変わるもの、変わらないものが見事に共存する松陰神社通り商店街

松陰神社の正面。隅々まで清掃されピンと気の張る静けさ

松陰神社の正面。隅々まで清掃されピンと気の張る静けさ

松陰神社へと続く参道がそのまま商店街に

世田谷区若林3、4丁目と世田谷4丁目。松陰神社前駅を境にして、南北に伸びているのが松蔭神社通り商店街です。駅から北側に向かえば徒歩3分ほどで松陰神社に。

江戸時代の武士であり、教育者としても知られる吉田松蔭が祀られていることで有名な松陰神社ですが、この神社は明治15年に創建された建造物です。吉田松陰は、安政の大獄(1859年)により30歳という若さで処刑されますが、松蔭が講師を務めた松下村塾の門下生であった高杉晋作や伊藤博文らによって、この世田谷若林の地に改葬されました。現在の松陰神社は学問の神として有名で、合格祈願や学問成就にご利益があるとされ、毎年多くの参拝客で賑わいます。

松蔭神社の境内には松下村塾の模築があり、見学可能です。隅々まで丁寧に清掃された場所で、心静かに手を合わせてみると、時間が止まるような静けさを感じることができます。

水の冷たさが気持ちを切り替えてくれるかのよう

水の冷たさが気持ちを切り替えてくれるかのよう

絵馬に書かれている文字は吉田松陰の直筆なのだそう

絵馬に書かれている文字は吉田松陰の直筆なのだそう

おしゃれなカフェでほっこりとひと休み

カフェ「STUDY」の外観。店内は長居してしまう居心地のよさ

カフェ「STUDY」の外観。店内は長居してしまう居心地のよさ

玄米甘酒を販売する小さなカフェ「せたがや縁側カフェ」

玄米甘酒を販売する小さなカフェ「せたがや縁側カフェ」

松陰神社前駅周辺は、今や若い人たちにも人気のエリア。昔ながらの情緒やあたたかい人情はそのままに、新しい店も混在しているのがその理由のひとつです。駅を降りてすぐのカフェ「STUDY」は、ついつい長居してしまう居心地のよさ。お店に入ろうとドアを押すと……ええっ?と誰もが驚くドア仕様。緑溢れるカフェのランチメニューは日替わりメニュー3種のほか、程よく煮込まれたチキンカレーやスイーツ好きをうならせるメニューが盛りだくさん。

また、玄米甘酒を販売する小さなカフェ「せたがや縁側カフェ」では、テイクアウトドリンクのほか、麹の食品を販売。お店の看板にもなっている玄米甘酒(250円)は、独特の風味があって大人気。ぶらりと散策中に体が冷えたら、玄米甘酒カプチーノもおすすめです。

世田谷みやげに、手づくりおでん種はいかが?

おみやげにおでん種……なんて話は聞いたことがありませんが、いつ来てもお客さんが途切れることのない手づくりおでん種専門店「おがわ屋」のおでん種は、軟骨やエビ、タコ、野菜などの練り物が中心。知る人ぞ知る「世田谷みやげ」で、区外から通うファンもいるのだとか。30種類以上のタネは小麦粉・卵不使用かつ無添加で、魚のすり身に紅しょうがを練り込んだ「松蔭ジンジャー」(50円)は商店街が誇る名物とも言えるほどの人気商品です。

おでんに入れるだけでなく、お酒のつまみとして軽く炙ってそのまま食べても美味しそう。揚げたてを求めて昼過ぎからお客さんが並びますが、客足がわずかに途切れる14時過ぎが狙い目だそうですよ。

手づくりおでん種専門店「おがわ屋」。店員さんはみんな気さくな方ばかり

手づくりおでん種専門店「おがわ屋」。店員さんはみんな気さくな方ばかり

商店街から伸びるアーケードも、覗いてみたいお店がたくさん

商店街から伸びるアーケードも、覗いてみたいお店がたくさん

将棋・囲碁といった昭和の光景から、古書店まで

古書店「nostos books」。手に取ってみたい本がずらりと並ぶ

古書店「nostos books」。手に取ってみたい本がずらりと並ぶ

駅からまっすぐに伸びる商店街。幅広い年齢層の人が行き交う

駅からまっすぐに伸びる商店街。幅広い年齢層の人が行き交う

世田谷のまちなかを走る東急世田谷線

世田谷のまちなかを走る東急世田谷線

商店街を北に歩くと目に留まるのが、将棋・囲碁と書かれた看板の古き良き昭和の光景。平日13時から、将棋や囲碁に没頭する姿を垣間見ることができます。腕に自身のある方はぜひ、チャレンジを。

そして商店街を南に行くと、以前こちらの記事でもご紹介した古書店「nostos books」が見えてきます。デザインやアートなどを中心としたビジュアルブックを取り扱うオンライン古書店の実店舗として今年オープンしたばかりという店舗には、あれこれ手に取ってみたい本が並びます。

ひとつひとつの魅力溢れる小さな個人商店が軒を連ねている松陰神社通り商店街は、いつも活気があります。かつての暮らしにあった「小商い」。そこには、店主と何気ない日常の会話など、さりげなく生まれる人とのつながりがあります。

一度行けば、この街好きかも?と思わせてくれる松陰神社前駅周辺エリア。街のサイズ感が、ちょうどいいのです。昔ながらの情緒が残り、“いま”も体感できる街、松陰神社通り商店街に、ぜひ一度足を運んでみてくださいね。

(撮影:庄司直人)

