風の吹くまま気の向くままに歩いてみよう
街が劇場と化す「三茶de大道芸」の二日間は、三軒茶屋のランドマークビル「キャロットタワー」に設置された本部を中心に、東西南北13箇所のステージ、突如現れるウォーキングアクト(大道移動芸)、謎めいた雰囲気の占い師や街の装飾など、いつもと様子が変わり気付かないうちに大きな劇場に迷い込んでしまったような不思議な気分になります。あちこちで笑い声と人の群れに遭遇。気になる人だかりを覗いてみると、クラシックチュチュを纏った男性の姿が(MC Fois feat Lorenzo Galli)。何やら思い通りに行かないことがあり奇妙な声を発しています。その姿にみんな興味津々。外に設けられたステージは、足を止めて観るもよし先に進むのも自由。好きなように行動し、気に入ったショーを観て楽しむのが「三茶de大道芸」の魅力です。
気ままに街を歩いて行くと「アート楽市」の横断幕が見えてきました。烏山緑道沿い全長約1kmにわたり手作りアートのお店が100店舗ちかく出店。工芸品やアクセサリー、布小物などたくさんの作品に出会えます。自由自在に形を変えられ、いくつも重なりながらゆらゆら揺れているフォークで作った「ヤジロベエ」を発見。時間を忘れて見入ってしまいました。手作り感あふれるものから芸術的な作品まで勢揃い、見応えある通りはものづくりが好きな方におすすめ。
ボランティアスタッフの力
「三茶de大道芸」は多くのボランティアスタッフに支えられているのも地域とのつながりの強さを感じます。早い人では8月終わりから活動を開始。「それぞれの『好き』や『得意』を生かした活動をしながら二日間を支えている」というように、ボランティアスタッフからのアイディアから生まれるものもたくさんあるそうです。
かざりつけ班では、シュレッダーのゴミを利用した装飾や本部のサーカス幕など、街の至るところに工夫を凝らした「アートタウン」を表現。また事前にワークショップを行い、三軒茶屋駅の北側にある「あい・あい・ロード」を飾りつける「うちわを使った気球づくり」には、小さなお子さんも参加したそうです。当日はたくさんのうちわがパフォーマーの背後を飾る壁画となり素敵なステージが出来上がっていました。
2011年からはじまった「フラッグリサイクルプロジェクト」では手芸班が活躍。エコ活動と地域コミュニティ貢献そして被災地支援を目的に、前年に使用したフラッグでオリジナルグッズを作製し販売します。トートバッグや巾着、ヘアゴムなど約400個のグッズを作製。私もお買い物バッグに使えそうなレジ袋型エコバッグを購入。
フェスティバル前から子ども参加型のワークショップを開催していたのがこども装飾ワークショップ班。
10月初旬から三茶の街中にはためいていた、黄色のTシャツをご覧になった方も多いのではないでしょうか。こちらは「Tシャツフラッグ作り」で子どもたちが思いのまま手や足に絵具をつけて作製したもの。そしてパフォーマーの付き人・フェイスペイント・会場のお手伝い・記録撮影など、当日スタッフの活躍によって支えられています。
笑って食べて、美味しい食事も目白押し
目に映るものすべてが動き出すのではないか、あの角の先に何かあるかもしれないと好奇心は高まり、歩いているだけで楽しくなってきます。「三茶de大道芸」は、たくさん歩いて、たくさん笑うのでお腹も美味しいものを求めてきます。アート楽市の入口では、たこ焼き、焼そば、おでんなどの露店メニュー。すずらん通り会場には、メキシコやインド料理など多国籍料理。NTT広場では屋台村が登場し、群馬県川場村の名物山賊焼はもちろん、地元名産のヨーグルト・地ビール・リンゴが味わえます。ひときわ大きな休憩所だったのが太子堂出張所のとなりに位置するふれあい広場。露店メニューのほか、ここでは岩手県一関市と伊豆諸島神津島の特産品を味わうことが。特製すいとんとホルモン、地ビールでほっと一息。この日は食べ歩きもOK!あれこれ美味しい料理を食べながら、街を歩くのもフェスティバルの醍醐味。
夜の街は、ますます妖異な雰囲気に
日が落ち辺りはだんだんと暗くなってきました。その中に浮かぶステージは、照明やパフォーマーの煌びやかな衣装などによって昼間とは違った雰囲気に。大人も子どもも目がきらきらしていました。
「都心に近く便利でありながら、昔ながらの商店が並び迷路のような三軒茶屋。この不思議な街の雰囲気を味わいながら散策し、そのときの出会いを楽しんでほしい。目的を持たないほうが普段見落としがちなものに出会えるかもしれません。ふらふらと迷宮に迷いこんでお気に入りを見つけてください」と三茶de大道芸の魅力と楽しみ方を話してくださったのは、世田谷パブリックシアター劇場部制作の酒井淳美(さかいあつみ)さん。
時間を気にせず三軒茶屋の街を歩き回り、普段は歩かない道を通ってみたり、パフォーマーと身振り手振りでコミュニケーションを楽しんだり、投げ銭を支払ったりと日常と違った一日を楽しみました。毎年楽しみにしているファンが多いというのも頷けます。そしてフェスティバルに参加しながら街を知ることができました。「今度あのお店に行ってみよう」と知らず知らずにお気に入りや気になるものを発見できた一日でした。