フェルトが紡ぐ社会とのつながり

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この作業をしているのが、総合福祉センターに勤務している9名の知的障害を持つ方々。彼らは世田谷区の障害者雇用で総合福祉センターの清掃業務を行っています。そして今回、彼らの職域を広げる新しい試みとして、手先を使うフェルト事業が始まりました。

この事業を恊働する日本羊毛フェルトクラフト協会の渡邊さんは、「丸めるのが得意なひと、形をつくるのが上手なひと。それぞれの個性を活かして役割をもつことで、上手になってきました。なにより楽しんでくれているのが嬉しいですね。」そう語ります。今年3月にトライアルで始めたとき、予想以上に彼らが集中して作業している姿を目の当たりにし、可能性を感じました。

製作現場は終始和やかです。援助者のサポートのもと、彼らのペースで作りたいモチーフを中心に作業を進めていきます。雑談しながら真剣なまなざしでフェルトを丸める姿は、これまでの清掃業務とは違う一面が見えてきます。

そしていま彼らが目標にしているのが、8月に馬事公苑で行われる「せたがやふるさと区民まつり」への出展です。実は、馬事公苑のそばに東京農業大学があることや、国内60もの姉妹都市がマルシェで野菜を出展することがヒントとなって野菜のモチーフにしており、ブローチやキーホルダーとして販売されます。当日は彼らもブースで実演を行うのですが、これは自分が作ったものが購入されることを通して、お客さんと直に触れ合う喜びを体験する貴重な機会なのです。

今後は、南青山のカフェで販売も目標にしており、彼らが地域や社会とつながっていく新しいアプローチとして期待されます。