[12月の特集] 人情も新しさも!商店街で元気になる買い物を

心和やかに新しい年を迎えたい。世田谷観音でつく除夜の鐘

世田谷観音の正門より。仁王門では両脇の仁王像が出迎えてくれる

世田谷観音の正門より。仁王門では両脇の仁王像が出迎えてくれる

安らぎと温かみのある境内へ

閑静な住宅地内、東京学芸芸大学附属高校の向かいに位置する世田谷山観音寺(通称 世田谷観音)。一歩足を踏み入れると、まるで京都を思わせる景色が広がっています。都内でありがら、周囲にビル群や高層マンションがないからかもしれません。心の安らぎを得に、ふらりと立ち寄りたくなる雰囲気が漂っています。

参道を進むと門の両脇には、平安時代に造られたという迫力ある仁王像が構えています。都内最古の仁王さまに見守られながら門をくぐると、そこは色づく葉や春に咲き誇る準備をする染井吉野、枝垂桜、鬱金(うこん)桜が囲う境内です。こじんまりとした、温かみのある境内にほっとします。

正面左手の池には、「夢違観音(ゆめちがいかんのん)」が立っています。法隆寺の87cmの夢違観音を模写したお姿とのこと。朗らかな表情をされた観音さまは、悪い夢を良い夢に変えてくださるといわれています。手を合わせると、観音さまの後ろにある池の水の音とともに、悪い夢も心の中も一緒に洗い流されたかのよう。浄化したいことがあるとき、観音さまが力になってくれるかもしれません。

本堂に奉安されており、かつては伊勢長島(三重県)興昭寺の秘仏だった「聖観世音菩薩」

本堂に奉安されており、かつては伊勢長島(三重県)興昭寺の秘仏だった「聖観世音菩薩」

「夢違観音」像の近くでは水のせせらぎが心地よく聞こえる

「夢違観音」像の近くでは水のせせらぎが心地よく聞こえる

どこにも属さない「単立寺院」

近所の人にとっては憩いの場でもあり祈願の場でもある。毎日散歩がてら手を合わせていく人も多い

近所の人にとっては憩いの場でもあり祈願の場でもある。毎日散歩がてら手を合わせていく人も多い

キリスト教に造詣が深い睦賢和尚らしく、本堂には慈愛に満ちた「マリア観音」も奉安されている

キリスト教に造詣が深い睦賢和尚らしく、本堂には慈愛に満ちた「マリア観音」も奉安されている

世田谷観音は、1951年(昭和26年)に睦賢(ぼっけん)和尚が10年かけて建立したお寺です。ここは、「檀家寺」ではありません。つまり、一般のお寺のような檀家制度がなく、お墓を持たず葬儀をあげませんが、人々の願いが叶えられるよういつでもお祈りをする「祈願寺」として、訪れる人々の幸せを見守っています。

さらに、世田谷観音が他のお寺と大きく異なるのは、どこの宗派にも属していないという点です。それは、睦賢和尚のルーツに遡ります。出稼ぎのために長野県から東京へ上京した睦賢青年は、洋菓子店で働く傍ら、仕事場の向かいにあった教会へ通うようになりました。そこで、ハンセン病患者のために人生を注いだ英国人女性コンウォール・リー(1857〜1941)さんと運命の出会いを果たします。リーさんに洗礼を受けた睦賢青年は、自分も人の役に立ちたいという夢を持つようになります。その後、リーさんの勧めで始めたパン屋事業で成功し、現世田谷観音の土地を買って寺院を建てました。このように、実業家であった睦賢和尚が独力で開いたお寺は、どこの宗派にも属さない「単立寺院」となったのです。

400年前の梵鐘を鳴らす

本堂の左脇に、ひっそりと梵鐘(ぼんしょう)が佇んでいます。この梵鐘こそ、除夜の鐘の音を鳴り響かせる鐘です。なんと、1605年に造られたというこの梵鐘は、奈良県極楽寺に伝わる什物だったもの。歴史の波にもまれ、多くの梵鐘が第二次大戦時の金属類回収令のもと溶解されてしまったものの、奇跡的に残った梵鐘がありました。世田谷観音の梵鐘も、そのひとつ。新潟県に残されていた梵鐘を睦賢和尚が取り寄せ、今に至っています。

春は桜に囲まれる「六角堂」。閉ざされた扉の向こうには、国指定重要文化財が奉安されています。それが、「不動明王ならびに八大童子」です。1272年(文永9年)に、大仏師・運慶の孫にあたる康円の手によって完成したとされています。八大童子を従えた力強い不動明王像は、国内で2体しか残っていない、とても貴重な文化財。毎月28日には、「お不動様 月例御縁日」として扉が開かれています。

旧石薬師寺だった鐘楼堂。除夜の鐘はここで鳴り響く

旧石薬師寺だった鐘楼堂。除夜の鐘はここで鳴り響く

国指定重要文化財が奉安されている六角堂。春には見事な桜の花に囲まれる

国指定重要文化財が奉安されている六角堂。春には見事な桜の花に囲まれる

地域のためにも、開かれたお寺でありたい

「阿弥陀堂」内の五百羅漢坐像を両脇に、目を閉じて瞑想タイム。非日常の空間で雑念を忘れたい

「阿弥陀堂」内の五百羅漢坐像を両脇に、目を閉じて瞑想タイム。非日常の空間で雑念を忘れたい

四季折々の自然が楽しめる境内

四季折々の自然が楽しめる境内

ここには威勢のいい明るい声で、訪れる一人ひとりを歓迎している人物がいます。睦賢和尚の孫にあたる太田執事です。世田谷観音を“開かれた寺にしたい”という想いのもと、場所の提供をしたりワークショップなどのさまざまなイベントを開催したり、積極的に活動されていています。近寄りがたい場所ではなく、気軽に訪れたい場所として愛されているのは、太田執事の気さくな人柄の影響も大きいのでしょう。

