2021.08.10
山下・豪徳寺 沖縄陶器やちむんを求めて「うつわのわ田」
店主自ら日本中の産地へ赴き、目利きし選んだ器は、日々の食卓をさらに美味しく彩る力が備わっているようです。
世田谷にはたくさんの「訪れたい場所」がある。古くから愛されてきたお店や、知る人ぞ知る穴場など、地元の情報をご紹介。思い出に残る昔の世田谷から今の世田谷まで。
「せたがや百景」にも選ばれた風光明媚なお寺「世田谷山観音寺」(通称、世田谷観音)。月に一度の朝、地域の人々で賑わう日があります。毎月第二土曜日の朝6時から8時まで開かれている朝市です。2007年から始まり、コロナ禍でいったん中断したものの、昨年から再開されました。
まだ薄暗い明け方。世田谷観音に、次から次へとトラックが静かに入っていきます。出店者たちに、世田谷観音住職太田兼照さん(以下太田住職)が1台1台丁寧にご挨拶していきます。次々と車が到着し、夜明け前の境内が、賑やかになりました。
次々に荷物が運び出され、山積みになっていきます。世田谷観音は住宅街にあり、大変閑静な地域です。三軒茶屋の駅からは徒歩で15分以上かかり、周囲には大学や高校などがいくつもある広々とした場所です。大きなお屋敷も多く、閑静な住宅街です。
世田谷観音の境内は、正門から入ると本堂に向かってまっすぐ参道が伸びています。その手前に仁王門が建てられています。正門からその仁王門までの場所が朝市の主な会場です。正門左手にある本坊では、魚やちくわなどの加工品が所狭しと並びます。わずかな間で、20店舗ほどの市場ができました。
世田谷観音朝市の開始時間は、6時からですが、準備が整いつつある5時半頃には、たくさんの人が列をつくっていました。早朝から、みなさん軽装で、朝のお散歩のついでといった雰囲気です。若いご夫婦からお子様連れ、シニアの方まで多様な年代の方が来ています。控えめに、でも楽しそうに話しながら待つみなさんの前にご住職が立ち、朝市のスタートを告げるとともに、待っていた人々が一斉に買物を始めます。どうやら、それぞれお目当ての店があるらしく、一直線にその店に向かう人もたくさんいて、それぞれのお店の前に、長い行列ができます。「今回も、あれはあるかしら」「先月買ったものが、とても美味しかった」と、お店の方との会話も弾んでいます。静かだった境内は、あちらこちらで笑い声や楽しそうな声が飛び交い、大変賑やかです。
スタート前から並んでいた人々のお買物で、ほとんどの商品が売れていきます。6時半を過ぎた頃には、売切れの店も出てくるほどです。スタート直後にお目当てのものを買いに来ていたあわただしい人波も一旦引くと、お店の方もホッとするのか、その時間から来場されたお客様と、のんびりとした雰囲気の朝市になりました。各お店で味や素材、美味しい食べ方などの会話が弾むと、隣のお店の方も会話に加わり、気づくとそこに太田住職も混ざって話していたり。そんな垣根のない会話の輪が、あちこちで広がっています。
山門脇で玉子を売っていた「土井商店」は、空き箱を四角く積み上げて、顔を出して売るようなスタイルでとてもユニークです。親子で参加されていて、接客は主にお父さんが担当。朝市に来た方に積極的に声をかけ、卵の美味しい食べ方などを上手に説明し、売切れ寸前となっていました。
焼き菓子の店「シモウマシフォン」の石井さん。手作りのシフォンケーキを売っています。もう10年近く朝市で販売していて、常連のお客様もたくさんいる人気店。向かい側のお店の赤ちゃんを抱っこする石井さん。お店の方同士も毎月顔を合わせて親しく、会場全体がとても暖かい雰囲気です。
多くの鉢植えが並ぶ植木屋「塩川花風園」さんもあります。色とりどりの可憐な花が咲いている鉢や、花苗が並んでいます。そのどれもが「塩川花風園」のご夫婦が、種から大切に育てているそうです。「この花めずらしいの。花弁が八重になっているでしょ」などと、わが子のようにその花の個性をたくさんお話しながら、お客様に対応されていました。
