神社をコンサート会場に
コンサート当日の早朝。神社の境内には大勢の人が集まっていました。
「みなさん、これから赤堤小学校からパイプ椅子を大量に借りてきます。汚さないために地面にござを敷きますので、協力お願いします。」号令をとっているのは、「赤堤に文化を!六所の森の会」(以下、六所の森の会)代表の窪田稔さんです。赤堤小学校PTAの方や地域の方は、境内いっぱいにござを敷き、大量のパイプ椅子を互いに声をかけ合いながら手際よくどんどん並べていきます。
大勢で境内にござと椅子を並べていきます
全て並べ終えると、境内は立派なコンサート会場となりました。
境内がみるみるうちにコンサート会場に
「赤堤に文化を!六所の森の会」とは
今年で38回目となる歴史あるコンサート。主催しているのは、六所の森の会です。
1986年に、窪田さんを含む友人達が、軽い気持ちで地域の文化向上のためにやってみよう、と始めました。こだわりは、プロによる本格的な演奏と、幕間で行うワインサービスです。気軽に始まったとはいえ、その演奏へのこだわりは相当なもので、初回の東京藝術大学のコンサートマスターであった故白井英二氏の東京フリーデン弦楽四重奏から始まり、40人のオーケストラをバックにオペラ「カルメン」を8人のオペラ歌手と25人の合唱団で上演。また、フラメンコの踊りと演奏を組み合わせてみたり、毎年多彩な内容のコンサートを開催し続けています。
これまでの公演ポスター
38回目の今となっては、8人の友人達で始まった六所の森の会は、メンバーに地域の人が加わって、必ず月に1度、居酒屋で食事をしながら次のコンサートについて熱く意見を交わしています。
赤堤に文化を!六所の森の会 代表の窪田稔さん
随所に見られる地域の協力体制
手書きの垂れ幕「六所の森クラシックコンサート」をくぐると、いつもの境内がコンサート会場のアプローチに様変わりしています。
大きな横断幕はスタッフ手作り
「こんにちは」「虫よけしますか?」「パンフレット要りますか?」「足元気を付けてください」と一人ずつ丁寧にお声がけしてくださるのは、赤堤1丁目町会の方々です。
町会の方が受付を担当
受付テント前では、景気のよい太鼓がお出迎え。東京都八丈島からやって来た、八丈太鼓六人会の皆さんによるものです。迫力ある太鼓の響きで、気持ちが高ぶります。
景気の良い八丈太鼓でお出迎え
さらに進むと、世田谷消防団第11分団のみなさんが見守る中、両側に篝火が焚かれています。暗がりでパチパチと音を立てて薪が爆ぜ、篝火の明かりが神社の本殿に向かって並びます。幻想的な素敵な雰囲気で記念撮影をする人も多くいます。
篝火のあかりと音で気分が盛り上がる
途中テーブルいっぱいにグラスを並べ、ワインサービスの準備をしているのは、赤堤2丁目町会、赤堤3丁目自治会のみなさんです。
町会の方が大量の飲み物を準備
会場に並べられた座席は、冒頭のとおり六所の森の会のみなさんの指揮の元、早朝に赤堤小学校から、地域のサッカーチームや野球チーム、おやじの会や有志の方が体育館や校舎から運びだし、神社ではPTAの皆さんや地域の方が丁寧に並べたもの。地域の人達の協力でこのコンサートが開催されているのがとてもよく分かります。
コンサートスタート
あっという間に座席は埋まり、開始30分前には超満員。立見席もいっぱいです。
会場は地域の人達で満員に
たくさん設置された蚊取り線香のにおい。六所の森に住む鳥や虫の声。時折、世田谷線の線路を走る電車の音も聞こえてきます。灯る篝火。心地よい夕方の風。ついに「六所の森クラシックコンサート」がスタートしました。今年は、9人組スティールパンオーケストラのPan Lumiereの演奏です。一概にスティールパンといっても大きさも音色も違うようです。ドラム缶のようなものから、小太鼓のような形のものまで、ずらりと並びます。
めずらしい楽器スティールパンは形も色々
はじけるような南国の楽器の音は、神社の森を突き抜け、赤堤の空に響きます。テンポのよい曲調で、踊りだす人も出てきます。
楽しい音色に盛り上がる会場
進行は俳優・真実一路さんです。めずらしい楽器スティールパンの事や、カリブでその楽器が生まれた物語をPan Lumiereさんと一緒に解説します。
司会は真実一路さんが担当
中盤では、八丈太鼓六人会による八丈太鼓も披露され、自由奔放な太鼓の響きを堪能します。中でも、打ち手が次々に入れ替わりながら激しく打ち鳴らす「暴れ打ち」は大迫力。型にはまらない打ち寄せる波のようなリズムを楽しむことができました。
八丈太鼓六人会による八丈太鼓
途中の幕間には、大人気ワインサービス。会場の方が一斉に並び、ワインを手に取りながら、口々にコンサートの感想をおしゃべりしたり、近くの人と挨拶を交わしたり、知り合いの関係者の元に駈け寄ったり。音楽一色だった会場が、俄かに賑やかな会話で盛り上がります。
幕間のドリンクサービス
第2部が再開されると、配布されたルミライトを翳しながら、元気よくリズムを取ってコンサートを楽しみました。
ルミライトを全員に配布
恒例の椅子運び
コンサート終了後に「六所の森クラシックコンサート」らしい光景を見ることができます。「このコンサート恒例です」という真実さんのお声がけと共に、観客のみなさん全員で、会場の椅子を待機トラックまで片付ける作業がスタートします。ご来場いただいた数百人のみなさんが、一斉に座っていたパイプ椅子を運びます。大人も子供もシニアの方もみんなで片付ける姿は、普通のコンサートでは、まず見ない光景です。こうして「六所の森クラシックコンサート」は38回間続いてきました。世田谷区を始め、赤堤小学校・赤堤小PTA・赤堤生涯学習センター・地域の町会や自治会・もちろん会場となる赤堤六所神社および関係者・あかつつみ幼稚園・赤堤商店街振興組合、山下商店街振興組合、世田谷区消防団第11分団、赤堤ファイターズや赤堤コミニティサッカークラブ等赤堤学習センター登録団体、地域の企業やスーパー、同窓会などと、地域の多くの人々が開催に協力しています。さらにはコンサートを聞きに来る住民の方達さえ、片付けに参加してもらう、まさに地域住民による地域のためのコンサートです。
地域の文化
最前列に座ってコンサートを鑑賞していた数名の親子さん達に、感想を聞いてみました。「子どもにとって初めてのコンサートで、生まれて初めてスティールパンを聞きました。最後までは無理かなと思っていたけれど、集中して最後まで楽しく聞かせていただくことができました。本当によい機会をいただきました。」「こんな神社の屋外で、近所の人みんなで音楽が聴けて、子どもが多少おしゃべりしていても気にならないようなコンサートがあることが本当に嬉しいです。」子供達も口々に「すごく楽しかった!」「来年も絶対また来る!」と笑顔で答えてくれました。
多くの子どもたちも演奏を楽しんだ
赤堤に文化を根付かせたいという39年前の窪田さん達の想いは、毎年、地域のたくさんの方々の協力の元、素晴らしいコンサートと成り、多くの人々に届いています。地域の文化とは、皆が共に心を動かし、それぞれの範囲で協働することで培われ、愛着や誇りに繋がっていく、六所の森コンサートでした。
◆六所の森クラシックコンサート
主 催
赤堤に文化を!六所の森の会
H P
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赤堤六所神社