松陰神社通り商店街に、ダンボールの巨大基地、現る!

商店街の路地裏にある空き地が舞台。住むこともできそうな立派な基地が完成しました。まるで要塞のようです

商店街の路地裏にある空き地が舞台。住むこともできそうな立派な基地が完成しました。まるで要塞のようです

大人も子どもも夢中!ダンボールで本格建築

吹く風がまだ冷たい3月上旬の日曜日、松陰神社通り商店街の路地裏の空き地に約30組の親子が集結しました。空き地の隅には山積みになった大量のダンボール。これからこれで、巨大な秘密基地を作ろうというのです。

「お父さん、お母さんも本気でがんばって!用意スタート!」

イベントを主催する「子ども原っぱ大学」代表の塚越暁さんのかけ声と同時に子どもたちの歓声が響き渡り、空き地はダンボールでみるみる埋まっていきました。大人も子どもも真剣そのもの。心の向くままに組み上げるお母さん、柱を組んで本格的な家作りに挑戦する小学生。建物と建物の間は大人が通れないほどの小さくて細い秘密の通路でつながれ、その中を小さな子どもたちが走り回っています。

子どもの参加者は、歩き始めたばかりの赤ちゃんから小学校高学年までという幅広さ。小さな子どもたちはお父さんお母さんが組み立てた家をペンキで塗ったり、ダンボール用のカッター使って窓をくりぬいたり。小学生くらいからは、仲間と協力して自分たちの基地を作り上げていました。

ダンボールと絵の具で自由に、真剣に遊びます。壊しても汚れても、何があっても今日だけは怒られません

ダンボールと絵の具で自由に、真剣に遊びます。壊しても汚れても、何があっても今日だけは怒られません

頭の中の設計図通りの基地を作るには、取りかかりが肝心。バランスと重さを考えて慎重にスタート

頭の中の設計図通りの基地を作るには、取りかかりが肝心。バランスと重さを考えて慎重にスタート

材料はダンボールとガムテープだけ

私も6歳の息子と基地作りに挑戦!大きいのに軽く、丈夫なのに取り扱いやすいダンボール。簡単に大きな建物が出来るので、次は窓をつけよう、屋根を塗ろうと次々イメージが膨らみ、子どもそっちのけで夢中になってしまいました。息子のほうは建物の壁に絵を描いたり、小物を作ったりしたあとは、会場でできたお友だちとすっかり仲良くなって遊んでいます。

「僕らが注意する事は、刃物の取り扱いと道路の飛び出し。それから絵の具の無駄遣いですね(笑)。あとは大人も子どもも好き勝手やって!」(塚越さん)

子ども原っぱ大学は、身近な自然を使った親子の遊びイベントを企画・運営しています。この「ダンボール秘密基地づくり学科」は人気の定番イベントですが、今回が都内初開催だとか。ほかにも、たき火を囲みながら手作り望遠鏡で天体観察をする「星空マイスター学科」や、子どもたちが一眼レフのマスターを目指す「ホンキのカメラ学科」などユニークなイベントがいっぱい。親が子どもに「教える」のではなく、親子が一緒に夢中になって最高の時間を味わってもらいたい、そんな思いで活動しています。

取り扱いに注意することを約束して、子どもたちもダンボールカッターを手に取り組みます

取り扱いに注意することを約束して、子どもたちもダンボールカッターを手に取り組みます

こちらはカフェ風基地。ほかにも一軒家やドーム、お茶の間風など個性あふれる基地の数々が建ち並びました

こちらはカフェ風基地。ほかにも一軒家やドーム、お茶の間風など個性あふれる基地の数々が建ち並びました

軽トラックなど車4台で運んだダンボールと30ロールのガムテープは、ランチ前にはすっかりなくなり、空き地に巨大な街が現れました。

商店街をあげて参加者を歓迎!

ランチには、松陰神社通り商店街の自慢の惣菜を集めた「松陰神社前スペシャルお弁当」が登場。商店街の方々が見守るなか、基地やダンボールの山の上など、思い思いの場所に座り、街の愛情が詰まったお弁当をほおばりました。

この空き地での基地作りは、子ども原っぱ大学と松陰神社通り商店街組合の若手メンバーによるユニット「良鳩部(イーハトーブ)」の出会いにより実現しました。良鳩部のメンバーは、串揚げ店「どんからり」の湊文武さん、カフェ「STUDY」の国本快さん、「商アリク」の廣岡好和さん、不動産会社「松陰会館」の佐藤芳秋さんの4人です。

「商店街の活性化は子どもがキーと考え、親子イベントの開催を続けています。子どもの声は人を集める力を持っていますし、昔のようにお店と子どもが関わり合える日常を取り戻すことが商店街のにぎわいの源になるんです。イベントを契機に商店街の横のつながりも強めたいと考えています。」(良鳩部:佐藤芳秋さん)

松陰神社通り商店街の愛情いっぱいのお弁当。これに加えて温かいスープが配られました

松陰神社通り商店街の愛情いっぱいのお弁当。これに加えて温かいスープが配られました

左から国本さん、湊さん、佐藤さん、廣岡さん。良鳩部はこの街を理想郷に、という思いから名付けられました

左から国本さん、湊さん、佐藤さん、廣岡さん。良鳩部はこの街を理想郷に、という思いから名付けられました

街の景色を作った気持ちが街への愛着に

これまで良鳩部では、空き地でのバーベキューなどさまざまな親子向けの催しを企画してきましたが、今回のコラボでは、子ども原っぱ大学が持つ原っぱ遊びのノウハウによりダイナミックな催しにすることができ、層の厚い親子ネットワークを通じて参加者を募れたことで、地元以外の人にも松陰神社の魅力を紹介することができました。

ランチを終えると基地作りもラストスパート。通りかかった地元の親子連れが飛び入り参加したり、商店街の人たちが見物に来たりと、空き地のまわりもますます賑わってきます。

そして、午後2時半、基地作り終了! 銭湯の煙突を背景にした基地の姿はまさに要塞!自分たちで作った大きな作品に感慨もひとしおです。そして充実感と共に胸に残ったのは松陰神社の街への親しみ。街の景色に主体的に関わる経験をしたこと、親子で思いを共有したことが街への愛着を深めたようです。これはお祭りとは違う街の活性化へのアプローチと言えそう。子ども原っぱ大学と松陰神社通り商店街のコラボ企画はこれからも続くとのこと。この街のファンがますます増えそうな予感です。

子ども原っぱ大学の代表、塚越暁さん。「子どもと遊ぶって楽しいな」という父親としての気づきが活動の原点

子ども原っぱ大学の代表、塚越暁さん。「子どもと遊ぶって楽しいな」という父親としての気づきが活動の原点

空き地の入口。完成後30分で街は跡形もなく消え、ダンボールはリサイクル工場へ運ばれて行きました

空き地の入口。完成後30分で街は跡形もなく消え、ダンボールはリサイクル工場へ運ばれて行きました

あなたに大切にしたい風景はありますか?「地域風景資産」とは

みどりと静けさの北烏山9丁目屋敷林(地域風景資産)

みどりと静けさの北烏山9丁目屋敷林(地域風景資産)

世田谷区の風景づくりと「地域風景資産」

世田谷区の「地域風景資産」は「風景づくり条例」で位置づけられた、区民が主体的に風景づくりに参加するプログラムです。区民が大切に思う風景を推薦し、区が選定、登録します。ところが選定はされても、その場所を区が建設行為などから守る“保全活動”ではない、とのこと。ではいったいどういうものなのでしょう?

世田谷区都市整備部都市デザイン課の佐久間浩康さんに伺いました。

「ここでいう風景づくりとは、世田谷の魅力的な風景を住民の皆さんで守り育て、つくることです。なので、対象となる風景資産があるだけではなく、風景づくり活動を実際に行う区民の方々もしくは活動団体が存在することが前提です。風景を大切に思う区民が、その価値を皆で考え、所有者などのご理解を得て、風景づくりにつなげることが目的のものです。街の環境を良くしていくきっかけになればと。活動する人の輪が広がり、世田谷全体の風景が育っていくことを目指しています。」(佐久間さん)

大蔵の四季が溢れ出す妙法寺の境内(地域風景資産)

大蔵の四季が溢れ出す妙法寺の境内(地域風景資産)

桜上水「江戸城御囲い松」の兄弟松(地域風景資産)

桜上水「江戸城御囲い松」の兄弟松(地域風景資産)

そもそも、世田谷区は、風景づくりに関しては全国のなかでもかなり先をいく自治体です。東京都で初めての景観行政団体(景観法に基づき景観行政を担う地方自治体)として、「世田谷区風景づくり条例」と「風景づくり計画」をつくりました。

そのベースには、「区民、民間業者、および行政それぞれが歩み寄り、協働する」という基本の考え方があります。地域風景資産にしても、行政が資産を管理するのではなく、区民が守りたい風景を自分たちの手でケアをする、というのが基本です。

「せたがや百景」の反省から「地域風景資産」へ

地域風景資産の前身に「せたがや百景」がありました。昭和59年(1984年)に世田谷のなかで自慢できる風景を区民投票で100箇所選んだもの。世田谷に住む人々にとって大切な風景を明らかにしようという主旨で行われました。ところがこの時は、「選んだだけで終わってしまった」という反省点があったのだそうです。

「推薦するだけであれば簡単ですが、百景として選定された場所に建設計画が出てきた際の対応などがいきわたらず、選定後もその場所を見守り続ける行為が大切なのだということがわかってきたんです。そこで、約10年前から始まった地域風景資産では、場所の価値に加えて、実際に風景づくり活動を行う団体の存在や運営体制を合わせて考慮し、選定することになりました」(佐久間さん)

これまでに地域風景資産として選定されたのは、66箇所。昨年度(平成24年度)に第3回目の募集が行われ、新たに20箇所が追加され、今は86箇所となっています。

風景づくり活動の清掃活動の様子

風景づくり活動の清掃活動の様子

風景づくり活動の作業風景(ササ刈り)

風景づくり活動の作業風景(ササ刈り)

第3回地域風景資産では、20箇所が新たに追加!

