
有機野菜をふんだんに使った料理と、自家製スイーツが楽しめる
陽光が差し込む店内は、ナチュラルで明るい雰囲気。お昼どきにはベビーカーを押すファミリーや近くに住んでいるお年寄り、活気あふれる学生グループなど幅広い人々が集い、和やかな空気が流れています。スタッフとお客さんが親しげに会話を楽しんでいる風景も、このお店ならでは。顔なじみとなって何度も通っているリピーターも多く、人々の憩いの場となっています。
メニューは、「週替わりプレート」や「アボカドマグロ丼」、「ヴィーガンタコライス」など、無農薬野菜をふんだんに使ったヘルシーな料理ばかり。乳製品・卵・白砂糖を使わない「オートミールクッキー」や、米粉と豆乳で作るグルテンフリーの「米粉のモリンガシフォンケーキ」などの自家製スイーツに加え、オーガニックのコーヒーやハーブティー、自家製ジンジャーエールも人気で、朝食からランチ、おやつ、ディナーまで、いつ訪れても体に優しい食事や飲み物が楽しめます。

同じ東松原にオフィスを構える「坂茂設計事務所」がデザイン。湖畔をイメージしたチョークアートも見応えあり

人気の「週替わりプレート」。週替わりのメインに、東京都小金井産無農薬野菜のサラダと副菜3品付き。単品のほか、ランチセット(セットドリンク・プチスイーツ付き)もおすすめ

ソイミートで作った「ヴィーガンタコライス」。ピリ辛のサルサソースがアクセント(ソース抜きもOK)
初対面の人々が交流する「コミュニティディナー」を開催
「人と人のつながりをはぐくむ場になって欲しい」というお店の思いを込めたイベントが、毎週金曜の夜に開催されている「コミュニティディナー」です。初対面の人々がテーブルを囲んで食事を共にし、交流を楽しむこのイベント。毎回5〜12人程度が集いますが、ほとんどは1人で参加しているのだそう。お店のスタッフが同席し、ファシリテーター(進行役)をするので、「人見知りだから緊張して話せないかも」という方でも安心して参加できます。
テーブルに並ぶのは、無農薬野菜や自家製の発酵調味料などを使った創作料理のおまかせコース。月ごとに「一年の振り返り」「新年の目標」「春」といったテーマが定められており、ファシリテーターが適宜問いを投げかけ 、それをきっかけに会話が広がり、自然と盛り上がっていく、というのがイベントの流れです。最近は、SNSの普及やリモートワーク化を受けて人と触れ合う機会が減っていますが、そんな時代だからこそ「リアルでのつながり」を求める人が増えているのだそう。参加者からは「誰かと一緒にごはんを食べる幸せを感じられた」「自分らしく表現でき、またそれがみなさんに受け入れられた喜びやつながることの楽しさを感じた」「さまざまな価値観をもった方たちとゆっくり話ができ、心が満たされたような気がする」などの感想が寄せられています。

さまざまな人と交流しながら食事を楽しむ「コミュニティディナー」。デンマーク・コペンハーゲン市内のコミュニティスペース「アブサロン」でも同様のイベントが開催されている

「イベント開催時だけではなく、通常営業でも隣席の人と自然と会話が生まれるような場所にしていきたい」と語る店長の小嶋さん
誰もが「好き」を表現できるイベント「たねラボ」を実施
それぞれの「好き」を表現してはぐくんでいく場として、不定期で開催されているのが「たねラボ」。場所代は不要で、経験がない人でも気軽にイベント主催者になれるのが特徴です。過去には、世田谷区内で鍵盤ハーモニカ教室開業をめざしている現役保育士によるミニコンサート、現地滞在経験のあるホストがデンマークの文化・暮らしを紹介しながら食事を共にするイベントなど、さまざまなイベントを開催。参加したゲストも刺激を受け、「自分もやってみたい」と企画を持ち込むなど、好循環が生まれています。
ほかにも、多様な人々がふだん話さないようなテーマで対話をする「カンバセーションカフェ(毎月1度、店舗とオンラインで交互に開催)」や、入場無料・予約不要で気軽に参加して人とのつながりを育む「HOTORIの時間(不定期開催)」を実施。さらに、世田谷区内の畑「はぐくむFARM」 で有機野菜を育てる農業体験を行うなど、店の外にまで広がりを見せています。

世田谷区桜丘にある「はぐくむFARM」で農業イベントを定期開催。ここで育てた野菜はカフェのメニューにも登場している
体に優しい食事を気軽に楽しむ場として、そして人々が自分らしく生きる「たね」をはぐくみ交流する場として。東松原に生まれた小さなカフェがこれからどう成長していくのか。これからも目が離せません。
撮影 壬生マリコ