早々に売り切れて、すでに机の上を片付けてしまったお店もあります。世田谷の練り物の店「や亀や」です。少し前まで世田谷駅近くに店舗があったので、朝市に出るのが難しかったそうです。通販がメインとなった今では「や亀や」の練り物を、対面で買える朝市の機会は、貴重になりました。小麦粉や卵を使わず、丁寧に手作りされた練り物は大人気で、開店早々に売切れてしまいました。「今日はめずらしく息子が手伝っています」と、お父さんは嬉しそうです。
スパイスや珍しい調味料が並ぶ「&shop」は、通常ECサイトでしか買えないお店。朝市では実際に見て手に取ることができます。カレーのスパイスキットは、その売り上げの一部がバングラディッシュの子どもに寄付され、子ども一人の一か月分の教育費になるそうです。
ずらりとお魚が並んでいるお店「塩田水産」は、千葉の九十九里から来ているそうです。自家製の味醂干しや丸干し、酢漬けは数種類並び、300円~350円と買いやすい価格で、たくさんの人が足をとめています。
千葉から世田谷観音朝市に参加するには、夜明け前から出発して来ます。その大変さに一度は参加を断念していた時期もあるそうです。それでも、なんとか再開してほしいという太田住職の願いが届き、再開。今では世田谷観音朝市に、なくてはならない人気のお店です。
女性が一人で美味しそうなパンをずらりと並べて販売しています。パン屋「salut!!」です。玄米食パンや、バケット、レーズンバターやチョココロネ、クロワッサンダマンドなど甘いパンもあって、豊富な種類が魅力的です。焼きたてです、という店主さん。この朝市の時は、真夜中からご主人がせっせとパンを作って準備してくれているとか。
スタートの喧騒から、緩やかな落ち着いた時間を経て、次々に売切れになったお店が片付けを始め、あっという間に終了。8時になりました。
手際よく片付け、「また来月!」と次々に出店者の車両が出発します。太田住職が一台一台に駆け寄って、大きな声で丁寧に感謝を述べます。どの車にも、遠ざかるまで頭を下げて見送られていた姿がとても印象的でした。
机だけが残されてガランとした境内で、太田住職に、なぜ朝市を続けているのか聞いてみました。
「お寺は本来、寺子屋のように地域の人が気軽に訪れて学んだり繋がったりする場所でした。朝市の出店者は全て私が、実際に食べて“これは美味しい!”と思った店だけに交渉し、出店してもらっています。地域のみなさんに、喜んでいただきたいので、美味しくて値打ちのあるものを探しています。世田谷観音はお墓をもたない寺なので、朝市を通じて地域のみなさんに足を運んでいただけて、有難く思っています。皆さんが楽しいといってくださって、私も嬉しいです。」(太田住職)
世田谷観音の朝市では、たくさんの「おはよう」が聞こえてきました。早朝の涼やかな空気の中、買いものを楽しみ、近所の人や馴染みの人と顔を合わせる。境内の大きな木の木漏れ日や、鳥の声でリフレッシュし、色々な方とのおしゃべりも弾みます。朝市の開始は6時からと早いのですが、早起きは三文の徳といいます。みなさまも、世田谷観音の朝市を訪れてみませんか?
住所: | 世田谷区下馬4-9-4 |
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電話番号: | 03-3410-8811 |
営業時間: | 平日 開門 6:00 閉門16:00、土日祝日 開門 6:00 閉門12:00 |
URL: | http://www.setagayakannon.com/ |
その他: | マスクの着用をお願いしています |
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ハイコラ
ママさんライター
子供からシニアまで支え合える地域づくりを目指し、「おむつ替えMAP」の制作、「親子ぼうさいプロジェクト」、「せたがやこども弁当」等の、親子と地域を繋ぐ子育て支援活動しています。;
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