誰もが楽しめる場づくり。Restaurant愛と胃袋オーナー石田恵海さん

Restaurant愛と胃袋オーナー石田恵海さん

Restaurant愛と胃袋オーナー石田恵海さん

三軒茶屋で安心安全にこだわった和テイストのフレンチレストラン

世田谷くみん手帖編集部(以下、くみん手帖):「レストラン愛と胃袋」が3周年を迎えたとのこと、おめでとうございます。まずはお店のコンセプトを教えていただけますか?

石田さん(以下、敬称略):ありがとうございます。外食を楽しみたいときに誰もが利用できる安全・安心なお店を目指しています。と言いますのも、私自身、足の手術をして車いすを一時的に使っていた経験や出産後まもなくなど、「外食を楽しみたいけれど、難しい」時期が。このような経験から「日本のおいしいとやさしいをテーブルから」をコンセプトに、どなたでも外食を楽しめるお店づくりをしています。

無農薬・低農薬の野菜や肉、魚など国産の安全な食材にこだわり、国産のみを取り揃えた日本ワインもお客さまに好評です。
また、障害福祉サービス事業所で作られた食材や加工品も仕入れています。こちらは支援ではなく、安全な原材料を使い丁寧に作られた美味しいものが多いという理由から選んでいます。

くみん手帖:「誰もが楽しめる場づくり」のために、具体的にはどのような配慮がされているのですか?

石田:ベビーカーや車いすでも入りやすいようにお店の入り口にはスロープを設置し、店内はバリアフリーです。小さな赤ちゃん連れの方のために、授乳スペース、おむつ台、ベビーチェア、キッズチェアも用意、離乳食や幼児食も提供しています。

店名「Restaurant愛と胃袋」の由来は、どちらも必要不可欠なものであり、互いがバランスよくあること。恋人、ご家族、ご友人など大切な方との愛が深まる食事の場でありたいという意味が込められています。

店名「Restaurant愛と胃袋」の由来は、どちらも必要不可欠なものであり、互いがバランスよくあること。恋人、ご家族、ご友人など大切な方との愛が深まる食事の場でありたいという意味が込められています。

店内にはキッズチェアも準備。居心地がいい空間になっている

店内にはキッズチェアも準備。居心地がいい空間になっている

離乳食としても食べられている米粉パンも人気

離乳食としても食べられている米粉パンも人気

小さなお子さまは長い時間じっとしているのは大変ですので、お子さまの食事を先に提供するなど楽しく時間を過ごしてもらえるように工夫しています。

車いすの方でも安心してご利用できるように、トイレは車いすが360度回転できる広さを確保し手すりも付いています。

くみん手帖:この3年間はいかがでしたか?

石田:お店を開店したのは、長男が生後半年のときで、保育園に預けるようになるまでおんぶをしながらお店に出ていました。ライター業では、お店の取材でオーナーからいろいろなお話を伺っていましたが、いざ自分がお店を運営する立場になると、聞くのとやるのでは大違い。いろいろな失敗を重ねながらの3年間でした。ただ、これからもますます食材とサービスにこだわり、どなたでも安心しておいしい食事を楽しむ場所にしていきたいと思っています。

自分が知りたいことを講座に

くみん手帖:石田さんは子育てサークル「おやこのおへそ」も主宰していますね。

石田:お店にはお子さま連れのお客さまが多く、開店当初から、食事の提供以外にも何かやってみたいと考えていました。店先で立ち話をする機会もあり、外出が難しい乳児連れのお母さんたちがもっと交流できる場があったらなと。

そんなときに、先輩経営者として旧知の仲だった、保育士と音楽家による親子コンサートを開催しているNPO法人Happy Mother Music代表の鈴木美美子さんから声がかかり、お店で0歳に向けた絵本読み聞かせの「おはなし会」を始めたのが「おやこのおへそ」のスタートです。

0歳でもすごく集中して楽しんでくれるのが発見でした。

くみん手帖:「おやこのおへそ」ではそのほかにどのような活動をしていますか?

石田:「おはなし会」のほかには、ピアノやバイオリンなど音楽と絵本の世界を楽しむ0〜3歳向けの「おとあそびの会」を定期開催しています。

それ以外にも、自分が子育てをしていて興味があることについて講師をお呼びし、お母さん向けの勉強会を不定期で開いています。今まで開催した講座の中には「被災ママ812人が作った子連れ防災手帖」という本を読んで感銘し、この本をプロデュースしたLo紀子さんにお願いした「子連れ防災講座」などもあります。

くみん手帖:これからはどのような講座に挑戦される予定ですか?

石田:自分の子どもの成長とともに子育ての課題も変わっていくはずなので、「おはなし会」や「おとあそびの会」を続けつつ、自分が学びたいと思う講座や、お母さんたちと接していて、開催の必要性を感じる講座を開催したいと思っています。

ワインは日本ワインのみ、というこだわり

ワインは日本ワインのみ、というこだわり

「近江プレミアム牛」は国産飼料100%で徹底的に安全にこだわって育てられているもの

「近江プレミアム牛」は国産飼料100%で徹底的に安全にこだわって育てられているもの

ゆっくりお食事を楽しみたい方は個室も

ゆっくりお食事を楽しみたい方は個室も

オーナーシェフの鈴木信作さんとは夫婦で二人三脚。ケンカをすることもある、というが、お互いの得意分野でお店を支える

オーナーシェフの鈴木信作さんとは夫婦で二人三脚。ケンカをすることもある、というが、お互いの得意分野でお店を支える

例えば、インターネットの情報を上手く活用する「ネットリテラシー」の講座は企画したいですね。情報収集や交流で使うSNSはお母さんたちの利用も多いですが、必ずしも正しい情報が流れてくるわけではないですよね。でも、母親をしていると「子どもを守らなくては」という意識が強く働くので、ショッキングなニュースに出合うと、それを鵜呑みにしたり、シェアをしすぎたりと、情報に対して無防備でいることでトラブルに陥るケースもある。そこをなんとかしたいなと考えています。

イベントは、1人でも気軽に参加できるような雰囲気を心がけています。イベントで知り合ったお母さん達が仲良くなって一緒にランチに来てくれたりと、笑顔の輪が広がっていくことがなによりも嬉しいので、お母さんたちの出会いの場をこれからも作っていきたいです。

とろっとした甘みとコクが特徴、深煎り珈琲はいかが?

水色と茶色は皆川珈琲のイメージカラー

水色と茶色は皆川珈琲のイメージカラー

おだやかな景色と珈琲の香り

祖師ヶ谷大蔵駅北口から祖師谷通りを10分ほど歩くと、大型団地の祖師谷住宅に隣接する緑豊かな「ふれあい遊歩道」が見えてきます。その向かいにあるビルの1階に「皆川珈琲」はあります。「ふらりとお店を見つけてくれたらうれしい」と話すように、素朴な佇まいの看板に気がつくと「何かありそう!」と足を留めてみたくなるお店。軒先には直物やセンスのよい小物が並べられています。

珈琲の香りが漂うなか、店からは「ふれあい遊歩道」に集まるご近所の方や散歩途中の方の、なごやかに談笑する姿が見えるのどかな場所。

以前、鍵屋だった店内はアルミサッシに囲まれています。「本当は木枠の優しい感じがよかったんですけど」と微笑む皆川さんですが、古いビルやアルミサッシの趣と調和している店内。好きなものに囲まれて仕事をしたいという皆川さんの感性が表れています。お客様から「ここはおもちゃ箱みたい」と言われとてもうれしかったと話す皆川さん。

軒先に並ぶ直物たち

軒先に並ぶ直物たち

お店からはおだやかな景色が広がります

お店からはおだやかな景色が広がります

焼き方から好みの珈琲を見つける

「皆川珈琲」には、フレンチロースト(深煎り)を中心に7~8種類の珈琲豆が店頭に並びます。深煎りが好きだったこと、また深煎りの珈琲は「苦い」というイメージが強く敬遠する方も多いことから、深煎りの珈琲には甘みがあること美味しい深煎り珈琲を知ってもらえるきっかけになればと、深煎りを扱うお店にしたそうです。

同じ豆でも焙煎度合いによって、まったく別物だと皆川さんは言います。珈琲豆を購入する際、豆の種類で選ぶことがありますが、味の土台を作っているのは焙煎度合い。好みの味を見つけることで珈琲を楽しんで欲しいという思いも深煎り専門店にこだわった理由のひとつ。まずは試飲を用意することで深煎りが好きかどうかを判断してもらうそうです。

「ブラジルという豆が好きなお客さまがいらしても、その方が他のお店で購入した豆が浅煎りなのか深煎りなのかでまったく異なります。自分の好みの焙煎度合いがわかると失敗が少なくなります。さらにその中で豆選びをすることで豆の違いを味わったり、好みの豆を見つける楽しみが生まれます」(皆川さん)

酸味や苦味など好みの味を決めてから豆を選ぶ。そしてお店選びも重要だそうです。

「同じ深煎りでもお店や釜の種類によっても違いが出ます。ここは直火のガス釜を使っていますが、電気や遠赤外線などいろいろあるので焙煎屋巡りも楽しいと思います」(皆川さん)

