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テイクアウトもOK!山下商店街のこだわりグルメ店
世田谷で四国88ヵ所巡り!? パワースポットで新年の願い事を

年末の玉川大師の様子。さまざまな節句のタイミングでお参りするのが良いそう
80年もの間、人々の営みを見守ってきた霊験あらたかな場所
「玉川大師の地下霊場に行くと、四国88ヵ所と西国33番巡りをいっぺんにできちゃうんだよ」という、ありがたい噂を聞きつけやってきた二子玉川。にぎやかな二子玉川駅周辺の喧噪を抜けて、てくてく歩くこと10分ほどで「玉川大師」の看板を見つけられます。
節目のお参りは、パワースポットに行っておけば間違いなし、と浅知恵でやってきた私でしたが、玉眞院玉川大師住職の眞保龍言さんに、お寺と地下霊場についてのお話を伺い、考えを改めることになります。
「地下霊場が完成したのは1934年(昭和9年)のこと。それまでに何度も四国88ヵ所のお参りをしていた当時の住職が“88ヵ所巡りに行けない人が参拝できる場所を”と、さまざまな方にご尽力いただいてつくった場所です。それから80年、地下霊場はずっと人々の営みを見守っていて、第二次世界大戦のときは防空壕としても使われ人々の命を守りました。2011年の東日本大震災の際には、ひとつの石も欠けることもなく無事だった石仏に宮大工も驚いていました。それだけ霊験あらたかで、仏様に守られた場所なんですよ」(眞保さん)
なるほど、この場所を大事にして、命をも守られてきた人々がいたからこそ“ありがたい場所”“ご利益のある場所”となっていったのですね。パワースポットについても尋ねてみると、「パワースポットだから良いというわけではなく、そこでさまざまなものに感謝し、すっきりと清らかな気持ちで帰れることがお寺に来る意味なんですよ」と眞保さんはおっしゃいます。

4代目住職、眞保龍言さん

境内の一角

優しい顔のお地蔵さん。地下霊場の石仏も皆、とても表情豊かで、さまざまな表情を拝見するだけでも楽しい
仏様に囲まれる不思議な体験
さて、いよいよ地下霊場へ。本殿内の左手にある階段から、地下に降りて行きます。地下は神聖な場所なので撮影禁止。狭くて危ない場所もあるので、手荷物も預けます。灯明料は150円で、初めて入るときはだれでも霊場の説明をしていただけます。丁寧な対応だと感心したのですが、その後地下に降りてみて納得。ここに説明なしに足を踏み入れたら、心細くてたまらないはずです。一歩足を踏み入れると漆黒の闇に包まれました。その暗さと静けさは、暗闇の“胎内巡り”で有名な長野県善光寺の比ではありません。

お賽銭箱から本殿を覗く。真っ暗な地下霊場は、この本殿の下に広がる
地下には、お経に書かれた場面の再現があり、その先に四国88ヵ所と西国33ヵ所にゆかりのあるお大師様、観音様が並んでいます。石仏は合わせて300体。すべて手彫りです。ぐるりと仏様に囲まれる経験はなかなかできるものではありません。その感覚は何とも不思議なもので、自分の人生を振り返ったり、未来に想いを馳せたりして静かなひとときを過ごしました。
心を合わせるお参りのススメ
霊場にある四国88ヵ所に対応した石仏は、年齢と対応しているそう。例えば、現在30歳の人は数え年である31番目の仏様の前で手を合わせて祈ります。
「願いごとは2つでも、3つでもいいんですよ。ただ、願いごとは自分1人のものじゃない。他にもその願いを持っている人が必ずいて、その人たちと心を合わせて、手を合わせて、自分は代表でお参りしているんだと自覚することが大事です」(眞保さん)
たくさんの願いを持っていいけれど、祈願成就を独り占めしないこと。そんな考え方に出会って、目からウロコが落ちるようでした。それから自分の数え年の仏様の前、奥の院の大きな弘法大師様の前、手を合わせる度に、温かな気持ちで手を合わせる自分がいました。実はこれまで、どう祈っていいかの作法がよく分からず、そわそわとして手を合わせていたのですが、真っ直ぐ立ってお参りできるようになったのは、嬉しい収穫です。