今回の募集には、46箇所の応募がありました。推薦者は、一年半かけてその風景を改めて歩き、所有者の了解を得て、運営体制を整える作業を行ってきました。

1/26(日)に世田谷産業プラザで行われた「公開選定会」には、最終候補23件のプレゼンテーションが行われました。八幡山の八幡神社や、烏山川緑道などの住民に愛されてきた場所をはじめ、桜上水「江戸城御囲い松」や奥沢城趾など歴史的な資産のある風景について、いかに貴重であるか、

1/26(日)に世田谷産業プラザで行われた「公開選定会」。最終候補23件のプレゼンテーションの様子

1/26(日)に世田谷産業プラザで行われた「公開選定会」。最終候補23件のプレゼンテーションの様子

どうやって守っていくのか、どのような風景づくり活動をしていくのかについて発表がありました。
審査する選定人からは、活動を続けていく体制や、運営メンバーが高齢化した際に若い世代にどうつないでいくのか、といった長期的な運用に関する質問が挙げられました。

こうして選ばれた、新たな20箇所の地域風景資産は以下でご覧いただけます。
>> 第3回地域風景資産のご紹介

地域風景資産になって広がりが

風景づくりの活動に参加する人たちにとって、「地域風景資産」に選定されることはどんなメリットがあるのでしょう?

まず、区の都市デザイン課では、風景づくりアドバイザーのような専門家の派遣や、活動団体に向けた課題解決のための検討会の実施、地域風景資産をつなぐマップづくり、区民参加のまち歩きイベントの企画などを行っています。

しかし何より、活動に関わる区民のモチベーションが上がることが大きな効果でしょう。例えば第1回目の地域風景資産選定で選ばれた、弦巻の「双子の給水塔のそびえ立つ風景」の事例では、活動者が給水塔の所有者である東京都に働きかけ、見学会を開催したり、会報『双塔』を年4回も発行するなど熱心に活動し、この場所は今や区を代表するランドマークとなっています。
給水施設なので、一般公開している場所ではないものの、活動者の要望に応じて年に一回は近隣の小学生や地域の人々に見学会を開催できるようになったという変化をもたらしました。

「地域風景資産に選定されたことで、資産の所有者をはじめ建設計画などが持ち上がったときに風景の魅力を伝える材料のひとつにはなると思います。また、区民の方が町会や自治会などのまちづくりの活動に参加するのはなかなかハードルが高いかもしれませんが、この風景づくり活動は、

双子の給水塔の聳え立つ風景(地域風景資産)

双子の給水塔の聳え立つ風景(地域風景資産)

年に一度行われている給水塔見学会

年に一度行われている給水塔見学会

ほんとに小さな見守り活動から始められるので、身の丈でまちづくりに関わることもできます。日々の清掃活動など、ちょっとしたことでも、長く続けることに意味があると思います」(佐久間さん)

区民にとっての関心ごとは、自分の住むまちが、居心地がよい場所であるかどうか。“居心地のよさ”に風景はとても大切です。「自然だけでなく、商店街の賑やかさや生活の匂いなど人の営みが感じられる光景も、ほっと安らげる風景でしょう」と佐久間さん。

そんな風景を区民が大切にしたいと思っても、まずどんなことができるのか、何から始めたらよいかわからないもの。そんな時よりどころになるのが、この「地域風景資産」でもあるのかもしれません。

「まちづくり」と大上段に構えずとも、あなたにとって身近な風景に向き合うことから始めてみませんか。

「酵素世田谷」の酵素風呂でほかほか極上体験

祖師ケ谷大蔵駅から15分ほどにある酵素世田谷

祖師ケ谷大蔵駅から15分ほどにある酵素世田谷

酵素風呂ってなに?

お邪魔したのは、祖師谷大蔵にある「酵素世田谷」。飾り気のない店構えですが、実はここ、予約が殺到の人気健康スポットなのです。お店のドアを開けると、いきなり独特の香りがただよってきます。いわば堆肥の匂い、というと嫌がる人も多そうですが、これが効きめの要、発酵の香りなのです。「だんだん匂いにも慣れてきちゃんうんです」と笑顔で声をかけてくれたのは、店主の菊地夏果さん。この道20年のベテランで、酵素風呂の効果かお肌ツルツル、髪もつやつやで驚かされます。

受付を済ませると、まずは酵素風呂について解説してもらいます。酵素風呂を提供している店は全国各地にあり、どこも酵素を体内に取り込み、代謝や免疫力の向上を目的としています。生まれたての赤ちゃんが風邪をひかないのは、体中に酵素が満ちているから。酵素は体内で作れないので、どんどん減っていき体は年とともに弱っていきます。そこで酵素ジュースなどが注目を集めているのですが、皮膚から酵素を吸収する方が効率がいいという説もあるのです。

独特の匂いがする酵素風呂のぬか

独特の匂いがする酵素風呂のぬか

触ってみるとあたたかい

触ってみるとあたたかい

「酵素世田谷」の酵素は地産地消

酵素風呂の入浴法はだいたいどこでも一緒。米ぬか、ひのきなど酵素の触媒になるものを発酵させ、そこに首から下をすっぽりうずめて温まります。「酵素世田谷」のこだわりは、脱脂した米ぬかを使用し、常在菌のみで発酵させていること。菊地さんによると多くの酵素風呂では、市販の酵素液を投入して発酵しやすくしているそうです。

「ここの酵素風呂は例えるならぬか漬けと一緒の原理なんですよ。米ぬか中にいる菌が、24時間分裂を繰り返すことで発熱して、お風呂が温かくなります。酵素液を入れれば発酵しやすく温度もコントロールしやすいのですが、酵素世田谷が育んできたここだけの酵母は、大事にしたいですね」(菊地さん)

毎日お客さんが入り終わると、2時間ほどかけて手で切り返し、次の日に備えるそう。翌朝は70℃くらいの温度でスタートしますが、徐々に米ぬかの温度は下がっていくので、1つのお風呂に入れるのは1日に数人に限られる、贅沢なお風呂なのです。

酵素風呂はすべての後天的な疾患に効果があるといわれる健康法でもあり、ガン、冷え性、アトピーや不妊など、さまざまな目的で通ってくるお客さんがいるそうです。入浴する前、特に気になる症状がある場合は事前に伝えておくのがベター。私は冷え性で代謝が悪く、目が疲れているので、タオルをあてて目の上にも米ぬかをかけてもらいました。菊地さんは、酵素風呂に限らないホリスティックな視点で、体調に対してのアドバイスもしてくださいます。

シャベルでかきまぜて酸素を入れて発酵させます

シャベルでかきまぜて酸素を入れて発酵させます

顔以外は全身ぬかに埋めていきます

顔以外は全身ぬかに埋めていきます

ぬかの温かさが全身から伝わります

ぬかの温かさが全身から伝わります

入浴後はホカホカしてイライラしない

全身が米ぬかに覆われると、なんともいえない安心感に包まれます。私が入ったものはぬるめだったそうですが、それでも放射熱で体の芯からホカホカしてきます。米ぬかが体を支えてくれているので、無重力の中にいるみたいな感覚も新鮮です。いつも力んでばかりなので、力を抜くってこういうことなんだと初めて実感した気がしました。

さらに驚いたのは、体の感覚の変化です。約15分の入浴時間中、前半はデトックス、後半は酵素を体内に取り込む時間と聞いていましたが、まさにそのことを実感。前半は疲れがにじみだしていくように気持ちよかったのが、後半はなんだか少し息苦しく運動しているような感じでした。

酵素風呂からあがった後は、シャワーを浴び、身支度を整えたら終わりです。水を飲んで少しゆったりと過ごし、帰路につきます。血色がよくなり夜までずっとポカポカ、次の日も目覚めやすい、いろいろな利点がありました。それに加えて感動したのが、イライラしない、ということ。ついついイライラしたりネガティブなことを考えがちなのが、酵素風呂に入って1、2日は心がすごく穏やかだったのです。そういえば、「忙しいお母さんも、ここに来ていると子どもを怒らないでいられるからって、酵素風呂に入りにくる方もいますよ」と菊地さんも言っていました。

菊地さんが手際よく進めてくれます

菊地さんが手際よく進めてくれます

頭のマッサージのあと耳の裏にもぬかを乗せていきます

頭のマッサージのあと耳の裏にもぬかを乗せていきます

顔はタオルの上からぬかで覆います

顔はタオルの上からぬかで覆います

くみん手帖読者にぴったりの健康法

老若男女すべてに効果がある酵素風呂ですが、ストレスを感じつつも一生懸命働いている人には、手軽でオススメの健康法だと菊地さんは言います。
「ストレスは免疫力を低下させます。米ぬかに含まれるGABAはストレスを軽減してくれるから、入るだけでストレスが軽減しますよ。それに、何かを治そうと通っているうちに、エステ効果も得られちゃうのがいいところです」(菊地さん)

菊地さんは、人の体を治したいと意気込んで酵素風呂を始めましたが、経験を積んでいくうちに心境の変化もあったそう。

「お客さんには重篤な病気の患者さんもいらっしゃいます。そんな方々と接していて、気持ちよくなってもらうことが一番と考えるようになりました。“気持ちいい”の先に、幸せはあるんじゃないかと今は思っているんです」(菊地さん)

頻繁に通えなくても、たまに入るだけでもホッとリラックスする時間をくれる酵素風呂。仕事の合間に、ちょっとしたご褒美に、足を運んでみませんか?