深煎りを中心に7~8種類のコーヒー豆が並びます

深煎りを中心に7~8種類のコーヒー豆が並びます

試飲で使用する陶器は皆川さんの手づくり

試飲で使用する陶器は皆川さんの手づくり

センスの良い珈琲雑貨も

センスの良い珈琲雑貨も

深煎りの珈琲豆は艶々

深煎りの豆で淹れた珈琲は、とろっとした甘みとコクが特徴。さらに皆川さんは、焙煎後1週間~2週間たった豆のとろみが好きなんだそう。珈琲豆には油分が含まれていて、焙煎時間が長くなるとともに表面に出てきます。浅煎りと比べると黒いだけではなく、表面が艶々しているので一目瞭然。

深煎りが好きな方には「memeブレンド」がおすすめ。しっかりした深煎りですが甘みと特徴のある味わいが楽しめます。「深煎りがはじめての方には、味が強すぎてしまうのでおすすめしていないんです」と控えめな皆川さん。

ハンドピッキングでは良い珈琲豆を作るために避けられない作業

ハンドピッキングでは良い珈琲豆を作るために避けられない作業

おもちゃ箱のような店内

お店に置いているアイテムは珈琲関連以外も。好きなものから派生したアイテムはバラバラでも統一した雰囲気があります。釣りが趣味だったこともあり、ルアーブランドを立ち上げた常連さんから贈られた皆川珈琲オリジナルルアー。お店のイメージカラーの水色と茶色のルアーは、釣具というよりセンスの良い雑貨に見えてきます。プライベートでも愛用しているという長崎の波佐見町の陶器ブランド「HASAMI」とスケートカルチャーとアートを融合する「坩堝(ルツボ)」がコラボレーションしたマグカップもお客さんとのつながりから取り扱うことに。

そして皆川さん自身も趣味で陶芸をしていたことがあり、お店では不定期ですが陶芸作家の作品を集めた展示会を開催しています。試飲で使用しているカップアンドソーサーは皆川さんの手作り。

焙煎はものづくりに似ていると皆川さん。ひとつひとつ手間をかけ心を込めて作られる「皆川珈琲」に足を運んでみませんか。

ウルトラマンのおもちゃは商店街の方からのプレゼント

ウルトラマンのおもちゃは商店街の方からのプレゼント

珈琲豆は100グラムから。プレゼント包装もできます

珈琲豆は100グラムから。プレゼント包装もできます

自家焙煎珈琲豆店「皆川珈琲」
東京都世田谷区祖師谷4-23-20 みきもとビル1F
営業時間:12:00~19:00
定休日:水
http://ameblo.jp/minagawacoffee/

書くことが楽しくなる小さな原稿用紙「MEMO-GEN」

140文字の原稿用紙「MEMO-GEN」

140文字の原稿用紙「MEMO-GEN」

Twitterから俳句や川柳、短歌まで

「PORT」が事務所を構えるのは、京王井の頭線池ノ上駅から徒歩3分ほど、味のある古い雑居ビルの一室。商店街には、昔ながらの八百屋や酒屋のほか、足繁く通うファンも多い隠れた名店が並ぶ街で、このビルの1階も今は大きなシャッターが閉まっているものの、昔は八百屋さんお肉屋さんや乾物屋さんがあつまる市場として賑わっていたそうです。

アトリエ兼ショップ&ギャラリーとしてオープンする土日には、シャッターの隣にある白いドアの横に「FORT by PORT」の看板が設置されます。築50年を超える建物は、外観だけでなく内装もノスタルジックな雰囲気。事務所内にある柱は太く、梁も天井から大きく張り出し存在感があります。

「PORT」は、ご兄弟でもある大竹雅俊(おおたけまさとし)さんと大竹雄亮(おおたけゆうすけ)さんの共同経営。独立する前からお互いのクリエイティブ論を語り合い、「こういうものが作りたい」「こういうものがあったら」と議論を深めていたそうです。

ある日「Twitterに対応するメモ帳があったらいいね」というアイディアが生まれ、互いの意見を重ね具体的に形に落とし込み「MEMO-GEN(メモゲン)」が誕生しました。140文字の制限を原稿用紙で表現し、印刷には活版を使用、スマートにメモを持ち歩けるよう二つ折りにするとクレジットカードと同じ大きさになるなどの細かいこだわりが随所に感じられます。そして『Twitterに対応するメモ帳』には大きな思いがありました。2011年3月11日東日本大震災直後、Twitterではさまざまな情報が飛び交いました。その中には間違った情報や信憑性に欠ける記事が多く出回り、混乱した人も多かったのではないでしょうか。

「パソコンやスマートフォンは気軽に書け、そのまま配信できてしまいます。手書きというワンクッションを挟むことで、書くことや考えることを見直せたらいいなぁと思ったんです」(大竹雄亮さん)

味のある古い雑居ビルの2階に事務所を構える「PORT」

味のある古い雑居ビルの2階に事務所を構える「PORT」

土日には、アトリエ兼ショップ&ギャラリー「FORT by PORT」の看板が

土日には、アトリエ兼ショップ&ギャラリー「FORT by PORT」の看板が

築50年以上の建物。内装にも赴きがあります

築50年以上の建物。内装にも赴きがあります

140文字の原稿用紙は、Twitterから俳句や川柳、短歌など日本の定型詩にも対応

140文字の原稿用紙は、Twitterから俳句や川柳、短歌など日本の定型詩にも対応

さらに縦を7文字にすることで、五音と七音の組み合わせによる俳句や川柳、短歌にも対応。古来より続く日本の定型詩に対応することで、幅広い層が活用できるメモ帳になりました。

つぶやきの対象を変えていこう

Twitterでいう自分のつぶやきの下書きが「MEMO-GEN」だとしたら、「LETA-GEN(レタゲン)」はつぶやきを相手に送るポストカード、「REPO-GEN(レポゲン)」はものにたいしてのつぶやきとして余白を多くとり自由に使える絵日記風の原稿用紙ノート、と原稿用紙のデザインを展開しながらアイテムが増えていったそうです。

そしてアイテムごとに素敵なエピソードや使い方も。
イベントに出店していると「LETA-GEN」を見た外国の方が「このポストカードで祖国の友人に日本語で手紙を送りたい」と、日本語の代筆を依頼されたこともあったそうです。

自由に使えるスペースが多い「REPO-GEN」は、ものづくりの作家さんが自分の作品をスペースに置き作品の説明を書いて展示したり、旅行の思い出を絵日記にして展示したりとクリエイターの方にも人気。

さらに原稿文具シリーズを国語の授業で活用している高校があるそうです。先生の話によると学生はtwitterの普及により140文字という文字制限に慣れているとか。400字詰めの原稿用紙に作文を書くより140文字の原稿用紙の方がすらすらと何枚も書けるそうです。二人組になり「MEMO-GEN」で連歌を作成したり、「REPO-GEN」を使い絵と作文を組み合わせた読書感想文など、さまざまな取り組みをされているとのこと。何より生徒の皆さんからは「可愛い」とうれしい声が。

ものづくりの作家さんはMEMO-GENで商品説明

ものづくりの作家さんはMEMO-GENで商品説明

たてよこ自由に使える「高橋久美子×PORT たてよこ詩作ノート」

たてよこ自由に使える「高橋久美子×PORT たてよこ詩作ノート」

高校生にも人気の原稿文具シリーズ

高校生にも人気の原稿文具シリーズ

小さな港で起こる、とっておきの時間

ヒトやモノが集まることをイメージして付けられた港という意味の「PORT」には、同じ商店街の方から名刺作成の依頼があったりと地域のつながりも徐々に増えているそうです。そしてアトリエ兼ショップ&ギャラリー「FORT by PORT」の「FORT」には砦や交易所の意味があり、集まってきた人たちと一緒に何かを行動できる「場」を作りたいという思いを込めてつけたとのこと。「ジャンルレスでいろいろなことをやっていきたい」と話す大竹雅俊さん。

「FORT by PORT」では不定期に、マーケットや展示会が開催されます。「MEMO-GEN」から始まり、人が集まる「港」ができた「FORT by PORT」に遊びに行ってみませんか。

ギャラリーには、陶器、木工雑貨、デザイナーのプロダクトなどが展示

ギャラリーには、陶器、木工雑貨、デザイナーのプロダクトなどが展示

大竹雅俊さん(左)と大竹雄亮さん(右)

大竹雅俊さん(左)と大竹雄亮さん(右)

FORT by PORT
東京都世田谷区代沢2-36-26 小坂ビル207
営業時間:12:00 ~ 20:00
営業日:土曜日・日曜日
HP:http://port.vc/

PORTへのお問い合わせはこちらから
http://port.vc/contact/

ありがとうを届ける道具店「ダイタデシカ」

大切な方への「ありがとう」と、つくり手からの「ありがとう」を届ける「ダイタデシカ」。

大切な方への「ありがとう」と、つくり手からの「ありがとう」を届ける「ダイタデシカ」

ゆっくりと変化を続ける世田谷代田

「ダイタデシカ」があるのは、小田急線の世田谷代田駅から徒歩約2分。昭和39年、環状七号線ができたことで商店街が分断されたこの街は、ここ数年若い世代の活動により、新規オープンする店が増えているものの、まだシャッターの閉まっている店舗が多い場所です。