お守りの効力は1年。1年後にはお焚き上げして、願いを天に昇らせる

節句のときに限定で発売される、手焼きの満願銅鑼焼は境内の青梅餡と小豆餡の2種セット
「自分が自分がという我欲が強くなっている時代です。そんな時代に、お寺はみなさんが心を合わせる場所を勤めることに意味がある。仏様に手を合わせるとき、お経じゃなくてもいいんです。自分の想いを、自分の言葉で伝えることも大事なことですよ」(眞保さん)
2014年の抱負をしっかりと仏様に宣言し、今日の心構えを忘れないためにお守りを受けて、私の参拝は終了。2014年の終わりに清々しい気持ちでお守りを返納できるよう、1年精進したいものです。
変わるもの、変わらないものが見事に共存する松陰神社通り商店街

松陰神社の正面。隅々まで清掃されピンと気の張る静けさ
松陰神社へと続く参道がそのまま商店街に
世田谷区若林3、4丁目と世田谷4丁目。松陰神社前駅を境にして、南北に伸びているのが松蔭神社通り商店街です。駅から北側に向かえば徒歩3分ほどで松陰神社に。
江戸時代の武士であり、教育者としても知られる吉田松蔭が祀られていることで有名な松陰神社ですが、この神社は明治15年に創建された建造物です。吉田松陰は、安政の大獄(1859年)により30歳という若さで処刑されますが、松蔭が講師を務めた松下村塾の門下生であった高杉晋作や伊藤博文らによって、この世田谷若林の地に改葬されました。現在の松陰神社は学問の神として有名で、合格祈願や学問成就にご利益があるとされ、毎年多くの参拝客で賑わいます。
松蔭神社の境内には松下村塾の模築があり、見学可能です。隅々まで丁寧に清掃された場所で、心静かに手を合わせてみると、時間が止まるような静けさを感じることができます。

水の冷たさが気持ちを切り替えてくれるかのよう

絵馬に書かれている文字は吉田松陰の直筆なのだそう
おしゃれなカフェでほっこりとひと休み

カフェ「STUDY」の外観。店内は長居してしまう居心地のよさ

玄米甘酒を販売する小さなカフェ「せたがや縁側カフェ」
松陰神社前駅周辺は、今や若い人たちにも人気のエリア。昔ながらの情緒やあたたかい人情はそのままに、新しい店も混在しているのがその理由のひとつです。駅を降りてすぐのカフェ「STUDY」は、ついつい長居してしまう居心地のよさ。お店に入ろうとドアを押すと……ええっ?と誰もが驚くドア仕様。緑溢れるカフェのランチメニューは日替わりメニュー3種のほか、程よく煮込まれたチキンカレーやスイーツ好きをうならせるメニューが盛りだくさん。
また、玄米甘酒を販売する小さなカフェ「せたがや縁側カフェ」では、テイクアウトドリンクのほか、麹の食品を販売。お店の看板にもなっている玄米甘酒(250円)は、独特の風味があって大人気。ぶらりと散策中に体が冷えたら、玄米甘酒カプチーノもおすすめです。
世田谷みやげに、手づくりおでん種はいかが?
おみやげにおでん種……なんて話は聞いたことがありませんが、いつ来てもお客さんが途切れることのない手づくりおでん種専門店「おがわ屋」のおでん種は、軟骨やエビ、タコ、野菜などの練り物が中心。知る人ぞ知る「世田谷みやげ」で、区外から通うファンもいるのだとか。30種類以上のタネは小麦粉・卵不使用かつ無添加で、魚のすり身に紅しょうがを練り込んだ「松蔭ジンジャー」(50円)は商店街が誇る名物とも言えるほどの人気商品です。
おでんに入れるだけでなく、お酒のつまみとして軽く炙ってそのまま食べても美味しそう。揚げたてを求めて昼過ぎからお客さんが並びますが、客足がわずかに途切れる14時過ぎが狙い目だそうですよ。

