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ここは世田谷区世田谷1丁目。上町「栄寿司」山本正裕さん
ピッ、ピッと、流れるような身のこなしで寿司を握る「栄寿司」の山本正裕さん。自ら市場に仕入れに行くという新鮮なネタを使った寿司は絶品でした。でも、高級で緊張するカウンターではなく、座るとホッとする雰囲気があります。
「うちは、敷き居の低い寿司屋がモットーだからね」と山本さん。酒瓶と一緒に並んでいたのはタバスコ。えっ、お寿司屋さんに!?
「あ、これは生の岩牡蠣にかけると美味しいんですよ。今日の牡蠣は宮崎の日向灘産。それと『舌切(したきり)』もオススメの肴だね。これは、青柳(あおやぎ)からヒモを抜いたもの。酢の物でもいいし、握りもいけますよ」
うーむ、これはいかにもお酒が進んでしまいそう。ところで小学校2年生までは三軒茶屋で育ったそうですが、当時はどんな街でしたか?
「1960年代のすずらん通りは、血気盛んな男性が多かったなぁ。日本中がそういう時代だったから、子どもながらに覚えてますよ。通っていたのは太子堂小学校。前を流れる川に面して染物屋さんがあってね。水面にロープを張って、反物を流して色抜きしていたのが鮮やかでした。その頃は、水が綺麗だったからね」
まだ、開発前夜の時代。世田谷警察署の裏あたりに牛舎があって、放課後は牛を眺めに行ったとか。1956年創業の栄寿司はその後、上町へと移転します。上町で育ち、高校卒業後、大阪の調理師学校に入り、有名ホテルの料亭で修行した山本さん。お父さんと一緒に栄寿司の調理場に立ったのが21歳のときでした。
三軒茶屋から世田谷通りを西へ。または、のんびり東急「世田谷線」に揺られて辿り着く上町駅は、世田谷のいわば「ヘソ」に当たる地点。お隣りの世田谷駅には、世田谷区役所、総合支所、税務署や保健所も集中していますが、なぜこの場所が中心地なのでしょう?
「江戸時代はここにお代官様がいたからね。お屋敷は今、『世田谷代官屋敷』として一般公開されていますよ。私は敷地内にある『世田谷区立郷土資料館』に行くのが好きですね。職業がら、見事な刃物の収蔵物には目を見張ります」
代官屋敷の目の前にある通りが、栄寿司が店を構える通称「ボロ市通り」です。隣接した敷地には弓道場もあって、週末は駅から弓を携えた人々の姿も。日本の風情がありますね。
「この道は大山街道と呼ばれ、古くから街道をつなぐ交通の要衝だったそうですよ」と山本さん。なるほど、住所も世田谷区世田谷1丁目です。
この地に伝わる冬の風物詩が、有名な「世田谷ボロ市」。上町駅から世田谷駅の間にかけて12月15日・16日と1月15日・16日の年4日間だけ立つこの市は、数百店舗にアンティークの雑貨や掘り出し物の骨董品がズラリと並んで圧巻です。その期間、栄寿司も大混雑では?
「ええ。この4日間は、席の予約はお断りしています。常連さんもカウンターの後ろに立って、並んでお待ちいただきます」
ボロ市名物、つきたての「代官餅」(あんこ、きなこ、辛み大根の3種類)を頬張りながら、買い物のそぞろ歩きも楽しい市。世田谷城下で始まった楽市がルーツで、実に400年以上の伝統を誇ります。現在のボロ市は、町会と商店会が中心の「せたがやボロ市保存会」が大切に受け継いでいるもの。
「このあたりは歴史を辿りながらの散策にいいですよ。上町から北へ豪徳寺方面へ進んだら『世田谷城址公園』がありますし。城のお姫様は、白鷺が羽を広げたように花が咲く『鷺草(サギソウ)』の伝説が有名ですね。世田谷区の区の花になっているくらいですから」
11年前にお父さんが亡くなるまで、山本さんは父子二代で暖簾を守ってきました。現在のお客さんには、三軒茶屋に店があった時代から三世代にわたって通われる常連さんもいらっしゃるそうです。ランチではボリュームたっぷりのちらし寿司が、夜はドイツやオーストリアのクラフトビールも手頃な価格で楽しめる、決して気取らない街のお寿司屋さん。代々のファンが多いのが頷ける名店です。
上町での営業は約半世紀、ボロ市通りに面した「栄寿司」さん。毎年12月と1月の15日・16日に開催される「世田谷ボロ市」の4日間は、店の前が多勢の人々で賑わいます。東急・世田谷線も臨時ダイヤで運行。
見事な手さばきで握られていく寿司。ネタケースに並んだ新鮮な素材のほかにホワイトボードにある「本日のオススメ」にも注目。意外なネタを仕入れていることも。ビールやお酒の銘柄もお客さんからのリクエストに応え、オススメを豊富に取り揃えています。
上寿司1,500円は味噌汁付き。奥に見えるのがオリジナルの本格焼酎「世田谷ボロ市」(芋/麦)。このラベルは、山本さんがパソコンでデザインしたそう。迫力ある文字がカッコイイです。グラス一杯600円、ボトルキープ3,000円。お持ち帰りのお土産は2,000円です。
ズラリと並んだ湯のみコレクションの理由を尋ねると「親戚の半分近くが寿司屋を営んでいるから」だそう。座敷席には家族連れも多く来店するそうです。出産祝いに赤ちゃんと駆けつけた常連さんもいらっしゃるということで、愛されるお店の様子が伝わってきますね。
子どものココロに芸術を。二子玉川ビエンナーレの開催
家族連れで賑わう二子玉川で、10月6日・7日の2日間、「二子玉川ビエンナーレ」が開催されます。二子玉川駅ビルの二子玉川ライズ、玉川高島屋S・Cなどがメイン会場となり、「子どもも大人も楽しめるアート」をコンセプトに、芸術に触れるワークショップや展示、トークショーなどが開催されます。
