これからの季節はもみじが真っ赤になって、四季折々の緑を愛でることができるんです。庭を眺めながら過ごせるオフィスなんていいですよね」とシェアカンパニーで「THE FORUM 世田谷」を担当している前川さんは言います。

恵比寿の一軒家を事務所として借りていたというアースケイプは3月から入居。ランドスケープデザインの会社で、社員は8名。「自然を扱ったり、人が感動したりするアートワーク」を担当したりする彼らは、一目見て「この物件だ!」と思ったといいます。
「決め手は庭でしたね。自然が近くにあるというのがとても大きくて。朝から夜まで刻々と光の射し方が違っていくんです。そうして1日の流れを感じることができる。池のオタマジャクシが孵って、小さいカエルがぴょんぴょん飛んでいていたり。そんなところにも、小さな自然の変化を感じることができる。忙しい仕事の合間でも、この場所にいることで、しっかり生きられているという実感を得られるのは大きいですね」(アースケイプ・荒木さん)

おもしろい物件にはおもしろい人が集まる

今までにない、自然に囲まれた邸宅でのシェアオフィスは、運営会社であるシェアカンパニーでも初めての試みでした。住宅街という立地、駅からも徒歩15分で通勤にもやや不便、広大な庭やスペースは管理も大変で、不動産的な常識や収益性から考えると難しい物件なのは言うまでもありませんでした。
しかし、この物件と出会ったシェアカンパニーの武藤社長は、なによりも「おもしろい!」と思ったのだといいます。
「やはり建物自体の魅力がありました。私も初めてこの物件を見た時、感動しましたね。“箱”がおもしろければ、おもしろい人が集まってくる。人が集まれば何かが生まれるはずという思いがあったんですね」(シェアカンパニー・前川さん)

何かが生まれる可能性、人が集まることで生まれるコミュニティ……。
それは、かつて野田一夫さんが70年代に始めたという、若い起業家の人々が集まるためのサロン「フォーラム」の思いと重なります。若かりし頃の孫正義氏も出入りしていたというそのサロンでは、さまざまな業界の若手起業家が集まり、交流。それが現代によみがえり、「THE FORUM」として名を継承し、新たなコミュニティの場として再生しつつあるのです。

キャレルと呼ばれる共有スペースが12区画。デザイナーなどのクリエイターの方々が入居

キャレルと呼ばれる共有スペースが12区画。デザイナーなどのクリエイターの方々が入居

セミナーやパーティも開催されるサロンは、入居者だけでなく外部からのゲストとの交流の場にも

セミナーやパーティも開催されるサロンは、入居者だけでなく外部からのゲストとの交流の場にも

暮らすように働ける場所

入居しているアースケイプの荒木宗一郎さん。「忙しくてもゆとりを持って仕事できるのはすばらしい」

入居しているアースケイプの荒木宗一郎さん。「忙しくてもゆとりを持って仕事できるのはすばらしい」

デザイナーの野本綾子さんはほかの入居者と仕事をすることになったそう。それもシェアオフィスの醍醐味

デザイナーの野本綾子さんはほかの入居者と仕事をすることになったそう。それもシェアオフィスの醍醐味

オフィスというよりは、まるで誰かのお宅のような居心地のいい雰囲気。暮らすように働ける場所

オフィスというよりは、まるで誰かのお宅のような居心地のいい雰囲気。暮らすように働ける場所

「いろんな方がいて、緊張感があっていい」というアースケイプの荒木さん。
入居者は、ヨガスタジオを経営する会社や、クリエイターなど計24名。1Fの共用スペースでは、さまざまなイベントが開催され、入居者による企画イベントもあったりと、新しいカルチャーが生まれています。

「スタッフ同士のコミュニケーションもよくなったんですが、それはやっぱり、この環境のなせる技。入居者の誰かが食事を作ってくれた時、声をかけてくれて、一緒に食べてほっとしたり。もちろん、ほかの入居者の方と一緒に仕事をしたりも。社内のスタッフだけよりも、風通しもよくて、流れて、巡って、循環している感じがありますね」(アースケイプ・荒木さん)

「小さく借りて、大きく使う」と荒木さんが言う通り、それがシェアオフィスの一番のメリット。単なるオフィスを借りるだけじゃない、そこに付属するものの大きさは計り知れません。

場所が与えてくれる人との交流や、心のゆとりは、次の仕事へもつながっていくはず。それこそが、「THE FORUM 世田谷」の最大の魅力なのではないでしょうか。

「今後はイベントやワークショップなどを企画して、他の入居しているクリエイターの方とおもしろいことを仕掛けていきたい」という荒木さん。
現在、入居者募集中。ここで生まれる新たなコミュニティに、あなたも加わってみませんか?

(撮影:渡邉和宏)
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THE FORUM 世田谷
[住 所]世田谷区上馬5-15-15
[電 話]03-6455-5012(シェアカンパニー)
[ホームページ]
http://the-forum.jp/
[株式会社シェアカンパニー]
http://share-company.com

[11月の特集] 人と街がつながる、世田谷のコミュニティ

施設概要

  • 東京都世田谷区上馬5-15-15
    住所: 世田谷区上馬5-15-15
    電話番号: 03-5367-4611

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紹介者プロフィール

薮下佳代 (やぶした・かよ)

大阪府生まれ、世田谷区上馬在住。新聞社、出版社を経てフリーに。現在は、雑誌やウェブなどの執筆・編集を手がける。特に、おいしいもの、おもしろいものに目がなく、街歩き取材が大好き。2011年、編著『TOKYO ISLANDS 島もよう』(エスプレ)を手がけた。

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