手づくりおでん種専門店「おがわ屋」。店員さんはみんな気さくな方ばかり

商店街から伸びるアーケードも、覗いてみたいお店がたくさん
将棋・囲碁といった昭和の光景から、古書店まで

古書店「nostos books」。手に取ってみたい本がずらりと並ぶ

駅からまっすぐに伸びる商店街。幅広い年齢層の人が行き交う

世田谷のまちなかを走る東急世田谷線
商店街を北に歩くと目に留まるのが、将棋・囲碁と書かれた看板の古き良き昭和の光景。平日13時から、将棋や囲碁に没頭する姿を垣間見ることができます。腕に自身のある方はぜひ、チャレンジを。
そして商店街を南に行くと、以前こちらの記事でもご紹介した古書店「nostos books」が見えてきます。デザインやアートなどを中心としたビジュアルブックを取り扱うオンライン古書店の実店舗として今年オープンしたばかりという店舗には、あれこれ手に取ってみたい本が並びます。
ひとつひとつの魅力溢れる小さな個人商店が軒を連ねている松陰神社通り商店街は、いつも活気があります。かつての暮らしにあった「小商い」。そこには、店主と何気ない日常の会話など、さりげなく生まれる人とのつながりがあります。
一度行けば、この街好きかも?と思わせてくれる松陰神社前駅周辺エリア。街のサイズ感が、ちょうどいいのです。昔ながらの情緒が残り、“いま”も体感できる街、松陰神社通り商店街に、ぜひ一度足を運んでみてくださいね。
(撮影:庄司直人)
心和やかに新しい年を迎えたい。世田谷観音でつく除夜の鐘

世田谷観音の正門より。仁王門では両脇の仁王像が出迎えてくれる
安らぎと温かみのある境内へ
閑静な住宅地内、東京学芸芸大学附属高校の向かいに位置する世田谷山観音寺(通称 世田谷観音)。一歩足を踏み入れると、まるで京都を思わせる景色が広がっています。都内でありがら、周囲にビル群や高層マンションがないからかもしれません。心の安らぎを得に、ふらりと立ち寄りたくなる雰囲気が漂っています。
参道を進むと門の両脇には、平安時代に造られたという迫力ある仁王像が構えています。都内最古の仁王さまに見守られながら門をくぐると、そこは色づく葉や春に咲き誇る準備をする染井吉野、枝垂桜、鬱金(うこん)桜が囲う境内です。こじんまりとした、温かみのある境内にほっとします。
正面左手の池には、「夢違観音(ゆめちがいかんのん)」が立っています。法隆寺の87cmの夢違観音を模写したお姿とのこと。朗らかな表情をされた観音さまは、悪い夢を良い夢に変えてくださるといわれています。手を合わせると、観音さまの後ろにある池の水の音とともに、悪い夢も心の中も一緒に洗い流されたかのよう。浄化したいことがあるとき、観音さまが力になってくれるかもしれません。

本堂に奉安されており、かつては伊勢長島(三重県)興昭寺の秘仏だった「聖観世音菩薩」

「夢違観音」像の近くでは水のせせらぎが心地よく聞こえる
どこにも属さない「単立寺院」

近所の人にとっては憩いの場でもあり祈願の場でもある。毎日散歩がてら手を合わせていく人も多い

キリスト教に造詣が深い睦賢和尚らしく、本堂には慈愛に満ちた「マリア観音」も奉安されている
世田谷観音は、1951年(昭和26年)に睦賢(ぼっけん)和尚が10年かけて建立したお寺です。ここは、「檀家寺」ではありません。つまり、一般のお寺のような檀家制度がなく、お墓を持たず葬儀をあげませんが、人々の願いが叶えられるよういつでもお祈りをする「祈願寺」として、訪れる人々の幸せを見守っています。
さらに、世田谷観音が他のお寺と大きく異なるのは、どこの宗派にも属していないという点です。それは、睦賢和尚のルーツに遡ります。出稼ぎのために長野県から東京へ上京した睦賢青年は、洋菓子店で働く傍ら、仕事場の向かいにあった教会へ通うようになりました。そこで、ハンセン病患者のために人生を注いだ英国人女性コンウォール・リー(1857〜1941)さんと運命の出会いを果たします。リーさんに洗礼を受けた睦賢青年は、自分も人の役に立ちたいという夢を持つようになります。その後、リーさんの勧めで始めたパン屋事業で成功し、現世田谷観音の土地を買って寺院を建てました。このように、実業家であった睦賢和尚が独力で開いたお寺は、どこの宗派にも属さない「単立寺院」となったのです。
400年前の梵鐘を鳴らす
本堂の左脇に、ひっそりと梵鐘(ぼんしょう)が佇んでいます。この梵鐘こそ、除夜の鐘の音を鳴り響かせる鐘です。なんと、1605年に造られたというこの梵鐘は、奈良県極楽寺に伝わる什物だったもの。歴史の波にもまれ、多くの梵鐘が第二次大戦時の金属類回収令のもと溶解されてしまったものの、奇跡的に残った梵鐘がありました。世田谷観音の梵鐘も、そのひとつ。新潟県に残されていた梵鐘を睦賢和尚が取り寄せ、今に至っています。
春は桜に囲まれる「六角堂」。閉ざされた扉の向こうには、国指定重要文化財が奉安されています。それが、「不動明王ならびに八大童子」です。1272年(文永9年)に、大仏師・運慶の孫にあたる康円の手によって完成したとされています。八大童子を従えた力強い不動明王像は、国内で2体しか残っていない、とても貴重な文化財。毎月28日には、「お不動様 月例御縁日」として扉が開かれています。