きっかけは、二子玉川の認可外保育園「ロハスキッズ・センタークローバー」で2010年から始まった、子どもがアートに触れる「キッズアート」というプロジェクト。今年はクローバーの子どもたちだけでなく、この先の未来をつくる多くの子どもたちにアートと触れられる機会をつくり、芸術を身近な存在にしていきたいという想いから、クローバー園長 中田綾氏とアートディレクターとして関わる梅沢篤氏らが発起人となり「二子玉ビエンナーレ」が開催されることになりました。
当日は、二子玉川の街が2日間の大きなギャラリーに変身。二子玉川ライズをはじめ、街のお店やカフェの一画で国内外で活躍するさまざまなアーティストの作品が展示されるほか、著名人のトークショーや、有名ママブロガーによるワークショップなど、子どもも大人も一緒に参加して楽しめるコンテンツが多数開催されます。これまであまりギャラリーに行く機会がなかった人も、二子玉川の街を訪れることでたくさんの芸術と出会えるアートな2日間です。
人の感性は、成長過程でどんなものを見て、聞いて、感じるかによって決まるもの。アートや音楽をはじめとする、人がつくりだす美しさや面白さなどの「芸術」とのふれあいは、子どもたちの感性をより豊かに育んでいくものです。「二子玉ビエンナーレ」は、アートをより身近な存在にし、親子みんなで芸術を楽しむ機会を多くもってほしいという想いが込められています。
イベントの詳細は公式ウェブサイトにて順次案内されます。事前予約のほか、当日参加できるワークショップも多数ありますのでご覧ください。
世田谷のお土産。おすすめの手みやげ屋さん
カルチャーの街で知る映像の魅力「下北沢映画祭」
9月21日〜23日の3日間、「下北沢映画祭」が開催されます。下北沢というと、演劇や音楽の街というイメージが強くありますが、さまざまなカルチャーがあふれ、感度の高い人達が集まるだけに、あらゆる角度から映像を楽しむ土壌があります。そんな街の利点を活かして、映画や映像の魅力を発信しようと「下北沢映画祭」は始まりました。
今年で4回目となる「下北沢映画祭」は、成徳ミモザホールを中心にさまざまなプログラムが3日間に渡って開催されます。今年のキーワードは、「挑戦」。映画人のチャレンジングスピリットに触れるプログラムが用意され、特撮に挑戦したクリエイターとその作品にフォーカスしたトークショーや、特撮アイテムの展示などもあります。また、下北沢らしく音楽のPV特集では、作品の上映と監督のトークショーのほか、シークレットゲストによるライブも予定されています。
このイベントはさまざまな人に映画を楽しんでもらうことに加え、まだ世に出ていない映像クリエイターの才能を発掘することも目的のひとつ。毎年、メインプログラムとして「コンペティション部門」を開催し、「既成概念にとらわれない」をキーワードに幅広い作品を募集した今年は、なんと約270作品もの応募が集まりました。著名な監督をゲスト審査員にお招きし、自主製作映画の登竜門的存在にもなっています。
また、今年は「リトル・シモキタウン」と題し、カフェや本、雑貨やギャラリーなど下北沢ならではの店舗を集め、会場内に小さな下北沢を作るという地域の方々と協力した新企画も開催。下北沢を代表するイベントに育て上げたいと考えています。
映画は多くの人が携わって出来上がるもの。大きなスクリーンでたくさんのお客様に観ていただいて初めて「作品」として成立します。「下北沢映画祭」はそんな“人と人をつなぐ出会いのきっかけ”になることを目指しています。
素材へのこだわりが感じられるお気に入りパン屋さん
世田谷公園と昭和女子大生のコラボソフトクリーム
池尻にある世田谷公園は、中央部にある六角形の噴水広場が特徴的な都会の公園です。屋上プールやテニスコート、ミニSLなどが併設されていて、子ども連れや犬の散歩に訪れる人なども多く、地域の憩いの場になっています。
その世田谷公園の売店では、この夏、昭和女子大学の学生とコラボレーションしたソフトクリーム。「Park soft(ぱるく そふと)」が発売されました。緑をイメージした抹茶とミルクのミックスソフトにチョコや花畑をイメージしたカラフルなグミ。そして枝をイメージしたグリッシーニがトッピングされたソフトクリームです。
この企画に携わったのは、昭和女子大学人間社会学部現代教養学科鶴田ゼミとサークルに所属する2~3年生の学生9名です。鶴田ゼミの授業の一環で、公園をテーマにしたフィールドワークを実施したことがきっかけとなり、「世田谷公園売店の改善プロジェクト」がスタートしました。5月から公園のリサーチや試作などを続けて、ソフトクリームとかき氷の販売が実現しました。
彼女たちが地域と連携したプロジェクトを行うのは初めてのこと。「子どもたちも食べにきてくれるような、他の公園にはないものを作りたいと思いました」「企画ではアイデアを出すのが重要ですが、それを実現可能なものにするのが難しかったです」と、感想を聞かせてくれました。
ソフトクリームのイメージの「緑」は、世田谷公園の緑と、世田谷区の「緑を増やそうプロジェクト」からヒントを得たのだそう。「抹茶は緑をイメージしています。Parl softのポイントは、甘いアイスクリームと塩味が効いたトッピングのスティックです」。
地域と地域の学生の連携したプロジェクト。今後はさらに公園を楽しく利用してもらうための、オリジナルの商品開発なども行っていくそうです。9月に入ってからもまだまだ残暑が厳しいこの季節。ぜひお散歩がてらに彼女たちのソフトクリームを試してみてください。