2021.09.09
下北沢 屋外のピアノコンサート、人の出会い・交流するシモキタまちピアノ
再開発でますます活気づき、新しい顔を見せる下北沢。その駅前近く、ビルのオープンスペースにある誰でも弾けるピアノは、行き交う人々に憩いのひとときを奏でてくれます。
世田谷で行われたイベントやワークショップなどの体験レポート。くみん手帖編集部およびくみんライターが参加した感想や、当日聞いたお話、エピソードなどをご紹介。
世界ふぐ協会×下関ふく連盟×IID 世田谷ものづくり学校が共催した「TOKYOふぐ・プチフォーラム」。世界ふぐ協会ってなに?ふぐって免許がなくても扱えるの?と「?」だらけですが、妙に気になるイベントに参加してきました。ふぐ、足を踏み入れてみると結構奥が深いです。
4月18日、IID 世田谷ものづくり学校にて、「世界ふぐ協会」によるふぐ三昧のイベント「TOKYOふぐ・プチフォーラム」の第二部が開催されました。イベントの内容に触れる前に、そもそも「世界ふぐ協会」って何?という素朴な疑問が浮かぶのではないでしょうか。
世界ふぐ協会会長は、設立者でもあるわたなべゆかさん。行政書士が本業ながら、ふぐに関してはなみなみならぬ愛情を持っておいでです。というのも、この世界ふぐ協会設立のきっかけは親孝行。昨年10月の東京都ふぐの取扱い規制条例の改正で東京の飲食店では身欠きふぐ(有毒部位が確実に除去されたふぐ)を扱えるようになったものの、その条例は全国共通なわけではありません。
そこでわたなべさんは、千葉県内で料亭を営んでいるお父さんの「ふぐをお店で出したい」という願いを叶えるべく、「世界ふぐ協会」を立ち上げました。この協会の活動を通してふぐが身近な食材になれば、条例改正に向けて弾みがつくはず、というわけです。
世界ふぐ協会では、昨年も下北沢でふぐの食べ歩きイベントの企画や、ふぐを食べる女子会を行い、ふぐファンを広げる活動をしてきました。
今回の「TOKYOふぐ・プチフォーラム」は、二部構成での開催。第一部は実演と実食をメインに料亭で行われ、平日の昼間にも関わらず、14名もの人が参加しました。IID世田谷ものづくり学校に場所を移しての第二部も、27名の参加者が集まりました。まず始めはふぐについての講義。全く未知だったふぐの世界を垣間見る、大変楽しいお話が進んでいきました。
参加者は、ふぐについては初級者がほとんど。講義の導入ではまず、ふぐは「食べておいしい、知って楽しい、飼ってかわいい」と三拍子揃った希有な存在なのだと、わたなべさんが、力強く宣言しました。この日は日本最大のふぐ団体「下関ふく連盟」の事務局長・時田詩夕さんも加わり、ふぐ食の歴史についてのお話をしてくださいました。
驚くべきことに、縄文の遺跡からもふぐの骨は発見されるそう。つまり、6,000年も前から日本人はふぐを食べてきたのです。「有毒部分を器用に取り除いてでも食べたいという日本人のマメさを感じますよね。ふぐを食べることで日本人が食べることに対して培ってきた文化や歴史、技術の進化をたどれるのです」とわたなべさんは言います。中国から渡来した食べ物が多い日本において、ふぐ食はオリジナルな日本の食文化なのだと初めて知りました。
休憩をはさんで後半では、時田さんが身欠きふぐのてっさのひきかたを実演してくださり、参加者も実際にてっさひきを体験しました。
一匹6,000円程度で買える身欠きふぐは、家族4人で分け合ってちょうどいい量。お値段的にも量的にも、自分でさばいてふぐパーティー、なんてことは意外と身近なのです。
まずは時田さんの包丁さばきを拝見。パック詰めされた身欠きふぐの薄皮をとり、丁寧に3枚に下ろし、そこからてっさにひいていきます。ひいた身は、盛りつけも大事。お皿にきれいに並べると、高級料亭のお皿を眺めているようで見とれてしまいました。