旧石薬師寺だった鐘楼堂。除夜の鐘はここで鳴り響く

国指定重要文化財が奉安されている六角堂。春には見事な桜の花に囲まれる
地域のためにも、開かれたお寺でありたい

「阿弥陀堂」内の五百羅漢坐像を両脇に、目を閉じて瞑想タイム。非日常の空間で雑念を忘れたい

四季折々の自然が楽しめる境内
ここには威勢のいい明るい声で、訪れる一人ひとりを歓迎している人物がいます。睦賢和尚の孫にあたる太田執事です。世田谷観音を“開かれた寺にしたい”という想いのもと、場所の提供をしたりワークショップなどのさまざまなイベントを開催したり、積極的に活動されていています。近寄りがたい場所ではなく、気軽に訪れたい場所として愛されているのは、太田執事の気さくな人柄の影響も大きいのでしょう。
さらに、阿弥陀如来と東京都指定有形文化財である五百羅漢坐像九躯が奉安されている「阿弥陀堂」を毎週末に開放し、誰でも瞑想できる環境を提供しています。また、毎月第二土曜日の早朝の「朝市」、訪れる人と作り手のコミュニケーションの場「世田谷てづくり市」の会場にもなっています。地域のため、人のためになりたい。睦賢和尚の想いは、脈々と継がれています。
世田谷観音の境内にいると、知らずと呼吸が深くなります。それは、自然が多く、空気がキレイな証拠。新しい年を迎えるにあたり、観音さまや仏さまと向き合って心静かに手を合わせてみてはいかがでしょう。
※「除夜の鐘 点打供養」は12/31(火)12:00〜、お一人1回200円(饅頭付き)です
※ 次回の「世田谷てづくり市」は2014/1/26(日)開催予定です
※「朝市」は毎月第二土曜日6:00〜8:30まで開催しています
(撮影:小林友美)
今日はどのパンにする?休日は経堂でパン屋クルーズ
まぐろにこだわりあり!池田屋の天然まぐろの解体ショー

大人ふたりがかり運んだ、天然のメバチマグロ
会話を楽しむ派?吟味したい派?
昭和26年創業の「お魚の店 池田屋」は、三軒茶屋栄通り商店街の「食彩館 三茶楽市」の中にあります。三軒茶屋栄通り商店街は、飲食店や雑貨屋が多く、毎日夕方16〜18時は歩行者天国を実施するなど、賑わいをみせます。その中でも「池田屋」は、昔ながらの魚屋らしく、威勢のいいかけ声が響く魚屋さん。
普通の魚屋と違うのは、店内の、切り身やお刺身が並ぶスペースが広く、お客さんがゆっくり選べること。「魚のことを聞きながら選びたいお客さんと、ゆっくり吟味したいお客さんがいるからね」と、三代目ご主人の石川宏さん。
この日、お店には、パックいっぱいに入ったブリのアラ、かじきの切り身やウニ、真鯛やあじの刺身が並んでいました。アラやかまが大好物の私には、たまらないラインナップ。解体ショーが始まる前にテンションが上がってしまいました。

