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ぐるり世田谷

世田谷にはたくさんの「訪れたい場所」がある。古くから愛されてきたお店や、知る人ぞ知る穴場など、地元の情報をご紹介。思い出に残る昔の世田谷から今の世田谷まで。

2023.11.22

瀬田農業公園 フラワーランド 秋の菊展示に行ってきました

環状八号線と東名高速道路が交わる瀬田五丁目、住宅地のなかに「世田谷区立瀬田農業公園 フラワーランド」があります。丹精込め育てられた菊やバラが見ごろを迎えた穏やかな秋日和、園内を散策してきました。

住宅地の中、お花で彩られたログハウスが目印。今花盛りの菊の展示が始まっています。

フラワーランドには、四季折々の草花をはじめ、ハーブや花木等の花壇が20近くあります。秋の草花が咲き乱れるナチュラルガーデンはシックな色合いに

 

日本で愛され続けてきた、雅な菊

この夏の猛暑日続きで開花が遅れた大菊。豪華な花弁に圧倒される。

フラワーランドの秋は、菊やバラを中心に落ち着いた色合いの庭景色となります。
その中でも菊は、奈良時代に中国から不老長寿の仙薬として渡来。宮中で重陽の節句で厄除けや長寿を願い「菊酒」として飲み、美しさを競う「菊合(きくあわせ)」など、その雅な姿や香を愉しんだそうです。また、おめでたい瑞祥紋として好まれ、天皇・皇族の印としても用いられています。
江戸時代に流行った「園芸」により、武士や植木職人により様々な品種改良がされました。庭が無い庶民にも露地先での鉢植えが愉しめ、菊見世の興行も盛んとなりました。今でも春の花見と並び、秋には菊人形等が、季節の娯楽、風物詩として楽しまれています。

内側が深紅、外側が黄金色の豪華さが特徴の「大天竜」

 

フラワーランド流で育てる「菊部会」

フラワーランドでは、友の会「菊部会」がフラワーランド流の菊づくりで、丈夫で、立派な花が咲くように手入れをしています。腐葉土、赤玉等を独自の割合でブレンドして土づくりをして、春にはさし芽や鉢上げで殖やし、施肥を繰り返し丈夫な株に育てているそうです。

株分けされた苗。来年の秋の開花を迎える迄、摘芯、摘蕾を繰り返し育てられる

ずらりと並ぶ菊の圃場棚。大菊の仕立てには、「盆養仕立て」「ダルマ作り」「福助作り」等があるそうです。

「菊づくりは、園芸の中でも盆栽のように職人的な技を使い、花を咲かせることを愉しむ方が多いです。並べる鉢毎に、予定通りの高さと花の大きさに揃え育てるには、高度な技と経験が必要です。手間を掛けた分、立派で見事な花が咲くと、手応えを感じます。」とお話くださるフラワーランド友の会の会長で菊部会の川井さん。

この夏から続く猛暑日で、開花が遅れ気味でまだ固い蕾。開花が待ち遠しいと話される、川井さん

大菊に比べ、小菊の代表的な仕立ては、「懸崖作り」や「ローソク作り」「玉作り」があるそうです。フラワーランドでは、花が滝の様に垂れ下がった「懸崖」が見ごろとなっていました。

懸崖作りのポイントは、その花芽が下を向かないように、伸びた枝を支柱などで上方向に吊り、開花したらその吊りから外し、小菊の花を滝の様に垂れ下げて仕立てます。

区内の都立園芸高校から株分けされた、小菊「神代の衣」。園芸高校の苗が枯れたと聞き、フラワーランドの株を分けて、互いに育て合う「菊の縁」で繋がっているそうです。(菊部会 安藤さん)

可憐な小菊「神代の衣」

 

フラワーランドの秋は、自然の造形力が面白い

秋のフラワーランドには、花だけでなく果樹の実りや木々の紅葉する様もシックな色合いで面白い形の花、実がいっぱいで見どころ満載です。

バラのアーチに架かるハンギングにはアメジストカラーの縁どりシクラメン、パンジー。アリッサムの白い小花が華やかさを引き立てる

形もモダンな草花の寄せ植えは、シックなガーデンデザインとして、自宅のお庭にも取り入れられそうです。

蔓バラ アイスバーグは四季咲きなので、いつでも園内で白く仄かなティー香を品よく漂わせ、咲いています。

陽光を浴びてたわわに実る、カリン。

 

フラワーランドは、区民ボランティアと育む花づくりの公園

 

月曜日の午前中は各部会が集まって、それぞれの花壇のお手入れをしています

フラワーランドの奥にある鑑賞花壇は、「フラワーランド花づくり教室」の生徒が、ガーデンデザインを学びながら苗を選び、植え込んでいく。

世田谷の農業のひとつとして盛んだった、花き園芸を中心に「花づくりの出来る公園」として「区立瀬田農業公園 フラワーランド」は昭和61年に開園されました。
「フラワーランドが他の公園と違うのは、友の会、花づくり教室という区民ボランティアの方々と一緒に、環境に配慮したフラワーランド流の園芸で、花壇づくりをしているところです。」と世田谷トラストまちづくり(以下、トラまち)の担当者山﨑さん、沓澤さん。

展示している菊見世ひな壇の状況を確認する、トラまち職員の山崎さん、沓澤さん。

花づくり教室の講師で、園芸相談にも対応している、トラまちの花とみどりの専門員 荻野さん。

フラワーランドには、子どもが遊べる広場や、水車小屋、浅い水辺のせせらぎもあります。四季の植物だけでなく、虫などのいきものにも触れる事ができます。日中は近隣の保育園・幼稚園の園児たちや、高齢者施設の方々ものんびり訪れる、世田谷のオアシスとなっています。

遊具もあり、木陰のベンチとテーブルは、お子様連れやおさんぽのひとやすみにもちょうどいいオアシスに

この夏からの猛暑日続きで、園内の植物の生育にも多大に影響したそうです。菊の開花も当初より10日ほど遅れましたが、その艶やかに咲く花は、秋の美しさを伝えてくれます。

菊の展示は11月26日まで行っています。今が最盛期になっているそうなので、ぜひ散歩がてらフラワーランドに立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

 

施設概要

  • 東京都世田谷区瀬田5-30-1
    住所: 世田谷区瀬田5-30-1
    電話番号: 03-3708-7881
    営業時間: 夏期(4月~9月)8:30~18:00 冬期(10月~3月)8:30~17:00
    定休日: 休園日 12月29日~1月3日(他にメンテナンス休園あり)

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紹介者プロフィール

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せたがや歩兎庵

くみん手帖編集員

"手考足思"を座右の銘に、まち・ひと・ものに纏わる思いやコトを採集し、大風呂敷を広げる、自称「マチアルキニスト」。

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