この街をふたたび元気のある商店街にと奮闘しているのが、「ダイタデシカ」オーナーの南さんをはじめとする世田谷代田ものこと祭り実行委員の皆さん。2012年に全国からものづくりのつくり手を集めた「世田谷代田ものこと祭り」をスタート。祭りに集まる人の姿を見た実行委員の皆さんは、この姿を一年に一度ではなく、日常的な姿にしたいと考えるようになったそうです。「つくり手の道具を揃えたお店」があったら、ものこと祭りに近い景色が日常になるのではないかと、店舗を構えることを視野に入れるようになりました。

木のぬくもりを感じる「ダイタデシカ」の看板

木のぬくもりを感じる「ダイタデシカ」の看板

温かい照明の店内には、暮らしを彩る道具が並びます

温かい照明の店内には、暮らしを彩る道具が並びます

全国から集まる「暮らすこと」を彩る道具たち

「ダイタデシカ」には、「世田谷代田ものこと祭り」でおなじみのつくり手の道具のほか、全国からこだわりのアイテムが集まります。店内にはそのこだわりを感じてもらえる工夫が。まず店内にあるお手洗いには、今治タオルを使用。今治タオルは品質が高く独自の認定基準を持つタオルで、使えば使うほど肌になじむものだそう。何度も洗ったタオルを使ってもらうことでこだわりを実感できます。自分たちがガシガシ使うことで本当の良さを伝える「使う」「体験する」を増やしたいと話す南さん。

「ご飯茶碗ひとつをとっても、背景があるんです。深型のデザインは、隙間風が多かった日本家屋において冷めにくく、倒れない安定した形でした。暖房設備の発達や機密性の高い住宅が多い現代ではそういった心配もありません。このお茶碗は、浅く平らで、大変持ちやすく上品なデザイン。ご飯をよそっても内側の模様が見え、美味しさとともに絵柄の美しさも堪能することができるんですよ」(南さん)

店内にはワークショップや簡単な料理教室を開催できるスペースがあり、食器や調理道具なども取り扱いの道具から揃える予定だそう。すべて体験してもらうのは難しいですが、スペースや企画内容によって実感できるアイテムを少しずつ増やしていければと。

「カタログだけではすべてを伝えるのは難しいですよね。お話する時間があればこだわりを伝えることはできますが、炊きたてのご飯をお釜で炊いて、このお茶碗で食べてもらうことができたら、何もいわなくてもお客様自身が感じてくれると思うんです」(南さん)

使えば使うほど肌になじむ今治タオル

使えば使うほど肌になじむ今治タオル

絵柄も楽しめ、持ちやすく上品なデザインのご飯茶碗

絵柄も楽しめ、持ちやすく上品なデザインのご飯茶碗

ワークショップスペースには大きな黒板が。小さなお子さんを連れたお母さんでもゆっくり店内を見れる工夫があります。

ワークショップスペースには大きな黒板が。小さなお子さんを連れたお母さんでもゆっくり店内を見れる工夫があります。

つくり手にとって、きっかけづくりとなるようなお店に

「地方のつくり手が東京でお店を出すことはとても勇気がいること。ものこと祭りに出店してこの街のことをわかってはいるけれど、それだけではお店を構えることはないでしょう。もう一方で、世田谷代田に住まう方も、休日を過ごすには渋谷や下北沢など、外に出ないと楽しいことがないと感じている人が多いと思います」(南さん)

つくり手によるワークショップを定期的に開催したり、世田谷代田で面白いことができるんだという体験を重ねてもらいたいそう。「ダイタデシカ」がきっかけとなり、世田谷代田の空き店舗につくり手の工房やお店ができたらうれしい。世田谷代田に住む人や訪れる人が、休日を楽しめる街になってくれるのが夢」と南さんは言います。

大切な方への「ありがとう」と、つくり手からの「ありがとう」を届ける「ダイタデシカ」。その名前には「代田でしかできない体験・出会い」という意味がこめられているそうです。

ものこと祭りにも出店しているつくり手さんの作品が並びます

ものこと祭りにも出店しているつくり手さんの作品が並びます

ありがとうがたくさん

ありがとうがたくさん

ありがとうの気持ちがあふれた贈り物を探すなら、まずは「ダイタデシカ」に出掛けてみませんか?

ダイタデシカ
東京都世田谷区代田5-9-7
営業時間:13:00~20:00
営業日:金.土.日.月
HP:http://www.daitadeshika.com/

泥んこ田んぼアートと川場の美味しい食を体験!

川場村の大自然の中、手づくりのかかしを運ぶ子どもたち

川場村の大自然の中、手づくりのかかしを運ぶ子どもたち

前日から続く雨の中、世田谷区役所前に集合

世田谷区から川場村までは、バスでおよそ2時間30分。途中、高坂サービスエリアで休憩を挟みながら目的地を目指します。この日は7時15分に世田谷区役所前に集合。朝早い時間の出発のためバスの中では、朝食を摂る人、仮眠をとる人と各々の時間を過ごします。この日一番の心配は、昨夜から降り続く雨。泥だらけになるのだから多少の雨は気にしないと皆さん前向き!そんな思いが雨を吹き飛ばしたのか、川場村に近づくにつれ雨雲からくもり空になり、予報を裏切るうれしい天気となりました。

定刻通りバスは田植えが行われる田んぼに程近い、川場村の郷土料理と雪ほかた米の直火炊きが味わえる「名主の館(なぬしのやかた)」に到着。入り口では、田んぼアート実行委員会の「縁人(えんじん)」の皆さんのお出迎えが見えます。広がる大自然と澄んだ空気、築200年の日本家屋「名主の館」の趣のある佇まいに心が穏やかになるのを感じます。

着替えを済ませ、道の駅「川場田園プラザ」と「ホテルSL」を結ぶ吊り橋「ふれあい橋」のたもとにある田んぼへと向かいます。この「ふれあい橋」は、田んぼアートの全貌を眺めることができ観光スポットにもなっています。

田んぼに程近い、名主の館(なぬしのやかた)に到着

田んぼに程近い、名主の館(なぬしのやかた)に到着

田んぼアートの図面には細かい数字がたくさん!

田んぼアートの図面には細かい数字がたくさん!

カナダからの参加もあり、国際的な田植えに

カナダからの参加もあり、国際的な田植えに

大はしゃぎの田植えが始まります

一列に並んで田植えを行います

一列に並んで田植えを行います

大きくなぁ~れと苗に思いを込めます

大きくなぁ~れと苗に思いを込めます

川場村の関 清(せき きよし)村長、縁人リーダー久保田 長武(くぼた おさむ)さんからの挨拶のあと、田植えのレクチャーを受け、グループ分けされた持ち場へ移動します。田植えは長靴を履いて参加することもできますが、初心者の場合はぬるぬるとした泥水に足を取られバランスを崩しやすいので、しっかり踏みしめられる裸足で作業するのがおすすめ。田んぼに足を入れるとあちこちから「冷たいっ」「足が動かないっ」と子どもも大人も大はしゃぎ。

さぁ、騒いでばかりもいられません。なんといってもこの大きな田んぼのキャンバスを完成させるのがこのツアーの目的。田んぼに一列に並ぶと、等間隔に印がついたロープが目の前に。感覚をつかむまではこのロープを目安に植えるので未経験でも安心です。田んぼには、茅でポイントを打ちロープを繋げた下絵があるので、それを倒さないように普通米と黒米を植えます。中盤まで差し掛かると、「この部分は難しいから二人でやりましょう」「ここを逃げ道にして回りを植えましょう」と自然にどこのグループも一体感が生まれてきました。

「お昼にします!」の声に、みなさん待ってました!の笑顔

12時に近づくにつれて、「お昼まだかな」「お腹すいたね」の声が。2時間ほど作業をした後はみなさんお待ちかねのお昼。川場村の食を堪能できる昼食を楽しみにこのツアーに参加する人もいるほど。この日は、雪ほたか米のおにぎり・イワナの塩焼き・手打ちそば・5種類の天ぷら・ミート工房の山賊焼き・夏目漱石の糠床で漬けたぬか漬け・豚汁・搾りたての牛乳・雪ほたか米の糀酒(ノンアルコール)がテーブルにぎっしりと並びます。

雪ほたか米とは川場村自慢のお米で「米・食味分析鑑定コンクール国際大会」にて7年連続金賞を獲得したお米。お蕎麦は、当日の朝に川場蕎麦協会の皆さんが打ったもので、蕎麦の味がしっかり。食べすぎると動けなくなってしまうと思いながらもつい御代わりを。お腹が満たされた後は、散歩やお昼寝、地元の皆さんとおしゃべりしながら時間を過ごし、ゆっくりとした時間が流れます。

作業が予定より進んでいたので午後からは、田植えとかかし作りのグループに分かれました。予想外のかかし作りに大喜びの子どもたち。鳥などから大事な稲を守ってくれる「かかし」を田んぼに立て、無事に作業終了。縁人の皆さんとはここでお別れし、車で10分ほどのところにある天然温泉「世田谷区民健康村ふじやまビレジ」を目指します。温泉で疲れをとり、館内にあるお土産コーナーで買い物を楽しみ、川場村を後にします。帰路、バスの中はおしゃべりする声も少なく眠りの中へ。

イワナの塩焼き。外で調理する魚を見て、子どもたちも大はしゃぎ

イワナの塩焼き。外で調理する魚を見て、子どもたちも大はしゃぎ

田園プラザでも人気ミート工房かわばの山賊焼き

田園プラザでも人気ミート工房かわばの山賊焼き

お腹もいっぱい、緑が気持ちいお布団

お腹もいっぱい、緑が気持ちいお布団

農作業の他に美味しい食事と温泉が楽しめるツアーに魅了され、常連になる方も多い「田んぼアートツアー」。なかには過去4回すべてに参加している方もいらっしゃいました。かくゆう私も2回目の参加で、田植え体験や食を味わえるだけではなく、その後自分が植えた田んぼがどのように成長するかワクワクしたり、秋の稲刈りも楽しめるツアーです。

7/25現在の田んぼの様子。成長記録は縁人ブログで配信しています

7/25現在の田んぼの様子。成長記録は縁人ブログで配信しています

イベントやツアーに参加してみたい!