三軒茶屋栄通り商店街にある「食彩館 三茶楽市」

かじきの切り身やウニ、真鯛やあじの刺身
魚屋さんとのかけ合いが楽しい解体ショー

71キロのまぐろが登場、この日は大物でした

怖いけど一生懸命お手伝いした女の子
解体ショーが行われるのは、毎週日曜日の14時30分から。時間になると、カランカラーン、カランカラーンと鐘の音が商店街に鳴り響き、呼び込みが始まります。常連さんはすでに待機していて、通りがかりの親子やカップル、犬を連れた散歩中のお父さんも立ち止まり興味津々。
お店の奥から二人がかりで運ばれてきたまぐろは、まな板からはみ出るほどの大きさ。「よいしょ」とまな板に乗せられると、あちこちで「大きい!」の歓声が。
「さあ、このまぐろの重さは何キロだと思う?お父さんより重いかな!」解体ショー恒例のまぐろの重量当てクイズが始まります。「65キロ」「もう少し重いかな!」「70キロ」「おしい!」「71キロ!」「正解!今日のまぐろは71キロ!大きいよ!」とお客さんとのやりとりも弾み、どんどん賑やかに。
次に、まぐろの頭を切り落とす作業を、小学生の女の子がお手伝い。常連さんからも「よいしょ、よいしょ」とかけ声が。おそるおそる手伝った女の子は「怖かったー!とっても硬かった!」と興奮気味に話していました。店頭に集まったお客さんは一気にアットホームな雰囲気に包まれます。
人気の試食タイム!
まぐろをさばく脇では、中落ちの試食タイムが始まります。おかみさんがスプーンでそぎ取った中落ちを、みんなの手のひらにのせていきます。
「池田屋のウリはまぐろ。まぐろを一匹、まるごと仕入れるから、新鮮で安く提供することができる」(石川さん)
中落ちは、取れる量がまぐろの大きさによって異なり、安定した量が扱えないため、スーパーやお魚屋さんでもほとんど出回りません。一匹まるごと仕入れる「池田屋」だからこそ味わえる希少な部位。旨みがぎっしり詰まった中落ちはとても美味しく、思わずおかわりするほど。
その間にも、厚さ10cmほどの赤身が1,000円、大トロ2,000円と、おろしたそばから売れていきます。なくなってしまう前に私も購入。一切れのサイズは大きめで、一人暮らしでは食べきれないと遠慮されそうですが、新鮮なまぐろは、この日のうちに食べきらなくても大丈夫。お刺身や漬け、サラダなど、色々な食べ方でいただきました。

しょうゆを付けなくても美味しい中落ち

赤身、中トロ、大トロ。おろしたそばから売れていきます
まるごと一匹は、魚屋のこだわり

分厚い切り身。お刺身、漬け、お寿司にサラダなどにいかが

年末年始のお買い物にもおすすめ
「こんな大きな魚をさばくの、初めて見ました」と話しながら帰るお客さんたち。ダイナミックなプロの手さばきを間近で見ることができるこのショーには、珍しいだけではなく、本来の魚の姿を見せる池田屋のこだわりがありました。
「切り身やおろした魚の方が売れるのはわかっているのだけど、まるまる一匹の魚がいないと、魚屋じゃないでしょ」(おかみさん)
ご主人やおかみさんとの会話を楽しみにお店を訪れる方も。
昔ながらの魚屋の良さを残しつつ、ライフスタイルや好みに合わせた買い方ができる魚屋さん。日曜日は“まぐろの日”になりそうです。
池田屋では、12月29日(日)は14時30分より、30日(月)、31(火)は開店から、まぐろの解体ショーを開催します。年末年始の準備に、新鮮なまぐろと、威勢のいい魚屋さんの雰囲気を味わってみてはいかがでしょう。
店名:お魚の店 池田屋
住所:世田谷区三軒茶屋1-34-10
電話番号:03-3418-7030(店舗)/03-3421-6536(事務所)
定休日:水曜日
営業時間:10~20時
柴田 真希
昭和の風情と新しいニーズ、どちらも満たす下高井戸商店街

鈴木食品のお惣菜コーナー。働く方も元は常連さんでこの味のファン
下高井戸市場でおいしい買いもの
下高井戸駅の北口を出ると、頭上に下高井戸駅前市場と書かれたレトロな看板が掲げられています。下高井戸商店街の一角、この看板の奥には今も昔ながらの市場が健在で、魚屋さん、豆腐屋さん、お茶屋さん、お惣菜屋さんなどが並び、なんとも“古きよき時代”の風情を醸し出しています。残念ながらシャッターを閉じてしまったお店もありますが、開店中のお店はどこも、元気にお客さんに声をかけていました。
新鮮そうなお刺身に、つくり立てのお豆腐、ひとつひとつのお店に魅力があり、目移りしながら市場内を歩きました。ぐるりと巡ると、鈴木食品店のおかあさんが、「いらっしゃい。どこから来たの」と声をかけてくれました。ここは魚介類を中心とした加工品と、手づくりの漬物やお惣菜が豊富に揃う食品店です。