酵素風呂について丁寧に説明する菊地さん

酵素風呂について丁寧に説明する菊地さん

休憩室。遠方からも多くの方が訪れます

休憩室。遠方からも多くの方が訪れます

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酵素世田谷
住所:世田谷区千歳台2-37-8
電話番号:03-5490-0033
営業時間(予約制):午前10時~午後6時30分最終受付(時間外は応相談)
京王線祖師ケ谷大蔵駅から徒歩13分
ホームページ:http://kousosetagaya.p-kit.com/

「栃の実」でじっくり向き合う、体が喜ぶ味

日替わりランチ900円。この日の白菜と大根はオーナーの自家菜園で採れた自然農のもの

日替わりランチ900円。この日の白菜と大根はオーナーの自家菜園で採れた自然農のもの

医食同源の想いから

経堂駅から徒歩5分。住宅地の細い道沿いに「栃の実」はあります。入り口では、生い茂る植物と、見るからに生命力の強そうな野菜たちが出迎えてくれます。扉を開くと、右側にはテーブル席とカウンター席が、左壁には食品や雑貨類がずらりと並んでいます。

経堂で鍼灸を営むオーナーが2001年にオープンさせた「栃の実」。体を意識する仕事柄、良い食材を摂ることで薬は必要としないという「医食同源」の考えにたどり着き、食の提案ができるお店を始めました。オープン当初からキッチンに立ち、料理を作り出してきた宮澤章子(あきこ)さんが、料理から接客まで一人で切り盛りしています。

「食で大切なことは、“体に入れる素材選び”と“体から排出させること”。排出には、雑穀とごぼうを摂るといいの。だから、雑穀や根菜を使ったメニューが多いんです」

元々、オーナーの患者だったという宮澤さん。治療だけでなく、きび・あわ・ひえ・大麦など多種

ナチュラルな雰囲気のお店。緑の植物が気持ちいい軒先

ナチュラルな雰囲気のお店。緑の植物が気持ちいい軒先

安心な保存食や動物性不使用の手作りスイーツなどの食品のほか、歯磨き粉などの雑貨も扱っている

安心な保存食や動物性不使用の手作りスイーツなどの食品のほか、歯磨き粉などの雑貨も扱っている

類に及ぶ雑穀を、必要な栄養素に応じて摂り入れるようになど、食のアドバイスも受けたといいます。それが「栃の実」のメニューに反映され、ランチの定番であるきびハンバーグなど、雑穀の種類を活かした料理が作られています。

自然農で育った野菜を大切にいただく

この日の日替わりランチは、白菜がたっぷり入った根菜鍋、長芋のハンバーグ、煮黒豆、ブロッコリーと蓮根のおそうざい、玄米+雑穀米とボリューム満点。野菜の味わいに心が豊かになります。

「栃の実」では、主に八ヶ岳の大地で野菜を育てている三井和夫さんの自然農法野菜を使っています。季節に逆らわず育てられた野菜。たとえば、冬の大地の恵みが凝縮された蓮根や大根、ジャガイモなどの根菜類は、体を温めてくれる作用があるため、体の冷えを感じる時季には嬉しい存在です。季節の味わいを感じさせてくれる料理も、「栃の実」の魅力の一つです。

さらに、宮澤さん自身、根菜に助けられた数えきれないほどの経験があると言います。「胃が痛くなったとき、大根の皮を剥いて7gほどをゆっくり噛んで食べたら、不思議に痛みが消えたことがあります。心臓が締め付けられるようなときには、皮を剥いたジャガイモを2.5g口に含むだけで呼吸ができるようになったり…。野菜の薬効の力はすごいです」。昔から代替療法で使われてきた野菜のパワーを体感してきた宮澤さん。料理を通じて、野菜の力を発信しています。

自然農の有機野菜や果物などを軒先で販売。季節の収穫物を召し上がれ

自然農の有機野菜や果物などを軒先で販売。季節の収穫物を召し上がれ

豆乳やさい鍋定食950円。体を温めてくれる根菜がたくさん

豆乳やさい鍋定食950円。体を温めてくれる根菜がたくさん

情報に流されず、自分の体に合ったものを

「素材がいいことはもちろんだけど、そのときの自分の体に合ったものを食べるのがいい」。そう語る宮澤さんの作る自然食は、ダシを使わずに煮た豆や野菜など、素材の味を活かした料理ばかり。カルシウムを採るために魚を使用するメニューもありますが、肉、卵、牛乳を避けたメニューが考案され、ベジタリアン対応も可能です。

宮澤さんは、約40年前に子どもがアレルギーだったことから、食に気を使うようになったといいます。「今はネットやTVで情報が氾濫しているでしょう?何が体にいいのか悪いのか…。でもね、大切なのは、自分の体に合っていること。そして、継続すること」

たとえば、自然食派の人に人気の玄米はミネラルや食物繊維が豊富ですが、消化できる力が弱っているときには逆に負担になってしまいます。そんなとき消化も排出も助けてくれるのが、雑穀です。「栃の実」では、雑穀の力を信じて引き出す料理を提案しています。かつて日本で食されていた雑穀は、現代人の体の不調に対する救世主なのかもしれません。雑穀米だけでなく、雑穀を素材として作り出される料理はバリエーション豊かで、自然食への楽しみが倍増します。

日替わりランチだけでなく、単品もメニューが豊富。どれも安心して食べられるのが嬉しい

日替わりランチだけでなく、単品もメニューが豊富。どれも安心して食べられるのが嬉しい

噛み締めるほど味わいが広がる雑穀米

噛み締めるほど味わいが広がる雑穀米

自分の体を知ることが、生きること

「栃の実」では、食事だけでなく、食品や雑貨も販売しています。ランチにも出している長崎県産有機栽培の梅干しや、自家製ブレンドの雑穀米、安心な素材のみでできた玄米ラーメン、また料理の基礎となる調味料ももちろん安心な逸品です。豊富な自然食の食材を前にすると、自分の食生活を見直して、本当に自分の体に合っているものを摂ろうという気持ちが湧いてきます。

「体はやれば応えてくれる。その体を作る素材が、食べ物。素晴らしい力を持ち、私たちを生かしてくれています。感謝ですね。生きるって、結局は自分の体を知っていくことなのかなって思うんです」。体の声に耳を傾けて、そのとき体が欲する美味しい料理を作り続ける宮澤さん。優しさ溢れる自然食に、体も心も喜びます。

(撮影:小林友美)

日本人の健康の救世主、雑穀も販売

日本人の健康の救世主、雑穀も販売

スパイシーでクセになる薬膳カレーセット780円。うどんにも変更可能

スパイシーでクセになる薬膳カレーセット780円。うどんにも変更可能

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栃の実
世田谷区宮坂3-5-4
03-3706-0215
営業時間:11:30〜18:00
定休日:日曜日、月曜日は物販のみ

“空き地”を耕し、地域を拓くということ

大阪市・北加賀屋にある「みんなのうえん」。企業の遊休地を活用し、参加者が土地を耕した

大阪市・北加賀屋にある「みんなのうえん」。企業の遊休地を活用し、参加者が土地を耕した

地域づくり≠ハコモノ

さて、このセミナーを企画したのが、このレポートを書いている私です。私が勤める生活工房では、“暮らしのデザイン”をテーマに展示やセミナー、ワークショップなどさまざまな事業を展開しています。“地域やまちづくり”をテーマにした連続講座の最終回として行われたこの「空き地農業」も、自分たちの住む地域をデザインするという視点で考えたものです。世田谷区内でも開発や都市計画という街のデザインが行われていますが、我が家の最寄り駅前も工事の真最中です。そうした開発を横眼にしながら(乗り降りの不便さに苛まれながら)、地域づくりに思いを寄せたのが、この連続講座の始まりでした。

そして、地域のつながりが希薄化する都市において、また高齢化が加速するこれからの社会において、ハコモノ的な発想とはまた違う地域づくりの仕組みを模索していたところ、知ったのが、大阪市南西に位置する北加賀屋という街で行われている「みんなのうえん」でした。

講師には「みんなのうえん」の西川亮さん(左)と雑誌『ecocolo』の編集長・石田エリさん

講師には「みんなのうえん」の西川亮さん(左)と雑誌『ecocolo』の編集長・石田エリさん

雑誌『ecocolo』のハーベスト特集号は、じわじわと売り上げを伸ばしたのだとか

雑誌『ecocolo』のハーベスト特集号は、じわじわと売り上げを伸ばしたのだとか

遊休地を活用した「みんなのうえん」

大阪市・北加賀屋の「みんなのうえん」。初期の頃は、Studio-Lの山崎亮さんも関わっていた

大阪市・北加賀屋の「みんなのうえん」。初期の頃は、Studio-Lの山崎亮さんも関わっていた

「みんなのうえん」参加者による「こんだて部」。畑を拠点にその活動は広がりをみせている

「みんなのうえん」参加者による「こんだて部」。畑を拠点にその活動は広がりをみせている

大雪の中、このセミナーの講師として大阪から駆けつけて下さったのが、「みんなのうえん」(正式名称は北加賀屋クリエイティブファーム)を運営するNPO法人Co.to.hanaの西川亮さんです。そしてもう一方、雑誌『ecocolo』の編集長である石田エリさんを迎え、「みんなのうえん」の取り組みをひもときながら、石田さんにはサンフランシスコで取材されたユニークな都市農業の実例などもお話し頂きました。

「みんなのうえん」は、北加賀屋の地域住民らが企業の遊休地を再生し管理している農園です。2012年に始まったこのプロジェクトは、20名ほどのメンバーから始まり、3班に分かれて畑づくりから水やり当番、定期会合、収穫パーティ(!)など、班ごとに活動しています。班を超えての活動も盛んで、農地の視察に行ったり、レシピの開発をしたりと、農や食を通じて参加者同士のコミュニケーションが自然と生まれています。また、主催する西川さんらが主体となり、ワークショップ、お祭りイベント、出張のケータリングも行われ、農園での交流や活動が積極的に地域へと還元されています。

地域をつなぐ農園、海外の事例も

このセミナーで西川さんが強調されていたこと。それはこの農園の目的が収穫のみではないということ。もちろん豊作にこしたことはないでしょうが、参加者同士のつながる場、また地域をつなぐ場として、「みんなのうえん」は機能しています。単に野菜を育て、収穫するだけでなく、皆で一緒に調理して食べる。そしてさまざまな催しを通じて時間を共有する。また、農園の利用者のみでなく、外部のクリエイターやアーティストを招きいれるなど、その活動は北加賀屋を拠点に有機的な広がりをみせています。