さらに、阿弥陀如来と東京都指定有形文化財である五百羅漢坐像九躯が奉安されている「阿弥陀堂」を毎週末に開放し、誰でも瞑想できる環境を提供しています。また、毎月第二土曜日の早朝の「朝市」、訪れる人と作り手のコミュニケーションの場「世田谷てづくり市」の会場にもなっています。地域のため、人のためになりたい。睦賢和尚の想いは、脈々と継がれています。

世田谷観音の境内にいると、知らずと呼吸が深くなります。それは、自然が多く、空気がキレイな証拠。新しい年を迎えるにあたり、観音さまや仏さまと向き合って心静かに手を合わせてみてはいかがでしょう。

※「除夜の鐘 点打供養」は12/31(火)12:00〜、お一人1回200円(饅頭付き)です
※ 次回の「世田谷てづくり市」は2014/1/26(日)開催予定です
※「朝市」は毎月第二土曜日6:00〜8:30まで開催しています

(撮影:小林友美)

まぐろにこだわりあり!池田屋の天然まぐろの解体ショー

大人ふたりがかり運んだ、天然のメバチマグロ

大人ふたりがかり運んだ、天然のメバチマグロ

会話を楽しむ派?吟味したい派?

昭和26年創業の「お魚の店 池田屋」は、三軒茶屋栄通り商店街の「食彩館 三茶楽市」の中にあります。三軒茶屋栄通り商店街は、飲食店や雑貨屋が多く、毎日夕方16〜18時は歩行者天国を実施するなど、賑わいをみせます。その中でも「池田屋」は、昔ながらの魚屋らしく、威勢のいいかけ声が響く魚屋さん。

普通の魚屋と違うのは、店内の、切り身やお刺身が並ぶスペースが広く、お客さんがゆっくり選べること。「魚のことを聞きながら選びたいお客さんと、ゆっくり吟味したいお客さんがいるからね」と、三代目ご主人の石川宏さん。

この日、お店には、パックいっぱいに入ったブリのアラ、かじきの切り身やウニ、真鯛やあじの刺身が並んでいました。アラやかまが大好物の私には、たまらないラインナップ。解体ショーが始まる前にテンションが上がってしまいました。

三軒茶屋栄通り商店街にある「食彩館 三茶楽市」

三軒茶屋栄通り商店街にある「食彩館 三茶楽市」

かじきの切り身やウニ、真鯛やあじの刺身

かじきの切り身やウニ、真鯛やあじの刺身

魚屋さんとのかけ合いが楽しい解体ショー

71キロのまぐろが登場、この日は大物でした

71キロのまぐろが登場、この日は大物でした

怖いけど一生懸命お手伝いした女の子

怖いけど一生懸命お手伝いした女の子

解体ショーが行われるのは、毎週日曜日の14時30分から。時間になると、カランカラーン、カランカラーンと鐘の音が商店街に鳴り響き、呼び込みが始まります。常連さんはすでに待機していて、通りがかりの親子やカップル、犬を連れた散歩中のお父さんも立ち止まり興味津々。

お店の奥から二人がかりで運ばれてきたまぐろは、まな板からはみ出るほどの大きさ。「よいしょ」とまな板に乗せられると、あちこちで「大きい!」の歓声が。

「さあ、このまぐろの重さは何キロだと思う?お父さんより重いかな!」解体ショー恒例のまぐろの重量当てクイズが始まります。「65キロ」「もう少し重いかな!」「70キロ」「おしい!」「71キロ!」「正解!今日のまぐろは71キロ!大きいよ!」とお客さんとのやりとりも弾み、どんどん賑やかに。

次に、まぐろの頭を切り落とす作業を、小学生の女の子がお手伝い。常連さんからも「よいしょ、よいしょ」とかけ声が。おそるおそる手伝った女の子は「怖かったー!とっても硬かった!」と興奮気味に話していました。店頭に集まったお客さんは一気にアットホームな雰囲気に包まれます。

人気の試食タイム!

まぐろをさばく脇では、中落ちの試食タイムが始まります。おかみさんがスプーンでそぎ取った中落ちを、みんなの手のひらにのせていきます。

「池田屋のウリはまぐろ。まぐろを一匹、まるごと仕入れるから、新鮮で安く提供することができる」(石川さん)

中落ちは、取れる量がまぐろの大きさによって異なり、安定した量が扱えないため、スーパーやお魚屋さんでもほとんど出回りません。一匹まるごと仕入れる「池田屋」だからこそ味わえる希少な部位。旨みがぎっしり詰まった中落ちはとても美味しく、思わずおかわりするほど。

その間にも、厚さ10cmほどの赤身が1,000円、大トロ2,000円と、おろしたそばから売れていきます。なくなってしまう前に私も購入。一切れのサイズは大きめで、一人暮らしでは食べきれないと遠慮されそうですが、新鮮なまぐろは、この日のうちに食べきらなくても大丈夫。お刺身や漬け、サラダなど、色々な食べ方でいただきました。

しょうゆを付けなくても美味しい中落ち

しょうゆを付けなくても美味しい中落ち

赤身、中トロ、大トロ。おろしたそばから売れていきます

赤身、中トロ、大トロ。おろしたそばから売れていきます

まるごと一匹は、魚屋のこだわり

分厚い切り身。お刺身、漬け、お寿司にサラダなどにいかが

分厚い切り身。お刺身、漬け、お寿司にサラダなどにいかが

年末年始のお買い物にもおすすめ

年末年始のお買い物にもおすすめ

「こんな大きな魚をさばくの、初めて見ました」と話しながら帰るお客さんたち。ダイナミックなプロの手さばきを間近で見ることができるこのショーには、珍しいだけではなく、本来の魚の姿を見せる池田屋のこだわりがありました。