川場村にある「世田谷区民健康村」では、田んぼアート以外にも食や自然のありがたみを楽しみながら学べるイベントが年間を通してあります。食を楽しみたい方には果実の収穫を体験できる日帰りバスツアー、農業を学びたい方には農業技術教室など目的に合ったイベントやカリキュラムを選ぶことができます。四季折々の川場村を体験してみてはいかがでしょうか。

健康村の楽しみ方
http://www.furusatokousha.co.jp/enjoy/index.htm
日帰りバスツアー
http://www.furusatokousha.co.jp/enjoy/bus.htm
オリジナルイベント
http://www.furusatokousha.co.jp/shisetsu/op_ibennto.htm
縁人ブログ ※田んぼアートの様子を配信
http://www.vill.kawaba.gunma.jp/enjin/

民家の温もりをシェアする「シェア奥沢」

この日のイベント「テレサ・テン 日本とアジアをつなぐ歌の心」では、プロジェクターで映像鑑賞も楽しみました

この日のイベント「テレサ・テン 日本とアジアをつなぐ歌の心」では、プロジェクターで映像鑑賞も楽しみました

築89年の民家がシェアスペースとして甦る

人で賑わう自由が丘駅より徒歩数分。閑静な住宅地に、緑で囲まれた民家が現れます。そこが、「シェア奥沢」です。この土地を受け継いで三世代目となるオーナーの堀内正弘さんは、ここで生まれ育ち、現在も隣の母屋に暮らしています。

「祖父が亡くなってから、ここには親戚が住んでおり、その後空き家となっていました。ゴミ屋敷状態で長い間手を付けられなかったのですが、昨年、活用したいという若者が現れ、たくさんの人の協力を得て整備することができました。集合住宅にしたらとよく言われますが、多くの方々に活用していただける空間になって良かったと思います」(堀内さん)

そうして、世田谷トラストまちづくりによる事業「空き家等の地域貢献活用」のモデルに応募し、平成25年度「世田谷らしい空き家等の地域貢献活用モデル」として採用されました。この事業は、空き家等を保有するオーナーと、利用団体のマッチングに取り組み、地域コミュニティの活性化・再生を目指しています。活用事例のモデルとして「シェア奥沢」が選定されたのは、建物の活用と地域のつながり、堀内さんの広いネットワークが高く評価された結果でした。

ふだんは地域に開かれた「コワーキングスペース」として使われていますが、広めのキッチンや、50人は入れるスペースを活用し、トークイベントや音楽鑑賞会、子どもも参加できるものづくりワークショップなども開催されています。

室内から望む庭や緑に心が和みます

室内から望む庭や緑に心が和みます

イベントスペースでは、参加者約40名がワクワクした面持ちで話に聞き入っています

イベントスペースでは、参加者約40名がワクワクした面持ちで話に聞き入っています

スペースには、こだわりの音響システムを取り入れています

スペースには、こだわりの音響システムを取り入れています

“テレサ艶歌”に想いを馳せて

デビューした頃、14歳のテレサ・テン

デビューした頃、14歳のテレサ・テン

平野さんによる3拓のクイズに、参加者の皆さんも楽しんで答えます

平野さんによる3拓のクイズに、参加者の皆さんも楽しんで答えます

時を越えて愛され続ける歌姫の映像に、思わず釘付けになってしまいます

時を越えて愛され続ける歌姫の映像に、思わず釘付けになってしまいます

この日は、「シェア奥沢」の4軒隣りが実家だったという、ノンフィクション作家・平野久美子さんを招いて、「テレサ・テン 日本とアジアをつなぐ歌の心」が開催されました。『テレサ・テンが見た夢 華人歌星伝説』(晶文社)の著者としても知られる平野さんは、テレサ・テンに2度のロングインタビューを敢行したジャーナリストです。同時に台湾やアジアに造詣が深いため、当時の中国と台湾の歴史的な視点を交えながら、テレサ・テンの生い立ちや人生を振り返るトークショーとなりました。

途中、楽曲を聴いたり、若きテレサ・テンの愛くるしい写真や、お手本のようにきれいな発音の北京語で歌うプロモーション映像を見ているうちに、参加者はどんどんとアジアの歌姫の魅力に引き込まれていきます。

「テレサの素晴らしいところは、まずとてもきれいでクリアな高音です。加えて、北京語でも日本語でも英語でも、発音がきれい。音感が非常に優れていたんですね。それから、聴く人に語りかけてくる歌。そして、人柄です。偉ぶったところがまるでない、かわいらしい人でした」(平野さん)

「演歌でもマイケル・ジャクソンの歌でも、どんな曲も艶のある歌にできる歌手」と平野さんが言うように、その歌声は“テレサ艶歌”と呼ばれ、アジア中を虜にしました。

アフターでも心ゆくまで交流を

約2時間のトークショーがあっという間に終了し、テレサ・テンの澄んだ歌声の余韻を残しながらイベントはそのまま交流会へ。フードコーディネーターがこの日のために作った、台湾の家庭料理の香ばしい香りが食欲をそそります。皆で乾杯し、美味しい料理を味わいながら、交流が深まっていく様子。参加者同士にも、新たな繋がりが生まれます。

「いわゆる公共の場所では、ゆっくり温まることができないけど、ここはイベントのアフターで交流ができます。布団もあるので、終電を逃しても大丈夫ですよ」(堀内さん)

「シェア奥沢」では、同じ関心をもった人々が集まることで、空間だけでなく温かいコミュニケーションも“シェア”されています。地域に貢献する、広い可能性を秘めたシェアスペースです。

________________

「空き家等地域貢献活用」相談窓口はこちら。
TEL:03-6407-3313(9:00〜17:00)
>> http://share-okusawa.jp

自由な雰囲気の交流会では、参加者同士の交流が生まれています

自由な雰囲気の交流会では、参加者同士の交流が生まれています

台湾の家庭料理がふるまわれた交流会。食欲をそそる香りです

台湾の家庭料理がふるまわれた交流会。食欲をそそる香りです

ごみはどこへ行くの?世田谷区のごみ事情

砧公園から見える、世田谷清掃工場の煙突

砧公園から見える、世田谷清掃工場の煙突

世田谷区のごみってどこへ向かうの?

世田谷区の可燃ごみは、世田谷清掃工場と千歳清掃工場に運ばれて、800度以上の高温で燃やされます。燃やすと大きさは1/20ほどになりますが、世田谷清掃工場では、できた焼却灰をさらに溶融し、スラグという砂のようなものにして、その一部はコンクリートやアスファルトなどの土木資材として活用されています。しかしながら、生成されたスラグは必ずしもすべて土木資材とはならず、余ったものは東京湾の埋め立て処分場に運ばれます。

一方、不燃ごみはそのまま処分すると容積が大きいため、東京湾近くにある2ヵ所の不燃ごみ処理センター(中坊不燃ごみ処理センター、京浜島不燃ごみ処理センター)に運ばれ、中間処理と呼ばれる破砕をして容積を減らす工程と鉄とアルミニウムを取り出す工程を経たのち、やはり東京湾の埋め立て処分場に運ばれます。

そして最後に粗大ごみ。東京湾の近くにある粗大ごみ破砕処理施設に運ばれると、木でできた家具などの可燃系と自転車などの不燃系に選別されてから、破砕され、不燃ごみと同じように鉄を取り出して、最終的には可燃系は燃やして、不燃系は東京湾の埋め立て処分場に向かいます。

ごみの分別が始まり、ペットボトルやかん・びんなどの回収が別になるなど、ごみ収集も進化をしている

ごみの分別が始まり、ペットボトルやかん・びんなどの回収が別になるなど、ごみ収集も進化をしている

最終的に運ばれる、埋立処分場

最終的に運ばれる、埋立処分場

このように、最終的には東京湾に埋め立てられているのですが、可燃ごみは焼却灰のスラグ化技術が導入されたことで容積が大幅に減少。現在埋め立てられているのは、不燃ごみと粗大ごみが中心となっているのです。

「夢の島」は、昔の話!?

