みんなの世田谷レポート

世田谷で行われたイベントやワークショップなどの体験レポート。くみん手帖編集部およびくみんライターが参加した感想や、当日聞いたお話、エピソードなどをご紹介。

2014.02.17

中高生の居場所「オルパ」で生まれた学校以外の人とのつながり

世田谷区の中高生世代活動支援モデル事業として、平成25年6月から平成26年2月末までの期間限定で千歳烏山駅前にオープンした「中高生世代応援スペース・オルパ」。こちらの記事で取り上げたように、中高生世代の放課後の居場所として賑わっています。閉館となる2月末の活動の区切りを前に、利用者と地域の方々による「オルパ 地域ディスカッション」が1月26日に開催され、8ヵ月間の活動を振り返りました。そこでは、中高生と共に地域活動を繰り広げたオルパの秘密が明らかになりました。(世田谷くみん手帖ライター/田中理帆)

どうしたら入りやすい玄関になるか、中高生利用者による運営委員会が相談を重ねて工夫を凝らしています

どうしたら入りやすい玄関になるか、中高生利用者による運営委員会が相談を重ねて工夫を凝らしています

家でも学校でもない中高生世代の居場所を街に

オルパは、千歳烏山駅前にある信用金庫跡の空き店舗を利用してできた中高生世代のための放課後スペース。世田谷区による中高生世代活動支援モデル事業として2月末までの期間限定で開設されました。お弁当を食べたりおしゃべりができるフリースペース、音楽室、ダンス室、ゲーム室などからなる、家でも学校でもないこの第3の居場所を、オープンから12月末までの7ヵ月間に、1日平均約30名、延べ4,900名の生徒が利用してきました。

地域ディスカッションには、中高生運営委員会の中高生6名と、保坂展人世田谷区長、入澤充国士舘大学教授、烏山駅前商店街振興組合副理事長の田中省一さん、世田谷区青少年委員会会長の宇佐美武志さん、世田谷区青少年烏山地区委員会会長の碓井博子さん、オルパを運営するNPO法人せたがやっこ参画推進パートナーズ(通称:せたさん)理事長櫻井龍太郎さんがパネリストとして登壇。場所づくり研究所プレイス代表取締役の福永順彦さんによるコーディネートで進行しました。

青少年育成の専門家であるパネリストの方々も、オルパで見せた中高生の成長に目を見張っていました

青少年育成の専門家であるパネリストの方々も、オルパで見せた中高生の成長に目を見張っていました

オルパでの試行錯誤と成果を生かして、今後も若者支援を進めていくと話す保坂展人区長

オルパでの試行錯誤と成果を生かして、今後も若者支援を進めていくと話す保坂展人区長

たくさんの仲間、地域の人と出会えたオルパ

大勢の観客の前で、利用者を代表する中高生一人一人が自分の言葉でオルパでの体験を語りました

大勢の観客の前で、利用者を代表する中高生一人一人が自分の言葉でオルパでの体験を語りました

暑さの中、子どもたちにもみくちゃにされながらぬいぐるみを着てがんばった夏祭り

暑さの中、子どもたちにもみくちゃにされながらぬいぐるみを着てがんばった夏祭り

ディスカッションは、オルパを利用していた中高生によるコメントから始まりました。

「オルパでは、学校生活では出会えないような、いろいろな人とのつながりが持てたことが良かったことです」(高校2年生 Aさん)

「中高生のために本気で動いてくれる大人がいることを知ったことが財産。将来は自分もこのような活動に協力したいです」(高校1年生 Bさん)。

「自分は人見知りで学校ではなかなか友達ができなかったけれど、ここではみんな話しかけてくれるし、とても自然に家族のように話をすることができました」(中学3年生 C君)

C君の言葉に、スタッフが「がんばったな!」と声をかける場面も。

開設当初、子どもたちが群れて悪いことをするのではないか……地域からはそんな声も聞こえたそうですが「地元に溶け込んでいい関係が築けた」

と話すのは、商店街振興組合の田中さん。夏祭りなどの地域行事に積極的に参加し、高齢化が進む街の頼れる力になってくれたそうです。

「運営や地域に関わり、中高生はどんどん積極的になりました。行動すれば何かが変わるという経験を積み重ねた8ヵ月でした」と、現場で中高生をサポートしてきた櫻井さんは語ります。