「切り身やおろした魚の方が売れるのはわかっているのだけど、まるまる一匹の魚がいないと、魚屋じゃないでしょ」(おかみさん)

ご主人やおかみさんとの会話を楽しみにお店を訪れる方も。
昔ながらの魚屋の良さを残しつつ、ライフスタイルや好みに合わせた買い方ができる魚屋さん。日曜日は“まぐろの日”になりそうです。

池田屋では、12月29日(日)は14時30分より、30日(月)、31(火)は開店から、まぐろの解体ショーを開催します。年末年始の準備に、新鮮なまぐろと、威勢のいい魚屋さんの雰囲気を味わってみてはいかがでしょう。

店名:お魚の店 池田屋
住所:世田谷区三軒茶屋1-34-10
電話番号:03-3418-7030(店舗)/03-3421-6536(事務所)
定休日:水曜日
営業時間:10~20時

昭和の風情と新しいニーズ、どちらも満たす下高井戸商店街

鈴木食品のお惣菜コーナー。働く方も元は常連さんでこの味のファン

鈴木食品のお惣菜コーナー。働く方も元は常連さんでこの味のファン

下高井戸市場でおいしい買いもの

下高井戸駅の北口を出ると、頭上に下高井戸駅前市場と書かれたレトロな看板が掲げられています。下高井戸商店街の一角、この看板の奥には今も昔ながらの市場が健在で、魚屋さん、豆腐屋さん、お茶屋さん、お惣菜屋さんなどが並び、なんとも“古きよき時代”の風情を醸し出しています。残念ながらシャッターを閉じてしまったお店もありますが、開店中のお店はどこも、元気にお客さんに声をかけていました。

新鮮そうなお刺身に、つくり立てのお豆腐、ひとつひとつのお店に魅力があり、目移りしながら市場内を歩きました。ぐるりと巡ると、鈴木食品店のおかあさんが、「いらっしゃい。どこから来たの」と声をかけてくれました。ここは魚介類を中心とした加工品と、手づくりの漬物やお惣菜が豊富に揃う食品店です。

下高井戸駅前市場の看板

下高井戸駅前市場の看板

レトロな店が連なる市場には、料理人のお客さんも多いそう

レトロな店が連なる市場には、料理人のお客さんも多いそう

鈴木食品店のこだわり

鈴木食品の名物おとうさんは、おかあさんも絶賛の料理上手

鈴木食品の名物おとうさんは、おかあさんも絶賛の料理上手

三友シーフーズの店先も、にぎやかで楽しい

三友シーフーズの店先も、にぎやかで楽しい

誰もが気軽に立ち寄れるよう、扉もありません

誰もが気軽に立ち寄れるよう、扉もありません

日本全国から、おいしくて確かなものしか集めていない、と胸をはる鈴木食品店のおかあさん。個人商店の誇りを感じるこだわりのお店です。干物などの加工品は養殖でなく天然物の魚を使ったものですし、他の品々も長くやってきたからならではのルートで、集めていると言います。「12月はお歳暮の時期だから大忙しなの。でもね、必ずうちを知っているお客さんの注文しか受けないのよ。好みも分からないし、信頼が大事だからね」と、お客さんとの関係も丁寧に築いています。

鈴木食品店でファンが多いのはお惣菜。最近は、おとうさんがお惣菜担当で、素材にこだわり毎日手づくりしています。お店が開くと同時に、次々にお惣菜が並んでいきますが、お昼頃が一番豊富な品揃えとのこと。ほくほくのかぼちゃの煮もの、甘さとかたさが絶妙の煮豆、卯の花、きんぴら…豊富な品揃えで、お客さんの胃袋を支えているのです。

「遠くからわざわざ来るお客さんもいるし、たくさんの常連さんがいるからやっていられるの。安くておいしいものはなかなかない。それをなんとか無理のない範囲で実現しようとがんばっています。お惣菜も普通の家庭の料理だけど、気持ちが入っているからおいしいんだと思うよ」(鈴木食品店のお母さん)

店員さんの営業もいきいきと上手で、思わずたくさん買い物をしてしまったのは嬉しい誤算です。同じ市場の魚屋「三友シーフーズ」にも、新鮮なお刺身や鮮魚が豊富に並んでいました。

しもたかステーションを利用して、商店街をもっと便利に

駅前市場を後にして向かったのは、同じく北口の駅前通り。こちらには人気のお肉屋さん「堀田」があります。コロッケとメンチカツを買って、サクサクとおいしいつまみ食いを楽しみます。さらに進むと下高井戸商店街振興組合の事務所でもある「しもたかステーション」がありました。

「商店街のことなら何でもこちらへ」とうたっているこの場所は、平成17年に組合員の出資でオープンしたというまちのステーション。気軽に利用できるのが嬉しい休憩所で、買いものや地域情報の掲示板、商店街で貯められるポイント(スタンプ)の交換、授乳スペースやおむつ交換台の設備まであるのです。

さらに、買い物途中で荷物を預けたり、買ったものを自宅に届けてもらったり、買いものに来られない人には、商店街の商品の宅配サービスまで請け負っています。大型店や便利なサービスに押されっぱなしかと思いきや、さまざまな世代のお客さんのニーズを満たしている商店街。きめ細やかに機能を拡充していくことで、新しい存在価値が生まれていることを知りました。

「下高井戸シネマがなくなりそうになったときは、商店街の振興組合の役員が、文化がなくなるといって立ち上がり、新会社を設立して運営を続けたこともありました。小中学校がすぐ近くにあるので、子どもたちが商店街をフィールドに体験学習をしたり、文化や教育を育んでいくことも商店街ができる役割のひとつです」(石井さん)