東京湾の埋め立て処分場というと、夢の島をイメージする人が少なくないかもしれません。じつは、夢の島でのごみの埋め立ては今から40年以上も前の1967年に終了しているのだとか。

埋め立て処分場は、東京湾の沖へ沖へとどんどん進出し、現在はお台場から南に向かい、海底トンネルを超えた方面にある「新海面処分場」へ運ばれていますが、ここは東京湾の中で埋め立て可能な最後の区画となっていて、東京23区のごみから計算すると、あと50年しかもたないことが分かっています。

昭和48年当時の新・夢の島

昭和48年当時の新・夢の島

それならば、湾の外へさらに区画を広げればいいのでは、と考えるかもしれませんが、東京港湾区域の外は東京都の権限が及ばず、東京港は大型船舶が毎日行き来する貿易港でもあるので、航路を狭くするわけにもいかないと、処分場としての寿命が迫っているのです。

「捨てない」という選択肢を考える

世田谷区では、ごみの減量について様々な取り組みを重ねていますが、そのひとつがごみ減量・リサイクルの普及・啓発のための施設運営です。

例えば「エコプラザ用賀」では、まだ十分に使用できるものがごみとして捨てられている現状を伝え、ものを大切にする意識の工場と、リデュース・リユースの大切さを啓発することを目的に、粗大ごみのうち、まだ使用できる家具などのリユース品の展示・提供を行っています。

「リサイクル千歳台」では、ごみ減量やリサイクルに関する活動を行っている団体やグループの活動の場となり、講座や講習会の開催も。

ほかにも世田谷区では、平成25年よりCO2排出量の少ない、環境にやさしいごみ収集車を導入していますが、今取り組むべきは、行政側ではなく、ごみを捨てるひとりひとりに託されているような気がします。

ごみ処理施設や処分場は、見学会が定期的に実施されているので、毎日の暮らしのなかで捨てたごみが最終的にどこに行き着くのか、一度自分の目で確かめてみるのもいいかもしれません。

「小さな森」がまちにあると、なにが変わる?

縁側で日向ぼっこしながら植物観察。都内にいることを忘れます

縁側で日向ぼっこしながら植物観察。都内にいることを忘れます

あなたのお庭もあてはまるかもしれません

「小さな森」とは、(一財)世田谷トラストまちづくりが独自で設けた制度に登録されたお庭のことです。世田谷区内にある50㎡以上であれば、「小さな森」として申請することが出来ます。所有者は、任せるだけでなく、「自らみどりを守り育むことの大切さ」を理解し、トラスト活動に協力したいという意志を持ち、登録しているそうです。

「小さな森」オープンガーデンは、身近なみどりの大切さを普及するため、その所有者とボランティアの協力により、年に数回、お庭をひらいているイベントです。

「現在は、11箇所が登録されています。『小さな森』は、実際には“森”でなく、個人が育てているみどりです。しかしそれがたくさん増えていくことによって、点が線になり、面になって、やがて『大きな森』になる。それを願って、名付けられました。一つひとつの庭は小さなみどりかもしれませんが、それを繋げていくことによって、世田谷にみどりの輪が広がっていくことを願っています」(トラストまちづくり課 丸山理恵子さん)

豪徳寺駅から徒歩数分の民家にある「豪徳寺一丁目」の「小さな森」

豪徳寺駅から徒歩数分の民家にある「豪徳寺一丁目」の「小さな森」

次来たときはどんな季節の花が咲いているだろうと、楽しみにしている参加者もいます

次来たときはどんな季節の花が咲いているだろうと、楽しみにしている参加者もいます

みどりから生まれる交流

小さい子どもも広い庭でのびのびと遊んでいます

小さい子どもも広い庭でのびのびと遊んでいます

オープンガーデンはみどりが繋ぐ、来場者同士の交流の場にもなっています

オープンガーデンはみどりが繋ぐ、来場者同士の交流の場にもなっています

この日のオープンガーデンは、「豪徳寺一丁目小さな森」で行われました。奥行きのある和風のお庭は、すっかり春の装いで、ツバキやハナミズキ、オキザリスなどが咲いていました。聞けば今だけでなく、このお庭は、季節ごとに順に花が咲き、実りがあるよう工夫がされているそうです。昔懐かしい縁側に座り、日向ぼっこをしながらお庭を眺めていると、心もほっこりしてきます。

リピーターの方から、初めて訪れたという女性、小さなお子さん連れの親子まで、約20名の来場者は、それぞれのペースでゆったりと過ごしている様子。そして、花や木々を共通言語に自然と会話が生まれてきます。

花やみどりには、人を笑顔にしたり、仲良くさせるパワーがあるようです。
みどりだけでなく人と人の繋がりも生まれていました。

鳥も生き物も、ここがあるから生きていける

「小さな森」オープンガーデンでは、毎回、グリーンアドバイザーによる「ミニガイド」の時間があります。今日は、木村智子さんによる「緑の回廊」というお話。

「鳥や虫などの生き物が生きていくためには、移動することのできるある程度のみどりの面積が必要です。東京のように都会化が進み、みどりが少なくなると、生き物の食べ物が足りなくなってしまいます。そんなとき、『小さな森』があれば生き物は移動しながら、いろいろなみどりに頼って四季を過ごすことができるんです。たった一鉢でもいいんですよ」(木村さん)

世田谷のようなまちなかでは、まとまったみどりの確保はとても難しくなっています。しかし、私たちがそれぞれ愛好する植物を育てることにより、多様な種類が育ちます。生き物も好みは様々ですから、多種の虫や鳥が利用できることになります。それが、まちなかでは、みどりとみどりを繋ぐ、回廊の役割を果たすのです。分断された野生生物の生息地を繋いで、生き物が移動できるようにする連なりを、「緑の回廊」と呼びます。

もちろん、昆虫や鳥が移動することによって、花粉や種子が運ばれ、みどりも繁殖することができます。また、光合成をして、二酸化炭素を酸素に変えたり、でんぷんなどに変え、他の生き物に養分を与えてくれます。まさに、みどりが私たち生物の命を繋いでいるのです。

今日、みどりをひとつ増やして育ててみよう。できることから始めよう。そんな気づきを得たオープンガーデンでした。

(撮影:小林友美)

ミニガイド風景。みどりのことを考える良いきっかけになりそうです

ミニガイド風景。みどりのことを考える良いきっかけになりそうです

縁側に腰掛けて庭を眺めながら語らう時間は、何物にもかえがたいひととき

縁側に腰掛けて庭を眺めながら語らう時間は、何物にもかえがたいひととき

「水辺の回廊」の役割を果たす水鉢。小鳥が寄って水浴びをできるよう、浅い鉢に水をはっています

「水辺の回廊」の役割を果たす水鉢。小鳥が寄って水浴びをできるよう、浅い鉢に水をはっています

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「小さな森」オープンガーデン開催日や参加申し込みなどの詳細は、
(一財)世田谷トラストまちづくり トラストまちづくり課まで。
TEL:03-6407-3311
>> http://www.setagayatm.or.jp/

※ お庭を地域にひらく「小さな森」制度に、ご興味のある方、トラストまちづくり課までお問い合わせください。
※ ボランティアも随時、募集しています。

線路跡地の「景観デザイン」を考えよう!グリーンライン下北沢

地上を走る線路が最後となる日。駅前の掲示板には惜しまれるコメントがたくさん記されました

地上を走る線路が最後となる日。駅前の掲示板には惜しまれるコメントがたくさん記されました

下北沢は、どう変わるのか?

小田急電鉄小田原線の代々木上原駅から梅ヶ丘駅間で行われている工事は、2004年9月から始められたもので、線路が「地下化」。さらに、普通列車が走る線路と、急行列車が走る線路をわけるための「複線化」が計画され、現在も駅舎の工事や交差する道路の整備などが行われています。

この計画から予想される未来は、線路跡地に高層ビルが建設され、外部資本による店舗が建ち並ぶ光景。下北沢の魅力である昔ながらの商店や、まちの風景が姿を消してしまうのではないか…。都内でも珍しい2.2kmにわたる小田急線地下化後の上部利用の計画や運営などを、市民と専門家が恊働して行政に提案し、実現をしたい。そんな思いから立ち上がったのが、NPOグリーンライン下北沢です。

その活動は5年前にさかのぼりますが、できてしまってからこんなはずじゃなかった…と思うのではなく、自分たちのまちは、自分たちで考えようよ、と提唱しています。

「下北沢というまちは、個性があると思うんです。そのひと、そのひとの自由があったり、どこか手づくり感があったり。そうしたものを大切にしていきたいなと考えて、この活動を立ち上げました。線路のあとちをどうつくるかだけでなく、下北沢らしさをつくっていくこと、一粒で2度おいしいまちになることが願いなんです。」(高橋さん)