もちろんそうした活動の裏で、西川さんたちが地域の中で直面する難しさについても、トークの中で石田さんが引き出してくれました。その石田さんからは、グーグルマップで空き地を見つけて都市農業を始めた女性の話や、民家の庭先になる果樹をオーナー同士がシェアする取り組みなど、海外の事例が紹介されました。都会でもちょっとしたアイデアと行動力で実践できる、農(食)を通じた地域交流の実例には、受講者の方々も興味を寄せているようでしたし、生活工房でも何か事業化できれば…とあれこれ考えが浮かびました。

参加者からの質問もたくさん挙げられました。農業に関心のある方が多数

参加者からの質問もたくさん挙げられました。農業に関心のある方が多数

十数年ぶりの大雪にも関わらず、多くの来場者が。空き地農業が各地に飛び火するかも

十数年ぶりの大雪にも関わらず、多くの来場者が。空き地農業が各地に飛び火するかも

これからのまちづくり~農を通して地域を拓く

地元の不動産会社の支援など「みんなのうえん」は環境に恵まれた特例と言えるのも事実です。しかし、空き地の使い方という点では、とても示唆に富むものでした。高齢化にともない、世田谷区でも空き家への対策を思案しているようですが、スクラップ&ビルドな地域開発ではなく、老若男女が目的を持って集い、同じ時間や体験を共有できる場を創造すること。そのひとつのいい例が農園のようにも思いました。質疑応答の時間には、実際に地域とのつながりを求めている農家の方や、すでに大学の一角を借りて農に携わっている方、また、御茶ノ水で「みんなのうえん」と同様の取り組みを始めようとしている方など、農をきっかけにしてさまざまなつながりが生まれようとしているようです。

今回セミナーに参加された方々が、畑を耕し、地域を拓く可能性を少しでも見出してもらえたら嬉しいです。また、6年後の東京五輪に向けて再開発の機運が高まる中で、自分たちの暮らすまちや地域の姿にも思いを馳せてもらえればと願います。

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「みんなのうえん」の取り組みに関してはぜひ彼らのホームページへアクセスしてみてください。
>> http://minnanouen.jp/

ご近所さんと、ご一緒に。3軒からはじまるガーデニング支援制度

玉川田園調布2丁目地区「ベメミーチョ」の一角

玉川田園調布2丁目地区、グループ名「ベメミーチョ」の通りの一角

ご近所同士ではじめる、美しい街並づくり

「3軒からはじまるガーデニング支援制度」は、地域の人が協力して、街並を花とみどりに溢れる景観にすることを目的に、緑化に関するアドバイスや資金助成が行われるというもので、一般財団法人世田谷トラストまちづくりが実施をしています。

2年間で最大5回のガーデニング・アドバイザーの派遣や、1軒につき4万円までの助成がされるというもので、助成対象となる“緑化資材”は、草花の苗や種、樹木の苗木、肥料や鉢など。区民3軒以上で構成されたグループであれば、誰でも応募をすることができます。

ただ苗や種をもらうということではなく、自分たちの暮らす土地の環境をよく観察しながら、ライフスタイルに合わせた緑化を考えながら実践することで、“通り”に愛着を持ち、ご近所さんとのコミュニケーションが増えるというプロジェクト。

ガーデニング・アドバイザーは得意分野もそれぞれ異なる6名の方。「三田用水第二分水会」は、植物生態コンサルタントの泉健司さんが担当されています。

植物生態コンサルタントの泉健司さん

植物生態コンサルタントの泉健司さん

この木はどんどん大きくなるよと泉さん

この木はどんどん大きくなるよと泉さん

“通り”に虫や鳥を呼んで、多様な生態系に

小田急線下北沢駅から徒歩10分程度にある、北沢地区に暮らす「三田用水第二分水会」は、ご近所のみなさんで映画『天空の城ラピュタ』に出てくるラピュタの庭のような、鳥がさえずり、季節の移り変わりが美しい区画を目指そうと、「3軒からはじまるガーデニング支援制度」に応募しました。

今回は、ガーデニング・アドバイザー泉健司さんが3回目となる訪問をすることに。参加しているご近所さんも一緒に、庭先を1軒ずつまわり、丁寧にアドバイスをしていきます。

「この通りのみなさんは、それぞれの庭がとても特徴的。武蔵野の名残の植物が生き残っている貴重な区画でもあるので、昔ながらの野の花を残しながら植栽計画づくりからお手伝いしています。深刻に考えずに、どんな雰囲気にしたいかを考えることから始めればいいんです。園芸植物も雨水だけで育つ病害虫の少ない種類を中心に選べば、手間いらずの庭が楽しめます。」(泉さん)

ヘビイチゴも、ここに自生していた野生のものだと泉さんが話すと、みなさん興味深く話に聞き入ります。

「虫嫌いな方もいるかもしれませんが、まずはいろんなチョウチョがやってくる環境をつくってあげるといいですね。1種類だけの寄せ植えの場合には、黄色やオレンジの花ばかりだと気に入ってくれるチョウも限られるから、いろんな色を入れるようにするといいですね。イモムシが苦手じゃない人は、チョウの幼虫が好きな植物も植えて、お子さんと観察するのもいいでしょう。鳥が好きな人は飲み水用にお皿を置いたり、巣箱や実のなる木を植えましょう。鳥の糞から、野山のめずらしい植物も顔を出すはず。面積は小さくても、鳥が運んでくれたものを残して、より自然な生態系に近づけることもできるんですよ。」(泉さん)

ガーデニングの基礎も教えてくれます

ガーデニングの基礎も教えてくれます

庭がなくても、通りに面して景観がつくれればOK

庭がなくても、通りに面して景観がつくれればOK

ご自身の庭だけでなく、ご近所さんのお庭も一緒に廻ります

ご自身の庭だけでなく、ご近所さんのお庭も一緒に廻ります

ご近所みんなでやるから楽しいし、続けられる

この「3軒からはじまるガーデニング支援制度」を知った木村さんは、ご自宅のある通りにあるお宅全員に声を掛けたのだそう。

「以前からこの通りでは、余った鉢や実生から育った植物を、頂いたり差し上げたりし合っていたのですが、今回の活動で、コミュニティのつながりがさらに深くなったように思います。春になって、通りでいっせいに若葉や花が芽吹くのが楽しみです。」(木村さん)

木村さんのご自宅前でみんなで輪になって、泉さんのお話に時折笑いながら話を聞きます。

ひとりでもいいけど、みんなでやったらもっと楽しい。ガーデニングという共通の話題ができて、通りに花が咲き、立ち話にも花が咲く。

「3軒からはじまるガーデニング支援制度」の応募は、通年受け付けています。この機会に、お隣さん3軒以上のグループで、申し込みをしてみてはいかがですか?

ご近所のみんなで集まって、まさに井戸端会議

ご近所のみんなで集まって、まさに井戸端会議

世田谷トラストまちづくりで配布されているリーフレット

世田谷トラストまちづくりで配布されているリーフレット

「NPO法人ら・ら・ら」が生み出すありのまま演じ、集う居場所

ワークショップ

ワークショップ

居場所をつくる、NPO法人ら・ら・ら

「ら・ら・ら」の拠点は、二子玉川駅と等々力駅の間にある多摩川そばの一軒家。壁を埋めつくす本棚と、キッチンスペースもある広々とした空間は、普段は「楽ちん堂カフェ」というコミュニティカフェで、もともとは芝居の稽古場でした。
というのも、ここを運営するのは、一人芝居の第一人者であるイッセー尾形さんの演出家である森田雄三さんとプロデューサーの清子さんの森田夫妻。森田さんたちが、全国を周りワークショップ形式の上演を行ったのが演劇ワークショップの始まりです。
出演者は各地の一般の方がほとんどで、出演する方の子どもたちを一時的に預かる機会や、全国から森田さんたちを尋ねてくる人々の滞在拠点となる機会を通して、「NPO法人 ら・ら・ら」は生まれました。

巡業期間を除き運営されている楽ちん堂カフェに集まるのは、近所の子どもたちやお母さん、買い物帰りにふらっと顔を出す人から、全国各地から訪れる人まで、年代も立場もさまざま。手作りの料理と一杯づつ豆をひいたコーヒーを味わいながら、演劇の本を読んだり、おしゃべりをしたり、子どもたちは自由にかけまわったりと、思い思いに過ごしています。ここに流れる空気はどこか懐かしく、温かい。自身も子どもの頃からこの家によく訪れていたという事務局の尾辻さんはこう話します。

「子どももお母さんも老人も、一緒に集う場が大切だと思っています。一緒だからこそ、面白いものが生まれますし。楽ちん堂カフェを、自分の家のように使ってほしいんです」(尾辻さん)

楽ちん堂カフェは正式には半年前にオープンしましたが、前身は子どもが自由に滞在し、一緒に食事をして寝泊まりするフリースクールとして3年間運営されていました。子どもたちの受け入れを行い、今もみんなのお母さん的存在である森田清子さんは、こう話します。

「今の子は学校が終わってもたまる場所がないし、居場所がないでしょう。子どもたちにとって、学校の枠を外れた第3の居場所がここだったのね」(森田清子さん)

そうにこにこと話すおおらかな森田さんを見ていると、子どもたちの安心感が伝わってくるようです。

多摩川からすぐの一軒家がらららの拠点

多摩川からすぐの一軒家がらららの拠点

演劇の本や絵本などがずらりと並んでいます

演劇の本や絵本などがずらりと並んでいます

積み木に夢中な子どもたち

積み木に夢中な子どもたち

参加者のコーヒーを淹れる尾辻さん

参加者のコーヒーを淹れる尾辻さん

清美さんのあたたかい笑顔が印象的。みんなのお母さんです

清美さんのあたたかい笑顔が印象的。みんなのお母さんです

台詞のない演劇ワークショップ

今日の演劇ワークショップに参加するのは、「自主保育 野毛風の子」のお母さんたち8名。子どもたちは積み木や絵本に夢中で、お母さんたちがあやしながら丸テーブルを囲んでいると、奥から車いすの森田さんがやってきました。さあ、いよいよ演劇のスタートです!