古くからの商店街が得意とするコミュニケーションと、新しいニーズに答えること。その両方を育んでいくことが、活気ある商店街を存続するカギのようです。

下高井戸商店街振興組合の石井健夫さん

下高井戸商店街振興組合の石井健夫さん

しもたかステーション内の掲示板

しもたかステーション内の掲示板

鈴木食品店の魚のコーナー。静岡、青森、三重と産直品が並びます

鈴木食品店の魚のコーナー。静岡、青森、三重と産直品が並びます

散策を終えてみると、この日の買いものは煮穴子、いかの和えもの、卯の花、納豆など、いろいろと買い込んでいました。どれを食べるにも商店街で聞いた軽快なトークが思い出されて、味わいが一層増すよう。小さな専門店の良さを体験し、便利なスーパーでは買えないものがあることを、しみじみと実感したのでした。

[12月の特集]人情も新しさも!商店街で元気になる買い物を

用賀のカフェスタンド&焙煎店「Woodberry Coffee Roasters」

用賀駅からすぐの「Woodberry Coffee Roasters」

用賀駅からすぐの「Woodberry Coffee Roasters」

美味しいコーヒーで、毎日をもっと楽しく

「朝はやっぱりカフェラテが美味しいですね」と言う、Woodberry Coffee Roasters代表の木原武蔵さん。店舗のリニューアルに伴って、コーヒー焙煎機をあらたに導入し、コーヒー豆の店頭販売と3種類の抽出法(エスプレッソ式、ドリップ式、フレンチプレス式)のコーヒー抽出を行っています。

「豆はすべて農園単位でご紹介をしていて、今いちばんおすすめなのは、ブラジルのベラヴィスタ農園のものですね。コーヒーで、毎日がもっと楽しくなるといいなと思っています」(木原さん)

いただいてみると、なんとも柔らかく優しい味!各農園から届いたコーヒーを、一切ブレンドされていない「シングルオリジン」というかたちで提供しています。

「その土地の気候、土壌、人の3つの要素によって、本当に風味って違うんです。コーヒーの個性を楽しんでいただきたいという思いから、シングルオリジンにこだわっています」(木原さん)

ドリップ式で抽出中!

ドリップ式で抽出中!

カフェラテもつくっていただきました。美味しい!

カフェラテもつくっていただきました。美味しい!

地域の個人商店とのコラボレーション

Woodberry Coffee Roasters の店舗名の由来をお聞きしてみると、同じ用賀にある靴製作・修理店「Canteen」店主の海老根努さんが相談に乗ってくれたのだとか。

「いつもの通りの雑談をしているなかで生まれました。海老根さんは、いわば名付け親ですね」(木原さん)

この「Canteen」店主の海老根さんがデザインとプロデュースを担当し、革のコースターやTシャツのオリジナルグッズを製作し、販売もしています。

用賀というまちをもっと盛り上げたい。そんな共通の思いを持つ個人商店でコラボレーションができないか…。そうした会話から商品開発が具体化したのだそう。

ほかにも、チョコレート店「ショコル(xocol)」の商品「Quetzal」の取り扱いもスタートしていますが、なんとこの店舗の商品は、カカオ豆を自家焙煎した後、石臼でひいて作られているということで、ハンドクラフトであるという点がコンセプトに一致しています。

「Canteen」店主の海老根さんがつくったコースター

「Canteen」店主の海老根さんがつくったコースター

こちらも同じ「Canteen」店主とのコラボレーションTシャツ

こちらも同じ「Canteen」店主とのコラボレーションTシャツ

スペシャリティコーヒーを当たり前の風景に

「今は、日本のスペシャリティコーヒーシーンは注目されていて、一種のブームのようになっています。でも、いつかコーヒーの個性を味わうというスペシャリティコーヒーが当たり前のことになったらいいなと思っているんです」(木原さん)

例えば、木原さんがよく行く古着屋さんは、「○○年製のもので、こんな着こなしにぴったり」といった情報がタグに書かれているのだそう。

「洋服でも靴でも、もしくはワインやビールでもそうだと思うんですが、ビールにしても、○○の水を使っていると聞いてほうが楽しいじゃないですか。ライフスタイル全般において、愛着のあるものを育てていきたいという思いがありますね」(木原さん)

農園単位の、スペシャリティーコーヒーを日常に。そんな日々を暮らせたらいいですね。Woodberry Coffee Roasters では、テイスティングなどコーヒーに関するワークショップを積極的に開催しています。

まずは1杯、お気に入りのスペシャリティコーヒーを探してみませんか?

店舗内にはこだわりの豆がずらり

店舗内にはこだわりの豆がずらり

Woodberry Coffee Roasters の店舗外観

Woodberry Coffee Roasters の店舗外観

「えるも〜る烏山」商店街は、いつでも頼れるコミュニティ

常に自転車や車が行き交う千歳烏山駅前周辺

常に自転車や車が行き交う千歳烏山駅前周辺

ラックカードは商店街とかかわるツール

商店街にいち早く電子式ポイントカードを取り入れるなど、先進的な取組みが盛んな千歳烏山駅前通り商店街。しかし、「そのカードだって早かったというだけじゃないんだよ」と聞いてやってきたのは商店街の振興組合の事務所です。ここで専務理事を務める松永克己さんが、“コミュニティへの切符”とでもいうべき、「えるも〜るラックカード」についてお話ししてくださいました。

「ラックカードは100円で1ポイントのダイヤスタンプがつくポイントカードです。でもこの機能はカードのほんの一部。私たちはこのカードを、コミュニティを形成するためのツールだと考えています。例えばね、『NPO法人笑顔せたがや』が、よろず相談所というのをやっているんです。お年寄りがここに相談に来てくれたら“よくぞ相談してくれました”ということでポイントが加算されるんですよ」(松永)