「ではみなさん、やってみましょう」と時田さんに声をかけられ、皆、おそるおそるさくになったふぐの身に包丁を入れはじめました。「ちょっと包丁を立てるようにして、そこからは無理にひかないで」などと声をかけられながら、参加者それぞれが包丁をぎこちなく動かしました。結果、皿の中のてっさは、整然と並んでこそいませんでしたが、細ねぎを添えたら、すっかりそれらしくなりました。
てっさが机に並ぶと同時に、ふぐの炊き込みご飯、山口県の日本酒まで並び、ここから宴会気分の楽しい交流会となりました。実際に自分たちでひいたてっさのお味はというと、淡白ながらもうまみがぎゅっとつまっている感じ。細ねぎをふぐの身にはさんで、ポン酢醬油や少しぴりっとした辛みのあるたれにつけて口に運ぶと、噛むほどに魚と肉の中間のようなおいしさがじわっと広がっていきます。河の豚と書いて「ふぐ」を今更ながら実感しました。
最後に、参加しているみなさんにもお話をうかがうと「ふぐには毒があるからと避けてきましたが、こんなに簡単に安全に味わえるんですね」「ふぐがおいしいのは知っていたけれど、こんなに歴史や文化の話がおもしろいなんて意外。自分で切って食べるふぐは格別でした」など、ふぐの世界に足を踏み入れたばかり、といったコメントが多い中、「世界ふぐ協会が主催する下北沢でのイベントで、ふぐの子のピザを食べて以来、ふぐイベントがあれば参加しているんですよ」なんていうふぐの魅力にはまりつつある女性もいらっしゃいました。
世界ふぐ協会は、じわじわとふぐの「食べておいしい、知って楽しい、飼ってかわいい」魅力を広めているのだと、参加者の満足げな顔が証明していました。
「ふぐだから語れる日本の食文化の奥深さや、歴史的背景など、おいしさ以外の魅力もたっぷりあるからふぐはすごい。東京を中心にふぐを食べる文化を盛り上げていくことが、身欠きふぐの解禁だけでなく、日本の食文化の理解につながるんです」と、わたなべさんの目標は親孝行にとどまりません。「4月で一旦ふぐ漁の季節は終わるのでイベントは少し休んで、11月からまたふぐを広めるイベントをしていきたいですね。ふぐは、種類によってリーズナブルなものもあるし、食べ方もいろいろ。特にふぐになじみのない若い世代に上手にアピールしていきたいです」と意気込みます。掘ればまだまだ深そうなふぐの文化や歴史、科学に食べ方。飽くなき探求を続ける「世界ふぐ協会」の今後の動向が楽しみです。
世界ふぐ協会
http://globalglobefishassociation.org/
渡部由佳(世界ふぐ協会・会長)
1982年生まれ。行政書士。実家は千葉で和食居酒屋を営む。
2012年7月、東京都ふぐ取扱い条例一部改正を契機に「世界ふぐ協会」を設立。多くの飲食店従事者にフグ条例改正をお知らせし、同時に日本の食文化の代表でもある「ふぐ食」を多くの方々に紹介するため活動を開始。
千葉、埼玉、神奈川でも「身欠きふぐ」条例を改正すべくフグ盛上げイベントを開催中!
その他、行政書士としてNPO法人、社団法人等の設立サポート、地域の方々に向けて遺言・成年後見セミナー等を行っている。
この記事に関連するタグ:イベント, 三軒茶屋, 三軒茶屋駅, 世田谷ものづくり学校, 世田谷エリア, 文化・歴史・芸術, 池尻, 池尻大橋駅
東京生まれ、宮城育ち。大学卒業後、(社)農山漁村文化協会へ入会。バイクで全国行脚をする営業生活を経て、編集局に配属になり、食について扱う雑誌編集に携わる。退会後、フリーランスの編集者となり、広く《食べごと》を豊かにしていくべく活動中。
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