下高井戸駅前市場の看板

レトロな店が連なる市場には、料理人のお客さんも多いそう
鈴木食品店のこだわり

鈴木食品の名物おとうさんは、おかあさんも絶賛の料理上手

三友シーフーズの店先も、にぎやかで楽しい

誰もが気軽に立ち寄れるよう、扉もありません
日本全国から、おいしくて確かなものしか集めていない、と胸をはる鈴木食品店のおかあさん。個人商店の誇りを感じるこだわりのお店です。干物などの加工品は養殖でなく天然物の魚を使ったものですし、他の品々も長くやってきたからならではのルートで、集めていると言います。「12月はお歳暮の時期だから大忙しなの。でもね、必ずうちを知っているお客さんの注文しか受けないのよ。好みも分からないし、信頼が大事だからね」と、お客さんとの関係も丁寧に築いています。
鈴木食品店でファンが多いのはお惣菜。最近は、おとうさんがお惣菜担当で、素材にこだわり毎日手づくりしています。お店が開くと同時に、次々にお惣菜が並んでいきますが、お昼頃が一番豊富な品揃えとのこと。ほくほくのかぼちゃの煮もの、甘さとかたさが絶妙の煮豆、卯の花、きんぴら…豊富な品揃えで、お客さんの胃袋を支えているのです。
「遠くからわざわざ来るお客さんもいるし、たくさんの常連さんがいるからやっていられるの。安くておいしいものはなかなかない。それをなんとか無理のない範囲で実現しようとがんばっています。お惣菜も普通の家庭の料理だけど、気持ちが入っているからおいしいんだと思うよ」(鈴木食品店のお母さん)
店員さんの営業もいきいきと上手で、思わずたくさん買い物をしてしまったのは嬉しい誤算です。同じ市場の魚屋「三友シーフーズ」にも、新鮮なお刺身や鮮魚が豊富に並んでいました。
しもたかステーションを利用して、商店街をもっと便利に
駅前市場を後にして向かったのは、同じく北口の駅前通り。こちらには人気のお肉屋さん「堀田」があります。コロッケとメンチカツを買って、サクサクとおいしいつまみ食いを楽しみます。さらに進むと下高井戸商店街振興組合の事務所でもある「しもたかステーション」がありました。
「商店街のことなら何でもこちらへ」とうたっているこの場所は、平成17年に組合員の出資でオープンしたというまちのステーション。気軽に利用できるのが嬉しい休憩所で、買いものや地域情報の掲示板、商店街で貯められるポイント(スタンプ)の交換、授乳スペースやおむつ交換台の設備まであるのです。
さらに、買い物途中で荷物を預けたり、買ったものを自宅に届けてもらったり、買いものに来られない人には、商店街の商品の宅配サービスまで請け負っています。大型店や便利なサービスに押されっぱなしかと思いきや、さまざまな世代のお客さんのニーズを満たしている商店街。きめ細やかに機能を拡充していくことで、新しい存在価値が生まれていることを知りました。
「下高井戸シネマがなくなりそうになったときは、商店街の振興組合の役員が、文化がなくなるといって立ち上がり、新会社を設立して運営を続けたこともありました。小中学校がすぐ近くにあるので、子どもたちが商店街をフィールドに体験学習をしたり、文化や教育を育んでいくことも商店街ができる役割のひとつです」(石井さん)
古くからの商店街が得意とするコミュニケーションと、新しいニーズに答えること。その両方を育んでいくことが、活気ある商店街を存続するカギのようです。

下高井戸商店街振興組合の石井健夫さん

しもたかステーション内の掲示板

鈴木食品店の魚のコーナー。静岡、青森、三重と産直品が並びます
散策を終えてみると、この日の買いものは煮穴子、いかの和えもの、卯の花、納豆など、いろいろと買い込んでいました。どれを食べるにも商店街で聞いた軽快なトークが思い出されて、味わいが一層増すよう。小さな専門店の良さを体験し、便利なスーパーでは買えないものがあることを、しみじみと実感したのでした。
帰省のお土産にぴったり、世田谷ゆかりのかわいい銘菓
とっておきの夜に!大切な人と過ごしたい名レストラン
『ココキヌタ』編集長が選ぶ、砧エリアのこだわり店
田中 久貴
用賀のカフェスタンド&焙煎店「Woodberry Coffee Roasters」