相談にのってもらって、さらにポイントまでつくなんて、ポイントカードの概念をひっくり返されるようなシステムです。しかし、コミュニティに参加することが大事、商店街の役割はコミュニティ形成、と幾度となく熱く語る松永さんのお話を聞いていると、だんだんとその仕組みの意図が分かってきました。

烏山駅前通り商店街振興組合理事 松永さん

烏山駅前通り商店街振興組合理事 松永さん

買い物のポイントのほか、コミュニティ活動まで貯まる、えるも〜るラックカード

買い物のポイントのほか、コミュニティ活動まで貯まる、えるも〜るラックカード

千歳烏山駅の大通り。左手の清水屋さんでもポイントが貯まります

千歳烏山駅の大通り。左手の清水屋さんでもポイントが貯まります

商店街に加入している商店の中でも、スタンプ加盟店は約7割。買い物のときに金額に応じて付与されるポイントやノー包装ポイントなどは、それぞれの商店が経費として負担しています。スタンプ加盟店自体も「コミュニティ形成に自分たちが参加している」としっかり動機づけされなければできることではありません。今、新たな商店街の価値をつくっていくために、それぞれが協力し合う土壌が育まれつつあるのです。「企業市民としての役割が問われる時代になってきたと思います」と松永さんもいいます。

「買い物につくポイントであるダイヤスタンプができてから、もう50年になるんですよ。昭和40年に西友ができることになって、買い物客の流出を防ごう、安売り以外の付加価値をつけていこうと始めたんです」(松永さん)

その付加価値の形は変容しつつも、一途に商店街のあるべき姿を追っているのが、えるも〜る烏山なのでしょう。

良いコミュニティって何だろう

前述した相談ポイント以外にも、買い物以外のポイントはたくさんあります。例えば商店街運営の駐輪場を利用したらマナーポイント、インクカートリッジ回収でリサイクルポイント、ペットボトルポイント(一定のポイント毎にダイヤスタンプに交換)など。ダイヤスタンプとは別に、コミュニティポイントができた7年前から、徐々にそのバリエーションは豊かになっています。しかも、貯めたポイントは千歳烏山の多くの銀行で、現金と同様貯蓄に使えるというシステムも地域への密着度の高さを感じさせます。

このようなコミュニティポイントの中で、一番ポイントが加算されるのがボランティアポイントです。駅前を中心として清掃活動を実施している任意団体「スクラムからすやま」が毎月第一日曜日に行っている駅前清掃に参加すると、なんとポイントは100ポイント。買い物時のポイントに換算すると10,000円分と高額なポイントですから、商店街が考えるコミュニティ参加の意味を、つくづく考えさせられます。

スーパー清水屋さん近くの駐輪場でもは、駐輪することでコミュニティポイントが貯まります

スーパー清水屋さん近くの駐輪場でもは、駐輪することでコミュニティポイントが貯まります

ペットボトルも指定の機械に入れて回収されるとポイントが貯まります

“ペットボトルも指定の機械に入れて回収されるとポイントが貯まります

地域の祭りが防災訓練

では、コミュニティをつくるのは何のため?と問えば、「安心して暮らすため」という答えが松永さんから返ってきました。その考えに対する強い意志は、2011年3月11日に起きた東日本大震災の時に行動となって表れました。多くの場所が節電で暗くなる中、商店街が灯す街路灯は消さないことを決定。心細く暗い夜道を照らし、烏山に帰ってくると安心したという声がたくさん寄せられたといいます。

もちろん、普段の備えも大切。その具体策もえるも〜る烏山商店街ならではの工夫が。

「地域のお祭りが、最大の防災訓練です。なにか災害があったとき、街にどんな人がいるか分からなければ、助けを求めることも、助けることもできません。住民同士が顔見知りになっておくというのが、すごく大事なことなんです」(松永さん)

お祭りを大事にしたいという想いから、祭り限定で使える縁日券も発行しています。「普段貯めたポイントは縁日券と交換できます。子どもに縁日券を持たせると、お祭りは楽しめるけれど、お金じゃないから遠出しないし、家族の方は安心みたいですよ」と松永さんはいいます。

お年寄りから若者まで利用される烏山商店街の風景

お年寄りから若者まで利用される烏山商店街の風景

老舗の文房具屋さんは品数も充実しています

老舗の文房具屋さんは品数も充実しています

「これからの商店街は、地域の人々の安心・安全を担う使命を負っていると思います。それに、環境整備、文化の創造と伝承をしていく、一大コミュニュケーションの場。地域とともにある、という目標はそのままに、さらにコミュニケーションを深めていきたいですね」(松永さん)

今や、えるも〜るラックカードの発行数は4万枚に迫ります。以前は家族で1枚だったのが、家族それぞれの生活シーンに合わせて一人一人が持つようになり、発行枚数は増えているそうです。これからもこのカードはさまざまな新しい展開をみせてくれるでしょう。「えるも〜る烏山」が目指す商店街の姿から、今後も目が離せません。

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えるも〜る烏山
[住 所]世田谷区南烏山6-3-1 ダイヤ会館 3F
[ホームページ]http://www.elmall.or.jp/

[12月の特集] 人情も新しさも!商店街で元気になる買い物を

商店街が街の悩みを解決する!「ようが便利堂」

「ようが便利堂」は毎週月曜と土曜の午後開店。大学生が黄色のはっぴを着て、用賀商店街の一員として活動中

「ようが便利堂」は毎週月曜と土曜の午後開店。大学生が黄色のはっぴを着て、用賀商店街の一員として活動中

ようが便利堂とは?