居心地のよさはコミュニケーションに秘密が

パネリストたちからもそれぞれコメントがあった上で、保坂区長がこう質問しました。

「こういう場所を運営する上で難しいのは、訪れる人が常連化したり固定化することだと思うんです。それが最終的に7ヵ月で5,000人近くの生徒さんが来てくれたというのは、どんなコツがあるんだろう。例えば初めて来た子が緊張しながら入口の登録カウンターでスタッフと話しているのを見たことがありますが、あの辺りに何か秘密があるのかな?」(保坂区長)

「僕たちスタッフは、どれだけ中高生と共通項をもって話ができるか、を大事にしています。だから意識してマンガやゲーム、音楽などの話をできるように日ごろから目を通したり。まずはスタッフが中高生との間にいい関係をつくって、その上で来てくれている人同士をつなぐようにしています」(櫻井さん)

「なかには打ち解けられなかった子もいるんじゃない?」というコーディネーター福永さんの質問に、「大学生のスタッフが間をとりもってくれるので、だいたい仲良くなれます」と答える中高生も。

これが受付のカウンター。スタッフとおしゃべりをしながら最初のコミュニケーションを深めます

これが受付のカウンター。スタッフとおしゃべりをしながら最初のコミュニケーションを深めます

大学生のスタッフは、勉強も教えてくれます。試験前には真剣に机に向かう中高生でいっぱいに

大学生のスタッフは、勉強も教えてくれます。試験前には真剣に机に向かう中高生でいっぱいに

利用者が固定化したり、常連が場を取り仕切ることなく誰もが楽しめるのは、スタッフの絶妙なサポートの成果。このしくみにはパネリストから感心の声が上がりました。

中高生が輝く街は、未来も輝く!

金庫だった部屋が音楽室に。もちろん無料で使えるので、文化祭前は予約でいっぱいになるそう

金庫だった部屋が音楽室に。もちろん無料で使えるので、文化祭前は予約でいっぱいになるそう

会場は、地域の関係者をはじめとする参加者で満員! モデル事業の注目度の高さがうかがえます

会場は、地域の関係者をはじめとする参加者で満員! モデル事業の注目度の高さがうかがえます

ディスカッションが進むにつれて分かってきたのは、オルパは中高生世代と地域との接点となり、地域活動への参画を促したこと。また、ここに来ていた中高生のなかに「地域を支えたい」という思いが芽生えていたこと。不足していると思われていた青少年リーダーの卵が、自然と育っていたことが明らかになりました。

これだけ素敵な取り組みなのだから、場所を移してでも継続すべきなのでは、という声もあがります。児童館をより有効活用しては、という意見には、「未就学児などの小さい子たちが多い児童館では、気を使ってのびのびと活動しにくい」といった声も。ここで保坂区長からこんな発言が。

「中学校までは義務教育なので区と関わりが深いですが、中学卒業以降、子育て世代となるまでの長い間、多くの人は行政との関わりが希薄になり、地域から見えなくなってしまうんですよね。その間に死を選ぶ若者が区内に毎年150名余りいます。でも、孤独なのは中高生だけじゃない。

65歳以上の男性単身者の16%が2週間以上他人との会話が1回以下という驚きの調査結果もあります。だから同世代だけが集まる居場所も必要かもしれないけれど、もっと多世代が交流できるような “居場所”の存在が大事になのだろうということも考えています」(保坂区長)

オルパ閉館後は、児童館の中高生世代への活動支援機能を拡充していくほか、池之上青少年会館と青年の家を「青少年交流センター」として新たに事業展開していくこと、また旧希望丘中学校跡地の青少年交流センター新設に向けた検討を継続すること、さらに区内の多様な資源を利用して、多世代交流の場をつくりたいという区の方針が説明されました。行政に加えて、商店街や町会など、さまざまなセクターによる居場所づくりに期待が高まります。

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中高生世代応援スペース「オルパ」
開設期間:平成25年6月1日~平成26年2月28日 <期間限定>
住所:世田谷区南烏山5-16-11
営業時間:平日15:00〜20:00、土曜13:00〜20:00、日曜・祝日11:00〜18:00
休館日:8(日)、11(火・祝)
京王線千歳烏山駅南口から徒歩30秒
ホームページ:http://npo-setasan.com

施設概要

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