用賀駅からすぐの「Woodberry Coffee Roasters」
美味しいコーヒーで、毎日をもっと楽しく
「朝はやっぱりカフェラテが美味しいですね」と言う、Woodberry Coffee Roasters代表の木原武蔵さん。店舗のリニューアルに伴って、コーヒー焙煎機をあらたに導入し、コーヒー豆の店頭販売と3種類の抽出法(エスプレッソ式、ドリップ式、フレンチプレス式)のコーヒー抽出を行っています。
「豆はすべて農園単位でご紹介をしていて、今いちばんおすすめなのは、ブラジルのベラヴィスタ農園のものですね。コーヒーで、毎日がもっと楽しくなるといいなと思っています」(木原さん)
いただいてみると、なんとも柔らかく優しい味!各農園から届いたコーヒーを、一切ブレンドされていない「シングルオリジン」というかたちで提供しています。
「その土地の気候、土壌、人の3つの要素によって、本当に風味って違うんです。コーヒーの個性を楽しんでいただきたいという思いから、シングルオリジンにこだわっています」(木原さん)

ドリップ式で抽出中!

カフェラテもつくっていただきました。美味しい!
地域の個人商店とのコラボレーション
Woodberry Coffee Roasters の店舗名の由来をお聞きしてみると、同じ用賀にある靴製作・修理店「Canteen」店主の海老根努さんが相談に乗ってくれたのだとか。
「いつもの通りの雑談をしているなかで生まれました。海老根さんは、いわば名付け親ですね」(木原さん)
この「Canteen」店主の海老根さんがデザインとプロデュースを担当し、革のコースターやTシャツのオリジナルグッズを製作し、販売もしています。
用賀というまちをもっと盛り上げたい。そんな共通の思いを持つ個人商店でコラボレーションができないか…。そうした会話から商品開発が具体化したのだそう。
ほかにも、チョコレート店「ショコル(xocol)」の商品「Quetzal」の取り扱いもスタートしていますが、なんとこの店舗の商品は、カカオ豆を自家焙煎した後、石臼でひいて作られているということで、ハンドクラフトであるという点がコンセプトに一致しています。

「Canteen」店主の海老根さんがつくったコースター

こちらも同じ「Canteen」店主とのコラボレーションTシャツ
スペシャリティコーヒーを当たり前の風景に
「今は、日本のスペシャリティコーヒーシーンは注目されていて、一種のブームのようになっています。でも、いつかコーヒーの個性を味わうというスペシャリティコーヒーが当たり前のことになったらいいなと思っているんです」(木原さん)
例えば、木原さんがよく行く古着屋さんは、「○○年製のもので、こんな着こなしにぴったり」といった情報がタグに書かれているのだそう。
「洋服でも靴でも、もしくはワインやビールでもそうだと思うんですが、ビールにしても、○○の水を使っていると聞いてほうが楽しいじゃないですか。ライフスタイル全般において、愛着のあるものを育てていきたいという思いがありますね」(木原さん)
農園単位の、スペシャリティーコーヒーを日常に。そんな日々を暮らせたらいいですね。Woodberry Coffee Roasters では、テイスティングなどコーヒーに関するワークショップを積極的に開催しています。
まずは1杯、お気に入りのスペシャリティコーヒーを探してみませんか?