用賀商店街には数多くのお店があり、組合への加盟数は280にものぼります。八百屋、金物屋、クリーニング屋、リフォーム店と、どれも暮らしに関わる専門店。商店街は、大型スーパーやデパートに負けない、専門家の集まりでもあるのです。

こうした商店街の知識や技術と、近隣の大学生の若い力を借りて、街の人の役に立つサービスをしようと始まったのが、用賀商店街組合の「ようが便利堂」。商店街をもっと活用してほしいという思いはもちろんのこと、街の困り事を街の中で解決できないかという、実験的な試みです。

具体的なサービスは、大きく分けると「お手伝い」と「御用聞き」の2つ。「お手伝い」は、庭の草むしりや簡単な力仕事を行うこと、「御用聞き」では、商店街のお店で解決できることを案内したり、代わりに問い合わせをしたりします。

立ち上げ時から学生を巻き込んで始まったこの取り組みは、ボランティアではなく、あくまで小さな事業です。料金は目安で1時間2,100円(税込・材料費等は別途請求)ほどかかりますが、

商店街のまちのステーション「ハロー*ようが」の事務所では、よっきーが迎えてくれる

商店街のまちのステーション「ハロー*ようが」の事務所では、よっきーが迎えてくれる

これまでのところ、ひとり暮らしの方や、高齢者の庭仕事の依頼が多い

これまでのところ、ひとり暮らしの方や、高齢者の庭仕事の依頼が多い

これは、一般的な便利屋さんのおよそ3分の1ほどの価格。商店街のまちのステーション「ハロー*ようが」を事務所とし、用賀エリアのみを対象としています。近所の若い人に手伝ってもらう感覚で、気軽にお願いできるのがポイントです。

商店街こそ、街の相談窓口になれる

エアコンのお掃除も、背の高い男子にお願いしたいことのひとつ

エアコンのお掃除も、背の高い男子にお願いしたいことのひとつ

用賀商店街振興組合の理事、杉本浩一さん。まちづくり株式会社の代表でもある

用賀商店街振興組合の理事、杉本浩一さん。まちづくり株式会社の代表でもある

5年前から用賀商店街振興組合の仕事に携わる杉本浩一さんは、このサービスに商店街の可能性を感じています。

「ようが便利堂は、まちの便利屋さんです。困ったことがあった時に、知らない人に仕事を頼むのは不安だけれど、商店街に相談すると解決してくれる、と思ってもらえたらよいなと。昔は人情で成り立っていた助け合いを、お金を介在させた新しい仕組みで解決できないかという、試みだと思っています」(杉本さん)

今多いのが、ひとり暮らしの高齢者からの庭仕事などの依頼だそうです。
庭仕事で訪れたついでに、「エアコンが壊れたんだけど見てもらえないか」と相談を受け、街の電気屋さんを紹介して電気屋さんが訪れたら「今度はBSが映らない…」と連鎖的に商店街と地域住人の関係を深めることに。また、「耐震補強をしたい」との問い合わせには商店街の材木店や金物屋を紹介したそうです。

若い力を!

便利堂の機能のひとつ「お手伝い」には、駒沢大学経済学科松本ゼミの学生たち11人が協力しています。女性3名、男性8名の学生が、ローテーションで毎週月曜と土曜の午後事務所を訪れ、商店街の一員として街の人々から持ち込まれる依頼に応えます。

参加して2年目になる3年生の永井貴大さん、田中響さん、今年から参加の2年生の春木将志さんがお話を聞かせてくれました。

「ゼミのなかでもこの活動に関心のあるメンバーでやっています。お金を稼ぐだけなら、他のバイトの方が効率がよいのですが、この仕事でしか経験できないことがあります」(春木さん)

便利堂に寄せられる困りごとはさまざまで、パソコンの操作を教えることや、目の見えない方の付き添いをするようなお仕事も。

「やるんだったらしっかり関わって、商店街の人たちに可愛がってもらえるようになりなさいと言われて、便利堂の仕事以外にも、街のお祭りに参加したりしています」(永井さん)

駒沢大学経済学科松本ゼミの3年生、田中響さん(右)と2年生の春木将志さん(左)

駒沢大学経済学科松本ゼミの3年生、田中響さん(右)と2年生の春木将志さん(左)

街のお祭りでは、一晩中、焼きそばを焼いたという永井貴大さん(左)

街のお祭りでは、一晩中、焼きそばを焼いたという永井貴大さん(左)

「庭の仕事などの依頼主は、年配の方が多いです。子どもが居ても遠くに住んでいたり、男手がない家に必要とされていることがわかりました。商店街がそんな地域のつながりを保つことは、とても大事なことだと思います」(田中さん)

何十年もひとつの場所でやっていくことの価値

商店街の加盟店のお手伝いをすることも。この時は、お店のしっくい状の壁をはがすお仕事

商店街の加盟店のお手伝いをすることも。この時は、お店のしっくい状の壁をはがすお仕事

スロープにニスを塗るという依頼の際に、相談にのってもらった「若松屋金物店」

スロープにニスを塗るという依頼の際に、相談にのってもらった「若松屋金物店」

「このままだと、近い将来、商店街はいらなくなってしまう」

商店街理事長の強い危機感から、用賀商店街ではこの5年間で様々な試みをしてきました。地方物産ショップ、街のキャラクター「よっきー」、フリーペーパー『YOGAS』を軌道にのせ、 昨年からこの「ようが便利堂」を始めました。

杉本さんは商店街にはよい時も悪い時もひとつの土地で長くやっていく知恵があり、若い人が生きて行く場としても可能性があると感じています。

「ここを手伝ってくれている学生さんも、就職の時期になると100社近くも企業を受けて、すごくいい子でも1社しか受からないという世界に入っていきます。社会経験は必要だし、それはそれでよいことだけれど、商店街のような居場所があることも知ってほしい。生き馬の目を抜く“勝ち”を目指す世界がある一方で、何十年もひとつの場所で長くやっていくために、周囲を大切にしながら助け合う“負けない”やり方もある。僕自身、街のおじさんやおばさんたちに人との付き合い方を