森田さんから挨拶や演劇について説明が始まるのかなと思いきや、なかなか始まる様子はありません。お母さんたちと世間話に花を探せているようで…。

「あなた、学生時代はどんな友達がいたの?」
「そう、あなたはどんな学生だった?」

過去の友達や、恋愛話など、他愛もない質問を一人ひとりに投げかけていきます。普段子どもの話が中心のお母さんたちは、少し戸惑いながらも思い出して答えている様子。子どもたちが入り中断しながらも、テンポよく進むやりとりを聞いているうちに、これが森田さんの演劇ワークショップのスタイルなのだと、ようやく気がつきました。

一通り終えた後、次は1列に椅子を並べて座り、前方に椅子を2脚配置。その椅子に、順番にお母さんたちが呼ばれて座っていきます。途中取材カメラマン(男性)も呼ばれる即興ぶり。

「ちょっとそこで会話をしてみて」
「その後断ってみて」
「あなたなんだか強そうだね。相談に答えてみて」

やがて、お母さんたちが前に座ると、個性が見えてきたから不思議です。その人の空気感やまとっているものが伝わってきます。そしてお母さんたちが二言三言と言葉を交わすうちに、芝居らしきものになり始めました。これが、イッセー尾形を生んだ森田さんの演出法だったのです。

あっという間に2時間が経過し、初めてのワークショップは終了。手作りのサンドイッチが並べられてランチタイムへ。お母さんたちに感想を聞いてみると、

「もともとNPO風の子の活動を理解してくださって、居心地のよい場所だった。声をかけてもらって今回参加しましたが、とても新鮮でした。また続けていきたいです」(山本さん)

「普段会うお母さん同士がかっこよく見えました。日常を持ってくるという発想が新鮮でしたね。ぎくしゃくさも面白かった」(山崎さん)

みなさん戸惑いながらも面白さを感じ取ったようです。改めて森田さんに話を聞いてみました。

「今日はオリエンみたいなものでね。普通の会話から始まるでしょ。それがスタイルなの。風の子のお母さんとはこれからも何度かやっていきたいと思ってるよ。面白いのが作れそうでね。発表会はこの場所がいいな」(森田さん)

子どもを車いすに乗せて森田さんが登場しました

子どもを車いすに乗せて森田さんが登場しました

お母さんたちとテーブルを囲んで和やかな雰囲気

お母さんたちとテーブルを囲んで和やかな雰囲気

森田さん

森田さん

今度は一列に並んで。演劇っぽくなってきました

今度は一列に並んで。演劇っぽくなってきました

お母さんたちは順番に入れ替わって前の椅子へ。森田さんが説明をします

お母さんたちは順番に入れ替わって前の椅子へ。森田さんが説明をします

子どもはお母さんたちをよそに自由に遊びます

子どもはお母さんたちをよそに自由に遊びます

家族と過ごす家のような場所

「森田は一般の人を大切にします。その人が芝居をすることで、居場所を作ることを目指しています。進め方が独特ですよね。お母さんも一人の人間であることを認めることが大事で。今回のワークショップを通してそういったことも伝えています」(尾辻さん)

森田さんの舞台に立つ人は、どこにでも居そうな、自分とも重なる人たち。等身大のありのままだからこそ、笑いや共感が生まれ、認め合えるのかもしれません。「みんな違って、それでいい」。ふとそんな言葉が浮かんできました。

楽ちん堂カフェでは、時間を気にせず自分の家のように過ごしてほしいと、月額制で何度でも通えてコーヒーなども自由に飲んで過ごせる新しいプランがスタートしました。今年の6月からは、フリースクールから発展した新たなプロジェクトも始まるそうです。

多様に活動するNPO法人ら・ら。ら。芝居もカフェも、今まで気づかなかった自分自身や周りの人々に出会い気づくことで、当たり前の日常が豊かになっていく、そんな居場所のように感じました。

子どもも大人もみんな一緒にランチを楽しみます

子どもも大人もみんな一緒にランチを楽しみます

あたたかい時間が流れる楽ちん堂カフェ

あたたかい時間が流れる楽ちん堂カフェ

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NPO法人ら・ら・ら
世田谷区野毛2-28-23
03-3702-8468
http://www.la-la-la.or.jp/

楽ちん堂カフェ
http://www.la-la-la.or.jp/cafe/

[2月の特集] 社会課題を楽しく解決!世田谷ソーシャルアクション

リタイア後の男性が料理を楽しむサークル「おとこの台所」が人気

気軽に楽しめる大人の集い、それがおとこの台所

気軽に楽しめる大人の集い、それがおとこの台所

「おとこの台所」って何?

一言でいうとリタイアした中高年男性が料理づくりを楽しむ料理サークルです。リタイアした中高年男性は、地域に友人や活動する場所がなく、家に引きこもりがちです。このような男性を家から引っ張り出し、楽しみながら料理をつくり、親睦を深め、さらには地域の方々に喜んでいただけるボランティア活動を展開していく、それがおとこの台所です。

トレードマークは黒の帽子と黄色のエプロン

トレードマークは黒の帽子と黄色のエプロン

センスの良いレシピが好評

おとこの台所では、家庭の主婦が作らない料理づくりを目指しています。そのため肉じゃがやお煮しめなど「おふくろの味」のような料理は作りません。

1月のレシピは、うなぎのひつまぶし・牡蠣のグラタン・たたき蓮根の炒め煮・海老と麩のチャンプル・乾燥イチジクと大根のマリネの5品。なるほど、中高年の家庭料理とは言い難いものばかり。

平成25年12月までに作った料理は400種類。レシピは一貫して厨房担当の龍國朝さんが担当しています。たらの芽、ゆり根やホワイトアスパラガスなどの季節の食材を使った洗練されたレシピ。このセンスの良さも好評です。覚えた料理を自宅で作った時など「おいしい、すてき」と家族に喜ばれ、会話も弾むのだとか。見よう見まねでやっているとのことですが、メニューに沿って材料の買出しから調理、配膳、後片付けまで、自然な流れで進行していくのが不思議です。

真剣に作っています

真剣に作っています

ご飯を混ぜながらも人それぞれ

ご飯を混ぜながらも人それぞれ

とにかく、各人が勝手気ままにやっているように見えますが、12時には4品か5品のとてもスペシャルな料理が人数分きちんとできています。その後は笑顔でおしゃべりしながらの食事タイム、とにかく楽しそうです。

「おとこの台所」の男たち

おとこの台所には、いったいどんな方が参加しているのでしょう?平成23年4月に実施したアンケートでは次のようになっています。

メンバーの平均年齢は70歳(!)。そのほとんどは料理初心者で、初心者と言っても半端ではありません。包丁の使い方どころか、エプロンのかけ方も知らない人もいるようです。

参加の動機は、地域活動がしたかった人が36%、料理がしたかった人が18%、友人の誘いが24%、その他22%。参加後に生活行動に現れた変化は、友人が増えた35%、家庭での評価が上がった12%、家での会話が増えた11%、生活が活気付いた11%、他の地域活動に参加10%、外出が多くなった9%、その他12%。結果からは、地域活動をしたかった人が参加して友人が増え、家庭での評価が上がったなど大変好評のように見受けられます。

さて、このような男性たちがどうやって料理をつくるのでしょう。誰かが指示している様子はありません。

左から3人目が代表の小竹さん

左から3人目が代表の小竹さん

できあがった料理5品

できあがった料理5品

成功の秘訣「いばらない、命令しない、過去を語らない」

「男性は長い間仕事一筋に生きてきたために、リタイアしてもやりたい事が見つからず、家で手持ち無沙汰に過ごしているのが実情です。片や奥さん方は、PTA活動などに始まり、趣味にボランティアにと地域に根ざして生活してきたので友人も多く、毎日のように外出します。それではと男性も地域活動に参加しても、どこも女性ばかりで気後れして長続きしない。リタイア後の男性には居場所がないのです。

リタイアした人が求めている居場所と仲間が得られるのがおとこの台所。時代のニーズにあっていたのが成功の最大の理由でしょう。しかも、男だけのサークルなのでとても気楽。

気楽な理由は他にもあります。おとこの台所には明文化した規約は何もありません。難しいことは何もないのです。ただ平等な精神は一貫していて、簡単な言葉で「いばらない、命令しない、迷惑をかけない、過去を語らない」と言い合っています。ルールはこれだけ、強制の無い自由で平等な活動方針を大切にしています。

さあ、いただきましょう

さあ、いただきましょう

こんな男性たちが参加しています

こんな男性たちが参加しています

おとこの台所の活動は毎月の料理サークルの他に、花見、バーベキュー大会、玉川花火大会見物、納涼大会、忘年会や季節ごとの鎌倉散策会などの行事が目白押しです。

サークルの運営はとてもスムーズで、何か行事をやるときにもそれにあった人が自然に立候補し、あっという間に実行委員が決まります。いつでも何かのイベントを楽しむことができます。気軽に楽しめる大人の集い、それがおとこの台所です。

[入会方法]
世田谷区在住のシニア男性ならどなたでも入会できます。世田谷区以外の方やシニアでない方もご相談ください。入会をご希望の方は、以下の8台所のうち入会したい台所にアプローチしてください。会費は1回500円程度です。

おとこの台所・松原  北沢地域社協   TEL:03-5465-7541
おとこの台所・上馬  世田谷地域社協  TEL:03-3419-2311
おとこの台所・桜新町 玉川地域社協   TEL:03-3702-7777
おとこの台所・八幡山 烏山地域社協   TEL:03-5314-1891
おとこの台所・上北沢 烏山地域社協   TEL:03-5314-1891
おとこの台所・砧   砧地域社協    TEL:03-3482-6711
おとこの台所・烏山  烏山地域社協   TEL:03-5314-1891
おとこの台所・野沢  世田谷地域社協  TEL:03-3419-2311