店舗内にはこだわりの豆がずらり

Woodberry Coffee Roasters の店舗外観
人情も新しさも!商店街で元気になる買い物を
「えるも〜る烏山」商店街は、いつでも頼れるコミュニティ
ラックカードは商店街とかかわるツール
商店街にいち早く電子式ポイントカードを取り入れるなど、先進的な取組みが盛んな千歳烏山駅前通り商店街。しかし、「そのカードだって早かったというだけじゃないんだよ」と聞いてやってきたのは商店街の振興組合の事務所です。ここで専務理事を務める松永克己さんが、“コミュニティへの切符”とでもいうべき、「えるも〜るラックカード」についてお話ししてくださいました。
「ラックカードは100円で1ポイントのダイヤスタンプがつくポイントカードです。でもこの機能はカードのほんの一部。私たちはこのカードを、コミュニティを形成するためのツールだと考えています。例えばね、『NPO法人笑顔せたがや』が、よろず相談所というのをやっているんです。お年寄りがここに相談に来てくれたら“よくぞ相談してくれました”ということでポイントが加算されるんですよ」(松永)
相談にのってもらって、さらにポイントまでつくなんて、ポイントカードの概念をひっくり返されるようなシステムです。しかし、コミュニティに参加することが大事、商店街の役割はコミュニティ形成、と幾度となく熱く語る松永さんのお話を聞いていると、だんだんとその仕組みの意図が分かってきました。
商店街に加入している商店の中でも、スタンプ加盟店は約7割。買い物のときに金額に応じて付与されるポイントやノー包装ポイントなどは、それぞれの商店が経費として負担しています。スタンプ加盟店自体も「コミュニティ形成に自分たちが参加している」としっかり動機づけされなければできることではありません。今、新たな商店街の価値をつくっていくために、それぞれが協力し合う土壌が育まれつつあるのです。「企業市民としての役割が問われる時代になってきたと思います」と松永さんもいいます。
「買い物につくポイントであるダイヤスタンプができてから、もう50年になるんですよ。昭和40年に西友ができることになって、買い物客の流出を防ごう、安売り以外の付加価値をつけていこうと始めたんです」(松永さん)
その付加価値の形は変容しつつも、一途に商店街のあるべき姿を追っているのが、えるも〜る烏山なのでしょう。
良いコミュニティって何だろう
前述した相談ポイント以外にも、買い物以外のポイントはたくさんあります。例えば商店街運営の駐輪場を利用したらマナーポイント、インクカートリッジ回収でリサイクルポイント、ペットボトルポイント(一定のポイント毎にダイヤスタンプに交換)など。ダイヤスタンプとは別に、コミュニティポイントができた7年前から、徐々にそのバリエーションは豊かになっています。しかも、貯めたポイントは千歳烏山の多くの銀行で、現金と同様貯蓄に使えるというシステムも地域への密着度の高さを感じさせます。
このようなコミュニティポイントの中で、一番ポイントが加算されるのがボランティアポイントです。駅前を中心として清掃活動を実施している任意団体「スクラムからすやま」が毎月第一日曜日に行っている駅前清掃に参加すると、なんとポイントは100ポイント。買い物時のポイントに換算すると10,000円分と高額なポイントですから、商店街が考えるコミュニティ参加の意味を、つくづく考えさせられます。

スーパー清水屋さん近くの駐輪場でもは、駐輪することでコミュニティポイントが貯まります

“ペットボトルも指定の機械に入れて回収されるとポイントが貯まります
地域の祭りが防災訓練
では、コミュニティをつくるのは何のため?と問えば、「安心して暮らすため」という答えが松永さんから返ってきました。その考えに対する強い意志は、2011年3月11日に起きた東日本大震災の時に行動となって表れました。多くの場所が節電で暗くなる中、商店街が灯す街路灯は消さないことを決定。心細く暗い夜道を照らし、烏山に帰ってくると安心したという声がたくさん寄せられたといいます。
もちろん、普段の備えも大切。その具体策もえるも〜る烏山商店街ならではの工夫が。
「地域のお祭りが、最大の防災訓練です。なにか災害があったとき、街にどんな人がいるか分からなければ、助けを求めることも、助けることもできません。住民同士が顔見知りになっておくというのが、すごく大事なことなんです」(松永さん)
お祭りを大事にしたいという想いから、祭り限定で使える縁日券も発行しています。「普段貯めたポイントは縁日券と交換できます。子どもに縁日券を持たせると、お祭りは楽しめるけれど、お金じゃないから遠出しないし、家族の方は安心みたいですよ」と松永さんはいいます。

お年寄りから若者まで利用される烏山商店街の風景

老舗の文房具屋さんは品数も充実しています
「これからの商店街は、地域の人々の安心・安全を担う使命を負っていると思います。それに、環境整備、文化の創造と伝承をしていく、一大コミュニュケーションの場。地域とともにある、という目標はそのままに、さらにコミュニケーションを深めていきたいですね」(松永さん)
今や、えるも〜るラックカードの発行数は4万枚に迫ります。以前は家族で1枚だったのが、家族それぞれの生活シーンに合わせて一人一人が持つようになり、発行枚数は増えているそうです。これからもこのカードはさまざまな新しい展開をみせてくれるでしょう。「えるも〜る烏山」が目指す商店街の姿から、今後も目が離せません。
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えるも〜る烏山
[住 所]世田谷区南烏山6-3-1 ダイヤ会館 3F
[ホームページ]http://www.elmall.or.jp/



