2023.03.30
世田谷発!まったく新しいタイプの絵カード「オノマトペカード」
まったく新しい絵カード「オノマトペカード」が、子どもの発語に悩みを抱えている家庭や、子どもの発達を支援している言語聴覚士などの専門職の方々、療育施設などから注目されています。この「オノマトペカード」は、長年子どもたちの言語・コミュニケーションの発達支援に従事している言語聴覚士の石上志保先生が考案したものです。
世田谷での暮らしを、よりよいものにするための情報。区民の衣食住に関わる取り組みやサービス、町の景観、子育て、町づくり、多世代交流の話など。
三軒茶屋、下北沢、二子玉川・・・全国的にも有名な地域が集まる世田谷区にも、古くから続く小さなお店や商店街があります。もともと地元ではない人も多く暮らしているだけに、世田谷という地域とつながるきっかけがないまま過ごしてしまう人は少なくありません。世田谷と世田谷に暮らす人の「顔」をつなぐ取り組みを紹介します。
「三軒茶屋」の地名は、その名の通りかつてその土地に三軒の「お茶屋」があったことに由来しています。人口88万人が暮らす世田谷区には三軒茶屋のように全国的にも有名な地域も多く、いわゆる「地域活性」という言葉からは遠く思えてしまうもの。しかし、誰もが知っているエリアでも、路地に入るとシャッターが閉じた通りや、知らなければ通りすぎてしまうような小さな商店も数多く存在しています。
そんな世田谷では、ここをひとつの「地域=ローカル」と捉え、地域と人とのつながりを深めようとする取り組みが行われています。今年の2月と5月に連続開催された「世田谷ビジネス伝承フェア」は、世田谷地域に根付く地域ビジネスの実情を知り「廃業」から守ろうとするイベント。2月のトークイベントには、若い女性からご年配の方まで地域に興味のある幅広い層が集まり、イベントを主催する特定非営利法人カプラー代表の松村拓也さんによる司会進行のもと「世田谷のビジネス」について語り合われました。
区内でさまざまなビジネス講座を開催している松村さんは「仕事は社会の財産であるという考えがありますが、ビジネスそのものも社会の財産です」と語り、「ビジネスの廃業には”儲からないこと””跡継ぎがいないこと””将来性がないこと”の3つが原因にあります。人口88万人が暮らす世田谷区でも、跡継ぎがみつからずに廃業することや、将来性がないために諦めてしまうことが多いんです」と世田谷に存在する課題を提示。「地域の財産を守るために、まず問題を話すことが重要です」と語ります。
「ビジネス伝承フェア」では、実際に地域ビジネスを営んでいるご本人がその実情について語ります。太子堂にある銭湯「八幡湯」の金山喜久雄さんは、銭湯の旦那衆が集まって民謡や踊りを披露する集団「銭湯ダンナーズ」のひとり。銭湯という商いについて「うちの銭湯では毎日徹底的に掃除をやっております。自慢ではないけど世田谷で一番きれいな自信もあります」と陽気に語りながらも、近年の状況について「かつては都内に2800件も銭湯があり、日曜日は1000人、平日でも600〜700人ものお客さんが来ていて、それぞれが儲かっていました。しかし最近は1日に100人も来ないことがある」と厳しさを語りました。
下北沢で代々続くお茶屋を営んでいる「しもきた茶苑」の大山泰成さんは、一般には聞き慣れない「茶師」としても活躍される方。「かつて下北沢もお茶の産地だったことがありました」と、お茶と地域を知る大山さんの話では、黒船来航から海外への輸出品として栄えはじめたお茶は、昭和30年代頃から国内消費がはじまったことで「お茶屋」が増加したとのこと。しかし、昭和20〜30年代には下北沢だけで10軒以上あったお茶屋も、今は2軒になったと言います。
「お茶屋の繁栄はここ50〜60年の繁栄のことだから、なくなることもある。自分が努力しなければ消えてしまうこと、私たちは肝に命じながらビジネスをしています」と、厳しさを冷静に語りながら仕事人としての熱も伝えてくれました。
「ビジネス伝承フェア」ではスピンアウト企画として、5月に「しもきた茶苑」を訪れてのお茶会も開催しました。お茶会で大山さんは、日本に9人しかいない茶師のひとりとして、普段はなかなか知ることができないお茶屋のことや、美味しいお茶の飲み方を披露し参加者からは「スーパーで買うだけでは分からない貴重な話が聞けた」と好評を博しました。
きっかけさえあれば「こんなに身近にプロフェッショナルがいたんだ」と心強く感じられる、すぐそばにある銭湯やお茶屋も知らないままだとつい通りすぎてしまい、お互いの存在をなんとなく知らないまま無関心になってしまうもの。
「ビジネス伝承フェア」を運営する皆本徳昭さんは「震災以降、多くの人が自分の足元をみるようになりました。実際、震災時にはスーパーからお米がなくなりましたが、お米屋さんにはお米がたくさんありました。でも、お米屋さんは常連さんに売れるようにシャッターは閉めていた。それが地域にとって何よりのセーフティネットだと思います。インターネットに出ているだけじゃなく、本当の意味で”顔が見えているか”が大事です」と人と地域がつながることの大切さを語ります。
世田谷区には日本全国からの転入者も多く、もともと地元ではない人も多く暮らしている分、世田谷という地域とつながるきっかけがないまま過ごしてしまう人は少なくありません。「伝承フェアは、地域で商売をする方と地域に暮らす人が知り合う機会にもなります」と皆本さん。
こうしたきっかけが、世田谷の課題を解決するひとつ方法となり、世田谷と区民のよりよい関係を築いていくはず。「これまでは商店街にお店を出している方が、どんなことを考えているか分からなかったけれど、もっと相談すればいいんだと思った」という参加者の声にも、取り組みへの期待が現れていました。
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