「NPO法人グリーンライン下北沢」代表理事の高橋ユリカさん

「NPO法人グリーンライン下北沢」代表理事の高橋ユリカさん

代々木上原駅から梅ヶ丘駅間で行われている工事の区間

代々木上原駅から梅ヶ丘駅間で行われている工事の区間

まちづくりを、みんなで考える

グリーンライン下北沢の活動は、じつに多岐にわたっています。専門家によるセミナー、区長とのシンポジウム、市民によるワークショップ。ここでは、行政、市民、商店街のひと、学生、専門家…といった具合に、多くの人が関わっているのです。

「日本にはまだ例の少ない鉄道跡地の活用事例について、専門的知恵や事例を持ち寄って、それらについてみんなで考えるセミナーを行っています。テーマはランドスケープデザイン、交通計画、公共空間。難しそうに聞こえるかもしれませんが、すべて自分たちのまちのこと。まちづくりが“自分ごと”になることが大切だと思っています。」(高橋さん)

高橋さんは、参考になる世界の事例として、アメリカ・ニューヨークの「ハイライン」について紹介してくれました。

「全長約2.4kmの鉄道が廃線になって、専属ガーデナーが手入れをする市民の公園になりました。

「あとち」に何が可能か、みんなで考えていく場をつくっています

「あとち」に何が可能か、みんなで考えていく場をつくっています

アメリカ・ニューヨークのハイライン。廃線高架鉄道跡地利用の事例

アメリカ・ニューヨークのハイライン。廃線高架鉄道跡地利用の事例

ハドソン川をのぞむ気持ちのいい場所で、高級ファッション店や素敵なカフェがオープンしてエッジのきいた文化発信エリアに。線路として使われていた木材は、そのままベンチとして利用したり、様々なイベントが企画され、地域の人に愛される場所となりました。」(高橋さん)

この試みは、たった2人の市民から生まれました。面影は残しながらも公園にしたいと、友の会を創設。賛同者を少しずつ増やして、“保存再生して利用する”という運動への枠組みがつくられたのです。

まちに対して、自分は何ができるか

「晴れた日は、世田谷代田駅あたりからストレートに富士山も望めるエリアです。こうした美しい景色を残せるよう、提案をしています。でも、すべてはプロセス。こういう社会を生きてきたという足跡が残せたらと思っています。」(高橋さん)

グリーンライン下北沢は、ほかにも、学生と一緒に考えるワークショップや、跡地の利用についての社会実験として、みんなでお弁当を持ち寄って食べながら、まちについて考える「下北沢ピクニック」を開催。

さらに、駅前広場予定地がみんなの庭だとしたら何をしたいか?を考える「下北沢・みんなの庭プロジェクト」を基軸に、その活動はどんどんと枝葉を広げています。

みなさんも、自分の暮らすまちについて、どんな関わり方でできそうか、一度考えてみませんか?グリーンライン下北沢のfacebookページも、ぜひチェックしてみてくださいね。

みんなでお弁当を持ち寄って食べながら、まちについて考える「下北沢ピクニック」

みんなでお弁当を持ち寄って食べながら、まちについて考える「下北沢ピクニック」

今はもう見られなくなってしまった、地上を走る小田急線

今はもう見られなくなってしまった、地上を走る小田急線

写真提供:グリーンライン下北沢

子どもの絵をぬいぐるみに!親子で参加できるワークショップ

活動のきっかけとなった人魚のぬいぐるみを「100体つくれたら面白そう!」と、ワークショップの名前は100mermaidsに

活動のきっかけとなった人魚のぬいぐるみを「100体つくれたら面白そう!」と、ワークショップの名前は100mermaidsに

ぬいぐるみで、子どもの絵を永遠に

100mermaidsは、「こどもの絵」+「チクチクしごと」+「集う」をコンセプトに親子で参加できるワークショップを開催しています。主催の森 牧子さんは、アニメーションやイラストを描く仕事柄、子どもたちが描く絵につい目を奪われることがあったそうです。

「ノートの切れ端やメモ帳に描いたような、何気ない落書きが可愛くて捨てられない、ということがよくありました。なかでも、娘が4歳のころに描いた人魚の絵が大好きでずっと壁に貼っていたんです。しばらくすると汚れや破れてしまうのが心配で、可愛い絵を残せる良い方法を考えるようになり、絵を布にプリントし縫い合わせてぬいぐるみにする方法にたどり着きました」(森さん)

実際につくってみると「かわいい」と評判に。「多くの人に知ってもらえるよう、ワークショップにしてみたら?」という声に押され活動を開始したそうです。現在では、1つのぬいぐるみを半年くらいかけて作り上げる本来のスタイルに加え、参加しやすい1回完結型のワークショップも定期的に開催しています。

用意された、色とりどりの毛糸やフェルト

用意された、色とりどりの毛糸やフェルト

この日はおよそ10組の親子が参加しました

この日はおよそ10組の親子が参加しました

カフェで賑やかに「チクチク」するひととき

なんのためらいもなく、自由に描く、描く!

なんのためらいもなく、自由に描く、描く!

お絵描きが終わったら、さてどんな飾りをつけようか?

お絵描きが終わったら、さてどんな飾りをつけようか?

今回は、ベースとなるぬいぐるみに直接絵を描いて飾り付けをする「BASE TYPE」という1回完結型のワークショップに参加しました。
ひな祭りの前ということもあり「おひなさまをつくろう!」がテーマ。おだいり様とおひな様のベースを選ぶところから、ワークショップが始まりました。娘は背中部分が水色のおだいり様と、ピンク色のおひな様を選択。しっかり弾力のあるぬいぐるみには「100mermaids」のタグも縫い込まれ、とても丁寧なつくりです。選んだぬいぐるみに、子どもたちは思い思いに顔と着物を描いていきます。今回の参加者は、下は2歳から上は6歳までのお子さんとお母さんたち。子どもたちの描く絵が個性にあふれているのがこのワークショップの面白いところ。

お絵描きが終わった親子から飾り付けスタート。テーブルには色とりどりの毛糸やフェルト、刺繍糸に加え星やハート、貝殻といったさまざまな形のキラキラスパンコールが並べられていました。

おやつタイムは、春の訪れを感じて

針仕事はボタン留めくらいという私も、娘と「それにしようか?」と毛糸やスパンコールを選んでいるうちにどんどん楽しくなってきました。他のお母さんとも、子どもの絵やチクチクしごとを通じて会話がうまれ、どのテーブルもにぎやか。裁縫が苦手でも「ここはどうしたらいい?」というような基本的な質問も気軽にでき、アドバイスをもらえるので安心です。

11時を少しまわったところで、おやつの時間。こちらのワークショップでは、この「おやつの時間」も楽しみのひとつ。今回は桜のパウンドケーキと自家製の苺ソースをかけた豆乳プリン。春の訪れを感じさせてくれるメニューでした。おやつが終わり、ぬいぐるみづくりを楽しんでいると、あっという間に終了の12時。途中の人は持ち帰りの糸やスパンコールを選んで、お家で完成をさせます。我が家も自宅で、ゆったりと針仕事を楽しみました。

針仕事と手作りおやつ。ほんわかとした時間です。

針仕事と手作りおやつ。ほんわかとした時間です。

おしゃべりを楽しみながらも、ママたちは真剣そのもの。

おしゃべりを楽しみながらも、ママたちは真剣そのもの。

針を通して見える、子どもの絵のすばらしさ

ワークショップのテーマは「どんぐりぬいぐるみバッグをつくろう!」「クリスマスオーナメントをつくろう!」など季節やイベントの内容でさまざま。すでに子どもが描いたお気に入りの絵を持っている場合は、その絵を布にプリントして刺繍する「PRINT TYPE」のワークショップに参加できます。

「子どもの描いた絵をじっくり見ることって、実はあまりないと思います。子どもって、本当にとらわれのない、自由で無垢な線を描く。子どもの絵に針を通し、じっくりと向き合うことで、見えなかった何かが見えてくる。毎回新たな発見があり楽しいです。針仕事に没頭することで、ストレス発散にもなりますよ」(森さん)

お父さんの参加や、お一人での参加も歓迎とのこと。「こどもの絵」+「チクチクしごと」+「集う」を楽しんでみてはいかがでしょうか?