教えてもらったと思っています。これからは、その恩返しをしたい」

一日二日では築くことのできない信頼関係。その上に成り立つ、単なる売買ではない“モノを買う”という行為は、これからの時代、何より大切なコミュニケーションのひとつになるのかもしれません。

(撮影:渡邉和宏)
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ようが便利堂
[電 話]TEL:070-5580-6825(専用携帯電話)または 03-3700-6659(用賀商店街事務所)
     担当:杉本
[ホームページ]http://yogabenrido.jimdo.com/

[12月の特集] 人情も新しさも!商店街で元気になる買い物を

土曜の朝ごはんでつながろう!世田谷代田「朝ごはん部」

みんなで持ち寄ったカレー。それぞれ個性があって美味しい!

みんなで持ち寄ったカレー。それぞれ個性があって美味しい!

週末、みんなでカレーを食べよう!

開催は2回目という世田谷代田「朝ごはん部」ですが、今回はカレーがテーマ。1回目の開催時に、これからどんなことをやりたい?とみんなで話し合った結果、「朝からカレーを食べる」という意見に、それもアリかもと、実施されました。

参加者がカレーを鍋ごと持ち寄り、それぞれを食べ比べ。もちろん、カレーを持ち寄らなくても参加OKです。また、いろんな人に参加して欲しいと、駅前にあるカフェ「vizzmo」で開催することに。

「以前は暮らしていたシェアハウスで人が集まるワークショップを中心に活動をしていました。シェアハウスは住宅街にあるのですが、駅前だと、何かのついでに立ち寄ってくれる人もいるかもしれないと思って。普段仕事をしていると、朝家を出て、夜帰るので、生活の中心は自分の住んでいる街ではないんですよね。自分が暮らす地域と言われてもピンと来ないかもしれない。でもちょっとしたきっかけさえあれば、ご近所さんに親しみが涌いたりすると思うんです」(大池さん)

駅前にあるカフェ「vizzmo」

駅前にあるカフェ「vizzmo」

世田谷代田「朝ごはん部」主宰のひとり、大池えりかさん

世田谷代田「朝ごはん部」主宰のひとり、大池えりかさん

朝ごはんという日常の行為でつながる、参加型コミュニティ

大池さんは朝ごはん部の活動以前から代田のシェアハウスで人が集まる場づくりとして、これまでに様々なイベントやワークショップを開催してきました。味噌作りや、草木染、編み物ワークショップや保健師さん、栄養士さんを招いての座談会など。参加してくれる人は、暮らしている地域や家族の在り方に興味や関心を持ち始めた20代など若い世代の人が多かったのだそう。

「私が企画や運営、進行をゲストとコーディネートするようなイベントやワークショップではなく、より参加型で、参加してくれた人と一緒にその場をつくっていくことができないかと考えていたんです」(大池さん)

そんな時に気がついたのは、自分自身が今、楽しいと思えることは、朝ごはんだということ。料理好きの友人や、体を動かしたり、健康的に充実して過ごすことに関心を持っているメンバーを集めて、朝ごはん部をつくることになったのだとか。

「朝ごはんは、日常生活の一部。だからきっと、いろんな地域の人も足を運んでもらいやすいと思ったんです。食べることで、つながる。そんな場づくりをしていきたいと考えています」(大池さん)

鍋ごと持ち寄ったカレーが並びます

鍋ごと持ち寄ったカレーが並びます

サラダとジュースも!朝からヘルシーなごはんです

サラダとジュースも!朝からヘルシーなごはんです

世田谷代田を「ただいま」と帰ってこれる街に

参加してくれているメンバーは、大学生から社会人まで、朝活に興味のある人もいれば、ものづくりに興味のある人、地域づくりに興味のある人まで様々です。

「ぞろぞろとみんなで世田谷代田の駅周辺を散策していると、珍しいと感じたのか、商店街のお店の方から声を掛けてくれたんです。嬉しかったですね。若い人が、地域とのつながりをより楽しいと感じてほしいですね。道を行き交う人たちが挨拶をする風景が当たり前にある街にしたいです。参加者の方には、世田谷代田という街での出会いをきっかけに、ただいまと帰ってこれる場所にできればと」(大池さん)

代田の朝ごはん部は、地域のおじいちゃんやおばあちゃんにも参加してもらえるような種まきをしたいし、「突撃、となりの朝ごはん」や「代田・朝ごはん市」などの企画も考えているのだそう。

週末の朝、朝ごはんをみんなと食べる。それだけで、素敵なことが起こるはず。新しいコミュニティの場に参加して、地域とつながって、気持ちのいい週末を送ってみませんか?

この場で初めて会うひとも、カレーを前に盛り上がります

この場で初めて会うひとも、カレーを前に盛り上がります

週末の朝、朝ごはんをみんなと食べる。ただそれだけなのに、楽しい

週末の朝、朝ごはんをみんなと食べる。ただそれだけなのに、楽しい

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世田谷代田の朝ごはん部
[活動地域]世田谷区代田 ※会場は毎回異なります
[開催日]毎月1回 土曜10:00~12:00
[URL]https://www.facebook.com/groups/230639093757966/
[対象]代田に住んでいても、住んでいなくてもOK!食べることが好きな人大歓迎◎
[朝ごはん部のい・ろ・は]
い:美味しく朝ごはんを頂きます
ろ:時々外でも朝ごはんを頂きます
は:もちろん、番外編もありますよ。楽しい朝ごはんの後にはワークショップ等のイベントを開催予定