おとこの台所ホームページ:http://seta-odk.com/index.html

暮らしが変わる、私が変わる。メイドインアースが選ばれる理由

純オーガニックコットンのタオル。縫い糸もタグも全てオーガニック

純オーガニックコットンのタオル。縫い糸もタグも全てオーガニック

生産国の人々の幸せと、消費国の私たちの幸せ

かつては日本でも行われていた綿栽培ですが、高度成長期にモノを大量生産するための仕組みが整ったことで海外の綿価格が安くなり、やがて輸入が主流となりました。日本の綿は、繊維が短いという特徴があり、紡績にあまり向かず、座布団や布団などがつくられていました。

「コットンといえば、天然素材の代表格のように感じていたのに、実は大量の農薬を使っていることを、ある時知ったんです。とてもショックでした。環境や農作業をする人に大きな負荷を与えている。さらに驚くのは、育てる過程だけでなく、製造工程にまで化学薬品が使われている。コットンは収縮をする性質を持っているので、収縮してしまっては製品化に向かないんですね。不揃いの野菜や果物が同じパックには詰められないのと同じです。だから、サイズを均一化するためにいったん油をとってから化学染色し、さらに柔軟加工剤や防縮加工剤を入れていく。ここには、生産国の人の幸せや、私たち自身が幸せで健康になっていく未来はないと思ったんです。」(前田さん)

布ナプキンを紹介してくれる前田さん

布ナプキンを紹介してくれる前田さん

製品につかわれているコットン(綿)。ふわふわとして弾力がある

製品につかわれているコットン(綿)。ふわふわとして弾力がある

コットンは、糸になってしまうと分かりにくいけれど、本来は畑で採れるもの。だから、野菜と同じように無農薬にこだわりたい。こうして、メイド・イン・アースは、オーガニックコットンを発売するようになります。

純オーガニックコットン専門ブランドへ

生地そのものは、オーガニックコットン。ただし、製品をつくり始めたばかりの頃は、縫い糸は化繊の糸を使っていました。

「コットンは伸縮性があまりないので、丈夫な縫製糸をつくるのが難しかったんです。でも、お肌のデリケートな方は、化繊の糸の部分だけポツポツと赤くなってしまうという方もいるんですね。そこで、縫製糸はもちろん、ネームタグやボタン、ゴムに至るまで、100%オーガニックの製品をつくりたいと、研究開発を重ねました。」(前田さん)

メイド・イン・アースの純オーガニックコットン製品は、袋から開けたらすぐにそのまま着ることができますが、タオルと布ナプキンについては、最初に一度水で洗う必要があるのだそう。

オーガニックコットンの繊維が備えている、コットンの油分をあえて落としていないので、最初に一度洗わないと吸水性が悪いかもと感じることもあるのだとか。タオルは、何度か洗っていくうちに繊維がなじみ、吸水性も上がります。そうすることで、製造過程で繊維を傷つけていないので“ふわっふわ”の肌触りが長い期間続くのです。

タオルや肌着類を気に入って寝具類を購入される方が多いのだそう

タオルや肌着類を気に入って寝具類を購入される方が多いのだそう

自由が丘店の階段下には、キッズスペースも

自由が丘店の階段下には、キッズスペースも

誰でも安心して使えるものづくり

最初からオーガニックコットンにこだわらなくても、柔らかい肌触りが好きで、ずっと使っていたらオーガニックだったと気づいてくれればいい。背景を知らなくても、安心して使える、そんなブランドを目指したいと前田さんは言います。

「例えば野菜でも、オーガニックだからいいというだけではなく、単純にオーガニックのほうが美味しいから食べたい、ということもあるかもしれません。衣類も、オーガニックコットンにこだわりたいと思わなくても、肌触りのよさで選んで、結果としてそれがオーガニックコットンだった、ということでもいいと思っています。

それは、布ナプキンでも同じこと。布ナプキンのほうがいいから、という方ももちろんいらっしゃいますが、生理痛がひどいのでいろいろ調べて布ナプキンにたどり着いた…、そんな方がたくさんいらっしゃいます。少しずつ生理の軽い日から使ってみて、慣れれば下着と同じ素材なので、違和感がまるでないんです。生理が来ることが憂鬱になることもない。しっかりとした安定感があって、心も落ち着きます。」(前田さん)

布ナプキンの商品が豊富に揃う

布ナプキンの商品が豊富に揃う

はじめて布ナプキンをつかう人のためにつくられたリーフレット

はじめて布ナプキンをつかう人のためにつくられたリーフレット

生理が楽しみになる、生理がつらくなくなるという布ナプキン。メイド・イン・アース自由が丘店では、月に1回「手作り布ナプキンワークショップ」が行われているのだそう。気になっているけど、あと一歩踏み出せない人は、試してみてはいかがでしょう?

「ふきのとう」が届ける、人の気配がするごはん

ふきのとうのお弁当は、一汁三菜が基本

ふきのとうのお弁当は、一汁三菜が基本

ボランティアが笑顔でつくるお弁当

ふきのとうのお弁当をつくっている場所は3ヵ所。その中で1番大きい拠点、元学校給食センターを使った施設にうかがいました。厨房で10人ほどの人たちがテキパキとお弁当のおかずをつくっています。年齢はさまざま。女性ばかりと思いきや男性も混ざっていて、声を掛け合いながら作業は進んでいきます。

1981年、家にこもりがちなお年寄りを外に誘い出そうと、週に1回、食事会を開催したのがふきのとうの始まりです。のちに宅配サービスをはじめ、2002年には平日週5日に、2006年には夕食のサービスも開始しました。お弁当をつくる人はずっと変わらず、地元のボランティアの人たち。今、ボランティアの総数は調理、配達合わせて200名を越えています。

月に1、2度、時間があればかかわる人から、決まった曜日に必ず来ているという人まで、そのコミット具合はさまざまです。取材日の調理ボランティアの最高齢は、83歳の石綿さん。ボランティア歴は18年です。

「2、3年前までは週4で来ていたんだけれど、今は週2回。料理をするのがもともと好きだし、みんなに会えるのが嬉しいの。自分のためにやっているのよ。沖縄出身だから、まかないにサーターアンダギーをつくることもあるよ」(石綿さん)

とにこにこ。2年前から調理をしているという森澤さんは、「大手の料理教室に通っていて、その後この調理ボランティアに加わっています。いつか自分がひとりになったときにちゃんと料理をできるように」といいます。

みなさん、話を聞くと目的ややりがいを持って参加しているのが分かります。調理の合間の休憩では、今自分たちがつくったお弁当と手づくりのまかないをわいわいと食べて、とても楽しそう。もともとは食べ手を想って始まった配食サービスが、作り手の生き甲斐にもなっているのです。

お弁当づくりの現場。ボランティアの皆さんがてきぱきと動かれています

お弁当づくりの現場。ボランティアの皆さんがてきぱきと動かれています

最高齢の石綿さん。18年もお弁当を作り続けています

最高齢の石綿さん。18年もお弁当を作り続けています

限られた時間の中で、人数分のお弁当を作っていきます

限られた時間の中で、人数分のお弁当を作っていきます

それぞれの役割で協力し合う姿が印象的です

それぞれの役割で協力し合う姿が印象的です

お弁当をつくる人の名前が分かる安心感

できあがったお弁当は、配達ボランティアに託され、注文している各々の家で手渡されます。料金は1食800円。毎日頼む人、曜日を決めている人、たまに頼む人、それは自由。栄養士がつくったメニューを組み合わせて、毎日でも飽きないように工夫しています。また、会員には1か月のメニューが配られ、調理した人が誰なのかも分かるようになっています。

利用する人は高齢者が多いですが、ふきのとうでは年齢制限などの条件は設けていません。困っている人は誰でも使っていいというスタンスを大事にしていて、子どもを産んだばかりのお母さんなどにも利用されています。地元の人がつくり、地元の人に届ける、その近さがふきのとうの魅力でもあるのです。

しかしここ数年、大手の外食チェーンなどが、宅食サービスに一気に参入してきました。値段も安く、バリエーションも豊富。この現状を受け、ふきのとうのお弁当の注文数は減少しましたが、決して悪いことばかりではないと、老人給食老人会ふきのとうの本部事業部担当、佐野有未さんはいいます。

「いろいろな選択肢ができたのは、注文する人にとって、嬉しいですよね。ただ、私たちの活動の目的は、食を通して地域をつなぎ、町づくりをすること。地域がひとつの大きな家族になれるように活動しています」(佐野さん)

当日つくるお弁当のリスト。昼と夜、地域ごとにわかてれいます。この日は全219個でした

当日つくるお弁当のリスト。昼と夜、地域ごとにわかてれいます。この日は全219個でした

完成したお弁当を区域ごとに分けて、車に積んで配送します

完成したお弁当を区域ごとに分けて、車に積んで配送します

配送とお弁当づくりのボランティアの方々

配送とお弁当づくりのボランティアの方々

求められる20代、30代のかかわり

さまざまな世代の人が主役になれる、家族のような関係——そのために今必要とされているのが、20代~40代のボランティアです。
食事づくりといっても調理師免許はいらず、宅配も自転車、自動車どちらも可能。だれでも関われるのが、ふきのとうのボランティアの魅力です。調理ボランティアを通して和食と日本語を覚えた外国の方、夕方の配食をする女子高生など、かかわる人の背景はさまざまです。現在最年少ボランティアの女子高生は、学校が終わった後の週1回、自転車で近所を回ります。

「ベテランボランティアの今後を考えると同時に、若い人のボランティアが増えてほしいと願っています。縦のつながりが難しくなった地域コミュティですが、ふきのとうに来れば、自分のお母さん、おばあちゃん世代の人とも自然に触れ合えます。私の上司も子育てをしながら、この仕事をしていました。私もこの仕事についてから、なにか困ったらボランティアのお母さんたちに相談したらいいんだって思えるんです」(佐野さん)