2歳の子どもの作品

2歳の子どもの作品

6歳の子どもの作品

6歳の子どもの作品

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100mermaids workshop
[お問合せ先]http://100mermaids.kir.jp

一流の材料で100%手づくりの洋菓子を販売するカフェ「パイ焼き茶房」

パイ焼き茶房

パイ焼き茶房

世田谷の農家や市場から仕入れた野菜を使って

「パイ焼き茶房」に入ると正面はケーキのショーケースのある洋菓子販売コーナー、右手はカフェコーナーで壁面は月替わりのギャラリーになっています。今月は近所の幼稚園児のかわいい絵がかかっていました。
昼時はいつも満員の「パイ焼き茶房」、その人気の理由は何なのでしょうか。パイ焼き茶房の生活支援員の名古屋靖子(なごややすこ)さんが、そのこだわりを教えてくれました。

「とにかく食材に気を使っています。野菜は、区内の農家や市場から直接仕入れた新鮮なものですし、お菓子に使うバターなども最高級のもの。また、調理の下ごしらえに手間をかけるなど、細かい工夫が味の違いになってご好評いただいているのだと思います」(名古屋さん)

ランチの一番人気はカレーにレモン果汁をたっぷりかけて食べるレモンカレー、レモンの酸味がさわやかです。飲み物のメニューでは、黒豆のジュースという甘酸っぱいオリジナルジュースがあり、ホット、アイスともにちょっと癖になる味。老若男女問わずに根強い人気があるそうです。10時と14時に焼き上がる温かいアップルパイも人気です。また、カフェで働く障害者を支えるために、ここでは多くのサポーター(ボランティア)が仕入れや調理などでカフェの運営を支援しています。

「サポーターの数は中高生の体験学習なども含めると年間数百名にもなります。障害者は職員やサポーターの支援を受けながら、お客さんの注文をとり、コーヒーをいれたり、ランチを運んだり、洋菓子を販売したりしてカフェの仕事をしています。障害者の数は今は15名で、3つのシフトに分かれて働いています。」(名古屋さん)

明るく開放的な店内

明るく開放的な店内

店内の販売コーナー

店内の販売コーナー

レモンカレーセット(800円)

レモンカレーセット(800円)

区内果樹園のりんごやプルーンでお菓子づくりも

「パイ焼き茶房」の洋菓子は「パイ焼き窯」という別の作業所に所属している障害者が作っています。「パイ焼き窯」の管理者で就労支援員の鹿島法博(かしまのりひろ)さんに洋菓子づくりについて伺いました。

「ここでは約25名の障害者がパテシィエやサポーターの支援を受けながら、洋菓子を作っています。作業所で作っているからと侮らないでください。見た目は普通の洋菓子ですが、味はどれも本格高級洋菓子。その理由は3つのこだわりにあります。」(鹿島さん)

パイ焼き窯

パイ焼き窯

一流の材料で勝負

「1つめのこだわりは、一流の材料を使っていることです。プロの菓子職人に負けないおいしい洋菓子を作るために、最高のものを使っているのです。パイ焼き窯では約70品目の洋菓子を製造していますが、保存料を使用せず、小麦粉は国産の無漂白粉、砂糖、黒糖も国産です。新鮮な地卵にチョコレートはベルギー産。コストは高くなりますが、『パイ焼き窯の洋菓子はおいしい』と評判になりお客さんのリピーターができることで、作っている障害者の大きな喜びとなり、働くことの意識向上につながるのです。」(鹿島さん)

材料にこだわったケーキ

材料にこだわったケーキ

手作りが基本

「パイ焼き窯の2番目のこだわりは作業工程にあります。最初から最後まで手作りにこだわり、機械は使用していません。機械で製造したお菓子は画一的な味になりますが、手作りのお菓子は材料本来の味が出ます。

『本日の菓子作り』とホワイトボードに書かれた指示を見て、障害者は自分の得意な菓子を選択し、自分で作ったレシピ(材料と重さ)を作ります。流れ作業や分業は一切せず、材料の計量から形成まで、一連の作業を一人でこなすことに。

お菓子作りの作業

お菓子作りの作業

見て覚える、聞いてメモして覚える、くり返して覚える。習熟の度合いは一人一人違いますが、こうして商品に責任を持つことで、どんな仕事に就く場合にも必要な基礎力を身につけるのです。
パイ焼き窯ではパイ焼き茶房での販売のほか、イベントの特別注文や近所の飲食店に卸す分などで1日に30万円相当の洋菓子を作ることもあります。このように大量のお菓子を作る作業所は全国にも類を見ないそうです。」(鹿島さん)

世田谷とのコラボレーション

「パイ焼き窯の3番目のこだわりは、地元・世田谷とのコラボレーションにあります。区内の果樹園で生産されたりんごやプルーンを使ってお菓子作りをしています。特にアップルパイは秋のリンゴの収穫とともに販売を開始し、収穫が終わると販売も終了するという数量限定のパイ。区内のりんご農家の方から収穫に来て下さいと直接連絡が入ります。大ぶりのアップルパイ、素材の味とせたがやの思いが詰まった逸品です。」(鹿島さん)

世田谷のりんごが詰まったアップルパイ

世田谷のりんごが詰まったアップルパイ

「パイ焼き茶房」のギャラリーとイベント

パイ焼き茶房の店内の壁面はレンタルギャラリーになっています。レンタル料は1ヵ月1万円ととてもリーズナブル。このギャラリーによって、店内の雰囲気が毎月ガラッと替わり飽きないと評判です。

また、毎月第3水曜日14:00~16:00には「パイ焼き茶房でサロン楽描(らくがき)と八百屋ジャズの歌声喫茶」が開催されています。中高年がなつかしい歌を皆で歌う会で、料金はお茶とお菓子付で900円。予約不要で誰でも自由に参加できます。

歌声喫茶の風景

歌声喫茶の風景

その他にも大テーブルを借りて絵画教室を開催している人がいたり、その横では普通にお茶しているお客さんがいたりと、とにかく老若男女、千客万来なのがパイ焼き茶房です。

________________

パイ焼き茶房
世田谷区等々力2-18-1
営業時間:10:00~19:00
定休日:日・祝

パイ焼き窯
世田谷区等々力2-36-13
電話:03-3702-0459

始めてみよう、体が喜ぶぬか漬けライフ

お野菜のほか、こんにゃくや高野豆腐、金柑のぬか漬けまで!

お野菜のほか、こんにゃくや高野豆腐、金柑のぬか漬けまで!

ふわふわしっとりの生ぬか初体験

ぬか漬けマラソンは、世田谷区内の施設やカフェ、個人宅などキッチン設備のある場所で不定期に開催している、ぬか床づくりのワークショップです。この日は、主宰のおかべなおえさんのご自宅で行われました。
あらかじめ用意するのは、容器と捨て漬け用の野菜、塩や赤唐辛子など家にあるもの。生ぬかは、おかべさんご用達の山形県大蔵村産の無農薬のものを使用します。「生ぬかを食べたことありますか?」の質問に、首を横にふる私たち。「どうぞ食べてみてください」と言われて口に含むと、ぬか漬けのイメージとは違って、きなこのような味わいに「甘い!美味しい!」の声が。

さっそくぬか床づくりに取り掛かります。作業は思っていたより簡単で、生ぬか、塩、水を混ぜるだけ。静かに混ぜないと、生ぬかがふわふわと舞うため、優しくゆっくり混ぜていきます。均等に混ざったらしっとりとした手触りのよいぬか床ができあがりました。
そこに、各自持参した捨て野菜やとうがらし、昆布を入れてぬか床づくりは終了。あとは自宅で2~3日後の天地返しや捨て野菜の入れ替えを行いながら20日間ほど(季節によって捨て漬け期間は変わります)ぬか床内の乳酸菌が増えるのを待ちます。すぐにぬか漬けライフが始まると思っていましたが、そこは良いぬか床を育てるために我慢。

生ぬかは、きなこのような甘い味わい

生ぬかは、きなこのような甘い味わい

はじめてのぬか床づくり

はじめてのぬか床づくり

ふわふわ舞う生ぬかに水と塩を加え、優しく混ぜます

ふわふわ舞う生ぬかに水と塩を加え、優しく混ぜます

なるほどエプロンシアター

おかべさんオリジナルのエプロンシアター。ぬか床のしくみをわかりやすく説明してもらいます

おかべさんオリジナルのエプロンシアター。ぬか床のしくみをわかりやすく説明してもらいます

高野豆腐のぬか漬けにみんなビックリ!

高野豆腐のぬか漬けにみんなビックリ!

エプロンシアターという言葉をご存知でしょうか?子どもに話を聞かせる手法のひとつで、話し手が舞台となるエプロンを着用し、ポケットから動物や食べ物のキャラクターが登場する人形劇のこと。おかべさんは、お手製のエプロンシアターの手法で、ぬか床の中で何が起こっているのか、発酵の仕組みを教えています。どんな菌が育ちどのような働きをするか、菌の種類によって好む場所が違うことなど、小さな世界の仕組みをわかりやすく学ぶことができました。

「ぬか床の作り方やテキストだけでは、ぬか床の仕組みがわかりにくく、日々のお手入れの目的が伝わらないと思いました。視覚で覚えてもらうためにエプロンシアターを使っています。仕組みがわかると初心者でも失敗が少ないと思うんです」(おかべなおえさん)

食材が次々に出てくる楽しい実演

おかべさんのぬか床を使い、下ごしらえのポイントと、実際に漬けた食材を取り出しながら仕込みのポイントを実演。定番のきゅうりやにんじん、なすの他にこんにゃくや高野豆腐などの変わり種も。家庭用の小さなぬか床にこんなに食材が入るの!と驚くほどお皿いっぱいのぬか漬けがテーブルに並びました。一夜漬けから長いもので2週間以上漬ける食材も。出てくる食材一つ一つに「どのくらいの期間漬けるんですか?」など家での実践に備えて質問が飛び交います。

