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紙でつくるミニチュア、1/100の世界「テラダモケイ」
テラダモケイとは
テラダモケイの「1/100建築模型用添景セット」は、模型といっても実にリアル。自動販売機に「たばこ」の文字がちゃんと入っていたり、ガードレールには東京都のイチョウのマークが!また、人物の配置やポーズなどをさまざまに表現できるのが魅力で、土下座やプロポーズ、酔っ払いのおじさん、自転車で出前を急ぐ人など、つくる人によって、さまざまな街の光景を演出できる面白さがあります。
シート1枚ごとにテーマがあり「水辺の公園編」「工事現場編」など街の風景を切り取ったものや「お花見編」「クリスマス編」などの季節もの、「東京編」「NY編」などの都市シリーズも。およそ月1本のペースで新作を発表してきて、現時点(2013年6月)でNo.34の最新作「バンコク編」まで揃っています。
バンコク編には、年老いた犬やトゥクトゥクなど、これまた現地に暮らす人の視点で切り取られた風景が広がります。
寺田「みんな知ってはいるけど、普段気にもとめないような風景を敢えて表現することで、“あるあるある”と共感してもらえたりするんですよね。」
建築設計の仕事とテラダモケイは
最終目的が同じ
もともとこの添景セットは、建築家である寺田さんが、建築模型につける添景を作り置きしようと考えたのが始まりでした。
寺田「模型を素敵に見せるには、建物そのものよりも周りに配置する“添景”といわれる人や家具、街路樹といったものが重要なんです。でも徹夜で模型をつくっていると、肝心の添景をつくる頃には疲れ果ててしまうことがよくあります。そこで、この添景をあらかじめ量産しておければいいなと思ったんです」
寺田設計事務所では、建物の建築設計や、プロダクトデザインなどの仕事を主に手がけています。寺田さんが感じてきたのは、家をつくるうえで、設計は最終目的ではなく手段に過ぎないということ。本来の目的は、その家で家族と楽しくご飯を食べたり、コミュニケーションしたりといった人の営みをデザインすることだと言います。
寺田「でも設計ばかりやっていると、その本来の目的を忘れちゃうことがあるんですよね。一方で、このテラダモケイは人の日常やコミュニケーションを直接表現するものなので、設計の仕事と同じくらい大事にしています。テラダモケイも建築設計も、表現方法は違いますが、実現したいことの最終目標は同じなんです」
直営店を開いた理由も、テラダモケイのシリーズが増え過ぎて全シリーズ見られる場所が欲しかったということに加えて、直接リアルなお客さんと接してみたいという思いが強かったのだそう。土日には寺田さんがエプロンをかけて店頭に立っていることもあるので、ふらりとお店に入ってみるとご本人に会えるかもしれません。
下北沢を選んだわけ
テラダモケイは、下北沢の劇場「ザ・スズナリ」の並びの脇道を奥へ進んだ左手にあります。もともと新宿に事務所をかまえていた寺田設計事務所が、オフィス兼直営店の場所として下北沢を選んだのには、明確な理由がありました。
寺田「下北沢って無目的に歩いている人が多い気がしたんですよ。例えば、青山や代官山のような街は、ブランド店の存在感が強くて、ブランド目的で街を訪れる人が多いですよね。でも下北沢では、若いカップルなど店にふらりと入ってもらえるイメージがあったんです。それに青山で一日過ごすのは結構疲れるじゃないですか。でも下北沢なら、余計な気をはらずに地に足をつけて過ごせる感じがしました」
最近土日をつかって、お客さんと一緒にテラダモケイを組み立てるワークショップも始めたのだそう。寺田さんにとっても意外だったのは、テラダモケイは大人向けにつくった商品なのに、子どもたちが夢中になることでした。
「先日開いたワークショップでは、意外とご近所さんの参加が多かったんですよね。私たち自身もこの下北沢の地域コミュニティの一員として、地元のファンの方々と仲良くやっていけたらいいなと思います」と、嬉しそうに話す寺田さん。
テラダモケイを通じて、お客さんとの交流が生まれたことも、人の暮らしをデザインする設計の仕事に、大きな意味がありそうです。
不思議な吸引力をもつ下北沢という街に、またひとつ面白い店が加わりました。
(撮影:上から3番目の「屋台編」の写真のみKenji MASUNAGA、それ以外の写真すべて庄司直人 )