2023.08.21
連載 世田谷の小さな博物館・記念館を訪ねてみよう 第一回 代田 齋田記念館
「近くに博物館があるけど何となく入りづらい」「散歩中に見かけた記念館が気になる」。そんな方も多いのでは? 世田谷区には、あまり知られていないけれど、実は見応えがある博物館や記念館が点在しています。そこで、くみん手帖では、世田谷の小さな博物館・記念館を連載紹介していきます。 第一回は、環状七号線沿いの緑豊かな敷地内にある「齋田記念館」です。
世田谷にはたくさんの「訪れたい場所」がある。古くから愛されてきたお店や、知る人ぞ知る穴場など、地元の情報をご紹介。思い出に残る昔の世田谷から今の世田谷まで。
大勝庵 玉電と郷土の歴史館は、二子玉川駅から水道道路を成城方面へ徒歩7分、おそば屋さんのようなしつらえの入り口に、手書きの看板が見えます。ここが大勝庵 玉電と郷土の歴史館です。その館名の示すとおり、元は『そば処大勝庵』というおそば屋さんでした。その当時から、お店の中に本物の玉電の運転台があることで有名でした。平成23年12月、おそば屋さんは閉店し、玉電ゆかりの品々や郷土の品々を展示する、小さな資料館『大勝庵 玉電と郷土の歴史館』として再出発しました。
館内に一歩入ると右側に、現役を引退した玉電71形の運転台があります。これは東急電鉄から譲り受けた、正真正銘の運転台で、実際に走っていた時と全く同じ状態で展示されています。計器類はもちろん、料金箱なども当時のままに取付けられていて、運転席に座ってみることもできます。ハンドルレバーを握れば、玉電の運転手になった気分を味わえます。
玉電とは玉川電気鉄道の略称で、1907年(明治40年)、二子玉川付近の砂利を東京都心に輸送することを主目的として、本線(渋谷~二子玉川)が敷設されました。現在の世田谷区を横断していた路面電車です。当初は砂利輸送が主だったため、「砂利電」とも呼ばれていましたが、やがて旅客輸送も増大し、後に砧線(二子玉川~砧本村)と、世田谷線(三軒茶屋~下高井戸)が加わりました。
1964年(昭和39年)の東京オリンピック開催を契機に、都内の交通体系の見直しが行われ、1969年(昭和44年)に本線と砧線は廃止になりました。最後の3日間は、花電車が何度も何度も往復しました。世田谷の歴史の一幕として、この花電車の写真は世田谷の印刷物などに頻繁に使われていますから、ご覧になられた方も多いでしょう。現在、玉川線本線は地下鉄田園都市線となって玉川通り(国道246号)の地下を通り、世田谷線は今も旅客輸送に活躍しています。
運転台の反対側には、玉電ゆかりの品々や、鉄道グッズが展示されています。つり革などの玉電の内装品や行き先表示板など、駅名の看板や、各種プレート類、往年の写真類、線路の玉石まで、所狭しと並べられています。その他にも、歴史館前の駐車場には、玉電の巨大なパンタグラフも常設されています。
館内を奥に進むと、郷土の品々や昭和のレトログッズの展示コーナーです。年代は昭和30~40年代、映画『ALWAYS三丁目の夕日』とほぼ同時代です。この時代は、当歴史館の館長であり、長年にわたりこれらの品々の収集を続けてきた、大塚勝利さんの少年時代、青春時代にも重なります。
大塚館長は瀬田の農家に生まれ、少年時代を過ごしました。青春時代は、三軒茶屋のおそば屋さんで修業を積みました。そして1970年(昭和45年)に、この地におそば屋さんを開業しました。大塚館長にとって、もっとも思い出深い時代です。それが、歴史館のコレクションのコンセプトになっています。
一番奥のコーナーは、脱穀機や農工具類など、昔の農具が大切に保存展示されています。当時は世田谷にも農地がいっぱいありました。その手前のコーナーには、同時代のテレビやラジオ、蓄音機など電化製品、カメラ、貯金箱、空き缶や空き箱など、当時の庶民の生活雑貨が並びます。
あまりに種類が多いので、これらは毎月テーマを決めて、入れ替え展示を行っています。例えば、今年の1月は、お正月の遊び道具コレクション特集でした。お面や双六、けん玉、獅子舞の獅子頭まであります。今までに、文房具、ソノシート・レコード、ベーゴマ、マスコット人形、お面、腕時計、フィルム缶等々と展示を続けてきました。また、栓抜きや王冠、ビールジョッキ、ビール瓶の空き箱など、元おそば屋さんならでは、というお宝が大変豊富です。高価な物は多くありませんが、とにかくその数が大量なので、並べて見ると圧巻です。
「大勝庵 玉電と郷土の歴史館」は、玉電や郷土の歴史を後世に伝え残していかなければならないという、大塚館長の強い使命感に端を発しています。
それはまた、大塚館長が生まれ育った世田谷への、郷土愛でもあります。かつて世田谷で庶民の足として活躍した玉電に愛着を感じ、ゆかりの品々を収集してきました。あるいは、農家の機具をはじめ、面影薄れゆく昭和の時代の品々を、伝え残したいという特別の思いがあります。
この郷土愛を、大塚館長は“世田谷ロマン”と呼んでいます。
当歴史館の収蔵品は、二千点を超えるとも言われていますが、収蔵品は今も増え続けています。大塚館長自らが、世田谷ボロ市などに出向くこともありますし、他の収集家から、貴重な品々の保存を託されることも少なくありません。
「出会いを大切に」がモットーの大塚館長は、来館者に愉快な昔話やこぼれ話を交えて、親切に展示品の解説してくださいます。世田谷ロマンあふれる「大勝庵 玉電と郷土の歴史館』に、ぜひお立ち寄りください。
住所: | 世田谷区玉川3-38-6 |
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電話番号: | 080-1227-6158 |
営業時間: | 10:00~15:00 |
定休日: | 月・水・金 |
その他: | 入館料:無料 |
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