台詞のない演劇ワークショップ
今日の演劇ワークショップに参加するのは、「自主保育 野毛風の子」のお母さんたち8名。子どもたちは積み木や絵本に夢中で、お母さんたちがあやしながら丸テーブルを囲んでいると、奥から車いすの森田さんがやってきました。さあ、いよいよ演劇のスタートです!
森田さんから挨拶や演劇について説明が始まるのかなと思いきや、なかなか始まる様子はありません。お母さんたちと世間話に花を探せているようで…。
「あなた、学生時代はどんな友達がいたの?」
「そう、あなたはどんな学生だった?」
過去の友達や、恋愛話など、他愛もない質問を一人ひとりに投げかけていきます。普段子どもの話が中心のお母さんたちは、少し戸惑いながらも思い出して答えている様子。子どもたちが入り中断しながらも、テンポよく進むやりとりを聞いているうちに、これが森田さんの演劇ワークショップのスタイルなのだと、ようやく気がつきました。
一通り終えた後、次は1列に椅子を並べて座り、前方に椅子を2脚配置。その椅子に、順番にお母さんたちが呼ばれて座っていきます。途中取材カメラマン(男性)も呼ばれる即興ぶり。
「ちょっとそこで会話をしてみて」
「その後断ってみて」
「あなたなんだか強そうだね。相談に答えてみて」
やがて、お母さんたちが前に座ると、個性が見えてきたから不思議です。その人の空気感やまとっているものが伝わってきます。そしてお母さんたちが二言三言と言葉を交わすうちに、芝居らしきものになり始めました。これが、イッセー尾形を生んだ森田さんの演出法だったのです。
あっという間に2時間が経過し、初めてのワークショップは終了。手作りのサンドイッチが並べられてランチタイムへ。お母さんたちに感想を聞いてみると、
「もともとNPO風の子の活動を理解してくださって、居心地のよい場所だった。声をかけてもらって今回参加しましたが、とても新鮮でした。また続けていきたいです」(山本さん)
「普段会うお母さん同士がかっこよく見えました。日常を持ってくるという発想が新鮮でしたね。ぎくしゃくさも面白かった」(山崎さん)
みなさん戸惑いながらも面白さを感じ取ったようです。改めて森田さんに話を聞いてみました。
「今日はオリエンみたいなものでね。普通の会話から始まるでしょ。それがスタイルなの。風の子のお母さんとはこれからも何度かやっていきたいと思ってるよ。面白いのが作れそうでね。発表会はこの場所がいいな」(森田さん)