佐野さんは、先輩に料理を教わったり、休憩時間には悩みをいい合ったり。世代をこえた縦のつながりが自然とできるのを見てきました。そして、ボランティアの人たちにかかわり、この場所で生きていく安心感を得られているといいます。

お届け先を入念にチェックする佐野さん(左)と配送ボランティアさん

お届け先を入念にチェックする佐野さん(左)と配送ボランティアさん

電気自動車も導入されています

電気自動車も導入されています

お弁当がいろいろな立場の人をつなげるように

地域をつなぐ、町をつくる。そのために、ふきのとうの活動も広がっていて、デイサービスセンター、高齢者住宅、コミュニティカフェをつくるまでになっています。これらの施設でもふきのとうのお弁当を食べることができます。
つくる人、食べる人、地域の人のいろんな想いがお弁当で交差します。食が取り持つ地域のつながりを30年間見つめてきた「ふきのとう」。ご近所付き合いが希薄になったといわれる今こそ、その意義は大きくなっています。

ボランティアに参加している人たちも、共同作業が楽しくて通ってきているのが印象的でした。支援する側とされる人たちが生き甲斐を感じて取り組んでいるからこそ、30年も活動が続いてきました。今、ボランティアに参加している人も、「いつか私もお弁当を届けてもらう側になるから」と笑顔でいえる持ちつ持たれつの輪がここにはあります。
自分が得意なことで関わるのが、自分も楽しいボランティアの秘訣のようです。まずは自分が好きなこと、挑戦してみたいことはなんだろうと振り返ってみることが大切かもしれません。自分の生き甲斐としてのボランティア、始めてみませんか?

老人給食協力会ふきのとう本部事業部の伊藤さん(左)と佐野さん(右)

老人給食会ふきのとう本部事業部の伊藤さん(左)と佐野さん(右)

和気あいあいとした休憩時間

和気あいあいとした休憩時間

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老人給食協力会ふきのとう
[住 所]世田谷区上用賀6-19-21
[ホームページ]http://fukinotoh.mow.jp/

[2月の特集] 社会課題を楽しく解決!世田谷ソーシャルアクション

木に新たな息吹を。マチモノカフェ&草木染めワークショップ

雪の中での草木染めワークショップ

雪の中での草木染めワークショップ

一体感が生まれた、予想外の雪

2/8(土)、この日は未明から降り出した雪に開催が危ぶまれましたが、雪でも参加したいと希望した遊び心旺盛の大人と子どもが集まり、雪の中のワークショップが始まりました。恒例の会場である「世田谷山観音寺(通称 世田谷観音)」は、普段から自然の景観を楽しめることから多くの方が訪れる場所。この日もカメラ片手に境内を撮影する方もちらほらと。
三軒茶屋駅からの雪道をやってきた参加者の皆さんはどこか意気揚々としていて、難関を乗り越えてきた者同士すぐに打ち解け賑やかな雰囲気に。

45年ぶりの大雪。地蔵菩薩に降り積もる雪

45年ぶりの大雪。地蔵菩薩に降り積もる雪

南天の枝、クチナシの実で鮮やかな色が

まずは、絞り染めの模様作りに取り掛かります。先生の指導と資料を参考にしながら「どんな模様ができるかな?」と想像しながら輪ゴムや糸を布に巻きつけます。大小組み合わせた不思議な模様の布が出来上がると「次は力仕事!染め液の準備をしましょう」と先生の声。

染めの材料に用意されたのは、南天の枝とクチナシの実。クチナシの実は栗きんとんの色づけにも使われ馴染みがありますが、南天の枝からはどんな色がでるのでしょう。色素を効率よく煮出すためにナイフと金槌を使って南天の枝を細かくします。樹皮の下からは鮮やかな黄色がでてきて感動しながらも、コツがいる作業に四苦八苦。細かくなった枝から次々に沸騰したお湯へ。ドラム缶いっぱいになった枝を15分ほど煮ます。その間、灰汁を取り除きながら火を囲んでお話したり、雪遊びをしたり、絞り模様を再開したりと、それぞれの時間を楽しみました。

枝を取り除き、染め液の中へ布を投入。生地の種類や下処理の違いによって染まり方の違いがよくわかります。草木染めは、同じ色を作り出すのが難しいと言われるのも納得。かき混ぜながら15分煮たあと、色素の定着と変色防止のために媒染液へ漬け込みます。お腹も空いてきたのでそのままランチへ。

輪ゴムと糸を使ってできた布。どんな模様に染まるのでしょう

輪ゴムと糸を使ってできた布。どんな模様に染まるのでしょう

南天の木を金槌とナイフを使って細かくする作業

南天の木を金槌とナイフを使って細かくする作業

布によって染まり方に違いがでます

布によって染まり方に違いがでます

こだわりのランチとスイーツ

マチモノのワークショップでは10時から17時まで一日中作業する参加者が多いことから、ランチやカフェの時間を設けています。無農薬の世田谷野菜や自家製ハーブを取り入れたメニューで、多くの参加者がこのランチを楽しみにしています。今日のランチは、温かいミネストローネスープと自家製ローズマリーで風味付けしたチキンとベーコンのキッシュにサラダ。食後のデザートはガトーショコラとクッキーを頂きました。主催者の湧口さんは、クッキーが入った豆皿を手に取りながら「黒い小さな模様があるでしょ、これは何の木でしょう。正解は柿。柿の木はとっても硬い木。そっちの木はみかん…」と木の話に。ものづくりに興味のある皆さんは興味津々。

お腹も満足したところで、クチナシの染め液の準備を開始。実を投入するとすぐにお湯の色が変わります。クチナシは4番液まで色が出るそうです。染め液に布を入れたとたんに、鮮やかな黄色に染まる様子に、みなテンションが上がり、てぬぐいからニット帽子、軍手などを各々投入。見事な染まり具合に大満足しました。

暖かいスープと野菜たっぷりのプレートでひと休み

暖かいスープと野菜たっぷりのプレートでひと休み

木工教室で作成できる豆皿とスプーン

木工教室で作成できる豆皿とスプーン

伐られた街の木を生活雑貨に

木工職人でマチモノの代表でもある湧口善之(ゆぐちよしゆき)さんは、建築現場で驚くほどたくさんの木が処分されている現実を目の当たりにし、有効活用できないかと思うようになったそうです。

「身近な自然の恵みを体験し『楽しかった』『いい時間を過ごせた』『また来たい』と言って頂けるようなイベントを目標にしています。」(湧口さん)

今度は木工教室に参加して、豆皿づくりに挑戦してみたいと思っています。形を変えた「街の木」が我が家に増えていくのが楽しみです。

普段は体験できない、焚き火を囲んだおしゃべりに寒さも忘れます

普段は体験できない、焚き火を囲んだおしゃべりに寒さも忘れます

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街の木を活かすものづくりの会
http://machimono.web.fc2.com/

多摩川の原っぱは、子どもの遊び場。「きぬたまあそび村」

地域のパパたちがつくったツリーハウス

地域のパパたちがつくったツリーハウス

地域のみんなで作り続けていく、みんなの原っぱ

「きぬたまあそび村」の開園は、毎週水曜日と土曜日。11〜3月の開園時間は、10:30〜16:30まで(4〜10月は10:30~17:00)で、誰でも自由に参加することができます。通称“ぶた公園”となりの原っぱは、東急田園都市線二子玉川駅からバスで7分ほど。多摩川の河川敷にあるオレンジの「きぬたまあそび村」ののぼりが目印です。

2006年に国土交通省の「水辺の楽校プロジェクト」に認定され「せたがや水辺の楽校」が開校。きぬたまあそび村は、せたがや水辺の楽校の運営協議会の一員として活動しています。2012年には世田谷区と運用協定を結び、区と地域の人たちが一緒に場づくりと手入れをする、新しい公共のあり方を模索する「公設民営」の原っぱとなりました。

ここでの遊びは、子どもが自由に創造し、真剣に遊ぶ場として「自分の責任で自由に遊ぶ」ことが基本。子どもたちは遊具がなくても自然を相手に、のびのびと遊んでいます。ママたちも少し休憩。土曜日にはパパもたくさん参加して、ツリーハウスを建てるなど、場づくりに多くの人が関わっています。

目印になっている、オレンジ色の「きぬたまあそび村」ののぼり

目印になっている、オレンジ色の「きぬたまあそび村」ののぼり

ヒノキ間伐材の“ツリーシェルター”は木陰をつくってくれる

ヒノキ間伐材の“ツリーシェルター”は木陰をつくってくれる

風、水、火、土を体いっぱいに感じて遊ぼう!

豊かな河川敷に広がる「きぬたまあそび村」は、丸太ベンチ、自然の木陰を拡大するコンセプトの日除けであるヒノキ間伐材の“ツリーシェルター”が置かれるなど、自然のなかでのんびり過ごせる居場所になっています。

シンボルのようにもなっている“ツリーハウス”は、木に負担をかけない構造で作られた、地域のパパたちによる二代目。初代は、多摩美術大学の学生と子どもたちが協力して作られました。また、地下水を汲み上げている“遊べる井戸”はいつでも大人気。井戸から続く“トンボ池ビオトープ”は、水辺の植物や生き物のすみかとして、身近で自然観察のできる場所です。子どもたちが井戸で水遊びした水が、水路を通って供給される仕組みになっています。

子どもたちは、自然のなかで転げ回るようにして遊びます。ダンボールで草すべりをしたかと思うと、ツリーハウスでひと休み。遊べる井戸で勢いよく出てくる水の飛距離を競争してみたり、七輪焼きでマシュマロを焼いてほおばってみたり。そこにある自然を遊びに変える工夫が自然と身につきます。

地下水を汲み上げている“遊べる井戸”。どこまで飛ばせる?力比べ

地下水を汲み上げている“遊べる井戸”。どこまで飛ばせる?力比べ

子どもたちにとっては、その辺にあるものはすべて遊びの道具に

子どもたちにとっては、その辺にあるものはすべて遊びの道具に

遊び場づくりは、居場所づくり

この「きぬたまあそび村」を15年にもわたって支えてきた事務局代表の上原幸子さんは、「自分の子どもが育つ環境を変えたかった」と言います。

「せっかく自然の豊かな“河川敷”という場があるのに、平日は誰もいないので、子どもだけでは遊びに行きにくい、という状況でした。そこで、行けば誰かがいるという子どもの集合拠点となるプレーパークを、この河川敷につくりたいと思ったんです。」(上原さん)

助け合いながら子育てをすることが楽しいとも語ります。

「赤ちゃん連れで、みんなで焼き芋を食べたり、パンを焼いてみたり。子どもたちの情緒性や社会性を自然のなかで育てることはもちろんですが、火を囲んで会話が生まれ、お母さんたちの居場所にもなっています。」(上原さん)

天気のいい日には、夕方になると空が深いオレンジ色に染まって、富士山が見えるのだそう。育児の疲れも吹き飛びます、と話す様子が印象的でした。

きぬたまあそび村は、プレーリーダーのほか、プレイングスタッフや子育てサポーターが常時いるので、子どもだけでも行くことができる、地域の遊び場です。世田谷区の「自然体験遊び場事業」として、子育て真っ最中の親たちを中心に地域遊民が運営しています。

季節によって開園時間が異なるので、遊びに行く時はきぬたまあそび村のブログを要チェック!今度のお休みはお子さんと一緒に遊びに行ってみませんか?

