2022.04.13
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世田谷での暮らしを、よりよいものにするための情報。区民の衣食住に関わる取り組みやサービス、町の景観、子育て、町づくり、多世代交流の話など。
世田谷区を走る、小田急線。駅前の掲示板には「開かずの踏切も、迷路のような地上駅も大好きでした」とコメントが残されるなど、惜しまれつつも代々木上原駅から梅ヶ丘駅間の地下化工事が進んでいます。踏切がなくなることで、確かに、慢性的な交通渋滞はなくなるかもしれません。でも、失うものも少なからずありそうです。線路の跡地を、どう活かせるだろう?そこで、線路の跡地の景観デザインを、みんなで考えようと活動を展開する「NPO法人グリーンライン下北沢」代表理事の高橋ユリカさんに、お話を聞きしました。
小田急電鉄小田原線の代々木上原駅から梅ヶ丘駅間で行われている工事は、2004年9月から始められたもので、線路が「地下化」。さらに、普通列車が走る線路と、急行列車が走る線路をわけるための「複線化」が計画され、現在も駅舎の工事や交差する道路の整備などが行われています。
この計画から予想される未来は、線路跡地に高層ビルが建設され、外部資本による店舗が建ち並ぶ光景。下北沢の魅力である昔ながらの商店や、まちの風景が姿を消してしまうのではないか…。都内でも珍しい2.2kmにわたる小田急線地下化後の上部利用の計画や運営などを、市民と専門家が恊働して行政に提案し、実現をしたい。そんな思いから立ち上がったのが、NPOグリーンライン下北沢です。
その活動は5年前にさかのぼりますが、できてしまってからこんなはずじゃなかった…と思うのではなく、自分たちのまちは、自分たちで考えようよ、と提唱しています。
「下北沢というまちは、個性があると思うんです。そのひと、そのひとの自由があったり、どこか手づくり感があったり。そうしたものを大切にしていきたいなと考えて、この活動を立ち上げました。線路のあとちをどうつくるかだけでなく、下北沢らしさをつくっていくこと、一粒で2度おいしいまちになることが願いなんです。」(高橋さん)
グリーンライン下北沢の活動は、じつに多岐にわたっています。専門家によるセミナー、区長とのシンポジウム、市民によるワークショップ。ここでは、行政、市民、商店街のひと、学生、専門家…といった具合に、多くの人が関わっているのです。
「日本にはまだ例の少ない鉄道跡地の活用事例について、専門的知恵や事例を持ち寄って、それらについてみんなで考えるセミナーを行っています。テーマはランドスケープデザイン、交通計画、公共空間。難しそうに聞こえるかもしれませんが、すべて自分たちのまちのこと。まちづくりが“自分ごと”になることが大切だと思っています。」(高橋さん)
高橋さんは、参考になる世界の事例として、アメリカ・ニューヨークの「ハイライン」について紹介してくれました。
「全長約2.4kmの鉄道が廃線になって、専属ガーデナーが手入れをする市民の公園になりました。
ハドソン川をのぞむ気持ちのいい場所で、高級ファッション店や素敵なカフェがオープンしてエッジのきいた文化発信エリアに。線路として使われていた木材は、そのままベンチとして利用したり、様々なイベントが企画され、地域の人に愛される場所となりました。」(高橋さん)
この試みは、たった2人の市民から生まれました。面影は残しながらも公園にしたいと、友の会を創設。賛同者を少しずつ増やして、“保存再生して利用する”という運動への枠組みがつくられたのです。
「晴れた日は、世田谷代田駅あたりからストレートに富士山も望めるエリアです。こうした美しい景色を残せるよう、提案をしています。でも、すべてはプロセス。こういう社会を生きてきたという足跡が残せたらと思っています。」(高橋さん)
グリーンライン下北沢は、ほかにも、学生と一緒に考えるワークショップや、跡地の利用についての社会実験として、みんなでお弁当を持ち寄って食べながら、まちについて考える「下北沢ピクニック」を開催。
さらに、駅前広場予定地がみんなの庭だとしたら何をしたいか?を考える「下北沢・みんなの庭プロジェクト」を基軸に、その活動はどんどんと枝葉を広げています。
みなさんも、自分の暮らすまちについて、どんな関わり方でできそうか、一度考えてみませんか?グリーンライン下北沢のfacebookページも、ぜひチェックしてみてくださいね。
写真提供:グリーンライン下北沢
この記事に関連するタグ:2014年5月の特集, まちづくり, グリーンライン下北沢, 下北沢, 世田谷エリア
増村 江利子
国立音楽大学卒。Web制作、広告制作、編集を経て現在はフリーランスディレクター。一児の母。主なテーマは、暮らし、子育て、食、地域、エネルギー。毎日を、ちょっぴり丁寧に暮らしたいと思っています。
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