松陰神社へと続く参道がそのまま商店街に
世田谷区若林3、4丁目と世田谷4丁目。松陰神社前駅を境にして、南北に伸びているのが松蔭神社通り商店街です。駅から北側に向かえば徒歩3分ほどで松陰神社に。
江戸時代の武士であり、教育者としても知られる吉田松蔭が祀られていることで有名な松陰神社ですが、この神社は明治15年に創建された建造物です。吉田松陰は、安政の大獄(1859年)により30歳という若さで処刑されますが、松蔭が講師を務めた松下村塾の門下生であった高杉晋作や伊藤博文らによって、この世田谷若林の地に改葬されました。現在の松陰神社は学問の神として有名で、合格祈願や学問成就にご利益があるとされ、毎年多くの参拝客で賑わいます。
松蔭神社の境内には松下村塾の模築があり、見学可能です。隅々まで丁寧に清掃された場所で、心静かに手を合わせてみると、時間が止まるような静けさを感じることができます。
おしゃれなカフェでほっこりとひと休み
松陰神社前駅周辺は、今や若い人たちにも人気のエリア。昔ながらの情緒やあたたかい人情はそのままに、新しい店も混在しているのがその理由のひとつです。駅を降りてすぐのカフェ「STUDY」は、ついつい長居してしまう居心地のよさ。お店に入ろうとドアを押すと……ええっ?と誰もが驚くドア仕様。緑溢れるカフェのランチメニューは日替わりメニュー3種のほか、程よく煮込まれたチキンカレーやスイーツ好きをうならせるメニューが盛りだくさん。
また、玄米甘酒を販売する小さなカフェ「せたがや縁側カフェ」では、テイクアウトドリンクのほか、麹の食品を販売。お店の看板にもなっている玄米甘酒(250円)は、独特の風味があって大人気。ぶらりと散策中に体が冷えたら、玄米甘酒カプチーノもおすすめです。
世田谷みやげに、手づくりおでん種はいかが?
おみやげにおでん種……なんて話は聞いたことがありませんが、いつ来てもお客さんが途切れることのない手づくりおでん種専門店「おがわ屋」のおでん種は、軟骨やエビ、タコ、野菜などの練り物が中心。知る人ぞ知る「世田谷みやげ」で、区外から通うファンもいるのだとか。30種類以上のタネは小麦粉・卵不使用かつ無添加で、魚のすり身に紅しょうがを練り込んだ「松蔭ジンジャー」(50円)は商店街が誇る名物とも言えるほどの人気商品です。
おでんに入れるだけでなく、お酒のつまみとして軽く炙ってそのまま食べても美味しそう。揚げたてを求めて昼過ぎからお客さんが並びますが、客足がわずかに途切れる14時過ぎが狙い目だそうですよ。
将棋・囲碁といった昭和の光景から、古書店まで
商店街を北に歩くと目に留まるのが、将棋・囲碁と書かれた看板の古き良き昭和の光景。平日13時から、将棋や囲碁に没頭する姿を垣間見ることができます。腕に自身のある方はぜひ、チャレンジを。
そして商店街を南に行くと、以前こちらの記事でもご紹介した古書店「nostos books」が見えてきます。デザインやアートなどを中心としたビジュアルブックを取り扱うオンライン古書店の実店舗として今年オープンしたばかりという店舗には、あれこれ手に取ってみたい本が並びます。
ひとつひとつの魅力溢れる小さな個人商店が軒を連ねている松陰神社通り商店街は、いつも活気があります。かつての暮らしにあった「小商い」。そこには、店主と何気ない日常の会話など、さりげなく生まれる人とのつながりがあります。
一度行けば、この街好きかも?と思わせてくれる松陰神社前駅周辺エリア。街のサイズ感が、ちょうどいいのです。昔ながらの情緒が残り、“いま”も体感できる街、松陰神社通り商店街に、ぜひ一度足を運んでみてくださいね。
(撮影:庄司直人)