焼き芋を焼いて食べたり、豚汁をみんなで食べたり。写真右が事務局代表の上原幸子さん[

焼き芋を焼いて食べたり、豚汁をみんなで食べたり。写真右が事務局代表の上原幸子さん[

ママたちが話している間も、子どもたちは草すべりを楽しんでいました

ママたちが話している間も、子どもたちは草すべりを楽しんでいました

「きぬたまあそび村」は、誰でも自由に参加できる場

「きぬたまあそび村」は、誰でも自由に参加できる場

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きぬたまあそび村
ピクニック広場(通称:ぶた公園)隣り

開園時間
11月〜3月:10:30〜16:30
4月〜10月:10:30~17:00

アクセス
二子玉川駅よりバス
・ 砧本村行き 都市大グラウンド前下車徒歩1分
・ 成城学園前行き 砧南中学校前下車徒歩5分
二子玉川駅より自転車10分(河川敷兵庫島経由)
二子玉川駅より徒歩20分(河川敷兵庫島経由)

中高生の居場所「オルパ」で生まれた学校以外の人とのつながり

どうしたら入りやすい玄関になるか、中高生利用者による運営委員会が相談を重ねて工夫を凝らしています

どうしたら入りやすい玄関になるか、中高生利用者による運営委員会が相談を重ねて工夫を凝らしています

家でも学校でもない中高生世代の居場所を街に

オルパは、千歳烏山駅前にある信用金庫跡の空き店舗を利用してできた中高生世代のための放課後スペース。世田谷区による中高生世代活動支援モデル事業として2月末までの期間限定で開設されました。お弁当を食べたりおしゃべりができるフリースペース、音楽室、ダンス室、ゲーム室などからなる、家でも学校でもないこの第3の居場所を、オープンから12月末までの7ヵ月間に、1日平均約30名、延べ4,900名の生徒が利用してきました。

地域ディスカッションには、中高生運営委員会の中高生6名と、保坂展人世田谷区長、入澤充国士舘大学教授、烏山駅前商店街振興組合副理事長の田中省一さん、世田谷区青少年委員会会長の宇佐美武志さん、世田谷区青少年烏山地区委員会会長の碓井博子さん、オルパを運営するNPO法人せたがやっこ参画推進パートナーズ(通称:せたさん)理事長櫻井龍太郎さんがパネリストとして登壇。場所づくり研究所プレイス代表取締役の福永順彦さんによるコーディネートで進行しました。

青少年育成の専門家であるパネリストの方々も、オルパで見せた中高生の成長に目を見張っていました

青少年育成の専門家であるパネリストの方々も、オルパで見せた中高生の成長に目を見張っていました

オルパでの試行錯誤と成果を生かして、今後も若者支援を進めていくと話す保坂展人区長

オルパでの試行錯誤と成果を生かして、今後も若者支援を進めていくと話す保坂展人区長

たくさんの仲間、地域の人と出会えたオルパ

大勢の観客の前で、利用者を代表する中高生一人一人が自分の言葉でオルパでの体験を語りました

大勢の観客の前で、利用者を代表する中高生一人一人が自分の言葉でオルパでの体験を語りました

暑さの中、子どもたちにもみくちゃにされながらぬいぐるみを着てがんばった夏祭り

暑さの中、子どもたちにもみくちゃにされながらぬいぐるみを着てがんばった夏祭り

ディスカッションは、オルパを利用していた中高生によるコメントから始まりました。

「オルパでは、学校生活では出会えないような、いろいろな人とのつながりが持てたことが良かったことです」(高校2年生 Aさん)

「中高生のために本気で動いてくれる大人がいることを知ったことが財産。将来は自分もこのような活動に協力したいです」(高校1年生 Bさん)。

「自分は人見知りで学校ではなかなか友達ができなかったけれど、ここではみんな話しかけてくれるし、とても自然に家族のように話をすることができました」(中学3年生 C君)

C君の言葉に、スタッフが「がんばったな!」と声をかける場面も。

開設当初、子どもたちが群れて悪いことをするのではないか……地域からはそんな声も聞こえたそうですが「地元に溶け込んでいい関係が築けた」

と話すのは、商店街振興組合の田中さん。夏祭りなどの地域行事に積極的に参加し、高齢化が進む街の頼れる力になってくれたそうです。

「運営や地域に関わり、中高生はどんどん積極的になりました。行動すれば何かが変わるという経験を積み重ねた8ヵ月でした」と、現場で中高生をサポートしてきた櫻井さんは語ります。

居心地のよさはコミュニケーションに秘密が

パネリストたちからもそれぞれコメントがあった上で、保坂区長がこう質問しました。

「こういう場所を運営する上で難しいのは、訪れる人が常連化したり固定化することだと思うんです。それが最終的に7ヵ月で5,000人近くの生徒さんが来てくれたというのは、どんなコツがあるんだろう。例えば初めて来た子が緊張しながら入口の登録カウンターでスタッフと話しているのを見たことがありますが、あの辺りに何か秘密があるのかな?」(保坂区長)

「僕たちスタッフは、どれだけ中高生と共通項をもって話ができるか、を大事にしています。だから意識してマンガやゲーム、音楽などの話をできるように日ごろから目を通したり。まずはスタッフが中高生との間にいい関係をつくって、その上で来てくれている人同士をつなぐようにしています」(櫻井さん)

「なかには打ち解けられなかった子もいるんじゃない?」というコーディネーター福永さんの質問に、「大学生のスタッフが間をとりもってくれるので、だいたい仲良くなれます」と答える中高生も。

これが受付のカウンター。スタッフとおしゃべりをしながら最初のコミュニケーションを深めます

これが受付のカウンター。スタッフとおしゃべりをしながら最初のコミュニケーションを深めます

大学生のスタッフは、勉強も教えてくれます。試験前には真剣に机に向かう中高生でいっぱいに

大学生のスタッフは、勉強も教えてくれます。試験前には真剣に机に向かう中高生でいっぱいに

利用者が固定化したり、常連が場を取り仕切ることなく誰もが楽しめるのは、スタッフの絶妙なサポートの成果。このしくみにはパネリストから感心の声が上がりました。

中高生が輝く街は、未来も輝く!

金庫だった部屋が音楽室に。もちろん無料で使えるので、文化祭前は予約でいっぱいになるそう

金庫だった部屋が音楽室に。もちろん無料で使えるので、文化祭前は予約でいっぱいになるそう

会場は、地域の関係者をはじめとする参加者で満員! モデル事業の注目度の高さがうかがえます

会場は、地域の関係者をはじめとする参加者で満員! モデル事業の注目度の高さがうかがえます

ディスカッションが進むにつれて分かってきたのは、オルパは中高生世代と地域との接点となり、地域活動への参画を促したこと。また、ここに来ていた中高生のなかに「地域を支えたい」という思いが芽生えていたこと。不足していると思われていた青少年リーダーの卵が、自然と育っていたことが明らかになりました。

これだけ素敵な取り組みなのだから、場所を移してでも継続すべきなのでは、という声もあがります。児童館をより有効活用しては、という意見には、「未就学児などの小さい子たちが多い児童館では、気を使ってのびのびと活動しにくい」といった声も。ここで保坂区長からこんな発言が。

「中学校までは義務教育なので区と関わりが深いですが、中学卒業以降、子育て世代となるまでの長い間、多くの人は行政との関わりが希薄になり、地域から見えなくなってしまうんですよね。その間に死を選ぶ若者が区内に毎年150名余りいます。でも、孤独なのは中高生だけじゃない。

65歳以上の男性単身者の16%が2週間以上他人との会話が1回以下という驚きの調査結果もあります。だから同世代だけが集まる居場所も必要かもしれないけれど、もっと多世代が交流できるような “居場所”の存在が大事になのだろうということも考えています」(保坂区長)

オルパ閉館後は、児童館の中高生世代への活動支援機能を拡充していくほか、池之上青少年会館と青年の家を「青少年交流センター」として新たに事業展開していくこと、また旧希望丘中学校跡地の青少年交流センター新設に向けた検討を継続すること、さらに区内の多様な資源を利用して、多世代交流の場をつくりたいという区の方針が説明されました。行政に加えて、商店街や町会など、さまざまなセクターによる居場所づくりに期待が高まります。

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中高生世代応援スペース「オルパ」
開設期間:平成25年6月1日~平成26年2月28日 <期間限定>
住所:世田谷区南烏山5-16-11
営業時間:平日15:00〜20:00、土曜13:00〜20:00、日曜・祝日11:00〜18:00
休館日:8(日)、11(火・祝)
京王線千歳烏山駅南口から徒歩30秒
ホームページ:http://npo-setasan.com