2024.07.10
上用賀 天然記念物の尾長鶏や蔵元のお酒、地下の土壌世界も観られる東京農業大学「食と農」の博物館とは
馬事公苑前のけやき広場に隣接し、世田谷ののんびりとした住宅街に佇む「食と農」の博物館。1891年に東京農業大学が創設されて以来、農業関係の資料やいろいろな標本を集め、20年前に博物館として開館しました。入館無料ということもあって、地域の方々の憩いの場所としても親しまれているこの博物館は、身近なようで知らない「食と農」について様々なことを伝えてくれる貴重な施設です。
世田谷にはたくさんの「訪れたい場所」がある。古くから愛されてきたお店や、知る人ぞ知る穴場など、地元の情報をご紹介。思い出に残る昔の世田谷から今の世田谷まで。
毎年35万人以上の人が集まるたまがわ花火大会が、35年もの歴史を重ね、今年も8月17日(土)に開催されます。花火大会のはじまりから現在の取組みなど、「世田谷ならでは」の花火大会ができるまでを、実行委員会事務局の浅利修司さん(世田谷区砧総合支所 地域振興課 地域振興・防災担当係長)に伺いました。[ 7月の特集 世田谷の夏のお祭り ]
「今年のテーマは“世田谷物語〜助け合おう地域の力 咲かそう大輪を!〜”です。たった1時間の打ち上げ時間ですが、花火の種類や音楽、さまざまな要素を組み合わせて、テーマを表現しているんですよ」と語るのは、成城学園前駅から歩いてすぐの世田谷区砧総合支所 地域振興課の浅利さん。浅利さんは地域振興・防災担当で、花火大会を担当されて今年で4年目だそうです。たまがわ花火大会は浅利さんを含む世田谷区の職員と、自治会や商工会などで構成される実行員会が中心となり運営しています。
「毎年11月にはどういうテーマでどんな花火を打ち上げるか考えはじめるので、10ヵ月は準備することになりますね」と浅利さん。その準備期間の長さに驚かされます。華やかな花火の陰には、綿密な警備計画を立てるという大仕事も待っていて、警察、警備員含めて2,000人規模の警備体制を組み、“東京都一”と目される安全な花火大会をつくりあげているそうです。
テーマが固まったら、毎年打ち上げを依頼している「株式会社イケブン」と打ち上げる花火の内容を練り上げます。プログラムの内容を花火職人にお任せする花火大会も多い中、たまがわ花火大会は妥協しません。浅利さんは、プログラムの構成、打ち上げる花火の種類、音楽まで、とことん職人と話し合います。
「毎年世田谷ならではのプログラムを考えています。たとえば、世田谷にはアフリカの大使館が多いんです。それにちなんで、去年はアフリカをイメージしたプログラムも入れました。花火職人さんたちが、動物のかたちの花火を一生懸命つくってくれましたね」(浅利)
趣向を凝らしたプログラム構成だけでなく、たまがわ花火大会ではオリジナル花火や都内では貴重な大きな花火を見ることができます。打ち上げることができる花火の大きさは「保安距離」といって、打ち上げ場所から観客がいる場所や周囲の建物までの距離によって決まります。直径320mにもなる10号(尺玉)花火を打ち上げるには、人や建物と240m以上離れていなければならないため、東京ではなかなか見られないとのこと。しかし、多摩川の河川敷やグラウンドを広々と使ったたまがわ花火大会なら、それも可能。世田谷区のオリジナルで全国的にもとても珍しい全長600mにも及ぶ3D花火や都内屈指の8号玉の100連発花火など見所がたくさんあります。
花火の種類や大きさ、そして背景にある物語を知ると、一層花火大会が楽しめるはず。花火大会に合わせてつくられるパンフレットとホームページには、そんな通な楽しみ方ができる豆知識もたくさん載っています。
世田谷ならではのプログラムに加えて、震災以降、東北との関わりも生まれました。昨年からは、復興への願いを込めて、東北の花火師がつくった花火が世田谷の空に打ち上げられています。さらに、東北の物産展の開催や、震災後に東北から世田谷区内に避難された方々の招待などもあり、東北との縁は今後もつながっていきそうです。
たまがわ花火大会は今でこそ6,000発もの花火を打ち上げる大きな催しになりましたが、最初は、灯籠流しや盆踊りなど「ラブリバー多摩川を愛する会」という団体が企画していた夏行事がはじまり。そこに徐々に観客が増え、区が共催する形になりました。地域主導で始まった花火大会ですが、資金のほとんどは、世田谷区の財源という状態が続いていました。こういった財政上の理由から、縮小傾向にある全国の花火大会も多いそうです。しかし、たまがわ花火大会は世田谷区も地域に住む人もみんなが力を出し合うことで、さまざまな取り組みを実施しながら区民参加型のイベントに成長していることも見逃せません。
その取組みのひとつは、平成19年から始まった有料協賛席の導入。一番人気の最大10人が利用できる大型シート席やテーブル席、イス席、そして今年からはペア席も登場しました。また、夜店への出店も、世田谷区内の法人や地元の商店街、自治会やおやじの会などから募り、毎年約60店舗が参加します。他の花火大会に比べるとお店は少ないかもしれませんが、夜店まで区民参加型でまかなう花火大会は珍しいそうです。
