ぐるり世田谷

世田谷にはたくさんの「訪れたい場所」がある。古くから愛されてきたお店や、知る人ぞ知る穴場など、地元の情報をご紹介。思い出に残る昔の世田谷から今の世田谷まで。

2013.09.26

「世田谷パン祭り」、3年目の舞台裏

世田谷の秋の風物詩にもなりつつある「世田谷パン祭り」。第1回目のテーマは「share our pain」、昨年は「share」、そして今年は「発酵の力」。1年、2年と着実に根付いた環は広がり、イベントの充実度も醸され、パンの原点の発酵を示すのが今年のパン祭り。“地域のお祭り”を支える、3人の縁の下の力持ちに、お話をうかがいました。
[9月の特集] パンを楽しむ祭典「世田谷パン祭り2013」

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世田谷パン祭り=地域の祭り

世田谷パン祭りの会場のひとつである三宿の商店会「三宿四二〇商店会」。その商店会の会長である間中伸也さん(写真中央)が実行委員長を務めている世田谷パン祭りは、今年3年目を迎えます。年々、来場者も反響も増し、コンテンツも充実していく、まさに育つ、発酵するお祭りです。

その世田谷パン祭りを支えるのが、商店会を中心とした地域の力や、学びの場を提供する世田谷パン大学、そしてボランティアの人々。それぞれの役割を担う3人にお話を伺うと、「地域の祭り」の要素がくっきりと浮かび上がってきます。発起人でもある間中さんが思う、パン祭りの魅力とは?

「買って食べて終わり、ではないところですね。パンをシェアしたり、ベンチに腰掛けたら隣の人と会話が始まったり、つながりが生まれるイベントを目指しています。年々、参加者同士、ボランティア同士のつながりが、どんどん広がってきています」(間中さん)

パン祭りから商店会へ、商店会からパン祭りへと、相乗効果を活かして三宿地域を盛り上げてきた間中さんは、3年かけて熟成した、地域の人たちの意識の変化も体感しているそうです。

「率先して手伝いたいというメンバーが増えたことや、パン祭りの様子を見て、地域を盛り上げるために商店会に参加したいという人も出てきたのが嬉しいですね。また、今年は運営の事務局とは別に、実行委員会が立ち上がり、地域主体でパン祭りの方針などを共有して考える場ができました。会議でも前向きな発言が多いので嬉しいです」(間中さん)

特に、間中さんが大事にしているのが「パン祭りは地域の祭り」ということ。混雑を想定して予め説明して周ったり、三宿界隈の方を対象に優先販売を設けたりと、気配りを忘れません。時には地域の方からの辛口なフィードバックも、よりよいパン祭りにつながっているといいます。

「今年パン屋さんにお願いしたのは、小さいサイズで価格を抑えたパンを作ってもらえませんか?ということ。この地域には、一人暮らしの高齢者の方も多いですし、いろいろな種類のパンが食べられて、他のお客さまも喜ばれるのではないでしょうか。」(間中さん)

商店会長だからこその視点が、パン祭りを誰もが楽しめるイベントへと導いているようです。

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学んで広げる、深める、パンの魅力

パン祭りの大きな特徴は、「学びの要素があること」と3人の縁の下の力持ちは口を揃えます。IID世田谷ものづくり学校(以下、IID)で学びの場を開校する自由大学が、前回に引き続き「世田谷パン大学」を企画プロデュース。学長の和泉里佳(写真右)さんに、パン大学の楽しみ方を伺いました。

「遊びに来た人が、ちょっとディープな体験ができるのが一番面白いところ。普段は聞けないパンづくりをしている人の話が聞けたり、思いもよらない食べ方を発見したり。パンを食べる各国の文化や歴史、背景を知ると、パンも味わい深くなるんじゃないでしょうか」(和泉さん)

「パン好きとひとくちにいっても、いろんなパン好きの人がいる」と和泉さんはいいます。パンに合うチーズやお酒、酵母パン作りなど、さまざまな興味の幅に合った授業を選ぶことができます。

「例えばチーズでいうと、このタイプのチーズに合うパンは何だろうという実験できたり、世界各国のチーズを比べたり。チーズ好きっていうきっかけから扉をひとつ開けるとわーっと世界が広がるみたいなことが、体験できると思います」(和泉さん)

普段から、バラエティに富んだ講座を開校している自由大学。レギュラー講師のワークショップに加え、“パンの聖地、三宿”界隈のこの日限りの講師も多数登場します。

「シニフィアンシニフィエの志賀さんをはじめとしたパンの世界での有名人もいれば、コーヒーワインなどパンをもっと楽しむためにいろいろな人が講師として活躍します。地域の人たちの力がエネルギー源になり、自由大学にとっても、地域とのつながりが生まれる場所になっています」(和泉さん)

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“自分ごとのボランティア”の活躍

さて、これまで聞いてきたパン祭りの舞台裏ですが、ボランティアがいなければ、運営はなりたちません。そのボランティアを取りまとめるのが、IID事務局であり、LLPスケット代表の秋元友彦さん(写真左)です。

「IID自体が、地域に根づいていこうという施設なので、その関係性の中でパン祭りがあります。会場のグラウンドや世田谷公園などの施設は、商店会さんと行うからこそ借りられますし。地域と共にある意味を最も強く意識するイベントですね」(秋元さん)

普段、IIDが主催する館内完結型のイベントとは異なり、いくつもの会場があり、来場者数も多数。その現場になくてはならないのが、ボランティアの人たちです。これまで毎年100名以上のボランティアが、交通整理、会場を巡回しての環境整備、受付やワークショップの運営などを担いました。
一つの仕事に偏らないようにローテーションを組み、希望する仕事を聞いて、ボランティアで参加しながらも、祭り自体を楽しめる工夫をしているといいます。休憩時間にはパンが買えますし、商店会の人たちが食事を振る舞ってくれる、お楽しみも用意されています。

今年はすでに説明会も2回開催し、チーム分け、リーダー決めも完了。運営の前段階から参加し、自発的に意見を言いながら関わることで、“スタッフの一員”と実感してもらいたいと考えているそうです。

「今年のボランティアの中には、去年に続いて参加してくれている人も多く、リーダーに立候補する人もいます。自分ごとに思ってくれる環境にあるイベントっていうのがいいですね。」(秋元さん)

今年のボランティアはまだまだ募集中。三宿商店会の人々や世田谷パン大学の人たちの想いとともに、自分自身も世田谷パン祭りに関わり担うつもりで、ぜひ参加してみてはいかがでしょうか。

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■世田谷パン祭り公式ホームページ:http://www.setagaya-panmatsuri.com/
■パン祭りに関する最新情報はこちら:https://www.facebook.com/panmatsuri
■ボランティア募集についてはこちら: http://llpsket.exblog.jp/20862815

[9月の特集] パンを楽しむ祭典「世田谷パン祭り2013」

施設概要

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紹介者プロフィール

小野 民 (おの・たみ)

東京生まれ、宮城育ち。大学卒業後、(社)農山漁村文化協会へ入会。バイクで全国行脚をする営業生活を経て、編集局に配属になり、食について扱う雑誌編集に携わる。退会後、フリーランスの編集者となり、広く《食べごと》を豊かにしていくべく活動中。

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