「100人の本屋さん」とは
東急世田谷線「松陰神社前」駅近くのビルの2階、階段を登りきったところにある「100人の本屋さん」。ここでは、約130㎡の広い店内に、図書館のように高い棚がずらりと並び、棚は全て30cm四方に区切られて、様々な本が並べられています。その棚1マス1マスを100人が借り、マイクロ書店オーナー(=棚主)になる仕組み。それが「100人の本屋さん」です。来店した方は、棚の本を購入することが出来ます。
「100人の本屋さん」は、窓からの日が入り明るく、観葉植物が置かれ、インテリアには木がふんだんに使われています。音楽がかすかに流れ、とても居心地の良い空間です。
人がそこに集い利用してもらいたい
店主の吉澤卓さん。2019年5月、親族が所有していたこのスペースを、何か社会にとって有意義な場所として活用できないかと考えたそうです。イメージは色々な人がそこに集い利用してもらうこと。そんな中、吉祥寺にある「ブックマンション」その新しい発想やエネルギーの高さに強く魅かれ、自身でも世田谷区に作ってみたいと決意。クラウドファンディングで立上げ、100人以上もの方に応援をいただきながら、「100人の本屋さん」をオープンしたそうです。
親子が棚主の絵本のマス
「100人の本屋さん」がオープンしてこの約4か月(2021年6月現在)で、すでに70人もの本屋さん(棚主)が生まれました。カメラマン、会社員、自営業や政治家、NPO団体など多様な背景を持つ方々が棚主になっています。それぞれの本棚は、現在70人の棚主の生き方や自己表現、こだわりの場であり、個性が光ります。棚を見ていると、まるで棚主に話しかけられているようでワクワクしてきます。
吉澤さんは、それぞれの棚を丁寧に説明してくれます。どの棚についても、棚主の想いを受け止め、棚に来てくれた人へ届けているのです。育児中の筆者が、目を奪われたのは、絵本が並ぶマス。小さなお子さんとお母さんが棚主だそうです。お母さんのお気に入りだった本と、お子さんが読み終えた可愛い本。置く順番や値段を、真剣に考られていたそうです。親子のほほえましい様子が目に浮かび、並ぶ本たちがとても輝いて見えました。
人が繋がる場所をめざして
「この松陰神社に眠る、吉田松陰は大変な読書家で、本の入手、借り受けの過程を通し、明治維新に至るネットワークを広げたとされています。この場所もそういう縁にあやかり、本のパワーが街にしみだし、人々のネットワークが増幅する場所をめざしています」と吉澤さんは言います。
この場所は、読みたい本に出会うだけでなく、同じ本を面白いと感じた人同士の繋がりを作れる場所です。人と人が繋がるための仕掛けとして、コワーキングやイベントなども出来るようにもなっています。棚主同士の繋がり、購読者との繋がり、地域の人々との繋がり。その繋がりの輪は、どんどん重なり広がっていく「100人の本屋さん」。本好きの方だけに限らず、是非みなさんも、訪れてみてはいかがでしょうか。