「さまざまな取組みが実を結んで、区民からの協賛金の比率が年々増えているんですよ。極めつけは、花火の帰り道に協賛金を入れてもらう募金箱を設置したこと。今年の花火大会の最後のプログラムは昨年皆さんにいただいた募金で打ち上げるんです。自分が直接参加できる実感って嬉しいんですよね。今ある参加方法以外にも、新しい企画をこれからもどんどん考えていきたいです」(浅利)
区民の参加は花火大会の後片付けまで続きます。主催者が「ラブリバー多摩川を愛する会」だった頃から続く、花火大会翌日の「たまがわクリーン作戦」。参加者は年々増え、今年は1,200名ほどのボランティア参加が見込まれています。花火を楽しむだけでなく、河川敷や周辺の住宅地の清掃活動まで含めて花火大会が定着しているのも、この花火大会の大事な一面です。
「花火を見て、家族や友だちと夏の幸せな思い出をつくってほしいと、実行委員会一同、企画も警備もがんばっていますよ。間近で見たらその迫力に圧倒されますから、ぜひ見に来てほしい。来た人の笑顔を見るとやってよかったと心から思うし、花火大会はなくしちゃいけないですよね。先日、プライベートで行った飲み屋で “いろんな花火大会に行ったけれど、たまがわ花火大会が一番良かった”と話している人がいて、すごくうれしくて握手をしたいくらいだった」と話す浅利さんの表情は本当に嬉しそうでした。
苦労も多いけれど、お客さんの笑顔がダイレクトに伝わってくると、来年はどんな花火大会にしようかと、もう次のことを考えてしまうそうです。今回、お話しをうかがって、浅利さんをはじめとしたスタッフ、花火師の方々、黒子で奔走する人たちの入念な準備があることを改めて知りました。1時間の短い時間に込められたさまざまな人の想いを知ると、ちょっとだけいつもの花火大会が新鮮に映る気がします。
同じものは二度と見られない、丹精込めたオリジナルプログラム。今年はどんな物語が夜空に彩られるのか、期待が高まります。
【打ち上げ花火豆知識 -花火の種類-】
菊 打ち上げ花火の代表的な模様。星が尾を引きながら放射線状に飛び散り、菊のような模様を描きます
牡丹 菊と同様に放射線状に広がる打ち上げ花火ですが、尾を引かず点を描くのが特徴です
万華鏡 玉詰めの段階で星を一握りずつ袋に詰めたものを分散して込める花火。何本かずつの光が飛び出す
柳 構造上別の種類のポカ物の一種で、玉が上空で2つに割れ、尾を引きながら流れ落ちていきます
冠(かむろ) ひらいた瞬間花火がすぐに消えず、そのまま流れ落ち地面すれすれで消える花火です
椰子(やし) 太い軌跡を描きながら星が広がり、その南国の椰子を思わせる大胆な美しさが魅力です
千輪 構造別の種類の半割物に属します。花火がひらいた後、一瞬遅れて小さな花火がいくつも開きます
蜂 星が回転しながらランダムに飛び回り、その様子はさながら蜂が飛んでいるように見えます
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世田谷区たまがわ花火大会 概要
■日時:20013年8月17日(土) 19:00〜20:00
※荒天の場合は翌18日(日) 19:00〜20:00順延
■場所:世田谷区立二子玉川緑地運動場
■主催:世田谷区たまがわ花火大会実行委員会、世田谷区
※以下、実行委員会構成団体
喜多見東部町会/喜多見上部自治会/喜多見中部町会/喜多見西部町会/喜多見北部町会/宇奈根町会/鎌田南睦会/鎌田協和会/都営喜多見2丁目団地自治会/大蔵本村睦会/岡本自治会/玉川町会/瀬田町会/玉川商店街振興組合/二子玉川商店街振興組合/二子玉川振興対策協議会/二子玉川西地区まちづくり協議会/日赤奉仕団喜多見分団/日赤奉仕団用賀分団/世田谷区町会総連合会/東京商工会議所世田谷支部/世田谷区商店街連合会/公益社団法人世田谷工業振興協会/世田谷区内農協協議会(計24団体)
■お問合せ先:せたがやコール 03-5432-3333
■ホームページ:http://www.tamagawa-hanabi.com/
【有料協賛席チケット販売のご案内】
都内屈指の8号玉100連発、夜空に花開く10号尺玉は、わが身に降ってくるよう…。
会場の立地を生かした全長600mに及ぶ3D花火は世田谷区オリジナル!
迫力満点の花火を体験できるスペシャルシートを用意してお待ちしています。
詳しくはコチラ >> http://www.tamagawa-hanabi.com/payseat.html
住所: | 世田谷区鎌田1-3-5(管理事務所) |
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この記事に関連するタグ:2013年7月の特集, 二子玉川駅, 成城学園前駅, 玉川エリア, 用賀駅, 花火大会
東京生まれ、宮城育ち。大学卒業後、(社)農山漁村文化協会へ入会。バイクで全国行脚をする営業生活を経て、編集局に配属になり、食について扱う雑誌編集に携わる。退会後、フリーランスの編集者となり、広く《食べごと》を豊かにしていくべく活動中。
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