時間はすっかり正午をまわり、お腹もすいてきたところでランチタイムに。おかべさんお手製のぬか漬けで、化学調味料が入っていない素材そのものの味を美味しくいただきました。食感の違いでいろいろなぬか漬けが作れると実感。食事の際も参加した皆さんと、上手に漬けるコツ、何を漬けてみたいかと漬け物の話で盛り上がります。漬かり過ぎた古漬けは、旨みをたっぷりすっているので「漬け物出汁」にするのがおすすめだそう。塩分が強い場合は、30分~1時間ほど塩抜きした後で、スープの出汁やチャーハンの具材に使ってもよいのだそうです。

おかべさんのぬかを味見。この味を目指します

おかべさんのぬかを味見。この味を目指します

漬け方やぬか床の混ぜ方の実演

漬け方やぬか床の混ぜ方の実演

子どもにも人気のぬか漬け

取り出した食材を切り、ランチタイムの準備。

取り出した食材を切り、ランチタイムの準備。

ランチタイムはぬか漬けの他に、おかべさんのお手製味噌で作ったお味噌汁も。身体がほっこり喜びます

ランチタイムはぬか漬けの他に、おかべさんのお手製味噌で作ったお味噌汁も。身体がほっこり喜びます

受講した皆さんからは、ぬか漬けの味や相談以外に、家族とのぬか漬けライフについてうれしい声が寄せられるそうです。
あるお母さんは、ぬか床を混ぜているとお子さんが「混ぜているでしょー!」と駆け寄ってきて、興味津々にその様子を見ているとか。そうしてお母さんが作っている姿を見ているので、食卓に上がったぬか漬けも美味しく食べてくれるのだとか。野菜嫌いのお子さんがぬか漬けなら食べてくれることもあるそうです。

「毎日ぬか床のお手入れをしていると、祖母が『大事にしているかい』と語りかけてくれてるような気がします。大事にというのは、ぬか床だけではなく家族の健康だと感じます」(おかべさん)

受け継がれる家庭の味は少なくなりましたが、ぬか漬けを通した家族の姿は今も昔も変わらないのではないでしょうか。講習から1ヶ月、我が家のぬか床も元気に育っています。

ぬか漬けマラソンブログ

無農薬無肥料で育てる、自然に寄り添う「農」を世田谷から

1000㎡の畑で春〜夏、夏〜秋、秋〜冬の3期作で野菜を育てています。のんびり、ゆったりした時間の流れが

1000㎡の畑で春〜夏、夏〜秋、秋〜冬の3期作で野菜を育てています。のんびり、ゆったりした時間の流れが

畑に雑草を植え、土に命を吹き込む

ある3月の日曜日の朝、仙川のそば、鎌田の住宅地の一角にある畑に、一人、また一人と集まってきます。畑といっても雑草や枯れ草で覆われている土地で、不思議な光景です。

ここを運営しているのが、2009年にスタートした「せたがや自然農実践倶楽部」。「自然農」を楽しむ人々による会員制の畑です。「自然農」とは、耕さない、水をやらない、草を抜かないという一般の農業とは正反対の農法で、夏の畑は成長した草と農作物が生い茂り、ジャングルのようになるのだとか。

「遊んでいるように思われがちですが、実はルールに沿ってやっているんですよ」と、代表の井山ゴンジさん。自然農の農作業は、種を撒く前の畑に雑草を植えるところから始まります。草の根のまわりに微生物が増え、それが空気中の窒素からアンモニアや硝酸塩などの窒素化合物を作り、土中に固定。これを栄養分にして、作物が育つしくみです。ここの土1gの中には1億匹もの微生物がいるのだとか。大切に育てられた土にふれると、ほんのり温かさを感じました。

直射日光や冷たい空気にさらされないように草で覆って微生物を守る。草のない裸の畑では、微生物は増えにくい

直射日光や冷たい空気にさらされないように草で覆って微生物を守る。草のない裸の畑では、微生物は増えにくい

明け方、葉に滴る朝露は土をほどよく濡らす。伸びた草が影になって土を日差しから守り乾燥を防ぐ

明け方、葉に滴る朝露は土をほどよく濡らす。伸びた草が影になって土を日差しから守り乾燥を防ぐ

野菜を“売り物”から“食べ物”に

「自然農で大切なのが草、それから種。市販の種は肥料の使用が前提だから、無肥料で育てるとほとんどがだめになりますが、土の栄養だけで育つ強いヤツが一握り生き残るんですよ。それを繰り返し育てて種を採ると、3年目には野生を取り戻した強い種になるんです」(井山さん)

畑には共用畝(うね)と個人用の畝があり、会員になると幅1m×長さ5mほどの個人用の畝と“野生化”した種を自由に使えます。毎週日曜日は共同作業日で、共用畝で代表的な作物をみんなで育て、やり方を覚えたら、それを個人の畝で実践します。

「去年はミニトマトを2本植えて、9月から食べきれないほど穫れました。形は悪いですけれどね。野菜は“売り物”である限り、形が揃う種子や農薬を使わなければなりませんが、自分で育てた野菜は“売り物”ではなくて“食べ物”だから形が悪くてもよいので、農薬は必要ないんです。食べる野菜を自分で育てる社会にしたいんですよ。農業は農家だけではなくみんなでやらなくちゃ」(井山さん)

これまでに市販の種70種類で野菜を育てて、10種類が“野生化“して残った

これまでに市販の種70種類で野菜を育てて、10種類が“野生化“して残った

個人の畝では平均で5種類ほどの作物が。最初の1〜2年間、苦戦した後に豊富な実りが実現する

個人の畝では平均で5種類ほどの作物が。最初の1〜2年間、苦戦した後に豊富な実りが実現する

自然農は「依存しない」農法

世田谷区鎌田の先祖代々の畑を継がれる井山さんですが、以前は製鉄会社のサラリーマンでした。農業をしていたお父様が体を壊したのを機に畑を継ぐことに。退職後3年間、全国の農家を渡り歩き、有機農法やEM菌栽培などさまざまな農法に出会いました。

「有機やEMも環境によい農法ですが、どちらも有機肥料や菌がないと成立しないでしょう。何かに依存して野菜を育てることに抵抗があったんです。それで最後に自然農に出会ったんです」(井山さん)

その後、参加していた「世田谷環境学習会」で農業の現状と自然農の可能性について発表したところ賛同者が現れ、2009年に仲間10人と荒れ果てていた休耕地の開墾をスタート。これがせたがや自然農実践倶楽部の始まりです。現在の会員数は35世帯約67名で、世田谷区を中心に、渋谷区や港区など都心から通う人も。会員同士は畑を通じた緩やかなコミュニティを作り、農に関する勉強会を開いたり、収穫祭やバーベキュー、花火見学など季節ごとのイベントを楽しんでいます。

せたがや自然農実践倶楽部は年会費を予算にして自主運営。勉強会やイベントを開催するほか、東屋などの設備も会員による手作り

せたがや自然農実践倶楽部は年会費を予算にして自主運営。勉強会やイベントを開催するほか、東屋などの設備も会員による手作り

この日は共同作業日で長ネギの収穫とジャガイモの植え付けを。おいしそうな長ネギがいっぱい!

この日は共同作業日で長ネギの収穫とジャガイモの植え付けを。おいしそうな長ネギがいっぱい!

自然に寄り添い、無理をしない!

「会員には原則があってね。一つは指示しない、されない。二つ目が努力しない。最後にやりたくないことはしないの三つで、みんなで楽しくやる、ということが大事なんです。農業は一人ではなかなか続きませんよ」(井山さん)

共同作業は自由参加。手入れをするのも、しないのも自由!失敗と成功を繰り返して1年ほど経つと、四季折々の作付け計画を立てて進められるようになるそう。昨年は会員の1人が田舎の農業を継ぐためにUターンするなど、世田谷で農業を学び地方に帰る、そんな現象まで起こっています

「でも世田谷区の農地は現在約100ha。毎年5〜10haずつ減り続けていて、あと10年でなくなってしまう計算です。日本の農業も高齢化が進んでいますから、それをどうにか食い止めたいんです。この畑もマンションにしたほうが経済的にはずっといいかもしれませんが、私の考える価値はそこにはないんです」(井山さん)

「世界の『農』を世田谷から変えたい」と代表の井山ゴンジさん。砂漠に草を植えて命を吹き込むのが目標

「世界の『農』を世田谷から変えたい」と代表の井山ゴンジさん。砂漠に草を植えて命を吹き込むのが目標

会員は20代から70代と幅広い世代。畑では地位も仕事も年齢も関係なし。ニックネームで呼び合う

会員は20代から70代と幅広い世代。畑では地位も仕事も年齢も関係なし。ニックネームで呼び合う

井山さんが思い描く夢は、農家がみんなの食べ物をつくるのではなく、すべての人が自分の食べるものは自分でつくる、という世の中になること。その実現に向けて、今後は会の農地を増やし、「農」をますます身近にしたいと語る井山さん。自然農の指導にインドへ渡るなど、グローバルな活動もスタートしています。

世田谷から始まる次の時代の農業。まずは、私もベランダのプランターに雑草を植えるところから始めたいと思います。

(撮影:庄司直人)

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せたがや自然農実践倶楽部
開園日時:毎週日曜日 9:00~17:00(夏期 7:00~16:00)
>> http://www.setano.com/